八尾
大阪、八尾。
町工場の町であり、ありふれたボルトやナットからロケットの部品まで作られる。
ありえない程の耐久テストを通過して使われている新幹線の部品、ハードナット。
これも八尾で作られている。
また八尾にある空港、八尾空港はセスナやヘリコプターの発着が集中しており。
警察や消防、自衛隊もここにヘリコプターの部隊を常駐させている。
第二次世界大戦の陸軍の基地があった、旧八尾飛行場はその隣にあり。
廃墟となった今も、当時の名残を残している。
国道25号線沿いには、廃線になった南海電車の陸橋が今なお残り。
国道の上だけ、撤去されているが橋脚は、錆びた鉄と古びたコンクリートを今なお残している。
その近くの、焼肉屋が並ぶ通り沿いに、朝鮮総連のビルが北の赤い国旗を飾っている。
八尾のコリアンタウン。
その起源は定かでは無い。
大和川の河川工事の為に連れてこられた人達が住み着いたとも。
朝鮮戦争から逃れて来た人達が住み着いたとも言われている。
平野と八尾の中間辺りに、ケンの向かっている酒場手毬があった。
小さな店だった、入口の前に電気で灯る看板があり、明るく光り輝いている。
中に入るとカウンターに席が6脚程度、テーブル席は無い。
白いシャツに蝶ネクタイをした、店員がガラスのカップを磨いていた。
席に着くと注文を聞かれる。
国産のウイスキーをロックで頼むと、アイスピックで砕いた、荒い氷に半分程の、琥珀色の液体が注がれて出てくる。
耳を澄ませば聴こえる音量でジャズが流れる中、2人だけになるまで粘った。
「紹介で来たんだ…売りたい物があってね」
ようやく2人だけになった瞬間に話を切り出した。
「俺は仲介役ですよ…物を預かる、査定の結果を伝える」
それだけです、生物以外ですが。
そう言って、またコップを磨きだした。
革製のトートバックから、ジプロックに包まれた純金のインゴットを取り出す。
「コイツがあと9本…全部で10キロある」
バーテンはインゴットをカウンターの下の物入れに仕舞うと。
「結果の連絡先は?」
そう聞かれたので、使い捨てのスマホの番号を教える。
負債者がクレジットで買えるだけ買ったスマホを、ヤクザが使い捨てとして売りに出している物だ。
通話出来て数ヶ月、料金の滞るスマホは契約停止になるまでは使える。
「成功報酬は額面の1割…物別れになった場合は無料です」
頷いて了承すると、ケンはメモ用紙を出して走り書きし始めた。
「この人を探して欲しい、今いる住所だけで良い」
メモの女性名を見ているバーテンに。
「俺のお袋だよ」
そう言うと店を出た。
通勤ルートなのです。




