離脱
飛び込んだ裏路地は、軽バンは通れるがパトカーは無理な幅なので、追跡していたパトカーは急ブレーキを踏んでドリフトしながら急停車する!
ゴムの焼ける臭いのする中、追跡に加わっていた白バイだけは裏路地に侵入出来た!
ホンダCB1300P。
四気筒エンジンは余裕を持ちながら軽バンに追い付いた。
白バイ隊員が無線で軽バンのナンバーを報告していると、突然目の前の荷物扉が開いた!
見ると同時に銀色の塊が複数、白いの目の前に落ちて来る!
普通の一般道なら横に逃げれば避けられたかも知れない、しかし裏路地にはそんな幅の余裕は無い!
急停車する白バイの前輪にぶつかるとそのまま乗り上げて前輪が浮き上がる!
ウイリーしたまま白バイが横倒しに倒れ込む!安全バーで隊員は軽傷だか白バイは走行不能になった。
白バイ隊員が銀色の塊を見ると、酒場などにある、生ビールサーバーの空タンクが転がっている。
「糞がぁ!」
そう言いながら空タンクを蹴るとその場に座り込んだ。
白バイが追跡不能になった為に残るは発信機だけが頼みの綱になる、途中で巻かれたパトカー達が指示された地点に向かうと、大手企業の流通センターの中を示していた。
サイレンを鳴らしながら正門を封鎖する様に停車したパトカーから次々と捜査員達が飛び出して来る。
しかし目の前の光景を見て全員が愕然とした。
白い軽バンが何十台と駐車してあり、人で溢れ還っている。
この会社の制服なのか、皆が紺色の作業服の上下を着ていた!
それから一悶着があった、配送に向かうドライバーと捜査員との間で小競り合いが起こる。
「こっちは仕事なんだよ、邪魔すなやポリ公」
「現在捜査中だ、出てもらっちゃ困る」
「こっちは昼飯まだやねんぞ!買い物くらい行かせろや」
「しばらく、しばらくお待ち下さい」
結局は応援の機動隊員が到着して無理矢理に騒ぐ作業員達を抑え込んだ。
やっと落ち着いてから捜査が始まった。
捜査が始まって1時間後、一台の軽バンの下から発信機の入ったルイヴィトンのバックが見つかった…が中は空で金塊は無し。
しかも白バイ隊員が報告したナンバーの軽トラは見つからず捜査は暗礁に乗り上げる。
結構の所見つかったのは夕方になってから。
数キロ離れた高架下の、阪神高速道路の補修を請け負っている下請けの倉庫にあるのが発見された。
夜間工事の為に出勤して来た下請けの作業員が、見慣れない軽バンを見つける。
運転席の窓と後の荷物扉が開けられてピンク色の粉が車内を覆っていた。
すぐ側に、複数の空の消火器と共に。