車内
新潟からロシア、中華、北。
盗難車が外国に流れるルートの一つ、他にもアフリカに流れるルートなどもある。
高級車ばかりを狙い、人気はハイエースとランドクルーザー。
トヨタは10年経ってもエアコンが効くと人気が高い。
枚方から住之江に帰る車内で愛にそう説明しだした。
「最近はスマートキー付きの盗難が多い、狙われるのは自宅前とかでな」
スマートキーから出る電波をノート型パソコンで拾って、同じ電波を車の近くで流せばロックが開く仕組みだ。
「自宅の鍵とスマートキーをキーホルダーで繋げた状態で、玄関の小皿の上とかに乗せる家とか、よく被害に遭うよ」
それを聞くと愛が。
「防ぐ方法は無いんですか?」
そう聞いて来たので、電波を遮断する方法を教える。
「アルミホイルとか電波を通さない金属で密閉する、お菓子の入ってた金属缶とかオススメだな」
無料だし、そう言うとゴリは溜息を吐いたあと無言になる。
その様子を見て愛が。
「何か…気になる事でも?」
そう聞くとゴリが、あくまで可能性の一つとしてなんだが…と前置きして。
「居酒屋の店長…マグロ漁船に乗せたって言っていたが……保険金目当てで海に放り込まれてなきゃ良いが」
愛が驚いた顔で。
「あるんですか?そんな事…まさか本当に」
ゴリは渋い顔で、素人の日本人の給料1人分でベテランの外国人船員が2人雇える…どっちが正解だと思う?
「俺ならベテラン2人雇うな、海に出れば応援なんて頼めないしな」
限られた人数で船の冷凍庫を一杯にしないと、日本には帰れない。
足手まといの面倒を見る余裕は無い。
「あとは枚方署に任せるしか無いな、こっちも余裕は無い」
後の車内は言葉少なく、住之江署に着いた。
その夜の捜査会議で、調べた結果を発表した後、新潟に捜査員を派遣するかと思いきや。
「実は犯人から、金の受け渡しの指定があった」
会議室がザワザワと反応する中で、続きが報告される。
「大阪、奈良、神戸など10箇所同時、同時刻に受け渡しを指定してきた」
捜査員がどよめく中、10箇所の場所を言った後に。
時刻は正午12時…全部だ!
その後の会議室は、誰を何処に配置するのか決まる頃には日付けが変わっていた。