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剣と魔法と特撮ヒーロー!!  作者: 鮭皮猫乃助
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閑話:即席戦隊?

時系列通りですが物語の本筋には関係ないので閑話です。

 ―何で…何でこんな事になっちゃったの?―


 葵は完全なアウェイに立たされていた。

 先程まで仲間だった者達が敵として目の前に立っている。

 葵は目に涙を滲ませながら少し前を思い浮かべた。



 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



「本当に…本当に皆様には感謝してもしきれません…!まさか儂の生きている内にあのような素晴らしいものが見れるなんて……!!聖女様、儂に出来る事なら何でも言ってくだされ!!」


 マルベスは遥の手を両手で握りしめ涙を流した。


「まずは聖女と呼ぶのをやめて下さい……」


 遥の目が完全に死んでいる。

 港での遥と人魚(マーメイド)のステージの翌日、朝早くから歌う人魚亭を訪ねて来たマルベスを遥は一蹴した。


「ならばこの街の人達から出せる範囲で良いので。醤油と味噌を集めて貰えませんか!?」


 珍しく起きていた美空がしゃしゃり出てきた。


「ちょ!?美空!!」


 とりあえず聖女呼びを止めさせたい遥が美空を制しようとするが、美空が耳元で囁いた言葉で遥は固まった。


「ラーメン食べたくないですか?私いい加減限界です。」

「醤油と味噌を集めて貰えませんか?」


 遥の欲望が理性を瞬殺した。


 ―ラーメン…ラーメン食べたい!!!―


 遥の脳内はラーメンに支配された。今に限っては黒騎士とラーメンどっちがいいかと聞かれたら本気で悩むくらいに………


 ──────────


「ふへ…ふへへへへへ………」


 美空はそこそこ集まった醤油と味噌を前にだらしない笑顔を浮かべていた。

 その後ろでは旅の途中で溜め込んだ豚野郎の骨や、アイアンクロウの骨が煮込まれている。


「あぁ……楽しみです……本当に楽しみです……」


 これから食べるラーメンの味を想像し、よだれを垂らしながら麺生地を捏ねている美空。


「あれ?なに作ってるの?」


 背後から葵が手元を覗き込んできた。

 美空は焦った。いつもなら嬉しい葵の声も、今だけは喜べる物では無い。


「あ…えっと…その………」

「もしかしてラーメン作ってるの?私も手伝うよ。」


 戸惑う美空を余所に、葵は材料から予測を付け、エプロンを付け始めた。


「いや、たいした仕事はありませんから……」

「いいじゃない、どうせ暇だし本格的なラーメン作りに興味あるし。それに何より……」


 葵は目だけ笑わぬ笑顔であるものを指差した。


「あの大量な揚げ油が気になるのよ………」

「うっ……」


 そこには普通にラーメンを作る工程には決して必要の無い、なみなみと油の張られたデカい鍋があった。

 葵は美空が何をしようとしているのか実は気付いていた。それを阻止するために手伝いを申し出たのである。


「まさか美空、ただでさえカロリーが高いラーメンを無駄にカロリーと脂質を上げた上で、更にジャンクな味にしようとしてないよね?」

「うぇ!?いや…まさかそんな……」


 目だけ笑わぬ笑顔に見つめられ、美空は大量の冷や汗を流しながら明後日の方向を向く。


「ねえ美空…このまま普通にラーメン作れる状況で、わざわざインスタントに加工してラーメン作ったりしないよね……?」

「ひ…ひいぃぃぃ……」


 そんな事は葵の女子力が許さない。

 女子力という名の怪人が美空に向かい迫り寄る!!


「そこまでよっ!!!」

「誰っ!?」


 突然の声に怪人女子力が振り返ると、そこにはズバッて感じに掌を前に突き出した遥と和人が立っていた!!


「やっぱりこうなっちゃったんだね……」

「うん、葵の女子力ならこうなるって解ってた……」


 遥と和人はゆっくりと歩き出した。


「ごめん、野口さん……これは必要な事なんだ……」

「そう……体に悪いものは心に染みるのよ……」

「ルパ○三世に次○大介がいるように。」

「の○太にドラ○もんがいるように。」

「「この世にはベストパートナーが存在する。」」


 そう言いながら二人は葵の隣を通り過ぎ美空に並んだ。


「我々オタクのベストパートナー。」

「そう、それはカップ麺!!」


 三人は振り返りながらポーズを取った。


 和「鶏ガラレッド!!」

 遥「熟成イエロー!!」

 美「濃コクグリーン!!」

「「「体感せよ!100の衝撃!!」」」


 三人は和人を中心に左右対称なポーズを決める!


「「「スーパー○ップM○X!!!」」」


 葵はポーズを決めた三人の背後に爆炎が巻き起こるのを幻視した!!


「くっ!?これがオタクの妄想力……なんて荒ぶる力なの!?」


 葵は自分に向かって来る(気がする)爆風から手をクロスして身を守る!


「趣味に没頭し深夜にお腹が空いた時、親には頼れず自分で何か作るくらいなら、一分一秒趣味に捧げたい!」

「そこで私達は電気ケトルと水さえあれば調理可能なカップ麺を食べる。そしていつしか趣味(たたかい)を共にする相棒となるのよ!」

「この世界で私達はどれだけ切望しても趣味に手が出せないんです……これくらいは許して下さい!!」

「だ~~め!体に悪いわ。」


 三人はそれっぽく言ってみたが怪人女子力は一歩も引かなかった。目だけ笑わぬ笑顔で油鍋の前を動かない。


「「「くそうっ!女子力めえぇぇぇぇッ!」」」

「ちょっとあんた達。」


 ふいに声がした方を見ると、調理場の入り口に背を預け腕を組んだ理亜が四人を睨んでいた。

 葵は敵が増えた事を直感する!


「焼きそばを忘れているわ……」

「くっ…神戸さんもやっぱり……」

「M○Xは焼きそばを含めた四つよ!!」


 そう言って理亜は和人達の隣に並びポーズを取った!ホワイト(パッケージカラー)参戦!!


「「「「スーパー○ップM○X!!!!」」」」


 再びの爆風が葵を襲う(気がする)!!

 葵は歯を食い縛り足を踏ん張ってそれに耐える!!


「ま…負けないんだからぁぁぁぁッ!!!」

「美空~、喉乾いたから水……何やってんの?」


 香ばしいポーズで立ち並ぶ四人と、何かに耐えているようなポーズの葵を見て、ゆかりは本気でそう思った。

 そんなゆかりに葵はすがり付く様に助けを求め全てを説明する。


「聞き捨てならないわね……」


 ゆかりは四人を睨むようにして歩き出した。


「M○Xがそんなに偉いの?」

「あれ?ゆかりちゃん……?」


 何やら雲行きがおかしい流れに葵は戸惑う。


「豚キムチはダメなの!?例えその四つが無くても、ほとんどのコンビニに豚キムチはあるのよ!?」

「「「「もちろんOK!!」」」」

「ゆかりちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」


 不測の事態に葵は叫び声をあげた!


「どうして!?ゆかりちゃん真面目に部活やってるのにそんなジャンクな物を食べてスタイル維持出来るの!?」

「ごめんね葵……でもあなたはオタクに対しての認識が甘いわ……」


 涙を滲ませる葵にゆかりは首を横に振る。


「例え部活を真面目にやっていてもオタクの生態なんて大して変わらないのよ!!」


 ゆかりは四人に並んだ!ブラック参戦!!


『スーパー○ップV!!!!!』


 更に強力さを増した爆風が葵を襲う(気がする)!!


「あう…うう……私は負けない!負けてたまるかぁぁぁぁぁぁッ!!!」


 怪人女子力は必死に耐える!しかし確実にダメージが残っているようでその膝は震え始めている!


「何シテるんデスか?和人君……野郎に囲まレルのはウェルカムデスが女子をはべらカスのは許しまセンよ……?」


 いつの間にか葵の背後に病んだ目をしたエイミが立っていた。


「ひッ!?」


 レッドが怯えた!!攻勢に転じるのは今しか無い!!葵はエイミに全てを説明する。


「ゆかりサン…少しがっかりデス……」

「エイミ……」


 エイミはゆかりに悲しげな目を向けた。

 そんなエイミにゆかりも悲しげな目を返す。


「M○Xとか人気とか…そんな事ヨリも大切ナノは愛デス……」


 そう言ってエイミはゆかりに向かって歩き出す。


「そんな…まさか……」


 葵は震える体を抑え切れない。


「鴨ダシワンタン塩味を知らないのデスかッ!?」

「安心したわ、あなたもこっち側よね。」

「嘘でしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?」


 葵は頭を抱え膝を折った。


「エイミ!お嬢様なのに何でそんなもの食べてるのよ!?」


 そんな葵にエイミは首を横に振る。


「葵サン…あなたはオタクに対しての認識が甘イデス。」

「それさっきも聞いたわっ!!」

「例えオジョーでもオタクの生態なんて大差ありまセン!!」

「それもさっき聞いたぁぁぁぁぁ……」


 最後の戦士、ブルー参戦!!

 力無く項垂れる怪人女子力の前に六人の戦士が集結する!!


 和「鶏ガラレッド!!」

 遥「熟成イエロー!!」

 美「濃コクグリーン!!」

 理「焼きそばホワイト!!」

 ゆ「豚キムブラック!!」

 エ「鴨ダシブルー!!」


ここで和人は一歩前に出た。


 和「我等、熱湯の下に集いし六人の戦士!!」

『即席戦隊!スーパー○ップ!!』


ドカアァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!


 葵は思い思いのポーズで立ち並ぶ六人の背後に、昭和のスーパー戦隊のオープニングの最後でよく見る構図、スーパースロー再生の爆炎とド迫力な巨大ロボを幻視した!!

 かつて無い程の強力な爆風が葵を襲う(気がする)!!


「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」


 遂に怪人女子力が崩れ落ちた!!

 しかしよく考えて欲しい、和人達はポーズを決めて叫んでいただけだ!何も暴力は振るっていない!!


 ここで話は冒頭のシーンに戻る。


「私はただ体に良いものを食べて欲しいだけなのに……」


 床にへたり込み涙を堪える葵の前に手が差し出された。


「どうした野口、大丈夫か?」


 慎太郎と頼雅、そして歌鈴が並んで葵を見下ろしていた。

 育ち盛り男子高校生二人に暗黒空間(ブラックホール)、葵は自分の抵抗がここまでだと悟った。


「おいお前ら、寄って集って野口を……いや、本当に何やってんだ?」

『即席戦隊!スーパー○ップ!!』

「説明になってねぇよ!?」


 葵が虐められていると思った頼雅は怒鳴り付けようとするが、決めポーズのまま固まっていた六人を見て困惑する。

 するとその隣で鼻をヒクつかせていた歌鈴が目をキラキラさせてよだれを垂らした。


「もしかしてラーメン作ってるの!?私男盛り更に大!!豚トリプルの全マシマシのマシマシでお願いっ!!」






 時が止まる。







 そして時は動き出す。


「確かにラーメンですけどなぜ迷い無く次郎だと思ったんですか!?てか男盛り更に大って出来るんですか!?」

「トリプルってどこにあんだよ!?女のする注文じゃねえよ!!」

「マシマシのマシマシって何だよ!?それもうラーメンじゃなくて山だろ!?エベレストだよ!!」


 騒ぎ出す美空達に歌鈴は不思議そうな顔を向ける。


「だってこの醤油の匂いカネシだよ?なら次郎じゃん。」

「え!?」


 その言葉に驚いた美空は急いで醤油の味を見ると、目を見開き震えながら振り向いた。


「確かにこの味はカネシです……次郎に変更しますよ!!」


そう言うと、美空は豚野郎のスープの中の骨を叩き折り、脂たっぷりの背肉をぶちこんだ。


『JIRO!!!!』


 何故か次郎がヒーローに聞こえる。

 みんなが拳を振り上げ盛り上がる中、一人次郎を知らない怪人女子力は歌鈴に説明を求めた。


「ねえ歌鈴ちゃん、次郎って何?」

「野菜がたっぷり食べられる美味しいラーメンだよ。」


 歌鈴には何の他意も無い、ただ簡潔に次郎を説明しただけだ。

 しかし野菜たっぷりという言葉に安心した葵は、それならばと次郎を作ることを認めてしまった。


 ──────────


「何……これ…………」


 10数分後、女子力とは程遠い背脂とニンニクにまみれたモヤシの山を前に葵は呆然とするのであった。

 そして葵はまだ知らない……次郎の真の恐ろしさがこれから約一週間後に襲って来ることを……

豚トリプルは店舗によっては存在します。

マシマシのマシマシは多分どこでもできます。

男盛り更に大は作者の想像です。言ったらできるかもしれませんけどね。

たまに無性に食いたくなるんですよねスーパー◯ップ、鴨だしワンタン塩味おすすめです。

作者は打首獄門同好会を応援してます

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