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剣と魔法と特撮ヒーロー!!  作者: 鮭皮猫乃助
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港街サーク 旅の疲れを癒そう

 空が赤から紫へと変わり始めた頃、慎太郎達は目的地サークの街門にたどり着いた。

 入門手続きの順番を待ちながら、和人は潮風を胸いっぱいに吸い込むと、異世界でも変わらない海の香りを嬉しく思った。

 和人が感慨に浸っていると、先に入門手続きを済ませていたエイミが早速柄の悪い二人組に絡まれていた。


「ようお嬢ちゃん、この街は初めてかい?」

「案内してやるから俺達と行こうぜぇ?」


 チンピラという生き物は皆思考回路が同じなのだろうか?それとも大いなる意思の下、一つに繋がっているのだろうか?どこかで聞いたようなセリフをを吐きながらエイミに近寄って来るチンピラに対し、エイミは嫌悪感丸出しの顔で後退る。


「まあまあお兄さん、こいつは俺達のツレなんだ。連れて行かれると俺達も困っちまうんだよ。」


 などとへらへら笑いながら、頼雅がエイミとチンピラの間に割って入った。


「あぁん?てめえの都合なんか知るか。俺達はこのお嬢ちゃんに話しかけてんだよ、邪魔してッとぶっ殺すぞ?」


 チンピラは頼雅の胸ぐらを掴み、自分の顔に引き寄せて凄んだ。

 それでも頼雅はへらへらとした笑顔を崩さす、両手でそれを制した。


「いや~お兄さん怖いねぇ、いい事教えてあげるからここは見逃してくんない?」


 チンピラは脅しているにも関わらず、ふざけたような頼雅の態度に逆上する。


「てめえ!!ふざけでェッ!?」


 突然面白い顔で体をくの字に曲げたチンピラの股間に、頼雅の膝が深くめり込んでいた。

 しかもそれは頼雅のスキル【悪逆非道(ヒールファイト)】の補正で威力が強化され、【先手必勝】によりクリティカル判定が入っている凶悪な物だ。

 そして低くなったチンピラの後頭部に、頼雅は容赦の無い肘を降り下ろす。


「ぷげっ!?」


 頼雅のたった2手でチンピラは気を失い石畳に転がった。

 頼雅は屈んでチンピラの髪を掴み上げると、おそらく言葉が届いていないであろう耳元で凶悪な顔で告げた。


「そうやって胸ぐら掴んでくるヤツのタマが一番蹴りやすいんだよ、次からはグダグダいう前に砂にしな。はい、一つお利口になったね?そんじゃご苦労さん。」


 そう言うと頼雅は気を失ったチンピラの顔面を石畳に叩きつけた。

 そして立ち上がると、その一部始終を青冷めて見ていたもう一人のチンピラに向かって、気を失ったチンピラを蹴り飛ばした。


「失せろ…」


 百戦錬磨の喧嘩師の威圧が残されたチンピラに襲いかかる。


「ひ…ひえあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 チンピラは情けない叫び声を上げながら、気を失ったチンピラを残して逃げ出してしまった。


「あ…ありがトウございマス……頼雅君…─」


 引き吊った笑みを浮かべたエイミが頼雅にお礼を言うが、他の女子も全員引き吊っており、男子は股間を押さえながらドン引きしていた。


「気にすんなよ、ダチ助けんのは当然だろ?しかしナギよぉ…お前もたまにはやろうぜ?中学ん時は散々慣らしたじゃ無ぇかよぉ?」


 頼雅の意外な言葉で全員の視線が凪晴に集まる。


「え!?そうなの!?僕ナギ君怒ってるとこ見たこと無いよ!?」

「私は元々その感情が欠落してんじゃ無いかと思っていたけど!?」


 和人と遥が口々に言った。

 二人の言葉を受け、凪晴は空を見ながら穏やかに言った。


「まあそんな時期もあったな……でもさ、そんな俺をたった一つの映画が変えてくれたんだ……」

「へぇ、その映画とても興味があります。なんて映画ですか?」


 映画オタの美空が凪晴の話に食いついた。



 凪晴はとても穏やかな表情でその名を言る。


「ペン○ンハイ○ェイ」

「もういいですもうわかりましたなぎくんのしこうまでぜんぶだからちかよらないでください」


 美空は一息に言うと凪晴に軽蔑の目を向けた。


「え?どうしたのよ映画のタイトルだけでそんな……」


 あまりの美空の豹変ぶりに葵が美空と凪晴を交互に見ながら戸惑っている。


「私達女子には全く響かないからです。まあ、特種な性癖でもあれば別ですが。」

「何とでも言うといいさ。それでもあの言葉が、今でも俺の心の奥深くにあり続ける事に変わりは無いからな。」


 汚物を見るような目を向ける美空の視線を、凪晴は春の日の空のように澄みきった目で受け止めた。


「で、その言葉って何なんだ?」


 二人の温度差を感じながら、祐司は凪晴に尋ねた。


「怒りそうになったらおっぱいのことを考えるといいよ。そうするとたいへんこころがが平和になるんだ。」


 凪晴はその名の示す通り、雄大で穏やかな海のような表情で言った。

 女子達の目が一斉に冷ややかな物になる。

 しかし祐司と正洋、それどころか端からその話を聞いていた門番の兵士、通行人の男達までが涙を流し始めた。


「ナギ……俺感動したよ!!」

「ああ!とても素晴らしい言葉だ!!」

「いい事いうなぁ兄ちゃん!!」

「争いなんかいらない!おっぱいさえあればいいんだ!!」

「そうだ!おっぱいが世界を平和にするんだ!!」

『おーっぱい!!おーっぱい!!おーっぱい!!』


 凪晴を中心におっぱいコールが巻き起こる。

 それを冷ややかに見つめる女子達と、そこに賛同しなかった男子達。

 和人は遥に、慎太郎はロレインにしか興味が無く、頼雅は尻派であり、悟と英一はこの旅の間に葵に惚れているのでみっともない姿を見せようとしない。龍馬は心の中では賛同していたが、そこに加わる勇気が無かった。


「宿を探そう。多分今俺達は、人生で最も下らない時間を過ごしている気がする……」


 そう呟くと、慎太郎達はおっぱいを連呼し続ける集団に背を向けた。


 慎太郎達は改めて夜の帳が下り始めた街並みを見る。とても綺麗で穏やかな魔○の宅○便のような街並みだ。

 いまだ収まる気配の無いおっぱいコールがなければとても良い雰囲気である。

 しかし……


「なんだか活気が無いね……」

「港町だからな、漁に出られなければ活気も無くなるんだろう。」


 慎太郎と和人は辺りを見回して思った。

 まだまだ宵の口だ。王都であれば屋台が建ち並び、酒場や宿屋の呼び込みが喧しいくらいの時間なのだが、目の前の街は明かりがまばらであり、店の呼び込みどころか通行人も然程多くない。


「あの、すみません。」


 慎太郎は近くにいたおっぱいコール集団に白い目を向けるおばちゃんに声をかけた。


「俺達旅の者なんですが、この街で良い宿屋があれば教えてくれませんか?」

「できればお風呂があると嬉しいです。」


 慎太郎の隣からゆかりが自分の要望を付け加える。


「おや旅人さんかい?こんな時に珍しいね。それならあの高台にある歌う人魚亭に行くと良いよ。露天の温泉があるこの街の自慢のひとつさ。」

『温泉!!!』


 それを聞いた女子達が一斉に沸き立った。

 キャーキャー言ってる女子達をよそに慎太郎は話を続ける。


「珍しいって何かあったんですか?」


 だいたいの事は知っているが、慎太郎はあえて聞いてみた。


「それが半年くらい前からかねぇ。沖合いに大海蛇(シーサーペント)の群れが住み着いちゃってね、漁師は船出せないし近くに根城置いてた海賊も船出せないもんだから街うろつくしで長いこと困ってんのよ。」

 ―大海蛇(シーサーペント)の群れ?タコじゃ無いのか?―


 慎太郎はおばちゃんと2・3言葉を交わし、礼を言って別れた。


「美空、どう思う?」

「おそらく本体であるタコが姿を表す前に、触手である大海蛇(シーサーペント)がカタをつけてしまうのでしょう。かなりの強敵のようですね。」

「そうか……厳しい戦いになりそうだな。それに陸に上げる方法も考えないと。」

「それについては考えがあります。ともあれ、明日冒険者ギルドで確認を取りましょう。」

「そんな事より今は温泉よ!みんな早く行くわよ!!」


 温泉の話を聞いて誰よりもテンションが上がっていたゆかりに急かされ、慎太郎達は教えられた歌う人魚亭を目指した。


 高台にある歌う人魚亭は体育館くらいで二階建ての小綺麗な装いだった。海側に設けられた高い壁の上から湯気が上がり、辺りには硫黄の匂いが立ち込めている。


「すみません、部屋は空いてますか?」

「おぉ、旅人さんかい。悲しい事に沖の魔物のせいでほとんどの部屋が空いてるよ。何人だい?」

「15人です。」

「なら四人部屋を四部屋、朝食付きで銀貨40枚で良いかい?」

「それでお願いします。」

「じゃあこれが鍵だよ。風呂は自由に使って良いからね。」


 慎太郎は金を払い鍵を受けとると、鍵を二つ女子に渡し、「部屋割は好きに決めてくれ」と言って別れた。



 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



「ふぃ~~~~………」

「あぁぁぁ~~~~………」

「生き返りますねぇ~~~~………」


 遥、理亜、美空が並んでカピバラのような顔で温泉に浸かっていた。

 のんびりと旅の疲れを癒すつもりの遥だったが、先程の事もありどうしてもみんなのおっぱいを見てしまう。


「美空、ちょっとおっぱい触らせてくんない?」

「は?!いきなり何言い出すんですか!?」

「いや、良い張りしてるなーと思って。」

「嫌ですよ…それを言うなら理亜も見て下さい。」


 遥はおっぱいを隠しながら後退る美空から目を外し、逆サイドの理亜を見る。


「理亜、あんたずいぶん着痩せするんね。」

「ん?まあ猫背だし、ダボついた服着てるからそうなるかもね。」


 理亜は浴槽の縁に肘を置いて額のタオルの位置を直していた。その体制ゆえにつき出された胸の主張が激しい。


「ちなみに何カップ?」

「Dだけど?」

「畜生…負けた……」


 美空B、遥C、理亜Dである。


「勝ち負けなんて気にするだけ無駄よ?私なんかよりとんでもないのがいるじゃない、見なよあれ。」


 理亜は自分達の正面にいるエイミを指差した。

 その圧倒的存在感を目にした遥と美空の背後に稲妻が走る!!


「浮かぶって……あそこまで解りやすく浮かぶ物なの……?」

「何ですかあれ……Gってギガントとかジャイアントの事ですか……?」

「鑑定ってそんなことまで解るのね……グレイトじゃない?物凄いとしか言えないわ。」

「ちなみに隊長はFです。」

「それ間違いなくファイナルとかフィニッシュね。」

「そうかもね……あ、エイミのGはガイアよ。あれはもはや大陸だわ……」


 そこでエイミは三人の視線に気付き胸を隠した。


「ナ…何デスかモウ……私は結構気二してるんデスよ?自分で言ウのも何デスが、タダ大きいダケノものよりゆかりサンのプロポーションヲ見て下サイ!!」


 エイミは丁度休憩の為に湯船の縁に腰かけていたゆかりを指差した。

 正に均整のとれたプロポーション。

 出るとこは出て、引っ込むところは引っ込み、全体的に艶と張りがあり、うっすらと筋肉が浮いている。

 胸のサイズはBであろうが、しなやかなその体には大きい胸はむしろ場違いである。


「「「おおぉ~~~~!!!」」」


 三人は思わず拍手してしまった。


「ちょっとやめてよ……真面目に新体操やってりゃ大概の人はこうなるって……」


 ゆかりは急に恥ずかしくなり体を隠した。

 そんな五人のやり取りから逃れるように湯船の隅でこそこそする二人。


 葵、限り無く透明()に近いブルー()……

 歌鈴、大草原の(AA)さな家……


「おーい二人とも、怖くないからこっちにおいでー。」

「無理よ!!こんな小船で新大陸に挑めるわけが無いわ!!」

「そうだよ!何その爆弾は!!テレビだったら絶対に引きと寄りを繰り返しながら、でんどんでんどんで~~~~んって音鳴ってるよ!!!」


 遥の呼び掛けに胸を隠しながら涙目で抵抗する二人。その視線の先には新大陸エイミが波に合わせて揺れていた。


「大きさでおっぱいの価値が変わることは無い!!!」


 男湯から凪晴の声が響き渡った。

 ゆかりが直ぐ様反応し、飛沫を上げて湯船に入った。


「凪晴!!あんた覗いてんじゃないでしょうね!?」


 ゆかりが男湯の方を睨み付けて叫んだ。


「大丈夫だ、どうせ神戸が何か仕掛けてるだろうし、覗いてバレたら隊長に物理的に滅ぼされるからな。だから聞き耳を立てながら女湯の状況を妄想しているだけだ、安心しろ。」

「できるか!このド変態が!!」

「チッ!つまんねえの………」


 胸を隠しながら男湯に叫ぶゆかりと、仕掛けた罠が無駄になって残念そうな理亜。


「それよりも植野、野口、おっぱいに貴賤は無い!!」

「続けんのかよッ!!?」

「おっぱいに貴賤は無く、大きさで価値は変わらない!全てのおっぱいは平等で存在その物が尊いんだ!だから小さい事を気に病む事はない!それにお前達はまだまだ成長期、これから先に未来がある!お前達にこの言葉を贈ろう、おっぱいには夢がある!ちっぱいは希望がある!!たとえ小さくても、胸を張っていいんだ!!」


 熱くおっぱいを語る凪晴に、怒りを通り越して呆れたゆかりが後ろを見ると、葵と歌鈴が涙を流して震えていた。

 ゆかりの頭に再び血が上る。


「凪晴てめ……」

「「ナギ君ありがとうッ!!!」」

「へ………?」


 意外な言葉に間抜けな声を漏らし振り返るゆかり。


「そうだよね?私達成長期だもんね!?この胸に希望を持ってもいいんだよね!?」

「たとえ今は小船でも、いつか新大陸を目指せるように私達頑張るよ!!ありがとうナギ君!!」


 あっけに取られるゆかりを余所に、涙を浮かべた瞳の奥に希望の光を輝かせながら、二人は男湯に向かって叫んでいた。


「何デスかネ……この宗教ハ……?」

「この街来てからナギ君元気だよね……」

「海賊だし、海近いからじゃないですか……?」

「ただの純度の高いスケベでしょ……」


 肩まで湯に浸かった4匹のカピバラは、その様子をのんびりと眺めていた。

作者は別におっぱい至上主義ではありません。

しかし作中の凪晴の言葉は作者の心その物です。

大きければいいって物じゃ無いんです。かといって小さくてもいいって物じゃ無いんです。

おっぱいはただそれだけで尊い物なんですよ……

もしおっぱいが大きくてもお腹がそれより出ていたら?もし腰が括れててもお尻がダルダルだったら?もしお尻がきゅっと絞まっててもおっぱいが小さめで垂れてたら?

バランスをとるか、それとも一点を愛し尽くすか。

おっぱい大好きですけど大きさにこだわりはありません。


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