検査
ゴリは現場近くの医進会系の病院に運び込まれた。
防弾チョキで弾は止まってはいた。
しかし着弾の衝撃で臓器に負担が掛かっている為、検査入院する事に。
「明日には退院からな!」
処置室を出てから、空いている個室に押し込められたゴリは看護師に向かってそう吠えていたが。
「はいはい、それは先生がお決めになる事ですからね」
中年のいかにもベテランな女性看護師がそう往なすと、怖い顔で。
「どーしても強制退院するなら…ぶっとい注射を三本くらい、ぶち込みますよ?」
そう言って指の幅を3センチは広げると。
お尻にも打ちましょうか?、そう言いながら部屋を後にした。
「冗談じゃ無ねぇ!」
そう言って起きあがろうとすると、腹部に痛みが走る。
青あざの出来た腹部を、湿布越しに撫でながら、仰向けに寝ると天井を睨み付けた。
ダブルタップで受けた銃弾は、数センチ離れて腹部に集中している。
「素人じゃねえ…訓練を受けてる玄人だ…」
痛み止めが効いて来たのか、ゴリはそのまま睡魔に襲われた。
夜になって、愛が様子を見にやって来た。
消化に良い、お粥と豆腐の夕飯を済ませたゴリは、疲れ切った様子の愛を見て。
「捜査…難航してるみたいだな…」
そう言うと、愛が夕方の会議の結果を教えてくれる。
ゴリ達の所に来た奴らは、非常線にも引っ掛からずに現在逃走中
発見されるも車内に消化剤を撒かれた車両は盗難車で、現在持ち主から事情を聞いている。
「消化剤はあれだな…指紋よりかは」
毛髪などからの遺伝子検査を逃れる為の証拠汚染が目的だろうとゴリが言うと。
「私もそう思います…指紋だけなら消化剤が掛かっていても採取はできるんですが」
おそらく無駄だろう、犯人がイボ付きの軍手をしているのをゴリも見ている。
「それとその他の現場では、奪われた身代金もほぼ回収出来てます」
その場では奪われてもルイヴィトンのバックに縫い込んでいた発信機で直ぐに捕まるか。
「動画を撮っていた野次馬から画像を押収して指名手配しています」
聞いていたゴリは、何か違和感を感じて愛に。
「野次馬は何処から受け渡しの事を?」
スマホならまぁわかる、しかし一眼レフのカメラなど、数が多過ぎる。
「それ何ですが、撮影していた野次馬達が言うには」
Rainやhurricaneなどのソーシャルネットワークサービスに突然通知が来て。
1億円強奪!早い者勝ち!場所は…
そんな内容で来た通知に、物好きな半グレや野次馬が反応した結果。
「その場で捕まったり、奪っても先の計画が無くて、ウロウロしている所を押さえられたり」
まるで計画性が無いんです、そう言う愛にゴリが。
「それじゃおかしいだろう?」
言われた愛がキョトンとした顔でゴリを見ると。
「俺らが当たった奴らは、逃げる手段も証拠の隠滅も考え抜いている…まるで」
下見までしているかのようにだ。