逃亡の姫君
和人は未だ睡眠を要求する脳を朝日にやんわりと起こされた。ゆっくりと働きだす思考の中で昨夜の事を思い出す。
「カリラさん怖かったな……」
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夕食後、誰よりもバルチャスに熱中するメアリーの傍らにビスケットとミントティーが置かれた。
それを匂いだけで判断したメアリーは一瞥もくれず手につける。しかし、それを切っ掛けにその場に居た者達は、肌を撫でる空気の温度があからさまに下がるのを感じた。
めごっ……
金属がひしゃげる鈍い音が響き渡る。
「あるじさま……むちゅうになれることにであえたのはわたくしもたいへんうれしゅうございますが……ほどほどになされませんとあすのえんせきにさしさわりがでるかとぞんじますよ…………?」
全員が震える声に向かって振り向くと、開き切った瞳孔の眼にうっすらと涙を滲ませたカリラが、銀盆を押し潰しながら貼り付けたような笑顔で静かに微笑んでいた。
明日の宴席はカリラにも大切で特別な結婚記念日なのだ、ゲームに夢中になって支障が出るなどあり得ない。
《私との記念日よりもそのゲームの方が大事なのですか?》と言う訴えが全身から溢れ出している。
齢646歳の放つメンヘラ感がその場を支配し、メアリーを始め和人達は即座にゲームを終了したのだった。
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カリラは戦闘スキルは皆無である。しかし600年以上衰える事無く働き続けた肉体は一般的な女性より遥かに強靭で、魔力こそ低いがまるで年月を重ねた屋久杉のような不思議な存在感を備えている。
和人はその時のカリラのえも云われぬ迫力を思い出し、ぶるりと身を震わせると身支度を整えて朝食に向かった。
食堂に着くと理亜以外の仲間はみんなそろっていて朝食を取り始めていた。
「おはようみんな、美空も珍しく早いね。」
自然に遥の隣に座る和人を見て、美空は不貞腐れた
声をもらす。
「今日は本番までみんなで練習する約束でしたからね、遥に起こされたんですよ。」
「それはそうと何でそんなに不機嫌そうなの?」
「凄いわよ、前に美空が言ってた寝起き悪い人でも起きる方法。ビンタでも起きない美空が一発で起きたんだから。」
「ああ、蚊の羽音を耳元で真似るんだっけ?」
「お陰で最悪の目覚めです……こんなことなら教えるんじゃありませんでした。」
嬉々とした笑顔の遥を美空は恨みがましそうに睨んでいる。和人は苦笑いを浮かべながら朝食を運んでくれたメイドに頭を下げると、早速スープに匙を入れた。魚の出汁のミルクスープが起き抜けの胃を優しく温めてゆく。
「ところで理亜はどうしたの?」
「徹夜みたいよ、あれから工房に籠りっきり。」
「初日から飛ばしてるなぁ……」
「無理もありませんよ、王城の工房よりも設備が整ってますから。できれば私もそっちに行きたいくらいです。」
和人はサラダに手を伸ばして少し驚いた、生野菜と共にポテトサラダが添えられていたのである。
カリラは昨日マヨネーズを覚えて誰に聞くでもなく、もうこの料理にたどり着いたのだ。
「凄いよな、しかもこれ日本で食べたどのポテサラよりも美味いんだよ。」
「私もびっくりです。お芋とマヨネーズを混ぜてこんなに美味しくなるなんて思いませんでした。」
向かいに座る慎太郎の隣で、よっぽど気に入ったのかロレインがメイドにポテサラのおかわりを頼んでいた。
「二人は今日どうするの?」
和人がポテサラを口に含むと舌触り良く潰された芋がなめらかに広がり、コロコロと刻まれた芋と塩揉みされた野菜の食感の対比が舌を楽しませた。
「俺達は少しみんなの練習を見てから町を見に行こうと思っているよ。」
「そうかぁ……僕はどうしようかな……」
考える和人に慎太郎は少しむすっとした表情を浮かべた。
「変な気使わなくて良いって言ってるだろ?やること無いなら一緒に行こうぜ?」
「え?いいの?」
「和人、私達はお友達でしょう?水臭い事は言わないで下さい。」
「ありがとう、なら僕も一緒に行くよ。」
話がまとまったところで和人の側にカリラが来た。
「和人様、この後少々お時間を取らせて頂いてよろしいでしょうか?」
「もちろん構いませんけど、どうしたんですか?」
「本日の宴席でのお召し物を仕立てるため採寸させて頂きたいのです。」
「え?今から作って間に合うんですか?」
「ええ、1時間もあれば仕上がります。」
「本当に何でもできますね……」
オーダーメイドのスーツはかなり時間がかかるものだと思っていた和人達は、もはや呆れるしかなかった。
朝食後、和人はカリラと数人のメイドと共に採寸を行っていた。慎太郎とロレインは部屋の前で待ってくれている。
肌着だけでメイド達にいいように体を弄られる和人は、恥ずかしいしこそばゆい気をまぎらわそうと話題を探す。
「そう言えば朝食の席にメアリーさんもクラリスさんもいませんでしたね。やっぱり貴族の宴席ともなると準備が多いんですか?」
採寸の記録を書き留めたカリラは、様々な色の布を持ち和人の体にあてがった。
「クラリス様はハンナ様と衣装合わせやマナーの確認等をなされておられるかと思います。主様は魔力の扱いに長けた使用人達を集めてバルチャスの指導をなさっております。」
「へ?」
カリラは口元に手を添えると嬉しそうな表情でクスクスと笑った。
「よほどお気に召したのでしょうね。対戦相手として使用人を育てると共に、本日の宴席で好敵手となりえる方を見定めるのでしょう。」
「何かしら考えてるとは思ってたけどかなり本気で考えてた……」
「それでは採寸は終わりです、微調整がありますので夕刻前にはお戻り下さい。」
「すみません、わざわざありがとうございます。」
和人はカリラ達に礼をすると服を着て部屋を出た。
「お待たせー。」
「ああ、じゃあ練習見に行くか。」
「素敵な服になるといいですね。」
慎太郎達と合流し別館へと向かう。
「それにしても植野の楽器って何なんだろうな?ドラムの代わりくらいにはなるって言ってたけど。」
「和太鼓じゃないかな?ゲームとか上手そうじゃない?」
「ああ、かもな。」
「和太鼓ってなんですか?」
「うん、和太鼓ってのは俺達の故郷の楽器で……」
そんな話をしながら渡り廊下に出た時、和人は何者かに腕にしがみ付かれた。
「和人さん!これから外に出ませんか!?」
「クララさん!?」
「お願いします!今すぐ!もう息が詰まりそうです!!」
クラリスが余裕の無い表情で和人に懇願していると、クラリスを呼ぶハンナの声が本館の扉の向こうからだんだん近付いて来た。
ロレインはあたふたするクラリス手を引き、開いた扉の影になる位置に立たせる。そしてロレインが扉を離れてすぐにハンナがその扉を開いた。
「あら、おはようございますハンナさん。」
しれっとした顔で挨拶するロレインに少し驚きながらも、和人と慎太郎もそれに続いた。
「おはようございます。申し訳ございませんが姫様をお見かけになりませんでしたか?」
「いえ、こちらには来ていないようですけど?」
「ありがとうございます。もしお見かけになりましたらすぐに戻るようにお伝え下さい。」
「はい、必ず伝えますね。」
扉が閉められ足音が遠ざかって行ったのを確認すると、クラリスは胸に手を当てて大きく息を吐いた。すぐにロレインが近付いて何か話しかけ始める。
それを見た慎太郎は和人の耳元で小さく囁いた。
「行ってやれよ和人。」
「でも僕は……」
「お前の言いたい事は解るよ。でもな、クララさんは確かにお前に気があると思うんだ。だからってどれだけ思おうと、お前と一緒になることは無い。どうせどこかの王子か上級貴族と結婚させられるんだ。思い出くらい作ってやれよ?」
凪晴と違って慎太郎の言葉は和人の胸に深く突き刺さり、今だけは遥への思いを忘れる事にした。
「分かりました、じゃあ行きましょうクララさん!!」
「……!はいっ!!」
クラリスは笑顔で差し出された和人の手を握りしめ、二人は庭園を駆け抜け町へと飛び出して行った。
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「なーんて勢いで出てきちゃいましたけど、帰ったときの覚悟は出来てるんですよね?」
「それは先程ロレインさんにも言われました……お願いですので今だけは忘れさせて下さい……」
とりあえず領主館を離れたところで、二人はゆっくりと歩き始めた。昨日軽く見ただけの町を改めて見渡すと、明らかに昨日より活気に溢れていた。
色とりどりの装飾で彩られた町を行く人々は、皆嬉しそうに笑い合い、そこかしこから歌や音楽が聞こえてくる。綺麗に着飾った女性達がお菓子を配って歩き、受け取った子供達が笑顔で和人の横を駆け抜けて行った。
空気に当てられて和人も思わず心が踊ってしまう。
「凄いな……今日って何かのお祭りなんですか?」
「ふふふ、そうですね。でも今日がなんの日かはもう和人さんもご存知の筈ですよ?」
そう言われて記憶を探った和人だったが、思う事は一つしか無かった。
「え!?まさかこれってメアリーさんを!?」
「そうです。アルトルージュ領中央都市カリラを始め、領内のほとんどの集落では、毎年お二人の結婚記念日をお祝いするんですよ。」
「本当に慕われているんですね。」
普通では考えられない事だった。どれだけ善政を敷いても結婚記念日がお祭りになる貴族などいないだろう。ましてやメアリーは人間では無いのだ。
呆気に取られる和人にクラリスは更に言葉を続ける。
「それもメアリー様が最上位吸血鬼だから出来る事なのです。例えば領地の端で問題が起きても空を飛んでその地に赴き、その広く深い知識で即解決してしまいますし、盗賊や魔物が現れたとあらば単身で討伐してしまいます。そして数々の著作等の収入を持ちながら、贅沢をする気が無いものですから税収も最低限。加えてあの気さくな人柄に美貌ですから、領民にメアリー様を悪く言う者はいないと思いますよ?」
「ズバット参上ズバット解決……」
「え?何か言いましたか?」
「いえ、何でもありません。」
自然と漏れ出ていた心の声をごまかす和人の前に、突如大柄で屈強そうな強面の男が立ちはだかった。
「ひっ……」
外国人レスラーの様な迫力に和人が思わずたじろいていると、クラリスが笑顔でその男に話しかけた。
「お久しぶりですエルガンさん。お元気そうで何よりです。」
すると男はふにゃりと破顔し、一転して人の良さそうな笑顔になった。
「久しぶりだなぁクララちゃん。そっちこそ元気そうだな!!このあんちゃんは恋人かい?」
「そ、そそ、そ!?そんなんじゃありません!!とても良くしてもらっているお友達ですよ!?」
ニヤニヤした顔を真っ赤になったクラリスに残しつつも、エルガンと呼ばれた男は和人の膝が折れそうになるほどの力でその肩をバンバンと叩きながら大声で言った。
「うらやましいなおい!?こんなに可愛くて気立ての良い子は中々いねえぜ!?絶対泣かすんじゃねえぞ!!あ、これ持ってけ。じゃあな!しっかりやれよ!!」
そういって和人とクラリスに小さな袋を渡すと、エルガンは山のような体を揺らして歩いて行った。
「あの人は?」
「パン屋のエルガンさんです。ああ見えてとても優しい方なのですよ。」
「パン屋……」
遠い目の和人が見送るエルガンは、たちまち多くの子供達に囲まれ、和人達と同じ小さな袋を配り出した。見ると子供達の中には耳の尖った者や子供の割りにがっしりとした者、明らかに動物的特徴のある子供もいる。
改めて和人は町を見渡して初めて気づいた。結構いるのだ、王都では冒険者くらいしか見なかった亜人や獣人が。
クラリスはその和人の表情を汲み取る。
「皆他国から逃れて来た難民です。メアリー様自身が安息を求めこの地に来られた難民の様な方ですから、移民達は皆シーロブルトではなくメアリー様を頼るのです。私達王家もメアリー様に全幅の信頼を置いているので、住民と共に領地も大きくなり、結果王国直轄領よりも大きくなってしまったのですよ。」
「確かに、あの人柄なら反乱なんかおこさないでしょうね。」
メアリーの屈託の無い笑顔を思い出し、感慨深い気持ちになりながら、和人はエルガンにもらった袋を開けてみた。
ふわりと香ばしい香りを解放した袋の中に入っていた物は、程よい焼き色のついた三枚のガーリックラスク。一枚つまみ口にすると、ザクリと小気味良い音と共に、たっぷり塗られたバターの塩味とニンニクの香りが口一杯に広がった。
「ん~~♪美味しい~~!!」
久しぶりのジャンクな味に和人もご満悦である。ここにコーラと特撮があれば何も言うことは無いのだが、さすがにそれは望みすぎだ。
「美味しいですよね?エルガンさんのラスク私も大好きなんです♪」
そう言いながら、サクサクとラスクをかじるクラリスの手に摘ままれていたのはシュガーラスク。
「え……?しっかりやれってそういう意味?」
和人は男の自分にニンニク味が手渡された事を邪推してしまったが、その漏れ出た心の声を今度はクラリスは聞き逃さなかった。
「ち、ち、違います!!このお祭りでは、普段大好きなニンニクを体面のために控えてるメアリー様の思い、皆でニンニクを食べて、皆ニンニク臭いから気にせず食べて下さいと言うメッセージがあるのです!!エルガンさんは大人にはニンニク味、子供には甘い味を配っているのですよ!!私は幼い頃からシュガーラスクをもらっていたのでそうされたんだと思います!!……多分。」
もしかしたらいまだ子供扱いされている可能性に気付いたクラリスは、歯切れ悪く言い淀む。
和人は自分の邪推が本当にただの邪推でしかなかったことを恥ずかしく思い、話題の矛先をすり替えた。
「ところでエルガンさんもクララちゃんて呼んでましたね?いつから名乗ってるんですか?」
「あ~~……ははは……」
「ああ、クララちゃん。久しぶりだねぇ。」
はぐらかそうと顔を背けたクラリスに、今度は柔和そうな老婆が歩み寄って来た。
「お久しぶりですね、アンジュおばあちゃん。かわらずお元気そうで嬉しいです。」
「嬉しいねえ、こんな棺桶に片足突っ込んだばばあにそう言ってくれるのはクララちゃんだけだよ。こっちの坊やはお友達かい?」
「はい、とても大切なお友達です。」
アンジュと呼ばれた老婆は和人に顔を近付けると、垂れたまぶたの奥に鋭く冷たい光を宿し小さく囁いた。
「坊主、わかってんだろうがくれぐれも姫様に変な気起こすんじゃ無いよ?何かあったら縛り付けて爪先からゆっくりと寸刻みにしてやるからね?」
「………はい。」
「うんうん、優しそうな良い子じゃないかい。」
アンジュは再びクラリスに向き直り何か話し始めたが、今起きた出来事の衝撃で、和人の耳にはその内容が届かなかった。
「和人さん、和人さん?」
「え?あ、はい。」
呆然としていた和人はクラリスの呼び声に遅れて気が付いた。
既に先程の老婆はおらず、クラリスが和人に向かって竹筒を差し出している。
「リンゴの絞り汁を頂きました♪和人さんもどうぞ。」
「あ、頂きます。」
和人は竹筒を受け取ると、再び辺りを見回した。差程時間が経った訳でもないのに、やはり老婆の影はどこにもない。
「今の人は?」
「魔法薬師のアンジュさんです。私が修道院に預けられた頃からとても良くしてくれている優しいおばあちゃんなんですよ。」
「へぇ……」
―違う、あの目は堅気じゃ無かった……姫様って呼んでたし、絶対王直属のアレな部隊の人とかだ……―
クラリスがリンゴ汁をこくこくと美味しそうに飲んでいるので問題ない筈なのだが、和人は思わず少しずつ舐めるようにして、ゆっくりと異状が起こらないか確認しながら飲んでいた。
そうして歩いている間にも、クラリスは色々な人に声を掛けられ、何かしら手渡されてゆく。和人にはその人達が一般人なのかアレな部隊の人なのか判らないが、クラリスの両手が一杯になる前に荷物を負担してあげた。
「クララさんも大分有名で人気があるみたいですね?」
「あはは~~、確かによく散歩してましたし、八歳から七年間この街修道院で育ちましたから、知られているのは当然ですよ~~。」
「《クラリスはの、たびたび修道院を脱け出してはうちに遊びに来ておったのじゃ。得に食事時を狙ってな。泊まった事も何度もあるぞ?》」
白々しく笑いながら明後日の方へ言い訳をするクラリスの後頭部に、和人は昨日のメアリーの言葉を真似てみる。
「和人さんは意地悪です……」
クラリスかぷうっと頬を膨らまして振り向いた瞬間、数多の方向から放たれた殺気が和人を貫いた。
アレな部隊の人達全員参戦!!
ぞわりと震え上がった和人の背中を冷たい汗がなぞって行く。
「で、でも大分荷物が増えちゃいましたね。こんなに食べきれるかな?」
「いえ、手ぶらで行くのもどうかと思っていたので、ちょうど良いお土産ができました。」
クラリスに笑顔が戻り、貫いていた殺気が消え和人はほっと息をはいた。
「お土産って、どこか目的の場所があるんですか?」
「はい、私がお世話になっていたエリタージュ修道院です。一度挨拶しておきたくて、孤児院も営まれているので喜んでくださると思います。」
「それならハンナさんにそう言えば普通に来られたんじゃないですか?」
和人の素直な疑問にクラリスはバツの悪い表情を浮かべる。
「挨拶はしたいのですがハンナに聞かれたくない話もたくさんありまして……察して下さい……」
その表情がおかしくて、話をするほどクラリスは普通の女の子とかわり無くて、和人は思わず笑いながらリンゴ汁を飲み干した。
クラリスが再びぷうっと膨れ、殺気が和人を貫いた。
≪次回予告≫
~♪(略)
クラリスが幼き日々を過ごしたエリタージュ修道院。
町の郊外に建てられたその地でクラリスは恩師との再会を果たす。
「ご無沙汰しております、シスター・ルジェ。」
「姫様……!!」
白日の下に晒されるクラリスの過去、王女らしからぬその過去に声を上げて笑う和人。その時、一人の少女が扉を叩いた。
「ルジェ師よ!!王女殿下が参られていると伺ったのですが真でしょうか!?」
燃える心を表すかの様に真っ赤な髪をなびかせて、曇り無き空の様に澄んだ瞳を輝かせる、自らの夢に向かい突き進む少女。
好ましいが危うい少女のために、和人は一計を案じる事にした。
【次回】騎士を夢見て
「君は近衛の仕事を、護衛をどう思ってるのかな?」