秘められし輝き
「ところでクラリスの紹介じゃからカリラのユニークスキルを明かしたが、これは他言無用ぞ?世間には不老不死じゃと思われておるのでな、何者かに命を狙われては困るからの。」
頬を染めるカリラを大事そうに抱きながら念を推すメアリーの姿を見て、遥は意思を固めたようだ。
「うん、和人の言う通りアツい特ソンは止めとくよ。ジブリとか落ち着いた曲にする。カリラさんの話聞いたらお祝いにアツい歌なんて、とてもじゃないけど歌えないわ。」
遥が思い直してくれた事で胸を撫で下ろした和人だが、すぐに別の問題に気が付いた。
遥達は演奏、慎太郎とロレインは警備、理亜はおそらく工房に籠るだろう。自分一人だけ何も決まっていないのだ。
遥達と演奏?和人ができる楽器はスルトの魔笛だけである。大勢の前で変身してしまったら間抜けの極みだ。
慎太郎とロレインと共に警備?二人の時間に水を差してしまっては悪い。
工房で理亜の手伝い?目の前でメアリーに何か質問している理亜の目には、既に危険な光が宿っている。きっと邪魔にしかならないだろう。
「どうしよう……」
「あら、どうかなさいましたか?」
呆然としていた和人の顔をクラリスが覗き込んだ。
「いえ、明日遥達が演奏してる間、僕だけ何もできることが無くって……」
「それでしたら丁度いいですよね?和人さんには私のパートナーお願いします。」
「…………はいぃい?」
あまりにも突飛なクラリスの言葉を理解することができず、和人は思わず水◯豊の様な発音で聞き返していた。
クラリスは祈るように手を組み、楽しげに弾む様な声で話し始める。
「貴族のパーティーでは男女ペアであることが通例なのです。伴侶や婚約者がいればその人を、いなければ付き人でもいいのですよ。ですので……」
「ちょっ!?ちょっと待って下さい!?」
思わず大声を出してしまった和人に周囲の視線が一斉に集まった。
「何で僕なんです!?それならばネルソンさん達でもいいじゃ無いですか!?」
「俺達にそんな畏れ多い事が務まる訳が無いだろう。」
ネルソン達は心の底から国家に忠誠を尽くしているのだ。おかしな例えだが、王族と床が並ぶ事などできる筈があるわけが無い。
「で、でも僕は貴族に混ざってそんな場に出る自信はありませんよ!何かあったらクララさんの恥になるじゃ無いですか!?」
「いや和人よ、今までのおんしの立ち振舞いを見る限り、差して問題は無いと思うぞ?多少の無礼があったとしても、主催者である私が許そう。」
メアリーがクラリスを援護するように言うが、その顔は和人が困るのを楽しんでいるに違いなかった。
「いいじゃないか和人、依頼の延長として引き受けてあげろよ。」
「そうですよ和人、大切なお友達のお願いです。聞いてあげましょう?」
「お?なんだ和人、社交界デビューか?」
「美味しい物食べてればいいんでしょ?いいな~……」
「減るもんでもねぇし、いいんじゃねえか?いっとけ和人。」
「和人、何事も経験だと隊長なら言うと思うぞ?」
「カリラさん!和人君の服はどうするんですか!?」
「可愛らしく!目一杯可愛らしくお願いしマス!!」
「え?いや、でも……」
メアリーに同調し、仲間達も面白がって和人の逃げ道を塞いでゆく。
そして追い詰められた和人に、死神の鎌が振り下ろされた。
「いいじゃん、受けてあげなよ。どうせやることも無いんだし、こんな可愛いお姫様と並べる機会なんてもう無いと思うよ?もしかしたら婚約者と間違われちゃったりするかもね?」
和人の気持ちを知らぬ遥の悪意の無い一言!!
こうかはばつぐんだ!!
和人の心は折れた。
「はい……精々クララさんの顔に泥を塗らぬよう、誠心誠意努めさせていただきます……」
力なくうなだれた和人の姿に、煽った仲間達はおろか、面白がっていたメアリー、恋の争奪戦とばかりに燃えていたクラリスでさえも、気の毒そうな目を向けるしかなかった。
「そ、それでは私達は明日の練習をしましょう。みんな別館へ行きますよ。」
そう言って美空達は逃げるように別館へと移動を始めようとした。
「あ、お待ちください美空さん。あのゲームを貸して頂けますか?」
「バルチャスですか?はいどうぞ。」
「美空、魔導通信機貸してくれる?」
「ほい。」
美空はクラリスにバルチャスを、理亜に魔導通信機を手渡すと、そそくさと工房を出て行った。
「和人さん、ゲームやりましょう!ゲーム!!」
「あ?バルチャスですか?私もやりたいです!」
「ああ、いいですねクララさん!メアリーさんも一緒にどうですか?」
残されたクラリス、ロレイン、慎太郎がラフ画みたいになってしまった和人を必死に盛り上げようとしている。
「メアリーさん、和人をお願いします。これ離れた相手とも話せる魔導具ですんで、聞きたいことがあればこれで連絡しますから。」
「それは構わぬが、おんしは和人を励ましてやらんのかえ?」
「私そうゆうの向いてないんですよ。自分の事は解ってるつもりですから。」
現に真性ドSである理亜は、気落ちした和人に更に追い打ちをかけたい衝動でうずうずしていた。例え友達が相手でも欲望が抑え切れないのである。全くもってタチが悪い。
「う、うむ、いいじゃろ。ほれ和人、そのバルチャスとやらをやろうではないか!行くぞ!!」
理亜の瞳の奥に宿った危険な光を感じ取ったメアリーは、和人の襟首を掴み引き摺る様に工房を後にした。
──────────
数分後、和人は気落ちしている場合ではなくなっていた。何やら別館の方から歓声が上がった気がするが、今はそれどころではない。
「イヤアアアアァァァァァァッ!!!!」
「せりゃあああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
目の前で繰り広げられるメアリーとロレインのバトルは苛烈を極めていた。
騎士と騎士による同駒対決、浮かび上がった二人の騎士の影が激しくぶつかり合い、凄絶なる火花をリアルに散らす。盤上をところ狭しと駆け回り、互いに一歩も引かぬ戦いを繰り広げていた。
「すっご……」
「これ俺達がやってたのと同じ遊びなのか?」
「魔力量と操作技術が違うと全く別物になりますね……」
「このレベルにもなると見ているだけでも楽しめますね。とにかく臨場感が凄いです。」
盤中央で二人の騎士が激しく鍔迫り合い、膠着状態になった。メアリーとロレインは額に汗を滲ませながらニヤリと笑い合う。
「やりおるではないかロレインよ……たかが遊びでこれ程までに熱くなれるとは思わなんだわ!!」
「メアリーさんこそ初めてとは思えないお手前で……さすがは魔王を討伐せしめた英傑です!!」
チュイィィィィィン!!!
甲高い残響音を残し二人の駒が飛び退き距離を取った。
「「ハアアアアァァァァァァッ!!!!」」
二人が更に魔力を込めた時、二人の影の騎士が剣を頭上に掲げた。
「え?まさか……」
二人の騎士が虚空に円を描く、すると今までただの影であった騎士が金と銀の鎧を身に纏い輝き始めた。
『変身したああぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
驚きの声を上げる和人達を気にも留めず、メアリーとロレインは益々楽しそうな顔をする。
「理亜め、中々味な演出をしてくれるわ!!」
「本当に素晴らしい才能だと思いますっ!!」
二人の騎士の動きが変わり、本家さながらのワイヤーアクションの様な動きで空中戦まで始めた。
「ふおおおぉぉぉっ!?ふおおおぉぉぉぉぉぉっ!?!?」(大興奮)
「おい!理亜のやつディテールこだわり過ぎだろ!?」
「素晴らしいです!帰ったら直ちに権利を買い取り量産いたしましょう!!」
「普及しましたら大会なども開きましょう!国家主催ならば大きな税収も望めます!!」
「もしもーし、メアリーさん聞こえますかー?」
興奮する和人達を見ていたかの様に、魔導通信機から理亜の声が響いた。白熱して気付いていないメアリーに代わり和人が応答する。
「もしもし理亜!?」
「あら和人、その様子ならもう大丈夫みたいね。メアリーさん代われる?聞きたいことあんだけど。」
「今は無理だよ、それより何あの仕掛け!?凄すぎるよ!!」
興奮する和人に対し、通信機の向こうから気だるげな声が聞こえてくる。
「ああ、変身したんだ。じゃあメアリーさんとロレインがやってんのね。長引きそうだな~~。」
「え?何で解るの?」
「あの仕掛けはね、五分以上戦って対戦者同士が一定量の魔力を込めると発動する様に設定してあんのよ。そんな接戦になるのその二人くらいでしょ。まぁ一番最初はあんたと遥に発動して欲しかったんだけとね。ちなみに変身してから決着が着くと……」
ギュイィィィィィィィン!!!
ザシュッ!!
黄金騎士が白銀騎士の二刀を跳ね上げ、その胴を一閃した!!
どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!
≪オーオーーオォオォオォオォオォーーーー!!オォオォオーオーオーオーオォォォォォーーーーー!!!≫
「敗者の爆発と共にファンファーレが流れるわ。」
派手なエフェクトと共に爆散する白銀騎士を背に、勇壮な勝利ポーズを決める黄金騎士。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
諸手を上げて喜びを露にするメアリーを前に、盤に突っ伏して悔しがるロレイン。
「作り込みが凄すぎるっ!?美空に頼まれてしぶしぶ作った筈じゃなかったの!?」
「そりゃ作るからには完璧を目指すわよ。ちなみに今何駒目?」
「まだ一駒目。」
「うわきっつ……当分質問出来そうに無いわね……」
「それはこだわり症の自分を呪うしか無いよ。」
そこで和人の通信機が奪われた。区切りのついたメアリーが気付いたのだ。メアリーは興奮気味に通信機に向かい声荒く話しかける。
「理亜よ!おんし天才か!?素晴らしいぞあのゲームは!!」
「いえ、誉めて頂いて嬉しいですけどそのユニーク持ってるの美空なんで。」
そうは言っているが、実のところ理亜の学力は美空とそこまで変わらない。しかし理亜は現国、とりわけ文章から作者の心情を読み取りなさい等の問題がからっきし駄目なのだ。論文は書けるが感想文は全く書けないのである。この辺りが天才のスキルがつかなかった理由だろう。
「そんなことはどうでもよい!聞きたいのじゃがあのゲーム、明日の宴席までに10組作れるか!?」
「素材なら美空が持ってる筈ですから、今日中にはできますよ。」
「ならばおんしに依頼じゃ!明日までに……」
「お断りします。」
「なん……じゃと……?」
言い切るまでに即答で断られたメアリーは、この世の終わりの様な表情で涙を浮かべる。
「工房貸して下さったお礼ってことで構いません。バルチャスは遊び道具です、依頼なんて堅苦しい気持ちで作りたくないんですよ。メアリーさんが遥に言ったのと逆です。遊び心たっぷりに作らせて貰いますよ。」
「おおぉぉぉっ!!ありがとおおぉぉぉぉぉっ!!!!」
メアリーは膝から崩れ涙を流して喜んだ。
「そんじゃできたら持って行きますんで、その後で時間貰えますか?色々聞きたいことあるんで。」
「うむ!私の時間などいくらでもくれてやろう!!では待っておるぞ!!待たせたのロレインよ、では続きを始めようぞ!!」
「はい!次こそは負けませんよ!!」
通話を終えたメアリーが再び卓に着くと、ロレインは騎馬の駒札をメアリーの法師の駒札に叩き付けた。
「これで貴族への普及は叶った様なものですね。」
「ええ、後は民への普及と価格設定です。帰ったら忙しくなりますよ。」
クラリスとハンナが息を巻いているが、和人はひとつだけ気になっていた。
―メアリーさん明日のパーティーでバルチャス広めるつもりなんだろうけど、ロレインさん以外にまともに戦える相手いるのかな?―
そうは思ったのだが、和人は自分が思い付く事くらいはメアリーも考えているだろうと思い、あえてなにも言わず観戦に没頭した。
──────────
「ふぅ……今日中なんて大見得切ちゃったかと思ったけど、設備がいいとやっぱ捗るわね。」
理亜は出来上がったバルチャス10組を前に大きく溜め息をついた。
椅子に深く背を預け、少しだけくたびれた体を労う様に首をコキコキと鳴らし、これから自分が造るキメラを妄想する。
「やっぱ造るんならジャージーデビルよねぇ……なんか半人型ってこの世界にいそうだし、あの悪魔的なフォルムが堪らんのよね……」
以前にも少し書いたが、オカ研の理亜はUMAが大好きである。その中でも他のUMAと一線を画す姿をしたジャージーデビルが大のお気に入りだ。何となくバフォメットをディフォルメしたようなその見た目に愛らしさすら感じている。
妄想は更に広がり、自作したジャージーデビルに股がり空を翔る己の姿を思い浮かべると、自然と笑顔になっていた。
ただしその笑顔に16歳の少女らしさは欠片もなく、子供が見れば夜トイレに行けなくなるほどの邪悪さに満ち溢れていた。
「素材は何がいいかな……この辺の魔物でもできそうだけど、やっぱり最高の物に仕上げたいわよね……」
理亜は立ち上がり壁一面にある本棚から[魔物図鑑・陸棲Ⅰ]の背表紙を引き出すとパラパラとめくった。精巧で緻密な図解に丁寧で詳細な説明がありとても解りやすい。
「へぇ……この世界にも双角馬いるんだ、これいいかも。翼はやっぱ飛竜よね。胴体は……」
まるでファッション誌を見ながらイメージで自分をコーディネートするように、理亜は脳内でキメラを造り上げてゆく。
「はぁ……さすがは千年生きてる吸血鬼さんね、蔵書も凄く良いわぁ……そういえば美空はサメとタコだっけ、水棲の魔物はどんなのいるかな?」
そう一人ごちながら何気なく[魔物図鑑・水棲Ⅰ]表紙を確認した。
[著 メアリー・ルロワ・アルトルージュ]
「作者かよっ!?」
メアリーは千年以上にも渡ってこの世界を見てきたのだ。これ以上信用できる図鑑など無いだろう。見ると本棚にある魔導書、図鑑、小説、詩集、料理のレシピ本に至るまでほとんどがメアリーの著作による物ばかりだった。
メアリーに多芸と言われた美空が貴女ほどでは無いと言ったのも酷く頷ける。
「ホントにスゲーなあの人……あ、オクトブロス。これがあの化物のベースだっていってたっけ。今思うとよくあんなの倒せたわよね……」
そう呟きながら理亜は頭の中で美空希望のキメラを造り上げる。前に見せられた映画の通りで良いのなら、そう難しい合成では無さそうだ。練習がてら造ってみるのもいいかもしれない。
理亜はテーブルの上に魔物図鑑を広げて並べた。
遥の希望オオカミとサイとワニ、単純に強そうな物が出来るだろう。それに中々見た目も良さそうだ。
和人はタカとトラとバッタ、これは造形が中々難しい。うっかりするとグリフォンやミルメコレオと大差ない姿になってしまう。センスが問われる所だ。
「はぁ……早く造りてーな……でもまずは素材集めと勉強ね。そんじゃ十分休んだし、そろそろ持ってきますか。」
理亜は一度工房を出ると、袂から作業補助ゴーレムの雛型を取り出して魔力を込めた。
「キャリー、起きなさい。」
庭園に投げられた雛型は、周囲の土を纏って150cm程の人型に変わる。
「便利なんだけど土ってのは考えものよね……」
そうぼやきながら理亜がゴーレムにバルチャスを持たせ再び工房を出ると、時を同じくして練習を終えた美空達がぞろぞろと別館から出てきた。
「あら、練習終わったのね。」
「ええ、歌鈴さんのお腹が鳴ったので。」
「燃費わりーな。」
「理亜こそもう10組作り終えたんですか?さすがですね。」
「まぁホントはもう少し早く終わってたんだけど軽く休んでたのよ。そろそろ決着が着くと思ってね。」
理亜と美空が話している間、遥達はゴーレムに群がりまじまじと見ていた。
「ところで美空、何かいいゴーレムの構築素材無い?土って微妙に不便なのよね。」
「ふむ、ならジュラルミン使ってみます?」
「いいわね、ならそれ砂状にして。凪晴、ゴーレムの荷物持っててくれる?メアリーさんに頼まれた物だから大事にね。」
「分かった、丁重に預かろう。」
理亜はゴーレムを元の雛型に戻すと、組み込まれた魔術式を書き直し再び魔力を込めた。
「キャリー、起きなさい。」
雛型がジュラルミンの砂を纏い人型になってゆく。そして完成した銀色に輝く姿はまるで───
「ギャ◯ンだぁーーーっ!!」
遥が嬉々としてゴーレムに抱きついた。それを見て理亜は満足そうに頷く。
「うん、意外と魔力の通りもいいし丈夫そうだしいい感じね。これなら屋敷も汚れないだろうし行きましょうか。」
そう言った理亜に従うように歩きだす一同。
この世界に召喚されておよそ半年、枯渇した特撮成分を補給するように遥はギャ◯ン型ゴーレムにしがみついて離れない。
「ところで何であのゴーレムギャ◯ンにしたんですか?」
「単なるサービスよ。私らはある意味毎日が趣味に満たされてるけど、あの二人は難しいからね。」
「そうですね、まあ欲を言えば私はもう少しブルースとサメが欲しいのですが……」
「我慢しろ。」
オカルト趣味な理亜は勿論、映画好きな美空も異世界の生活は趣味に満たされてると言える。BL好きなエイミやゆかりは男さえいれば妄想でどうにでもなる。
しかし、特撮ヒーローが好きな遥と和人の趣味を満たせるのは今のところイオしかいないのだ。
バルチャスの仕掛けもこのゴーレムも理亜なりの優しさなのである。
そんなことを話ながらメアリー達のいる部屋の前に着くと、中から激しい剣戟の音が響いてきた。
「何だ?まさか襲撃か?」
「大丈夫よ、ただのゲームの音だから。」
警戒する頼雅を制しながら、理亜は軽くノックして扉を開けた。
ドコドッ!ドコドッ!ドコドッ!!
ギィンッ!ガィンッ!ギギギギギッ!!
ヂュィィィィィンッ!!!
ヒュンッ!ヒュンッ!!
ドゴンッ!ズガンッ!!
『何だこれぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?!?』
もはや盤上を飛び出し部屋中を縦横無尽に疾走する黄金の騎馬騎士と暗黒の騎馬騎士。身の丈程もある大剣を撃ち合わせ、時には鍔迫り合い、時には斬撃を飛ばしながら壮絶な戦いを繰り広げていた。
「ふおおおぉぉぉっ!?ふおおおぉぉぉぉぉぉっ!?!?」(大興奮)
遥が和人と全く同じ反応をする。
「あ、みんなお疲れ……!?ギャ◯ンだぁーーーっ!!」
和人が遥と全く同じ反応をする。
「おおっ!理亜、待っておったぞ!!」
メアリーの気が一瞬だけ反れたその時だった。
「今っ!!」
暗黒騎士が黄金騎士を騎馬もろとも真っ二つに両断した!!
どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!
≪オーオーーオォオォオォオォオォーーーー!!オォオォオーオーオーオーオォォォォォーーーーー!!!≫
「いやったあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「しまったあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
騎馬を止め高々と大剣を振り翳す暗黒騎士。
立ち上がり全身で喜びを露にするロレイン。
頭を抱え目に涙を浮かべ悔しがるメアリー。
処理が追い付かず呆然と立ち尽くす頼雅達。
傍らで和人と遥にしがみつかれる宇宙刑事。
混沌
夕食後、みんながバルチャスをやりたいと言い出し、出来立てのバルチャスのデバッグを兼ねた対戦をしながら、濃密過ぎたアルトルージュ一日目の夜は更けていった。
≪次回予告≫
~♪(略)
「和人さん!これから外に出ませんか!?」
のんびりすごそうと思っていた和人に伸ばされた救いを求める細い腕。
戸惑いつつもその手を握り走り出す和人。
自由を求め走り出した二人を待っていたのは多くの人々の笑顔。
「え!?まさかこれってメアリーさんを!?」
賑わう町の喧騒の中、和人はメアリーと今隣を歩く少女の器を再確認する。
「確かに、あの人柄なら反乱なんかおこさないでしょうね。」
穏やかなる日、少女は願う、こんな日がずっと続けば良いと。
【次回】逃亡の姫君
「坊主、わかってんだろうがくれぐれも姫様に変な気起こすんじゃ無いよ?」