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パーティー抜けようとしたら全力で引き止められ、それでも抜けようと意地張ってたら既成事実を作られある意味抜かれた話

作者: 塩麹弁当

初投稿です。

「こりゃもう無理だ。俺はパーティーを抜けるよ」


 ある日のダンジョン帰り。俺は"銀天"というパーティーを抜けることを宣言した。

 幼い頃から村の幼馴染共とパーティーを組み切磋琢磨してきたが、17歳になった今どうしても自分の力不足が否めなくなってきたのだ。


「なっなんでだよ! お前がパーティーを抜ける必要は無いだろう!」


 パーティーリーダーのマクセル。赤く逆立った髪を持ち、盾と剣を手に最前線で魔物と戦う戦士である。

 脳筋かと思いきや意外にも指揮が得意で、本人の実力も相まってパーティーの要である男だ。


「しかしだなマクセルよ。今日もダンジョン内で何度俺が危険な目に逢い、助けられたか覚えているか?」


「いや、それは仕方ねぇって。アラギは元々そういう危険な役割だろ? 俺はあんまり危険な事はして欲しくないんだがなぁ……」


 毎週の風の暦の日。

 この世界は一週間が八日間あり、闇、火、水、風、雷、土、光、という順番で一週間が過ぎていく。

 その丁度中間の風の日に、我々銀天はダンジョンに潜る日と決めているのだ。


 今日も今日とて風の日。我々のパーティーの現在の実力に見合ったダンジョンの階層──35階層にて冒険をしていた。


 基本的にダンジョンはいくつもの層に分かれており、地上から地下に行けば行くほど、出てくる魔物の強さも強くなってくる。

 35階層と言うと、パーティーの実力的にはかなり上位に匹敵する程の階層だ。


 ちなみに我々が拠点を置いてあるここは、大型ダンジョン都市"サバールガンド"という所である。

 中央にダンジョンを置き、その周りをぐるっと城壁で囲み、その外側にギルドや店、民家等がずらっと並んでいる大変大きなダンジョン街だ。


 ダンジョンを中心に街を作っている所は一般的にダンジョン街やダンジョン都市と呼ばれる。



「アラギが危険だったら私が守ってあげてるじゃない!」


「いや、それが問題だと言うのだよ。サラも自分の事で手一杯だろう。自分でなんとか出来なければ、もっと下の階層の踏破は難しい」


 俺の言葉に反論を述べたのは魔法使いのサラ。

 綺麗な金髪のポニーテールに似合った、可愛らしいと言うよりは美人な顔。


 サラが使う魔法は強力無比な性能を誇り、短い詠唱の中で幾つもの呪文を複合し放つ魔法の威力はちょっとした災害級である。

 実力でいけばもっと有名な強いパーティーにいても可笑しく無いのだが、なぜか銀天にいるのは本当に謎である。


 ちなみにマクセルとサラと俺の三人は村の幼馴染同士である。


 さて、先程サラが述べた通り、俺は幾度となくサラやパーティーメンバーに助けられてきた。

 25階層のハウンドドッグ(なんかキモい犬の魔物)に噛まれそうだった時や、31階層のゴーレムに殴られそうだった時も助けられてしまった。


 別に俺も何もしてなかった訳では無い。

 元々の俺のパーティーでの役割としては、いわゆるヘイト管理である。

 矢を魔物に射りこちらに注目を集めたり、時には囮になったりしてその隙に他のメンバーが魔物を倒すような役割だ。

 上の階層、だいたい25階層辺りまではそれでヘイトも管理できており、俺の役割としては十分だっただろう。


 しかし26階層辺りから驚くほど魔物が強くなった。

 26階層はそもそも階層主と呼ばれる魔物が常駐しており、このダンジョンでは初の大型の魔物となる。

 25階層にいたハウンドドッグがそのままデカくなり、首が四つになった魔物である。

 とにかくデカいのでヘイト管理も上手くいかず、結局メンバーのゴリ押し火力攻撃で倒せたのだが、そこで俺は自分の力不足に嘆き悲しみはしていないものの戦い方を変えなければいけないのでは、と悩んだりもした。

 そこからは試行錯誤を繰り返し、自分なりにヘイト管理や戦い方を考えていたがどれもあまり上手くいかず、結局ズルズルと35階層まで来てしまったのである。


「だから俺はここらでパーティーを抜けるべきだ。大して活躍もしていないのに、これ以上は君たちにも迷惑を掛けるだろう」


「そっそんなことない! アラギのヘイト管理は完璧だし、私も助けられた事なんて数え切れない程あったもん!」


 サラはどこか悔しそうな、悲しそうな顔をして言う。

 いつもはツンと澄ましており、どちらかと言うとクールな面が多いサラだが、珍しいことに感情を顕にして叫んでいる。


「そう。アラギが居なくなったら美味しい料理が食べられない。あとウチも助かってる」


 銀の髪をおさげにして、平坦な口調と読み切れない表情で呟くウチ・スペンサー。

 パーティーでの役割は、その小さい体を活かしての素早い攻撃と、索敵スキルを持っているので斥候的な役割を果たしてくれている。

 家名を持っていることから分かる通り、詳しくは知らないがどっかの貴族出身らしい。

 何故かは知らないが懐かれ、その際になし崩し的にパーティーメンバーに加わった未だに謎の多い少女である。


「ウチは飯が食いたいだけだろうに」


「それもあるけど、助かってるのは本当。やめたらウチは泣く」


 珍しく悲しそうな顔をするウチ。

 本当にウチがこんな顔をするのは稀で、表情が変化したのは風呂で裸を見てしまった時くらいと記憶している。

 いや、その記憶も正直曖昧……あれ、思い出そうとすると頭痛が……。


「そーですよ! アラギさん辞めたらアタシもパーティー辞めます!」


「いや、アリアまで辞めたらパーティーの戦力が大幅に落ちるだろ」


「そのぐらいの覚悟って事ですよー!」


 この元気いっぱい少女の名はアリア。我々銀天のムードメーカーである。

 茶髪を肩口までのショートカットにしており、一部分のみ白いメッシュにしてある。

 ドデカいハンマーを軽々と持ち、敵をバッタバッタと薙ぎ倒していくいわゆる戦士というか、狂戦士見たいな感じの戦い方をする。

 アリアに任せれば、デカい魔物もそのハンマーで一撃で倒せることもある程なので、パーティー内での一撃必殺火力要員として重宝している。


 ただしあまり頭は良くないので、こっちが的確な指示をしないと変な事をしてしまう。そこをマクセルと俺でコントロールする事によって、立派な火力要員としての力が出せるのだ。


「だって今のアタシがあるのはアラギさんのおかげだもん! 辞めちゃやだー!」


 そう言って駄々を捏ね始めるアリア。名前に似合わずうるさい奴だ。


 アリアは元々我々が今いるサバールガンドとは別のダンジョン街で結成されていたパーティーで荷物持ちにさせられていた。戦闘になると勝手に突撃して邪魔だという理由で、ドデカいカバンを背負ってサポーターの役割を押し付けられていたそうだ。

 そのパーティーが仲間内での不和で解散となってからはその街で燻っていたようだが、俺が私用でたまたまその街へ寄った際にアリアの才能を見出しパーティーにスカウトした。


 ただ、アリアをメンバーに紹介する時は何故かサラとウチが不機嫌そうだった。

 どうせその凶悪な胸部に釣られたんでしょ? はぁ、ほんと男って……なんてサラから言われた。

 確かにアリアの胸部はサラとは比べ物にならない程立派な……これ以上は辞めよう。


「なんか変な事考えてるでしょ」


「いや、そんな事はない……です。はい」


 サラは何かを感じ取ったようだ。鋭いヤツめ。思わず萎縮してしまった。


「とっとにかくだな、君たちの言い分は分かった。パーティーを抜ける事に関してはもう少し考えてみよう。ただ、俺もこれ以上深い階層になると今のようにはいかなくなる。それも踏まえ、君たちももう少し考えてみてくれないか」


 俺は宿に戻ろうと皆に言い、歩き出す。

 その後ろで女性陣がヒソヒソと話している事を知らないまま──



 ────────────



 サバールガンドの民家区の一角にある一軒家。

 木造の平屋だが、中は比較的広く部屋数も人数分ある。

 ギルドやダンジョンからは徒歩十分の位置にあるので、アクセスも良い。

 五年ほど前からここを銀天の拠点にしており、かつてはパーティーメンバー全員で暮らしていた。

 そう、かつては。


 五年前にマクセルがこの拠点が売りに出されているのを見つけ、何を気に入ったのか即決即金で購入したのだ。

 それからはリーダーだからという理由でマクセルにパーティー資金を任せるのは辞めた。


 結果的にこの拠点はみんなも気に良り、3人で暮らし、4年前にウチが仲間になってからは4人、3年前にはアリアも加わり5人と、順調に部屋が埋まっていった。

 そんなある日、マクセルに恋人ができたらしくその恋人と一緒に別の家で同居するという事を突然宣言されたのだ。お相手はマクセル行きつけの花屋の娘。3年前に一目惚れをしたようで、その時期から拠点に花がどんどん増えていった覚えがある。

 2年前にその恋は無事成就したようで、1年間はお互いに花屋で会ったりしていたようだが、一年前に前述の通り同棲生活を始めることにしたそうだ。


 マクセルと花屋の娘の同棲生活は勝手にどうぞっていう感じなんだが、問題は女性三人と俺一人というどこか歪な同居生活になってしまうということだ。

 まあ蓋を開けてみると特に今までと変化はなかったのだが。

 確かにマクセルは結構拠点に居ないこともあったし、別に今までとなんら変わらなかった。

 と、思っていたのはどうやら俺だけのようで、女性陣はなぜかソワソワと落ち着かない様子だった。

 やはりあまり男一人で女性だらけの家にいるのはマズイかと思い、どこか近くに引っ越そうかと考えたのだが、鬼気迫る表情で三人に止められたのでとりあえずその考えは辞めておいた。

 それからだろうか、皆のソワソワが妙になくなっていったのは。

 むしろ大胆になっていった気がする。

 サラはお風呂上りに下着姿で俺の目の前に出てくるし、ソファーに座ってたらウチが膝に乗ってくるようになったし、アリアはよく抱き着いてくるようになったし……。

 これはあれだ、男として意識されていないってことだと思う。


 四六時中だれかは一緒にいるから一人になる時間がない。

 溜まるのだ。何がとは言わないが。

 一度こっそりと拠点の反対方向にある色街へ繰り出そうと夜遅くに出掛けようとしたら、なぜかサラに見つかってしまった。

 色街へ行くのはバレなかったのだが、挙動不審な俺を見て怪しく思ったのか、どこへ行くのかなど聞かれすごく怪しまれた。

 外の空気を吸いに行くだけだと言い事なきを得たが、あの時は女の直感は怖いなと戦々恐々としたものだ。


 そんな我らの拠点にて、俺は自室で頭を抱えていた。


「どうやってパーティ抜けよう……」


 これ以上下の階層に挑戦するのは非常に危険だ。

 主に俺が、だが。


 奴ら4人で行ってくれれば1番安全だと思うのだが、やれお前が必要だとか、あなたがいないと駄目だとか。


 つまりは、俺が必要ないような戦い方に変えればいいんじゃないか? 

 そうだよ。別に敵のヘイトは集めなくても良いんだよ。あいつらならそんなことしなくても、四人で連携を取れるような配置にするべきだ。

 そうすれば、これまで以上にスムーズにいくはず……! 


 そうと決まれば、早速戦術会議だ! 



 ────────────




「という訳で、これが俺の考えた新しいチーム配置に、戦術だ。質問は?」


 翌朝、俺は早速全員を拠点に集合させてから昨夜考えてた事を説明する。

 我ながら良い戦術だと思うが、皆の反応はあまり良くない。


「なあアラギ、その配置にお前がいないようだが」


 最初の質問はマクセルからだった。

 当たり前だ。俺は行かないから、もちろん配置には着くはずもない。

 その事を説明すると、各々色々と言ってくる。


「なっ……アラギ、やっぱり辞めるってこと……?」


 サラが目を釣り上げて、怒りながら。


「辞めないで……。ウチに悪い所があれば直すから……」


 ウチが泣きそうな顔で。


「私も辞めます。そしてアラギさんと一緒に……」


 アリアが神妙な顔で呟く。

 いや一緒になに……? こわい……。


「なあアラギ。俺たちに隠していることはないか?」


 それまでの流れを無視して、突如マクセルが言い放つ。

 隠していること? いや別にないが……、


「正直、前から怪しかったんだ。最近よくギルド近くの宿屋に通っているだろう?」


 いや確かに通っているが。

 それとこれと何の関係が……。


「宿屋の看板娘のマリさんに会いに行ってるだろ。いや分かってる。わざわざ会いに行くのはさ、好き……なんだろ? マリさんが」


 マクセルが見当違いの事を言う。

 そしてその瞬間に女性陣の視線が絶対零度の如く変わる。

 いや、こわ。


 マクセルが言うことは全くの見当違いで、宿屋にはマリさんの妹のリサちゃんに会いに行ってたんだが……。

 一度遊んでやってから何を気に入ったのか、それからずっとお呼ばれしている。

 マリさんはなー……。たぶん嫌われてるんだよなぁ。

 たまに凄い睨まれることあるし……。


「俺もさ、ローズに会いに花屋に通い詰めてた時期があっただろ? その時は皆に内緒にしてたんだよ」


 ローズは花屋の娘の名前だ。

 マクセル的には内緒にしてたらしいが、普通に皆にバレてたからな。


「マクセル。本当に違うんだ。お前らは人を殺せそうなその目をやめろ」


 取り敢えず誤解を解かなければと口を開く。


「宿屋にはリサちゃんと遊ぶために通ってたんだよ。どうやら懐かれたみたいでな。それで、マリさんとそういう仲になるのはありえないさ。睨まれるし」


「いや、あれは完全に惚れてる視線……ヒッ」


 マクセルが何かを言おうとするが、サラのヤバげな視線に晒され口を紡ぐ。


 このままだと話が進まないので、俺は強引に話を進める。

 ところで、女性陣がずっと3人でヒソヒソ話しているのが凄く気になる。


「まぁとにかくだ。明後日の風の曜日、ダンジョンに潜る日だ。お前らは明日、各自いつも通り装備を整え、しっかり準備するように」


 俺が音頭を取っているが、本来はパーティーリーダーのマクセルが言うべき言葉である。

 しかしあいつらずっとヒソヒソ話してるな……。


「お前らもいつまでもヒソヒソ話してないで、今日はもう寝ろ。マクセル、お前もだ」


「あぁ、了解。けどよアラギ。俺は諦めねぇぜ。明日、もう一度考えてくれ。俺らにはお前が必要だ。頼む」


 こいつは無駄に諦めが悪いところがある。まあ、そこがこいつの良いところでもあるが。


「はいはい。まあ答えは変わらんと思うがね。それじゃお休み」


 そう言い、自室へと足を運ぶ。


「《small》おいお前ら、何するか知らんが、手荒な真似は控えろよ。《/small》」

「《small》大丈夫よマクセル。でも、今日はもう帰ってね? 《/small》」


 相変わらず後ろがヒソヒソしている。


 俺も今日は早めに寝るか。

 しかし、今日と明日で俺の決心が変わるとは思えんがね。

 あいつらはこれからもっと有名になる。

 俺はそれを傍から見て楽しむか。


 自室で日課の瞑想をしてから俺はベッドに横になる。

 今日は良く眠れそうだ。



 ──────────────



 夜、ふと違和感を感じ目を覚ます。

 何故か股間当たりが冷える。

 と思いきや暖かくなる。

 というか俺のナニが何故か外に出ている感覚がする。


 えっ……ナニが何がどうなってんの!? 


 俺はパニックになる。

 まさか、漏らしたか? この歳で? 

 漏らす寸前にパンツは守ろうと無意識で脱いだのか? 


 とにかく何が起きているか確認しようと体を起こそうとする。が、何故か両手両足が鎖で繋がれている。

 見たところこれは、監獄の手足枷というアイテムだ。

 主に重罪人を牢獄に繋いでおくための物だが、なぜこんなものが俺に……。


 取り敢えず状況を分析しようと一旦冷静になる。

 まさか、誘拐された? 

 いや、別に不満を買っている人は居ないはず……。


 幾分か冷静になり、さらに暗闇に目が慣れてくるとふと気づいた。

 ここ、俺の自室だと。つまり、俺は就寝中に賊の侵入を許したということか? 

 やはり斥候として俺は失格なのでは? 

 さらに、股間あたりに人影が見える。しかも3人分。


 3人の賊の侵入を許したって、マジか。

 こりゃあ斥候失格ですわ。


「《xsmall》うわー、凄い。男の人のってこんなんなんだ。《/xsmall》」


「《xsmall》……ウチにこんなの入るの……? 《/xsmall》」


「《xsmall》ひゃぁー、これが今から私に……。《/xsmall》」


 賊共は股間あたりでヒソヒソと話し合う。

 待って。この声……まさか。


「おい、まさかお前らか?」


 俺は半ば確信を持ち、賊共に話しかける。


「ひゃっ! おっ、起きたの……? て、そりゃ起きるよね……」


 やはり、サラとウチとアリアだった。

 しかしなぜこんなことを……。


「一体何を……。まさか、俺を縛ったうえで脅してパーティーに残るようにするつもりか?」


 十中八九そうだろう。正直それしか考えられない。

 それと、さっきから3人で俺のナニを触るおかげで反応してしまうんだが。


「そ、その、アラギ。今からする事は確かにアラギがパーティーに残って欲しいからするんだけど、決してそれだけがする理由じゃなくて……あの、その……」


 珍しくサラがやけに歯切れが悪い。


「つまりですね! 私たち3人はアラギさんが好きだから! こんなことするんですよ!」


「そう、ウチもアラギが好きだからするの」


 アリアとウチが意味わからんことを言う。


「わっ私も……アラギが好きだから、こんなことするんだよ……?」


 サラまで。


 まてまて、どうなっている。

 俺にパーティーに残って欲しいからこんな行為をする? 

 しかも好きだから? 


 さっきとは比べ物にならないくらい混乱する。

 混乱している俺を他所に、3人は事を進める。


「とにかく、ジャンケンで私が勝ったから私から先にするね? アラギも準備万端そうだし……」


 そう言い、サラが腰に跨ってくる。


「むー……負けたものは仕方ない……」


「ひゃぁー、ついにやっちゃうんですね!」


 始まってしまう! 

 待って! まだ混乱中なのに! 

 なんなら夢かもとか思ってきたところなのに、サラの体が触れる感触が、嫌でもこれが現実だという事を知らせてくる。


「待て! 皆冷静になれ! こんな事してもっ」

「うるさい。じゃあ、い、いくわよ……!」


 ……


 その後、代わる代わる3人を相手(ほぼ逆レ〇プ)し、文字通り精根が尽き果てた。

 気絶する前に「責任……取ってよね」という言葉が聞こえたが、空耳だと信じたい。


 ────────────────


 朝。そう、いつも通りの朝の筈。

 いつもの如く窓辺で小鳥が囀り、外では活気のいい声が聞こえる。

 一つ違う点があるとすれば──


「アラギ〜もっと……」

「次は……ウチ……と……」

「わた……しも〜……」


 俺のベッドが裸の女共に占領されてる事かな。


「腰と股間が痛い……」


 昨夜起きた事は夢ではなかったらしい。

 普通の男にしてみれば楽園なのかもしれないが、俺にとっては悪夢だ。

 恐らくだが、俺をパーティーから抜けさせないようにいろいろ画策した結果、昨夜の行動に出たんだろう。

 俺は責任を取らなければならない。

 まさか、一年前に自分で言った事が仇となるとは。

 女の初めてを散らしたやつは責任を持ち結婚するべきだ、とそんなことを言ってしまった事がある。

 酒の席での話だったが、俺の本心からの言葉だ。


「しかし、三人と結婚か……いや、それは不誠実なような気が……」


 この国は重婚は認められており、かつて十人もの妻を娶った人もいたそうな。

 しかし、重婚とはつまり「他に好きな奴出来たからそいつとも結婚するわ!」って言ってるようなもので、国内でも割と受け入れられていない制度である。


 長々と語ったがつまり何が言いたいかと言うと、俺も重婚にはあまり良い思いは抱いてないということ。

 結婚相手は一人でいい。

 しかし、過程はどうあれ三人を相手してしまった以上、責任は取らなければならない。


 どうしよう。と本気で悩んでいると。


「ねぇアラギ。まさか、私たちの内一人に、絞ろうとしてる?」

「まさか……自分で言ってたのに……責任取るって……」

「私たち全員娶ってくれますよね? アラギさん」


 若干ハイライトが消えかけてる全裸美少女達。

 これはもう、責任取るしかないようだ。


「よし、結婚するか……!」



 その後、マクセルに真っ先に報告した。


「アラギ、その、俺は一応過激な事は控えろとは言ったんだぜ?」

「分かってるよ。マクセルは何にも悪くない。これは俺の責任だ」

「おぉ……? 意外と潔良いな。てか、よく考えたら美少女ハーレムじゃねーか。やっぱ殴らせろ」

「ローズさんに言うぞ。あいつハーレム作りたいって言ってましたよって」


 マクセルからの懇願は丁重に無視しながら、取り敢えず今後の事を考える。

 これで俺はパーティーから抜ける事は出来なくなった。しかし、ダンジョンに潜るのはキツい……。

 そうだ! 後方支援という名のお留守番で手を打ってくれないかな。


「いや、それは無理そうだぞアラギ。ほら」


 マクセルが指さした先には、装備をバッチリ整えた三人の姿が。


「さぁアラギ。今日も頑張りましょうか。もちろん、今日の夜もね……?」

「今日はウチが先……。ジャンケン勝つ……!」

「今日もバッタバッタと敵を倒しましょうアラギさん! そして夜も! 今日こそは私から……!」


 どうやら拒否権は無さそうだ。


 仕方ない。こうなったら死なないよう……守ってもらいながら弓でチクチクしとこ。


 新しい戦術が完成した瞬間である。



 その後順調に名を挙げて言った我ら銀天は、やがて後世に語り継がれるパーティーとなる。


 それはともかく、女三人に守られながら弓を打つだけの俺が批判されるのは当たり前だと思う。


 やっぱり今からでもパーティー抜けられないかな? 

 あっハイライト消すのはやめて下さい冗談です。

 二度と言うな……? 


 ハイ……。



この後、周りからハーレム野郎と蔑まされることをアラギ君はまだ知らない。

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