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剣と魔法と特撮ヒーロー!!  作者: 鮭皮猫乃助
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いざ、実戦へ!

 1週間の体術訓練は、体力の無いオタクには地獄の日々だった。和人の武器は杖、つえでは無くじょうだ。立てて胸くらいの長さの棒を金属で補強したものである。

 そして遥の武器はダガー、10~30㎝で片刃をナイフ、諸刃をダガーと呼ぶらしい。

 まずこれを振り回すだけでも腕がパンパンになる。更にここに体術を合わせるのだ。日頃から運動不足なオタクは10分もしない内に息が上がる。


「お前達は基礎体力作りから始めなければならんようだな。」


 真琴は体力無い組を集め、別メニューを組むと、付きっきりで指導した。スキル:教官のおかげで、日毎に体力が付いていくのを実感するが、元が低いのでまだまだ運動部組には届かない。

 ちなみにここで言う体力は、持久力であり、ステータスの体力は耐久力で別物である。

 運動部組は大まかに体術を覚えると、真琴は


「後は戦って覚えろ、実戦に勝る訓練はない。相手を代えながら一対一の模擬戦をすると良い。」


 と、雑にも聞こえる指示を出した。

 指示に従い戦い続け、慎太郎を含む数名が『俺って強えんじゃね?』と、調子付いてくると、真琴がその鼻をへし折りに掛かる。

 足下に40㎝程の円を書き


「私はこの円から出ない、反撃は左の人差し指一本で行う。私を円から出すか、少しでも攻撃が(かす)ればばお前の勝ちだ。」


 と、どこかのカンフーマンガの様な事をした。勇者慎太郎はそれに真面目に立ち向かうが、いとも簡単にあしらわれる。

 それを見た他の者は、勝てる訳無いと、やる気無く真琴と対峙する。そんな者達に対し、真琴は肩に腕を回し、わざと胸を押し当て、耳元で


「私に勝てたら何でも言うことを聞いてやるぞ。」


 と、囁き挑発した。教師として誉められた行為では無いが、増長は油断を呼び、死を招く。生徒の命を守るためにも、伸びた鼻を折るのは必要な事なのだ。

 真琴は目付きは鋭いが、かなりの美人だ。その鍛え抜かれた肉体は、男女共に惚れ惚れするものがあり、単純に胸もデカい。

 健全な男子高校生を刺激するには十分すぎる。10円ガム買うのに一万円出すくらいのお釣りのデカさだ。実際男子の中には、妄想の中でお世話になった者も居るだろう。

 男達は、限り無く低い可能性を求め挑むが、やはり簡単にいなされて終わった。

 そして真琴と一対一で対峙した者達は口々に語る。


「どう攻めていいか解らない、まるで城だ。」

「あの指が刃物にしか見えない。」

「一歩も動いて無いのに、こっちが攻められてる気がする。」


 と、自分達などまだまだ雑魚だと思い知らされた。

 まぁ、その挑発だけでも十分なご褒美になっている事は、真琴は知る由もない。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 1週間の訓練が終わり、真琴は次の課題を皆に与えた。


「これからお前達には冒険者ギルドに登録し、簡単な討伐依頼を受けて貰う。ギルドカードは身分証でありパスポートの様な物だ。大切に扱うように。仮小隊はこちらで決めさせて貰った。各自、小隊登録を行え。」


 パーティでは無く小隊と言う所が真琴らしい。和人と遥はここでもセット扱いだった。最早真琴もそう認識しているのだろう。他の小隊メンバーは、

 格闘家:空手部の山岡大輝(もう空手家でよくね?)

 大盾と棍棒:野球部キャッチャー(補欠)鹿島祐司

 弓兵:和人と同じく何故この職に選ばれたか解らない、落研の西川康太

 そして引率の兵士ネルソン、真琴を【マスター】と呼んでいた一人である。

 ネルソンに連れられ冒険者ギルドへ行く。木造二階建て、スイングドア、酒場兼業のスペース、酒場とは別のギルドのカウンター、その隣の依頼掲示板、あまりにもテンプレな造りに嬉しくなる一同。

 カウンターで登録手続きをしていると、遥は部屋の隅に美空が居ることに気付いた。何やら手に持った分厚い紙の束を熱心に見ており、こちらには気付かない様だ。

 やがて登録が終わり、依頼:ゴブリン5体の討伐に決め、ギルドを出ようとした所で、美空がこちらに気付いて手を振ってきた。紙の束はだいぶ薄くなっている、遥は手を振り返し、口の動きで『またね』と伝え、ギルドを後にした。


 一同は王都から少し離れた森の近くに来ていた。和人が緊張しっぱなしの康太に声をかける。


「こーちゃん、少し落ち着こうよ?」

「…相手はゴブリン相手はゴブリンロープレで最弱のモンスター…」


 と、何度も呟いている。それを横目で見ながら、祐司が少し意地悪な顔で、


「まぁ、ゴブリンよりも、ケンカ慣れした中堅ヤクザの方が、俺らには恐く感じるもんな。」


 と、言った。


「必死に思い込もうとしてんだから止めてやれよ。お、第一村人発見!なんてな、戦闘準備!!」


 小隊長、大輝の指示で皆が武器を構えた。少し離れた所に、三体のゴブリンがいる。身を低く保ち距離を詰め、後衛組が矢と魔法を放った。その魔法を追い駆ける様に、前衛組が走り出す。和人の放った火球が、一体のゴブリンの顔面を捉える。康太の矢がもう一体のゴブリンの左目を居抜き、遥の風の刃が錆びたナイフを持つ手首を落とした。

 火球を受けたゴブリンは、それで視力を失ったらしい。汚い声で騒ぎながら、闇雲に暴れている。大輝と祐司はそれを後回しに決め、負傷したゴブリンを警戒しつつ、無傷な一体に狙いを定めた。

 大振りに振り下ろされた石斧を、祐司は危なげ無く受け止め、こめかみへ棍棒を叩き込む。よろけたゴブリンの石斧を大輝が蹴り飛ばし、鳩尾に強力な拳を入れた。ゴブリンは体をくの字に折り吐瀉する。そして大輝は、低くなったその後頭部に肘を、喉元へ膝を、肉食獣が肉を噛み千切るが如き一撃を放った。

 その一撃は、無事にゴブリンの命を狩取ったらしく、その場に倒れ動かなくなった。

 大輝達が振り向くと、火球を受けたゴブリンは、後衛組によって倒された様だ。負傷したゴブリンは、残念ながら森に逃げ込んだらしい。

 モンスターとはいえ、初めて命を奪った緊張が一同を支配する。激しい動悸が落ち着くまで待とう。誰も言わないが皆同じ気持ちだった。


「うん、初めてにしては十分すぎる戦いだ。やはりマスターが素晴らしいからだろうな!強く、気高く、美しく、強く、賢く、優しく、自分に厳しく、そして強い!マコトは実に素晴らしいマスターだ!!」


 ネルソンが場の空気も読まず、アホな大声を出した。


『今、コイツ【強い】って三回言った…本当にあの人は何やったんだ…』


 気にはなるが知りたくねぇ…

 全員がそんな気持ちだった。



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