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第9話 まだ出会うはずがない対象者。

トーマ(黄)ユウリ(青)カレル(赤)キアン(紫)

とりあえず目で見て把握した攻略対象だ。


顔もトレードマークのカラーも一緒だった。

違うとこは目の前で普通に動くこと。


ああーほんとにこの世界はゲームの中なのね……。

それでもこれは、私にとっては現実なのですが。


あとはトーマの弟シトロン・キートレイ(オレンジ)にヤンデレ従兄のアンディ(緑)隠しキャラの隣国王子のハーディ(藍色)が未確認。


先手をとって従兄との婚約はNG出したので、うちの親が言い出すことはない。

一度も会ったことのない従兄なので、向こうは私の顔も知らないはずだ。


……チョロい。

もうこれは勝ったも同然。


はい、そしてシトロン。

彼はトーマの弟と言ったって、母親違いの弟なので同級生だ。

こっちは裏表ハッキリな性格の小悪魔なので、絶対出逢いたくない。

要注意だ。

出会ったら最後、苦肉の策だがまた顎をシャクレさせて逃げるしかない。


ハーディに関してはこないだも書いたけど、一定数の対象者の好感度上げないと無理なので、こっちもチョロさ倍増。


もうノートから消してもいいぐらいだ。


夏まで上げなきゃ来るはずもないだろう。


だがしかし隠しキャラ。

中々の美男子なのだ。

少し日焼けした肌に、藍色の髪。


全体的に短めの髪だが、一部長めの髪の毛をサイドで三つ編みをしている。


しかし彼だけえらい難易度が高い。


手に入らない花ほど燃えるってやつですよね。

全く乙女心くすぐるゲームだぜ!


製作者、わかってるー!


なので、一回ぐらい物陰からチラリと見るぐらいでも見たかったなぁ……。

実はイチ推しがハーディ様だったのよね。


画面越しのハーディ様ではなく、リアルに動くハーディ様はどんなだったのだろう。

だがしかし、リアル俺様自己中は無理だ……。


彼は自分の都合で授業をサボらせるし、付き合ってもないのに部屋に連れ込もうとするし。

イベントだって授業をしこたまサボらにゃ会えないんですよ。

木の上で寝てたりするから。

……猫か!!


そしてその割に知力上げてないと(授業を受けないと)イベントが進まないと言う、鬼畜さ満載。


ゲームだからキュンと出来る。

リアルであんな傍若無人、絶対無理である。


今日も今日とてウー様が、親指を立てながら私を食事に呼びに来る。

なぜ彼が二足歩行で歩いている姿を、誰も驚かないのだ。

まさか、見えないのか?


もう普通にパパやお母様の前でも二足歩行で歩いている。


え?何これ見えるの私だけ?


こんなの見えた方が絶対面白いでしょ!?

みんな残念だぁ、絶対面白いのに!



そして次の日。

またうっかり廊下でキアンと出会ってしまう。

ばったり偶然。


ぎゃーっと叫びたいのを我慢して、アゴを必死で突き出す。


しかも今度は隣にノーマンがいたのだ。

ノーマンは私の顔を見開いた目で凝視し、逆に顔を背け、腕で隠す。

肩が震えている。

めちゃくちゃ震えている。


オイ!!!


キアンは私を見るなりびっくりした顔をして固まり、そしてそのまま走り去った。

……またこのパターンである。


キアンのイベントを潰せたのかもしれない喜びと、なぜ自分はこの選択をしてしまったのかと言う後悔とで、とても微妙になった。


だがしかし、キアンは一匹狼というジャンルの人で、彼のイベントは他の対象者と混ざらないのだった。

なので、彼のイベントをつぶしても、他に全く影響がない。

それだけが、悲しい。


ノーマンは私の顔が普通に戻ったというのに、半永久的に笑っている。

もう午後だ。

そろそろいい加減にしろと言いたい。


放課後微妙に落ち込んでいたので、机にうつ伏せてダラダラとしていた。

今日はお迎えがちょっと遅い日で、お母様のお買い物の帰りに寄ってくれる為だった。


うちは馬車は一台しか所有していない。

なので何処かに誰かがお出かけしたら、必然的に私は歩いて帰るか、馬車をひたすら待つかの二択なのだ。


歩いては帰りたくない。

だって遠いから……。


廊下の人通りも少なくなってきた頃、誰かの走る音が近づいて来るのを感じて顔をあげる。

見たことあるピンクの髪の毛の人が、私に気付くなり窓から滑り込んできた。


「ねえ、お願い匿ってくれない?」


「は!?匿うって……え?」


「あああ、とりあえず隠れちゃおう?」


ライリーは私の手を引くと、走って一緒に狭い教卓の下へと潜り込んだ。


「あれ?ライリー様、今ここに入っていかなかった!?」


「えーわかんないよー!トイレの方じゃないかしら?」


「男子トイレまで追いかける?」


「行ってみましょう!」


数名の可愛らしい女子たちの声が聞こえる。

ドタバタと教室内をくまなく探し、また騒がしく教室から出て行った。


「……もう、出ていかれたようなので……離れてくださいっ」


教卓は二人で隠れるには狭く、しかも長身のライリーと一緒だったため、私はライリーに抱き抱えられる状態でここに収まっていた。


みんなが夢見る、お膝に抱っこだ。


だがまさか自分がされる羽目になるとは思わなかったが、これは恥ずかしい。

何が恥ずかしいかって、私今日体育あったし臭くないかな!?


ひえええー緊張する。


心臓がバクバクとゴリラのドラミング並の音を醸し出す。

まるで祭りだ祭りだ☆と言わんばかりに鳴っている。

頬に触れる彼の制服からまた、花のようないい匂いがする。


イケメン汗かいてもいい匂いがしそう。

もうね、そんな感じ……!


そして耳が丁度いい具合に、ライリーの首元へと押さえられていた。

唾液を飲む音さえ響くような、そんな状態にパニックになる。


「あのあのあのっ……!」


ここから出たい一心で喋ろうとすると、不意にライリーの人差し指が私の唇に触れた。


「ごめん、もうちょっとだけ、ね?

まだ足音が聞こえるの。

あと少しだけ我慢してね……。」


触れられた手をなぞるように、視線を上へと向けた。

ライリーと目が合う。


思わず『ヒョェッ……』と変な声をあげ、体が強張った。


ライリーは『フフフ』と笑って私の頬を撫でた。


「ごめんね?

顔、真っ赤だね。

……可愛い。」


そういうと、ギュッと私を抱きしめていた腕に力が入る。

さっきより密着する体と耳が、ライリーの鼓動の速さを教えてくれた。


萌え、死ぬ……!!

我がいっぺんの悔いなし!悔いなし!!


なんじゃこりゃあああ!!

どこの乙女ゲームなのこれー!


あ、乙女ゲームだった。


私はそのままとろける様に気絶した。

だってリアルで免疫力なんかないもん。

しょうがないでしょう?

……ないよね?


それからライリーがいくら呼んでも私の意識が帰ってこなかったので、抱き抱えられたままお迎えに来てくれたお母様に引き渡されることとなった。


帰宅して目覚めた私は、興奮したお母様と青い顔でうろたえるパパからの質問責めにあう。


「セイラ、あれは誰なの!?あのカッコいい彼はセイラの何!?

お母様びっくりしたわー、ピンクの王子様みたいな人がセイラを抱き抱えて連れてきてくれて、もうお母様、本当にビックリよ!」


そう言いながら、お母様はまるで自分が抱き抱えられたかのようにウットリとしていた。


パパはそれを聞いて気が気じゃない様子。


「セイラまだ結婚ははやいよー!

だめだよ、まだ婚約者とか連れてこないでよ!?

お父さん本当にショック死するからね!」


誰も結婚するとか言ってない。

そして彼氏でもない。


一体この状況で私が口を挟める瞬間が全くないのが問題だ。


思わずウー様と目が合った。

あいつ親指立てて『頑張れよ☆』なんてウインクしてやがる。


そしてパパもお母様も、二人で違う温度の話をしているし。

この温度差に私は一切の口出しができずに終わるのであった。


あーもう、寝よ寝よ。


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