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剣と魔法と特撮ヒーロー!!  作者: 鮭皮猫乃助
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美空と悟のおしゃべりクッキング

 草原がまばらになり、荒野に差し掛かる手前で日が傾き、夜営の準備となった。

 美空がウキウキ気分で先程仕留めたアイアンクロウを取り出す。


「さ~て、日本のカラスは美味しかったですが、異世界カラスはどんな味ですかねぇ~?」

「え!?食った事あんの?」


 今回かなり力が必要になるらしく、手伝いを頼まれた悟が、信じられない物を見る目で美空を見る。


「ええ、美味しいんですよ?弾力があって、味が深くて。」


 その言葉を聞いた悟は、美空がクロスボウで町中のカラスを射抜く想像をする。


「こいつならやりそうだ……」

「どんな想像をしてるか容易に想像出来ますが、鳥獣保護法があるのでやってませんよ。」


 失礼な想像をする悟に美空がジト目を向けるが、同じくジト目で返される。


「なければやってたのか?」

「……町中のカラスって美味しくないらしいんですよ、私は通販で買ったんです。」


 悟に向けていたジト目がぺかっとした笑顔に変わる。

 しかしその目はあさっての方向を向いていた。


「おい、質問に答えろ。」

「まずは首を切り落とします。」


 ずだんっ!!


 美空はまな板に包丁を叩き付けるように振り落とした。

 剣で斬るにも技術のいる魔物の首が、勢い良くすっ飛んだ。

 悟が顔を青くして押し黙ったところで、美空は説明を続けた。


「次にお腹に切り込みをいれて、日本のカラスと同じなら、皮はゴム質で噛み切れません。なので羽毛は抜かず、皮ごと剥がします。ここで出番ですよ悟君!!」

「お…おう……」


 悟は腹を縦一文字に切られた首元から、一気に外皮を引き剥がした。


「き…気持ち良いぃぃぃぃぃぃッ!」

「私は日本のカラスでもてこずったんですけどね………」


 着ぐるみを脱いだようなカラスの皮を握り締め、身悶えする悟にあきれた目を向けながら、美空は呟いた。


「しかし、鋼鉄の嘴にゴム質の皮って、これ本当に生き物ですかね?ハイブリッド過ぎませんか?」


 美空は剥がされた皮をびょいんびょいんのばしながら呟いた。


「まあ魔物だし…」

「とりあえずあと四羽、今の手順でお願いしますね?私はトカゲを捌きますから。」

「ああ、任せろ。」


 悟が二羽目のカラスの頭を落とし、腹に切り込みを入れた時だった。


 バルンッ…バルルルンッ……


 悟は何やら不穏な音が気になり、振り返ってみると。


 ヂュイイイィィィィィィィィィィィィッ!!!!!


「ギャアアァァァァァァァァァッ!!!???」


 不気味な革の仮面を被り、革のエプロンを着けた怪人が、チェーンソーでトカゲの首を切り落としている姿があった。


「何ですか?五月蝿いし手が止まってますよ?」


 怪人、美空は仮面を上にずらして顔を出すと、何やってんだといった表情で悟を見る。


「お前のエモノの方がよっぽど五月蝿えよ!!てか何だよその格好!?怖えよ!!!」

「ああ、これですか?これはチェーンソーを扱う時の正装です。」


 そう言って美空は仮面を被り直し、くるりと回ってキラッで感じにポージングする。


「全然可愛く無えよ!てか正装って、ホッケーマスクじゃ無いのか?」

「それみんな勘違いしてるんですよねぇ。」


 美空は再び仮面を上げた。


「Jさんはチェーンソーで切られた事はあっても、使った事は無いんですよ。チェーンソーを使うのはテキサスの皮被りさんです。まあ、アメリカ人でも勘違いしているくらいですから、仕方ありませんけどね。」

「初めて知った……でも皮被りはやめて他の呼び方で呼んでやれ、幾ら何でも可哀想だ。それはそれとして、何でチェーンソーでトカゲ捌いてんだよ?」

「あんなの包丁で切れるわけ無いじゃないですか。」


 そう言って美空は調理台の上のトカゲを指差す。

 トカゲと言ってるが、鱗の一枚一枚が硬くてデカいビッグスケイルリザードだ。

 美空特製のダマスカス包丁でも切れるわけがない。


「わかったらさっさと作業を続けますよ?」


 そう言って美空は仮面を被り直し、二匹目のトカゲの首を切り始めた。


「何もしなければ可愛いのにな……」


 悟はその後ろ姿を心底残念そうな目で見た後、自分の作業に戻った。

 黙っていればではない。

 黙っていても美空の行動は残念過ぎるのだ。


 手早く作業を終えた悟は、何なら内臓も取っておこうと肛門あたりに包丁を当てた。


「内臓は捨てないでください。食べられるかどうか、鑑定しますから。」


 血渋きを浴びた仮面を着けた美空の顔が、肩の横からぬうっと現れた。


「ギャアアァァァァァァァァァッ!!??その顔近付けんなぁぁぁッ!!!!」


 悟は思わず後退った。


「失礼ですよ?女の子に向かって何て事言うんですか?」


 美空は悟を見据えながら、だらりとぶら下げる様に手に持った、血塗れのチェーンソーゆらゆらさせる。


「すまんっ!言い方が悪かった!!そのマスクを近付けないでくれ!!トカゲの首落とすの終わったなら、そのマスクしまってくれ!!夢に見そうだ!!」

「ああ、そういう事ですか。」


 懇願する悟の言葉を受け入れ、美空はマスクを脱ぐと蒸れたのか、しっとりとした顔を赤く染めて満足そうに微笑んだ。


「無理もありません。この映画は恐怖描写がもはや芸術的という事で、マスターフィルムがニューヨーク近代美術館に展示されているくらいですからね。」


 そう言いながら美空はまいるーむにマスクとエプロンとチェーンソーを放り込んだ。

 その姿を見た悟はやっと胸を撫で下ろす。


「ちなみにJさんはこうです。」


 そう言って美空はホッケーマスクを被り、芝刈機を構えた。


「やめてくれって言ってんだよ!!何で芝刈機なんか作ってんだよ!?そんなに俺に悪夢見せたいのかよ!!??」


 悟が若干キレ気味に叫ぶ。


「悪夢ですか?鉄の爪の方がいいですか?」


 そう言いながら美空はまいるーむから鉄の爪のついた皮手袋とボルサリーノを取り出した。


「鉄の爪?ああそうだな…鉄の爪がいいな……お前も大好きだよなぁ!?」


 ついにキレた悟が美空の頭を鷲掴みにし、アイアンクローで握り潰しにかかった。

 しかし、日々真琴のアイアンクローで鍛えられた美空には、悟のアイアンクローでは通用しない。


「わははははは!!何ですか?このへなちょこアイアンクローは!!隊長のアイアンクローと比べれば、天とアカギ程の差があります!!この程度では私の頭はおろか、天津甘栗さえ剥けませんよ!!」


 頭を鷲掴みにされたまま、美空は胸の前で腕を組み、仁王立ちで余裕の高笑いをあげた。


「言いやがったなてめぇ!!天とアカギってそんなに差が無えじゃねえか!!ならば柔道部秘奥技、審判に判りづらい反則技を食らいやがれ!!」


 悟は柔道着の襟を取る手捌きで、美空の鎖骨の少し下にあるツボを的確に親指で突いた!

 突然の激痛と痺れが美空を襲う!!


「ぬぐおっ!?ちょこざいな!!福本先生に謝ってください!!そっちがそう来るなら私も秘奥技を披露しますよ!?」


 美空は素早く悟の左に回り込み、肩甲骨の側面に平拳を打ち込んだ!


「うぐっ!?」


 激痛と共に悟の左手が動かなくなる!


「どうですか!私も中々でしょう!?おとなしく謝れば、その腕治してあげますよ!?」


 美空は勝ち誇った顔で悟と向き合った。

 しかし悟は不敵な笑み美空に返す。


「残念だったな美空…この技も柔道部秘奥技にある!直し方は知ってんだよ!!」


 そう言って悟は、左腕内側の中央部を動く右手の親指で強く押した!

 悟の左手に自由が戻り、それを美空に見せ付ける様に目の前で左手をわきわきとする。


「おのれ小癪な!!目に物見せてやりますよ!!」

「あぁ!?掛かって来いやぁぁぁぁっ!!」


 美空は悟の太腿にしなるようなタイキックを打ち放った!


「止めましょう、ごはんが遅くなるわ。」


 回りは面白がって見ていたが、長引きそうに感じた葵は二人を止めるべく歩き出した。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「いつか泣かせてやりますからね……」

「いつでも来やがれ、鼻の穴に指突っ込んで吊り込み腰かけてやる……」


 停戦を迎えた二人は、ストッパー役の葵を間において三人で料理を再開した。

 悟が肉を切り出し、美空と葵が味をつけて揚げてゆく。


「豚野郎のおかげでラードもたっぷり作れましたからね~♪ラードで揚げるとコクと深みがでて美味しいんですよ~。」


 上機嫌で油を温める美空。


「確かに美味しいと思うけど、みんな疲れてるだろうし、交代で見張りもしないといけないから少し軽めに植物油と半々にしない?」


 あくまでも味だけ考える美空に、葵はみんなの体調を考慮した提案をする。


「そうですね…味も大事ですが消化も大事ですよね。」


 そう言って美空は鍋に植物油を足す。


「それとレモンはあるかな?あるのなら塩レモン味も作らない?普通の塩唐揚げも美味しいけど、和人君や遥、神戸さんはさっぱり味が好きだと思うのよね。」


 別に葵は三人の好みを知っていた訳では無い、生活リズムが不規則なオタクは、胃もたれしやすいのではないかとあたりをつけただけだ。

 美空は目を見開いて大きく頷いた。


「確かにそうです!葵さんに加わって貰って大正解でした!」


 そう言いながら美空はまいるーむからレモンをごろごろ出した。

 悟はそのやり取りを信じられない物を見る目で見守っていた。


「野口すげぇな…美空を完全に制御するなんて……」


 その言葉を聞いた葵は首を傾げた。


「何言ってんの?」


 その仕草には作られたものは無く、葵が普通に本心で言っていることが感じられた。


「野口…お前がこのパーティに居てくれて、本当に良かった……」


 悟は思わず涙を滲ませながら慎太郎と同じ事を言った。


「??ありがとう?」


 よく解らないまま、葵はとりあえずお礼を言う事にした。


「葵さん、どうせならフライドチキン…もといフライドクロウも作りましょうか?」

「ああ、いいわね。そうしましょう。」


 そんな二人の会話に悟が首を傾げる。


「なあ、唐揚げとフライドチキンて何が違うんだ?」


 悟の言葉に、美空は先程の悶着を忘れて答える。


「フライドチキンは軽く下味を付けた肉を蒸すなりして火を通し、しっかりと味の付いた小麦粉の衣を着けて揚げた物です。対して唐揚げは、生肉にしっかりと味を付けて、何かしらの粉の衣を着けて揚げた物です。まあ、言葉の意味だけで言えば、揚げた鶏肉はみんなフライドチキンですけどね。」


 何となく理解した悟だが、そうなると気になるところが出て来る。


「竜田揚げって定義は何だ?」

「やっぱりそうなりますよね……」


 美空は額に手を当てて項垂れた。


「あくまでも私の定義で言うと、生の肉に生姜醤油で味を付けて、片栗粉の衣をまぶして揚げた物です。」


 それを聞いた悟は更に首を傾げる。


「それ唐揚げじゃないのか?確か俺んちの唐揚げはそこにニンニク入っただけだぞ?」


 葵が大きく溜め息をついた。


「そうなのよ。結局唐揚げと竜田揚げの線引きって、作り手のこだわりでしかないのよね。」

「まあ、フライドチキン類 唐揚げ科 竜田揚げ目 みたいな物ですね。でもこれ言うと、そのこだわり持っている人達の反感を買います。」


 そう言いながら、美空は一発目の唐揚げを油から引き上げた。


「そして揺るぎ無い特権、作り手の味見の話になりますが……」


 美空はよだれを溢れさせながら、菜箸で摘まんだ唐揚げを見せ付ける。


「与えられた権利は使うべきよね……」

「賛成。」


 葵と悟がごくりと喉を鳴らす。

 そして小さな声で三人は呟いた。


「「「いただきます…」」」

犬飼真琴

182㎝72㎏ A型 3月3日生まれ

ムキムキ、可愛い物大好き、ディズニー年パス所持。

強くて優しくて賢くて美人で強い。

Fカップ(ファイナルとかフィニッシュとかフィナーレかもしれない)

名前は青森の魔女さんに引っ張られたかも知れない。


三田頼雅みた らいが

173㎝64㎏ O型 4月24日生まれ

名前の由来は言わずと知れた獣神様、誕生日は覆面デビュー日。

実は喧嘩慣れしている分メンバー内最強。

誰よりも仲間意識が強い。


神戸理亜

170㎝50㎏ AB型 11月23日生まれ

名前の由来はコッペリア、当初美少女にしようと思っていたが、微妙にリアルな設定にしたかった作者が「美少女率たかくね?」と思い地味な顔になった。その分中身が濃くなっている。

魔術、錬金術、UMA、心霊現象は好きだがUFOにはまるっきり興味が無い。

意志疎通の取得条件をクリアしたのは、彼女が独自に行っていた魔術儀式で神や悪魔に語りかけていたからである。

どうであれ根暗い。

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