追跡
今回から犯人視点です。
1億円分の金塊の入ったルイヴィトンのバック。
持ってきたのは冴えないオッサンだった。
腹の出た短髪、柔道でもやっていたのか猪首で身体ががっしりしている。
軽バンを運転しているヤン少尉に合図すると、目標の目の前に横付けした!
キィーッ!っとタイヤが悲鳴を上げながら急停止すると、後部の荷室に居たケンがスライドドアを開けて飛び出した。
薬室に実包を入れて撃鉄を起こしてある拳銃を冴えないオッサンに向ける。
その瞬間、相手の目付きが変わった!
猛禽類の様な迫力のある目で、睨み付けられた瞬間、引き金を2回引いていた!
タンッ!タンッ!
渇いた銃声があたりに響くと、チーンッっと空薬莢が落ちる音がする!
ルイヴィトンのバックを放り出す様に倒れ込む男、バックに駆け寄ると左手で持ち上げる。
ズシッ!っとした重さに思わず取り落としそうになる。
重さにして10キロ、米の袋と変わらない重さに片手では耐え切れず、軽バンの中に放り投げると、自らも乗り込んだ。
「出せ!」
そう言いながらスライドドアを閉めると、笑っている自分自身に気が付いた。
「羊狩りかと思えば…なかなか」
楽しめそうじゃねえか。
そう思いつつ、ルイヴィトンのバックの底をカッターで開けて中を確かめると、ジプロックの中に入った金のインゴットが確認出来る。
持参した黒いナイロン製のバックに中身を移し替えていると、後方からパトカーのサイレンが聴こえて来た。
「ヤン!裏路地に入れ!」
そう叫ぶと軽バンは急ブレーキを踏んでハンドルを切り、裏路地に飛び込んだ。