正午
次の日の正午、12時になった時点で派手なルイヴィトンのバックを持った捜査員達が、指定の場所に姿を表せた。
あべのハルカス前、近鉄奈良駅など駅前もあれば。
名阪国道、針インター近くの道の駅や神戸モザイク広場の観光地など、統一性が無い中、1億円相当のインゴットを持った捜査員を、張り込みしながら無線で連絡を取る。
結局の所場所が多すぎて、さらに応援を呼んだ結果、帳場が修羅場になっていた。
連絡ミスによる応援要員の過不足の調整だけで一杯一杯になり、血走った目で無線に怒鳴り散らす署員が多数。
そんな中で第一報が入った!
あべのハルカスで鞄が引ったくられて地下街を逃走。
「発信機を追え!追跡は?」
無線から慌てた声で。
「地下鉄に乗って逃げました!御堂筋線、難波方面です」
帳場に幹部の怒鳴り声が響き渡る。
「御堂筋線の各駅に警官配置!絶対に捕まえろ!」
その頃、神戸のメリケンパークでは。
1人の捜査官が異変に気がついていた。
これから何かが始まる、それを期待するかの様に撮影する人が多いと。
スマホならまだしも、一眼レフのカメラを使って撮影する人までいる。
何かがおかしい、そう思った次の瞬間。
鞄を持った捜査員が襲われていた!
マスクをして帽子を被った男達に鉄パイプやバットで殴り倒される!
地面に倒れてもなお、足蹴にされる捜査員に向かって駆け出すと。
「公務執行妨害!全員捕まえろ」
マイク向かってそう喚くと、腰から特殊警棒を抜いて手首のスナップで振り出す。
「何しとんじゃゴラァ!」
バット持った容疑者の肩に振り下ろすと、鈍い音がして鎖骨が砕ける。
髪の毛を掴んで足を払うと地面に転がした!
「12時15分、傷害の現行犯で逮捕!」
捕獲しろ!あちこちで罵声が飛ぶ中でルイヴィトンの鞄を探すが見つからなかった。
「糞がぁ!…周りで撮影してる奴らも確保しろ!鞄を探せ!」
同時刻、ゴリは東大阪JCTでルイヴィトンの鞄を持って待機していた。
阪神高速13号線や中央自動車道が交差する荒本は、文房具の倉庫が多い為に交通量も半端無い。
ひっきりなしに通るトラックや軽貨物の騒音で、マイクの音声を拾うのも一苦労だ。
情報が錯綜する中、白い軽バンがゴリに近づくと、急停車してサイドドアを全開にする。
ガラッと音がした方をゴリ見ると、軽バンの中から目出し帽を被った男がゴリに向かって拳銃を向けていた!