表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

2

一人称むっず


 それは、突然起きた。

 ゴボゴボと、音を立てて水槽内が泡立つ。

 足元から立ち上るその気泡と共に、緑の液体は少しずつ排出された。


「ぐぇ……ぐぶっ」


 水位が下がり、頭部が空気中に現れると、ゴポリ、と音を立てて液体が口や鼻といった、穴という穴から吐き出される。

 嘔吐感にも似た感覚とともに、肺からその緑の液体が吐き出されたころには、水槽内の液体は殆ど全て排出されていた。


 体がずっしりと重く、重力に逆らって自分の二の足で立つことができない。

 水槽内にもたれ掛かると、緑の液体がべしゃり、と水気のある音を立てた。


「■■、■■■■──」

「■■■■」

「■■■■!」


 何やら外が騒がしい。何だろうか。

 ゴポッ、と口から緑の液体がまだ出てきた。まだ肺に残っていたらしい。

 すると水槽のガラスが地面に飲み込まれ、消えた。

 体のバランスを保てず、倒れ込みそうになる。

 体が地面へ吸い込まれる直前、ガシッと掴まれる感覚。


 誰。

 顔を見ようと首をノロノロと動かす、とそこには白衣を着た人と、清掃員のような格好をした人たちがいた。

 清掃用のような格好をした人は、俺の体を両脇から抱き抱えて、そしてストレッチャーのようなものに乗せた。

 そのままガラガラと何処かに運ばれて行く。


──おい、ここは何処なんだ。


 尋ねようとするも、口から出る音はしっかりと言葉にならない。あー、とかうー、という音だ。

 まるで体が自分の物じゃないみたいだ。


「■■■■■■■■■■■■■」

「■■■■■■■■■■」


 周囲の人の声も、何を言っているかよく分からない。何語だろうか。


 暫くすると、ガラガラとした車輪の音が止まった。

 周囲では何か作業をしているが、様子を伺うことができない。目の動きすら緩慢で、まるで蝸牛になった気分だった。

 ストレッチャーの上に放置されること、しばし。


「■■■■■■」

「■■」


 今度は声が近い。

 話し声が聞こえたかと思うと、急に視界が暗くなった。

 頭に何かを被せられたらしい。

 ガチャガチャと作業する音と、話す声が聞こえる。


 おい、何だ。何をするつもりだお前ら。

 くそっ、体の自由が利かないから何もかも言うことができない。

 俺に説明「■■、■■」──っ!?


 突如、頭部に熱いナニカを感じた。

 ドライヤーの熱風を過度に当て続けたようなそれは、最初はフワフワと感じる熱さだったが、それは頭の中心まで浸透──そして。


「───────ツ!?」

「■■■■%■(」

「■■■^╱』■」


 頭の中に、何かが流れ込んできた。

 初めは視覚的なイメージ。

 フィルム映画の一コマのようは画像が、瞼の上、脳味噌の中に直接投影され、バラバラと流れだす。

 さまざまな映像、画像、文字、数字、記憶、記録、■■、□□──


 それらが一体となり、連続となり、河のように星空のように頭の中を埋め尽くし、流れて、光り、焼き付けられていく。


「あ╱《、■■、ゃあ■□■■ぶ、□■ぐえ──【【」

「■ざあ、い──%■□」

「■□──■のま【■れ)い“ぞ」


 まるで銀河の誕生を一瞬に見せられたかのようなそれは。

 一瞬のようで、永遠のようで、そして直ぐに終わった。


「──あ、がひゅ、え─■う」

「■い、聞こえる》■。おい」

「──あ、う」

「おい、聞こえるか。言葉を認識できたら、指を三本立ててみろ」


 頭の中に、まだ星が瞬いているような奇妙な錯覚を覚えながら、ワタシ、私?、俺、ワタシ、俺は技官の指示に従った。

 先程までの倦怠感──まるで透明なふわふわとした幕に覆われたような、微睡にも似た感覚──は消え失せ、ノロノロとした、だがはっきりとした動きで指を三本立て、提示した。


「よし、無事に刷り込み(インプリント)は成功したようだな」

「はい、少尉殿」

「覚えていると思うが、訓練は明日からだ。今日は食事を採った後、しっかりと休め」

「了解であります」


 目の前に立っていた技官の首元。階級章から少尉だと認識し、応対する。

 命令されると、身体は自然とストレッチャーから起き上がり、記憶にある食堂へと向かった。

悲報、プロローグの内容が早くも破綻。

あんな軽口を叩く未来はやってくるのか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こんな話もよろしいですね。 構想が固まったら、ぜひ書いてみてください! 新作、お待ちしております。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ