騎士を夢見て
メアリーの屋敷を飛び出して歩くことおよそ一時間。祭りの喧騒から離れ、農閑期の畑の中を延びる道を歩いていると、中々大きく荘厳な造りの建物が見えてきた。
「和人さん見て下さい!あれがエリタージュ修道院です!!」
「へえ、思ったよりも大きいんですね。」
「修道院は修道士達が宗教の教義、労働、学問を学びながら共同生活を送る施設です。加えて先程も話しましたが、ここは孤児院も営んでおりますので、このくらいの大きさにはなりますよ。」
それを聞いた和人は、聞き及んでいる修道院時代のクラリスを思い返し、あまり効果は無かったのではと思ったが、もう殺気に貫かれたくないので黙る事にした。
そしてまだ少し距離があるというのに、庭先で遊んでいた子供達がクラリスに気付く。
「あっ!ひめさまだー!!」
「ほんとだ!くらりすだ!!」
「わーい!ひめさまーー!!」
駆け寄ってきた三人の子供達の頭を撫でながら、クラリスは優しく微笑む。
「久しぶりですね?ハック、リュー、ベイニー。みんな元気でしたか?」
子供達の反応を見て、和人はクラリスの素性を領民みんな解ってるんじゃないか?と思ったのだが、やっぱりアレな部隊の人達が怖いので黙っていた。
そんな中、クラリスにしがみつくハックとリューを他所に、ベイニーと呼ばれた女の子だけが和人の前に立ち、その顔をじっと見ていた。
「ねーねーひめさま?このおにーちゃんはだれ?」
「お友達の駿河和人さんです。異世界からこの世界を助けるために来てくださった勇者様のお友達なんですよ。」
その言葉を聞いた三人のの目が輝きだした。
「いせかい!?すげえ!!にーちゃんもつよいのか!?」
「にーちゃん、いせかいってどんなとこなんだ!?」
「ゆうしゃさまってかっこいいの?こいびとはいるの!?かせぎはいいの!?」
一人だけやたらと現実的な質問をしてくる。女子は強い。
「うん、勇者は強くて優しくてかっこよくて凄く仲間思いだよ。残念だけど恋人はいるね。僕は後衛でサポートが主だからそんなに強くないかな。異世界がどんなとこかは一言では説明できないけど、とりあえず魔物はいないよ。」
和人は質問に律儀に答えてゆく。
そう、この子供達の笑顔一つ一つに無限の未来が宿っているのだ。邪険に扱う事など和人には出来ない。
「どうしましたか?どなたかお客様ですか?」
和人が声のした方を見ると、建物の扉を開けた壮年の修道女と目があった。
「ご無沙汰しております、シスター・ルジェ。」
「姫様……!!」
ルジェと呼ばれた修道女は一瞬嬉しそうな表情を浮かべたが、辺りに連れらしき人間が和人しかいない事に気付くと、途端に表情を険しくし早足で近付いて来た。そして──
ごちんっ!!
「痛っ!?」
中々思い切りの良いゲンコツをクラリスの頭に落とした。
「またあなた様は録に御付きの者も付けずに出歩いているのですか!!いくらこの町の治安が良いとはいえ、少しは一国の王女である自覚を持ちなさいと何度も言った筈です!!」
「その一国の王女にこの仕打ちはあんまりだと思います……」
「お黙りなさい!!だいたいあなた様は昔から二回に一回は礼拝を逃げ出して……」
頭をおさえうずくまるクラリスに、ルジェは説教の雨を降らせる。
「ねえ……いいのあれ?」
「なにがー?」
「え?姫様殴られたよ?」
「べつにいつものことだよー。」
「それよりおにーちゃんあそぼーよー?」
見慣れた光景なのか、子供達はお構いなしに呆然とする和人にしがみついていた。
「そっか……いつもか……」
和人は遠い目で辺りの閑散とした畑を見渡す、アレな部隊の人達の殺気は感じなかった。
──────────
「大変お見苦しいところをお見せして申し訳御座いません。当院のまとめ役を任されておりますルジェと申します。」
「駿河和人と言います。見苦しいなんてとんでもないです。殿下の新たな一面を見れて嬉しいくらいですよ。」
「和人さん……」
先程の事もあり、和人は付き人の体を取ってクラリスを殿下と呼び、フォローするような事を言いながら笑った。
クラリスはそんな和人に感激して涙を滲ませる。
しかし、ルジェはそんな和人の心を見透かす様な鋭い視線を貫かせる。
「姫様を庇い立てしなくても結構です。もうこの様な姿を何度もご覧になっておりますよね?どうせメアリー様の結婚記念日の宴席に招待され、王城の堅苦しい生活から逃げる事ができる~♪なんて思って来たは良いものの、事前の礼儀作法やダンスレッスンのおさらいに耐えられなくなり、あなたを連れ出して逃げ出したのでしょうから。」
「凄い……寸分違いも無く完璧に言い当ててる……」
「和人さんっ!?」
思わず漏れ出た和人の言葉に、クラリスは滲ませた涙をちょちょ切れさせた。
ルジェは得意気に大きく鼻息を吹き出す。
「当然です。私は国王陛下よりもクラリス様と共に暮らし、その世話を任されてきたのですから。」
その顔にクラリスへの愛と仕事への誇りを感じた和人は、これは何を言ってもダメだと感じ話題のすり替えを試みた。
「あ、遅れましたけどこれお土産です。」
「ありがとうございます。これはお祭りで配られるお菓子ですね。」
ルジェの顔が綻んだ。感触は上々である。
「でも凄いですよね、町の人達がみんな笑顔でメアリーさんとカリラさんを祝ってるなんて!」
「ええ、メアリー様がこの地を拝領なされてから570年続く、伝統ある祭りなのですよ。」
「570年?600年じゃないんですか?」
「勇者の盟友とはいえメアリー様は吸血鬼ですからね、当初は信用を得られなかったのでしょう。しかしメアリー様のたゆまぬ努力により領民の信頼を勝ち得た時、領民達は自発的にメアリー様の結婚記念日と、自分達がアルトルージュの民になった記念日を祝う様になったのです。」
かく言うルジェも誇らしげである。
だが和人はかえってその表情が気になった。
「あの、この修道院の人達や子供達はお祭りには参加しないんですか?」
そう、修道院の中では修道士達があくせく働いているし、クラリスの話では子供達も全員いるしいのだ。
「修道士と言うものは基本世俗とは距離を取り、信ずる神の教えに殉じた生活を送ります。お祝いは心の中のみです。子供達も孤児院にいる間は、見習い修道士として生活しておりますので。それに子供の足では難のある距離ですしね。」
和人が納得して頷いていると、ルジェの表情が再び険しくなってきた。
「まあ稀に神の教えに殉じず、その距離をものともせず、町へ繰り出していた子供もいるのですが……」
苦笑いする和人の隣でクラリスはあらぬ方向へ目を反らした。
クラリスの態度を見たルジェはこみかみにを手を当てながら大きなため息をついた。
「まったく……姫様が王城に戻られてやっと落ち着くと思われたのですが、入れ替りで任された子がまた……」
「え?私の後にどなたかはいられたのですか?まだお会いしておりませんが。」
「すぐにあちらから参りますよ、とても会いたがっておりましたから。」
その後ルジェが語るクラリスの修道院時代の話が興に乗り、声をあげて笑う和人の隣でクラリスは恥ずかしそうに真っ赤になっていた。ここにいるのが和人ではなくハンナであったら、クラリスの顔は逆に真っ青になっていただろう。
三人が穏やかな時間を楽しんでいると、慌ただしい足音が扉の向こうから近付いてきた。
ルジェはこめかみを押さえながら深く溜め息をつく。
「どうやら先程話した者が参ったようです。」
その言葉と同時に扉が力強く叩かれ、無駄にデカくて元気の良い女の子の声が響いた。
「ルジェ師よ!!王女殿下が参られていると伺ったのですが真でしょうか!?」
「騒がしいですよプリミラ、姫様ならここにいらっしゃいます。中に招いてもよろしいですか姫様?」
ルジェの表情は是非を問うていると言うよりも、覚悟を問うている様だ。クラリスはそんな表情に気付いていない様で、特に考えること無く首を縦に振る。
「ええ、構いません。」
「姫様のお許しを賜りました。プリミラ、入りなさい。」
「有り難き幸せ!失礼いたします!!」
その言葉が終わらないまま勢い良くドアが開け放たれた。
そこに立っていたのは十歳くらいの赤毛を肩で切り揃えた女の子。ほのかにそばかすの散る日焼けした顔には、星空を写したかの様な薄紺の瞳がくりんと輝いている。そこまではいい。
場所は修道院、少女は十歳程、その体は使い込まれた革の軽鎧に包まれ、腰の後ろにはその体に不釣り合いな長剣を真一文字に履いている。
扉を開けた少女は大きな目に涙を溜めながら足を踏み出した。
「王女殿下!!真に御会いしとうございました!!わたくしわぁっ!?……んごぉっ!!」
少女はその不釣り合いな長剣が入り口に引っ掛かり、まるでドリフの様に仰向けにひっくり返り後頭部を激しく打ち付けた。
女の子がピクリとも動かないまましばしの沈黙が流れる。
「……え?その、大丈夫ですか?」
クラリスは心配をして声をかけたが、少女は白目を剥いて完全に気絶しており、クラリスも和人も目が点になっている。
「はぁ……今の一連の行動がこの子全てを物語っています。根は真っ直ぐでとても良い子なのですよ?ただ何と言いますか……非常に残念な子なのです……」
―あぁ、バカなんだ……―
心の底から絞り出した様なルジェの呟きに、クラリスも和人も苦笑いしかできなかった。
──────────
「改めまして私は騎士爵アルベルト・モンラッシェが第三子、プリミラ・モンラッシェと申します!以後お見知り置きをお願いいたします!」
意識を取り戻したプリミラはクラリスに向かい跪き、腰の剣を鞘ごと外して床に置こうとした。
しかし跪いてからそうしたので、長い剣が床につかえて動きが止まる。そして何事もなかったかのように鞘の中央に手を滑らせ望んだ行動を果たした。
行動もそこはかとなく残念だが、いちいち声がデカいあたりがバカっぽさに拍車をかけている。
「初めましてプリミラ。第一王女クラリス・エル・ステラ・シーロブルト、あなたの顔と名、心に留めました。楽になさってください。」
「はっ!有り難き幸せ!!」
プリミラはクラリスに名を覚えて貰えたのが嬉しいのか、ますます目を輝かせ顔を綻ばせた。
―犬っぽい……―
そう思う和人の前で、プリミラは床に置いた剣を大事そうに拾い上げた。
「待ちなさいプリミラ。院内での帯剣は何度も禁じた筈です。その鎧も脱ぎなさい。」
ぴしゃりと言いはなったルジェに向かい、プリミラは信じられないといった顔を向けた。
「この剣はお祖父様から戴いた大切な物、肌身離すことなどあり得ません!それに鎧は日頃から体に馴染ませていないと、いざと言う時動けないではないですか!?」
「修道院で何と戦うつもりですか!それにアルベルト様はあなたにそのような事を望んでいないからここに預けたのだと説明したでしょう!?」
「私の道はお父様に決められる物ではありません!私の夢は女性初の近衛騎士長になることです!!お祖父様だって応援して下さっています!!」
「どこの家だって祖父と言うものは女孫に甘いんです!いいから修道衣に着替えなさい!!協調性の無い者に統率が取れるとは思えません!!」
近衛騎士と言えば王族を間近で守る騎士の花形である。クラリスを見るプリミラの目が必要以上に輝いていたのは、将来守るべき憧れの人に出会えたからだ。バカでなくても無理もないことだろう。
まるで覚えの悪い犬と、そのしつけを任された調教師のようだ。きっと今繰り広げている会話も幾度と無く繰り返されてきたのだろう。
舌戦とも言えない水掛論を、生暖かい目で見守る和人に、クラリスがそっと耳打ちをした。
「モンラッシェ家は代々近衛騎士長の座を実力で勝ち得てきた名家なのです。本来伯爵位であっても良いのですが《我が身は王家の盾であり剣である》を家訓に、領地は受け取らず騎士の誉だけを受け続ける硬派な一族なのですよ。」
「へぇ、凄いなぁ。」
のんきに話していた和人だったが、突然強い圧を感じた。見ると先程までバカな犬にしか見えなかったプリミラが、自分に向かって静かな圧を放っている。
「ところであなたは何なのですか?」
「え?僕?」
「見たところ殿下の護衛と見える方はあなたしか見えません。そして失礼ながら、あなた一人で殿下の護衛が務まる力があるように見えません。」
「あぁ、でも護衛なら……」
そう言いかけた時、数多の殺気が和人を貫いた。アレな部隊人達の事はどうやら極秘事項らしい。
「……僕一人でもそれなりに務まるよ。」
一瞬の間があった物の、和人はそう言いきった。護衛の意味を履き違えてなければ、和人は護衛を務める事はできる。
「……信じられません。もう一度伺います、あなたは殿下の何なのですか?」
「友達だよ。」
プリミラが言いきるよりも早く和人は答えた。
クラリスの目に涙が滲み、ルジェは嬉しそうに微笑む。
「友達だから危ない目にあってほしくないし、友達のためだから必死になれる。でも僕自身は後衛職だしそこまで強くないから、それなりに護衛が務まるってところかな?」
「信じられません……」
不服の面持ちでプリミラは和人を睨み付ける。
和人には解っていた。これは単純な嫉妬なのだ。自分が将来目指す立ち位置に収まっているひ弱そうな男が許せないのだろう。
「自己紹介がまだだったね、僕は駿河和人、異世界から呼ばれた勇者のサポート役をしているよ。そんなに信じられないなら少し試してみるかい?」
「和人さんっ!?」
クラリスは驚きの声をあげた。優しく前衛に立たない和人がそんな提案をするとは思わなかったからだ。ルジェは静かに事の成り行きを見守っている。
「和人殿、あなた私を子供だと思って甘く見ていませんか?これでも私は毎日の鍛練を怠った事はありませんよ?」
プリミラから怒りと共に年齢にそぐわない迫力が溢れだした。さすが代々近衛騎士の名家の娘といったところだ。
しかし和人はそんなプリミラの気迫を軽く受け流した。
「別に甘く見てるつもりは無いよ。でも君は護衛って仕事に幻想を持ってるみたいだから、それを少し教えてあげるだけさ。」
「いいでしょう。護衛の何足るかをご教授願います、和人殿。」
部屋を出ていく二人を心配そうに見守るクラリスの背中を、ルジェはそっと押し出した。
──────────
外に出た二人は距離を開けて対峙していた。
クラリスは和人の傍らに、ルジェと子供達は遠巻きに見ている。そしてそこかしこの物陰から、修道士達が隠れる様に二人を見ていた。刺激の少ない生活を送っている修道士達には、問題児プリミラと和人の戦いは格好の娯楽でしかなかった。
和人は大勢の視線を気まずく感じながら、心の中でプリミラに謝っていた。これから自分のすることは酷く彼女の矜持を傷付けるだろう。しかし近衛を目指すなら、護衛ということがどういうことなのかを知って貰わねばならない。幻想なんて抱いていてはいけないのだ。
「一応確認するけどこれは決闘じゃないからね?あくまで僕は殿下の護衛、不本意かもしれないけど君は殿下を狙う刺客だから。君が僕を抜いて殿下に触れられたら君の勝ちだよ。」
「分かりました、では参ります!」
プリミラは腰の剣の束を右手に、鞘を左手に取って翼の様に腕を広げて剣を抜いた。長すぎてこうしないと抜けないのだろう。
プリミラは剣を構えひとつ深く深呼吸すると、気合いの声と共に駆け出した。
「せやあああああああっ!!」
その瞬間、突然プリミラの足下が崩れ、ぽっかりと空いた穴の中に吸い込まれる様に消えていった。
「ふええええええええっ!?」
ざぱあーーーーん
情けない声の後に水没音が聞こえる。
和人は話をしている間に魔法で落とし穴を作っていたのだ。水は危なくないようにクッション代わりである。プリミラの性格上直進しかして来ないだろうと、ピンポイントでそこしか掘っていない。
拍子抜けの嫌な空気を全身で感じながら、和人は悠々と落とし穴を覗き込んだ。
「僕の勝ちだね。大丈夫?」
「何ですかこれ!?やっぱりバカにしてるんですね!?この卑怯者!!」
ずぶ濡れになってわめき散らしながら、プリミラは差し出された和人の手を掴んで引き上げられた。
「こんなの私認めません!正々堂々勝負してください!!」
「最初に決闘じゃないって言ったよね?君は殿下が危険になっても敵にそう言うつもり?」
「え……?」
呆けたプリミラに和人は更に言葉を続けた。
「君は近衛の仕事を、護衛をどう思ってるのかな?」
「そ……それは身を呈しても王族を守り抜く誇り高い……」
「違うよ。何がなんでも護衛対象を守り抜く事、それと何がなんでも自分も生き延びる事だよ。」
「どう違うんですか……?」
特オタの和人だって勝負は正々堂々が望ましいと思っている。しかし、大切なものを守るためには、それだけではいけないことも解っているのだ。
「誇りを持つのはとても良い事だよ、でもその誇りのために誰かが危ない目に合うなら、その誇りは邪魔でしかないよ。たとえ卑怯でも、たとえ惨めでも、たとえ泥臭くても大切なものを守らなければいけない。わかるよね?」
「はい……」
随分としおらしくなってしまったプリミラを、和人は優しく諭してゆく。
「それに身を呈してもっていうのは本当に最後の手段で、他に後を託せる仲間がまだいる時だけだよ。もしみんなが命を捨ててしまったら、残された殿下は誰が守るんだい?」
「あ……」
プリミラは胸を稲妻に貫かれた様な衝撃を覚えた。身を呈しても殿下を守るというのは自分の美徳でしかなく、残された者の事を考えていなかったのだ。
「守るべきものを守るためには何がなんでも生き延びる。騎士ってカッコ良くて輝かしく見えるけど、君のお父さんもお祖父さんもそう考えていたと思うよ?」
プリミラの胸に和人の言葉が優しく染み入ってゆき、騎士の表面しか見ていなかった己を恥じて、ぽろぽろと涙を溢れさせた。
「それにルジェさんの言うとおり、協調性の無い人間に統率は取れないね。人の話を聞かない人の言葉を、周りは聞いてくれると思うかな?これから君が騎士を目指すにしても、ここで協調性を学ぶのは大切になってくる筈だよ。わかってくれたかな?」
プリミラは涙を拭い、自らの両頬をばちんと平手で叩いた。
「和人殿!有り難うございました!!」
最敬礼して上げられたプリミラの目は、先程よりもずっと輝いていた。
≪次回予告≫
~♪(略)
すっかり和人に懐いたプリミラ。
その愛らしく人懐っこい姿に、和人は遠く思い出となってしまった懐かしい姿を重ね合わせる。
「アイシー元気かなぁ……」
何気なく交わされるクラリスとの会話の中で、和人達の間で禁忌とされていた謎が明らかとなる。
―なるほど……血か……―
クラリスに声をかけてゆく人達、思いもよらぬ地球の技術、道行く大福、様々なモノの行き交う先で和人を待ち受けていたモノとは?
【次回】喧騒とニンニク臭の中で
「和人様……あなたにもお付き合い願いますよ?」