吸血鬼の真実
「え?あ、遊びって?」
今だ頭は混乱しながらも美空はなんとか声を絞り出した。
「メアリー様は初対面の方には吸血鬼であることを隠して、それを知った時の反応を見て楽しんでいるんです。」
「いや久しぶりに大笑いしたわ。そう言えばクラリスと初めて会った時も笑ったのう、十年ほど前じゃったか、私の牙を見るなり大泣きしながら小便を……」
「メアリー様!?止めて下さいませ!!」
真っ赤になりながらメアリーに掴みかかるクラリスを見ながら、和人達は今だ呆然としていた。
「して、そこなおんしは一体どうしたのじゃ?」
和人達はメアリーの視線を追って初めて、凪晴だけが今の一瞬で動けずに、片膝立ちで固まっていることに気が付いた。
凪晴は泣いていた、ただ一点だけを見詰めて。
そう────
メアリーのおっぱいだ。
キュッと引き締まった腰の上に鎮座する豊かな双丘、確かに大きいがそれは腰の細さと相まって実際の数字以上の大きさに見せる。
鳩尾まで切れ込みの入ったドレスから覗くそれは完全なる左右対称、白磁の様に白く艶やかな肌は、それが偽物では無いことを示すようにメアリーが少し体を動かす度にプルプルと揺れ動く。
しかしそれほどの柔らかさを持ちながらも、重力に抗うかの様に前に突き出たロケット型、そしてその下に隠された物の形が優に想像出来るほど、クッキリと浮き出た丘の頂点に立つ突起物!
それはもはや芸術の域に達していた。
「申し訳ありません……あまりの美しさに感動し、我を忘れてしまいました……」
涙を流し続ける凪晴を、メアリーは鋭い視線で射抜き鼻で笑う。
「残念じゃが小僧よ、私が何年生きていると思うておる?その程度の世辞など聞き飽きて……」
「世辞などでは御座いません!!」
涙を拭わず、まばたきもせず、凪晴は力強くメアリーの言葉を断ち切った。
「俺はこれほどに美しいおっぱいを、これほどに完璧なおっぱいを見たことがありません!!俺の人生はあなたのおっぱいに出会えたことで初めて意味を成したと言っても過言ではありません!!今後俺の命が尽きるまで、あなた以上のおっぱいには出会えないと断言出来ます!!」
全員の目が点になった。暫しの静寂が場を支配する。
「ほう……私の顔ではなくこの胸が美しいと申すか……」
静止していた脳が再び回転を始め、鋭い眼差しを取り戻したメアリーが凪晴に向かってゆっくりと歩き出す。
凪晴はその射抜く様な視線を真っ向から受け止めて───はいなかった。やっぱりおっぱいに釘付けだ。
メアリーが凪晴の目の前で立ち止まる。片膝立ちの凪晴は目の前の双丘を見上げる。ただならぬ場の空気の重さに誰かの唾を飲み込む音が聞こえる。
メアリーは両腕を大きく広げそして────
凪晴の頭を抱き締めるとその豊かなおっぱいの間に挟み込んだ。
「う~~~れしいこと言ってくれるの~~~う、このガキんちょめが~~~♪自信があるのに今の今まで誉めてくれるのは皆顔ばかりで、誰も誉めてくれぬから正直少し寂しかったんじゃよ~~~♪うりうり~~これか~~?これがええのんか~~~?」
「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?右に極楽左も極楽!!至上の楽園とは吸血鬼の谷間にあったというのかッ!?至福ッ!!正に至福ゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
30秒程続いた抱擁が終わりメアリーが手を離すと、凪晴はパタリと倒れて動かなくなった。
「ところでこの格好はもう良いじゃろ?実のところ私は黒はあまり好まぬのでな。」
踵を返したメアリーの姿が再び霧散し、元の純白のドレスになって現れた。
「ちょっと凪晴、どうし……」
一番近くにいたゆかりがピクリとも動かない凪晴の顔を覗き込み、言葉を止めた。
「これぞ剛の者の死に顔、実にいい顔をしておる……実に穏やかな、そして凛然とした美しい顔だ……」
凪晴は昇天していた。穏やかな、それはとても穏やかな顔で……
その己の生き様を貫き通した穏やかなる男の死に顔に、さすがのゆかりも脱帽せざるをえなかった。
──────────
凪晴が理亜の蹴りによって極楽浄土の旅から強制帰還させられたところで、改めて和人達が自己紹介し、話は再びメアリーの話に戻った。
「メアリー様はおよそ600年前、時の勇者だった初代シーロブルト国王と共に魔王ティアマトを打ち倒し、魔王スルトを封じた英傑の一人なのですよ。」
「よさぬかクラリス、無闇に乙女の歳が知られる様な話をするでない。それに私は静かに暮らせる場所を約束させる見返りとして手を貸したに過ぎぬ。善意など欠片も無かったわ。」
この話も恒例のネタなのか、にこやかに話していた二人だったが、その時和人の中に激しい怒りと屈辱感の様なものが膨れ上がった。それは和人の中にあるスルトの感情に他ならなかった。
―そうか……スルトはこの人(?)の気配を感じたからああ言ったんだ。ばれないように気を付けないと……―
そう思っていた矢先の事、組んだ足に頬杖を付いたメアリーが自分を見つめている事に気が付いた。驚いた和人は不覚にもしっかりと視線を合わせてしまう。
「のうそこなおんし、確か和人といったか?」
「ふ、ふぁいっ!?」
盛大に噛んでしまった和人に突っ込む事もなく、メアリーは全てを見透かす様な視線を和人に向け続ける。
ここ最近のヒーロー活動でポーカーフェイスが上手くなった和人だが、本来嘘が下手で正直な和人は背中を汗でびっちょりにしながらも、表面では何事も無いかのようにその視線を迎え打つ。
―まさか気付かれた!?―
少しの間沈黙が続いた後、唐突にメアリーから気が遠くなる程の色香が溢れ出した。
「おんし愛いのう……どうじゃ?私と閨を共にせんか?極上の快楽を約束するぞ?」
「ふぇっ!?!?!?」
和人の顔がみるみる内に赤くなり、股間が反応して次第に体が前に傾いてゆく。
「けけけけけ、けこ、けっ、けけっこ……」
噛みまくった和人はニワトリの様になってしまった。
結構ですと断りたいのに、オスの本能がそれを言うのを許してくれない。破裂してしまうのではないかと不安になるほど怒張し痛む己の分身を情けなく思いながら、和人は涙を滲ませた。
他の男達も前屈みになる中、ロレインの前で醜態を晒したくない慎太郎だけは下唇を噛み、尻をつねり、足の甲を踵で踏み、江頭2:50を思い浮かべながら必死に耐えていた。
下半身に血が集中した和人の意識が飛びかけたその時、救いの女神が囁いた。
「メアリー様、いくら冗談でもやって良い事と悪い事がありますわよ?」
にこやかな表情のまま、クラリスから凄まじい圧が放たれる。
「くふふふ……暫し見ぬ間に中々良い気を放つ様になったものよの、クラリスよ。」
メアリーから溢れ出していた色香は収まったが、男達の股間は収まらなかった。胸を撫で下ろしたのは慎太郎だけである。
「和人君、ナゼ前屈みなのデスか?」
「お願いだから聞かないでくれる!?」
解っていながら嫌らしい目で聞いてくるエイミが実にウザい。
「すみません、少し失礼しますね。」
このままでは埒が空かないと思った遥は、ため息を吐きながらギターを構えた。
「重いにーもつをー、枕にーしたらー………」
遥の歌声で皆の心が平静を取り戻し、同時に下半身もチン静化してゆく。
「ほう……中々やりおるの。」
軽くとは言え、自分のかけた誘惑の効果を打ち消されたメアリーは遥の歌に関心を持ったようだ。そうとは知らず、男達の背筋が伸びたのを確認した遥はギターを背に戻した。
「伯爵様、お戯れも程々にお願いします。」
「メアリーで良いぞ、堅苦しいのは好まんのでな。なんならめーちゃんと呼んでくれても構わんぞ?」
両手の人差し指を頬に当てながらあざといポーズを取るメアリーに、和人達は呆れを通り越した何かを感じたが、突如メアリーの真珠の様な目が黒く染まり、凄まじい形相で理亜を睨み付けた。
「そこな小娘よ!今《少なくとも600歳を超えたババアが何をほざいてやがる》とか思ったじゃろッ!?」
「ヒイイイイイイイッ!?すみませんすみませんすみません!!!!」
心わ見透かされた理亜は、あまりの恐怖に泣きそうになりながら何度も土下座した。
「神戸!メアリー様に失礼だぞ!!むしろ600年以上たっても美しく保たれたおっぱいを讃えるべきだ!!」
「あんたの立ち位置一体どうなってんのよ!?」
「俺は常に素晴らしいおっぱいを追い求める!今の俺は身も心もメアリー様のおっぱいの僕だ!!」
「お前も十分失礼だよ!?おっぱいじゃなくて人見ろよ!?ブレねーよなホントによ!?」
そんな二人のやり取りを見ていたメアリーは、腹を抱えて大笑いした。
「あははははははははははっ!!ほんにおかしな奴等よの。今までに出会った異世界人とは全く違うわ。」
「え?今までにも異世界の方に会った事があるんですか?」
メアリーは涙を拭きながら美空に答えた。
「当然じゃ、詳しくは忘れたが1000年以上生きておれば色々な奴等に会うものよ。今までの者は皆、どこかしら悲壮感があったがおんしらにはまるでそれを感じない。この世界を楽しんでおるのじゃな?」
「ああ、それで私達の吸血鬼のイメージを知っていたんですね。ならばついでにいくつか質問させて貰ってもいいですか?」
「構わぬよ、何でも聞くが良い。」
メアリーが椅子に深く座り直し、話を聞く体制を整えたのを確認すると、美空は仲間達を振り返り拳を上げて叫んだ。
「吸血鬼さんに聞いてみようのコーナァァァァァァッ!!」
『イェアァァァァァァァァッ!!!』
突如始まった謎のノリに付いていけないクラリス達を置いてきぼりにして、美空達は勝手に盛り上がる。
「それではまず私から、私達の世界の吸血鬼の伝承では、吸血鬼は太陽の光で灰になると言われているのですがどうですか?」
「別に何とも無いぞ?とは言え日焼けは乙女の天敵じゃからな。なるべく直接は浴びないように心がけておる。」
メアリーの言葉が終わったところで遥が手を挙げた。
「ニンニクや強い香りの香草は苦手ですか?」
「どちらも好きじゃぞ?私の朝はハーブティーで始まるしの。まあニンニク臭い乙女というのは考え物じゃな。」
「次は俺いいですか?」
慎太郎が手を挙げた。
「俺の知ってる話だと流れる水を渡れないってゆうのがあるんですけど?」
「泳げぬ事もないが得意と言うほどでも無いな。それに乙女の柔肌を人目に晒すのものう?」
「さっきからずいぶんと乙女を押しますね?」
冷めた目で言う慎太郎にメアリーは見下す様な目を向ける。
「女子はいつまでも乙女なのじゃよ、それが解らぬようではそこなエルフの娘にいずれ愛想を尽かされるぞ?」
途端に慎太郎は泣きそうな顔でロレインに振り返る。ロレインは笑いそうになるのを堪えながらもメアリーの話に乗ったらしく、真顔で深々と頷いた。
何やら頭を抱えながら面白い動きを見せる慎太郎を放置して会話は進んで行く。
「私いいっすか?」
「申してみよ……」
手を挙げた理亜にメアリーは厳しい視線を向けた。先程のババアを結構気にしていたらしい。
理亜は再び泣きそうになりながら質問する。
「き、吸血鬼は首を落とすか心臓に杭を打ち付けて燃やさないと完全に死なないと聞きました。」
「いや、そこまでされれば大概の者は普通に死ぬじゃろ?」
「そっすね……」
先程の事で萎縮しているのか、理亜にはいつものキレが全く無くなっていた。 縮こまる理亜の隣で歌鈴が勢いよく手を挙げる。
「空飛べますか!?」
「ああ、飛べるぞ。」
メアリーの体が足を組んだ姿勢のまま宙に浮かび上がる。ちなみに風魔法で空を飛ぼうと試みた者は大勢いたが、みんな息ができなかったり鼓膜が破れそうになったりで諦めたのだ。
理亜の鳥型ゴーレムの様に乗り物に乗れば飛べるが、あれは風魔法と火魔法を組み合わせ、要所要所に噴出口を取り付けることでバランスを保っているので、かなりの魔力が必要になるため魔法専門職しか無理だろう。
そういう訳で空を飛べなかった歌鈴は、キラキラな目で宙に浮いたメアリーを見つめた。
「それってどうやってるんですか!?」
期待の籠った眼差しにメアリーはばつの悪い表情を浮かべた。
「どうと言われてものう……なぜ歩けるのかと聞かれるのも同然じゃ。飛べるからとしか言えぬ、説明は難しいのじゃよ。すまんの?」
「そうですか……」
目に見えて肩を落とす歌鈴に合わせるかの様にメアリーは再び椅子に降りた。
「吸血鬼ってもの凄え怪力だって話だけど姉さんもそうなのか?腕細っこくてとてもそうは見えねぇけど?」
「姉さんか、良い響きじゃの♪まあ私の力の一厘にも足りぬが、今見せられるのはこの程度かの。」
頼雅の言葉に気を良くしたメアリーは、目の前の長くて分厚いテーブルを座ったまま片手で摘まんで軽々と持ち上げた。
「おお凄え!凄えよ姉さん!!」
「ああ良い響きじゃ!もっと言って良いぞ!!」
千年を生きる吸血鬼様は割りと年齢を気にしているのか、姉さんと言われご機嫌だ。別に頼雅にしてみれば年上の女性はみんな姉さんなだけなのだが、それは言わないほうが幸せなのだろう。
テーブルが元の位置に置かれたところでゆかりが手を挙げた。
「いいですか?吸血鬼はみんな美男美女揃いと言われてますけどどうなんでしょう?」
「どうかのう……同族は兄しか知らんのでな。まあ整った顔ではあるぞ?」
「お兄さんがいるんですか!?」
目の前のメアリーがこれ程美人なのだ。さぞかし兄も期待できるだろうとゆかりは思ったのだが、そこには趣味的に邪な考えが溢れまくっていた。
「しかし600年前に決別してな、今はどこで何をしているかも分からぬ。」
「そ……そうなんですか……」
ゆかりの野望は打ち砕かれた。その隣でやはりがっかりした感じのエイミが静かに手を挙げる。
「吸血鬼は見目麗シイ処女の血を好むと伺いマシタ。」
「その基準で言えばおんしは十分足り得るのじゃが、なぜかおんしは中身が腐っておる気がするのう……」
メアリーは一目見てエイミの本質を見抜いていた。
「ナゼ初対面の方に!?最近私の扱イがヒドイデス!?」
「処女の血しか飲まぬと言うことはないぞ?選り好みなどしていたら飢え死んでしまうからの。」
「何事モ無かっタかの様に進めナイで下サイ!?」
エイミは涙ながらに訴えるが、メアリーは聞こえていないかの様に話を続ける。
「確かに処女の血は一番クセがなく味も濃くて舌触りも喉越しも良い、解りやすく言うとおんしらくらいが一番の飲み頃じゃ。若ければ味が薄いし年を重ね男とまぐわいを持てばクセが出る。しかしそこばかり狙うことなどできぬじゃろ?それに生きるだけなら月に一度飲めば良い。私は普段おんしらと同じ様な物を食っておるぞ?見た目についてはおんしらだって雑に盛られた料理より綺麗に盛られた料理のほうが良いじゃろ?」
「ならば男の場合は童貞の血が一番美味いということでしょうか?」
一瞬で祐二に視線が集まった。その顔は男前に見えるほど超真顔である。
「男の場合はまぐわったかどうかよりも、どれだけ精を漏らしたかじゃな。精を漏らす程に味が薄くなる、なんならおんしらの味をみてやろうか?肌を舐めるだけでも十分じゃからな、今までにどれだけ手慰みをしたか当ててやるぞ?」
メアリーは意地の悪い笑顔を浮かべた。
顔を真っ赤にするクラリスとは対照的に、男達は一斉に顔を青くして首を横に振った。一般的な思春期男子高校生の回数など知らないが、自分のオ◯ニー履歴など人に知られたくない。
そんな中、唯一顔色を変えなかった凪晴が手を挙げる。
「よろしいでしょうか、メアリー様。」
「堅苦しいのは好まぬと言っておろう。」
「申し訳ありません、でも俺はあなたにできる限りの敬意を尽くしたいのです。」
「……私にではなく私の胸にじゃろ?まあ良い、申せ。」
凪晴は軽く頭を下げると質問を口にした。
「吸血鬼は血を吸った者を眷族とし、意のままに操れると聞きましたが、それは真でしょうか?」
「なんじゃ、おんしらの世界ではそんな設定なのか?まるで病原体の様な扱いじゃの。」
メアリーは不機嫌そうに頬を膨らませる。とは言え怒った感じは無さそうなのでただのポーズなのだろう。
「普通に考えてみよ?喉笛噛み付かれて腹を満たすほどの血を吸われるのだぞ?吸われた相手は死ぬわい。その後骸を操るのは死霊術じゃよ。ちなみに聞く限り吸血鬼はおんしらのイメージでは不死者属の様じゃがこの世界では魔人属じゃ。そんな小汚ない者と一緒にするでない。まあ確かに最上位である私は不死に近い再生力があるがの。」
「ご気分を損ねてしまい申し訳ございません、お答え頂きありがとうございました。」
凪晴は深々と頭を下げた。その動きは自然かつ堂に入っており、まるでもう何年もメアリーに使えているかの様だった。この男のおっぱいに対する思いはどこから生まれ、どれ程溢れて来るのだろうか?作者すら分からない。
そして最後に和人が手を挙げた。
「僕のイメージだと《吸血鬼は高貴なる存在だ、愚かな人間は我にひれ伏すがいい!!》て感じなんですけど、メアリーさんは伯爵位まで持っているのにそんな感じ全然無いですね。」
「ああ、おんしらの世界もそうなのか……確かに私も兄にそう言われて育ったわ。でも気付いたんじゃよ、そんなものは自分を正当化するためのまやかしに過ぎぬとな……」
メアリーは遠い目をして溜め息をついた。
「もしおんしらが自分と差して変わらぬ姿で、同じ言葉を話し、心を通わせる事ができる相手を殺し、その血肉を啜る事でしか生きられぬとしたら……おんしらならばどうじゃ?耐えられるか?」
和人達は言葉が出せなかった。静まり返った場の空気が重くなる。
「まあそうなるわな、それに気付いてしまうともう血が飲めぬやも知れぬ。者によっては心を病んだり、自害したりするやも知れぬ。そうならぬためにも吸血鬼は子を成した時、自分達は高貴なる存在だ、贄たる人間は殺され喰われても当たり前なのだと教え込むのじゃろうな。」
メアリーは自虐するかのように悲しげに微笑んだ。
≪次回予告≫
~♪(略)
「では、おんしらの話を纏めるとしようか。」
突如真面目な表情で語り始めたメアリー。
和人達から得た情報から地球の吸血鬼の正体を解き明かしてゆく。
そして真実が暴かれ理亜が再び額を大地に擦り付けた時、歌鈴の腹の音が鳴り響いた!!
「実は私も昔から魔獣を食しておっての。これから出すのも魔獣の肉じゃ。」
「メアリー様!?初耳なのですが!?」
かつて無い程の食の暴力が和人達を襲いかかる!
千年を生きる吸血鬼の舌を満足させるメイド長カリラの腕前に、和人の謎の抵抗が始まる!!
【次回】理由なき抵抗
「この歳になっても、新しい発見があるものなのですね。」