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第1話 恋して♡レインボー。

挿絵(By みてみん)


気が付いたら乙女ゲームの世界だった。

からの。

そんな私はそのゲームのヒロインに転生していることに気がついた。


時を遡ること、10歳の誕生日。

母娘2人で細々と生きていたのだけど、私の誕生日にママンが過労で亡くなってしまった。

一人ぼっちになった私を迎えに来てくれたのが、ブラウン男爵のパパ。


ママンはパパの家のメイドだったらしくて、10歳の私にはわからない『大人の事情』というやつで私が生まれたのだけど、ママンはパパに迷惑がかかると思い、私の存在を知らせないままパパの元を離れていったらしいの。


内緒にしてたのに何故かママンが亡くなってすぐにパパが現れ、私を引き取ることになった。

貴族の情報網ってすごいね!


パパには奥さんがいるんだけど、奥さんは体が弱くて子供を産むことができないらしく、私を引き取ることをとても喜んでくれていた。

本当の娘の様に愛してくれるお母様を私も段々と大好きになっていったわ。


でも11歳の誕生日に買って貰った子犬のウーとお庭で遊んでいた時、足が滑って池に落ちて溺れてしまって。

……その時私は全てを思い出した。


そう、ここが私が生前死ぬ程ハマってやってた、乙女ゲームの世界だということを……!


ここは乙女ゲーム『恋して♡rainbow』の世界。

ゲームはメイン6人とシークレットキャラを入れて全部で7人の対象者がいる。

そう、だって恋してレインボーだから。

だから7人。


各自レインボーな髪の色をした、乙女ゲームテンプレの性格を持つ対象者が選り取り見取りで、どのキャラも魅力的な顔と性格なので、ボイスCDなどグッズも売れまくっていた。


そういう私も全キャラ台詞を覚えるほど周回したし、このゲームでキャラ投票一推しNo. 1は悪役令嬢を婚約者に持つ王子だった。

黄色のカラーを持ち、少し天然なところを持つ、爽やかなレモンの様な人だった。

絞った果実を、こう、ブシャーっとまき散らしそうな爽やかな感じ。


本当に絞ったら、目がーってなりますが。


……いやごめん、私の表現力が足りなすぎで、上手く伝えられないんだけど。

ともかく爽やかが売りの超絶イケメンな王子様。


シンデレラの継母並みに意地悪する悪役令嬢も中々いい味出してて、個人的には最後の婚約破棄イベントは確定演出が出るまでわからないとこも、何度でも遊べる要素だった。


ええ、ゲームとしては最高でした。


でも。

でもですよ。


私がそのヒロインになったとしたら、話は変わってくる。


よく考えていただきたい。

死んだとはいえ現実を生きてきた私にとって、彼らは『ゲームだから許せる』ということだ。


自分が実際恋愛するとして、婚約者のいる王子にホイホイ男爵風情が近寄っていき、あの手この手で懐柔し、最後に略奪するわけです。


現実ならギリ不倫とかではないが、慰謝料案件ではないですかね……。

男爵風情が王族婚約者の公爵様に慰謝料なんて絶対払えるわけがない。

しかも略奪なんて絶対自分に返ってくるんじゃないの的な、疑心暗鬼に震える日々を過ごさねばならないことでしょう。


私は嫌です。


だからといって他の対象者も同様。


ゲームだから許せるおバカな脳筋に、真面目仕事バカ、ワガママ腹黒、束縛ヤンデレ、自己中などどれを選んでも実際幸せになんかなれるとは思えないのである。


池に落ちて大風邪を引きながら、私考えました。


どれも無理なら、最初から出会わなければいいのだ。

もうゲームを放棄という問題じゃない。


最初からプレイしなければいいのだ。


それには私、攻略対象者誰にも気がつかれずに、生きていこうと誓いました。


なんていい考え。

やってやる。

なんとしても、やってやる。


どの道私はブラウン家の一人娘だ。

婿養子とって家名を継ぐなれば、それ相応の相手で十分なのだ。


無事に奴らに出会わず、奴ら以外と結婚することができたら、私の人生勝ったも同然。

熱にうなされながらガッツポーズをする私に、パパとお母様は私の無事を安堵するのでした。


+++


「セイラ、彼処が将来あなたが通う学校になりますよ。」


「学校ですか?ええと、フラワー、ガーデン、がくい……ンンッ!?」


「どうしたの!?セイラ、大丈夫!?」


お母様と一緒にお買い物へ出かけた帰り、馬車から顔を覗かせお母様が指差す通りすがりの学校名を読んで、思わずむせる私。


そうじゃん!学園で出会うんだよ!!

彼処に行かなきゃもしや全部なかったことにできるのでは!?


そんな浅はかな考えで、お母様にニッコリと微笑む。


「お母様、あの学校以外でないのですか?どっか他の学校とかー?」


私の言葉に病弱な母の顔色が一気に悪くなる。

そしてハンカチを目頭に当て、涙目で微笑んだ。


「……あの学院はね、お母様とお父様が出会った学校なのよ……。私たちの母校でもあって、私たちに子供ができたら是非通わせたいわねってお父様とね……そう、お話ししていた学校で……」


「お母様ぜひ通いたいわ私あの学校に!フラワーガーデンなんてとても素敵な名前!

恋してレインボーなのにフラワーガーデンとか訳がわからないけど、すごく素敵!!」


私の返答にお母様は涙を拭い、嬉しそうに微笑んだ。


……ダメ、悲しませちゃダメ、絶対。


お母様を大事にしようと決めたんです。

だって普通ありえないよね。

愛人の子を育てるのに、自分の子として無二の愛を注いでくださるお母様。

こんないい妻がいるのに浮気したパパには若干引き気味だけど、お母様には罪はない。

天使の様な方なのだ。


与えて貰える愛情を返すべく、極力願いを叶えてあげたいのだ。

なので、必然的にあの学園には通うこととなる。


そういう運命には抗えないのか……。


私はうすら笑みを浮かべながら冷や汗をかいた。


帰宅後すぐに紙とペンを持つ。

忘れないうちに攻略対象者の情報をまとめておこう。

どんな名前で、どんな性格、トレードカラー、出会いの場所など。


馬車に揺られ、うすら笑みを浮かべる11歳の少女、セイラ・ブラウン。

果たして無事に攻略対象者に出会わずに過ごせるのだろうか。

……乞うご期待!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ステルスとはそういうことだったのかとw 主人公のセリフにアホの子が出ていてよろしいです。 構成としても物語の趣旨と主人公の動機や立場、これから登場するであろう登場人物の提示がされており、次回…
[良い点] ゲーム世界に転移するまでの主人公の背景がしっかりしていて、弾き込まれました! 意外とシリアスな内容を主人公の語り口調で中和している感じが読みやすいですね。
[一言] 嫡男以外の爵位が近い幼馴染みは居ないのかな。居れば回避できそうですね。まあ学園で爵位が近い嫡男以外のモブ男子を探せばよいですね。
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