表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法と特撮ヒーロー!!  作者: 鮭皮猫乃助
34/71

個性強めな乙女達

 戦闘を終え、凪晴の手斧を修理すると、一同は進行を再開した。


「美空、ありがとうよ!この刀まるでずっと使ってたみたいに俺の手になじむぜ!」


 幾分の暑苦しさを振り撒きながら、頼雅は高々と刀を掲げ上げた。


「そうですか、獅子王をモデルに作ったのですが、気に入って貰えて何よりです。」

「獅子王?よく解らねえがイカした名前じゃねえか!」

「妖怪 鵺は知ってますか?」

「ああ、うろ覚えたけど、日本版のキマイラみたいのだろ?」

「それで合ってます。それを退治した武士が褒美として賜ったと云われる刀です。」

「くうぅぅぅぅぅぅッ!名前も由来も最高じゃねえか!!!」


 美空の話を聞いて、頼雅はよりその刀を気に入ったようだ。

 そこで和人がずっと気になっていた質問をする。


「ねえ美空、その銃って何なの?」

「何って、バイ○ソードですよ?」


 何を言ってるんだという表情で返す美空に、和人は言葉を続けた。


「そうじゃなくて、この世界に銃っていう概念は無いよね?魔法の触媒なら、それは杖になるの?それとも美空の概念で銃に分類されてるの?」


 それを聞いた美空が、やっと合点がいった顔をする。


「そういう事ですか。分類で言えば剣です。ただ、これそのもので斬るつもりは無いので刀身は捨てました。なので切れ味を捨てて、強度と軽さに全振りしてます。そう簡単には壊れませんよ?」

「そのやり方が通るなら、剣を切れ味捨てて最強の鈍器に出来るんじゃないの?」

「それが出来ないんですよ。」


 和人のもっともな意見に、美空は残念な顔で返す。


「祐司君、これを思い切り棍棒で殴って貰えますか?」


 そう言って美空は地面から石柱を伸ばした。


「わかった、そんじゃ全力で……うらぁっ!」


 祐司の棍棒が石柱を粉砕する。


「お見事です、次はこれで殴って下さい。石柱の硬さは同じです。」


 美空はバイ○ソードを抜き、ソードモードのグリップを向けて祐司に渡した。

 そして地面から再び石柱を伸ばす。


「おりゃあっ!って、いってえぇぇぇぇっ!?」


 振り抜こうとしたバイ○ソードは石柱に弾かれ、祐司の手に痛みと痺れを残した。


「このように、何故か硬いだけで打撃力は無いんですよ。不思議ですよね?」

「俺で試すな!!」

「適任でしたので。」


 祐司の抗議を美空はさらりと流した。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「悟!右からバルーンボアが来る!頼めるか!?」

「おう!任せろ!!」


 中学時代、バスケ部キャプテンだった慎太郎は、状況把握に長けている。

 バルーンボアは通常よりも二回りデカく、威嚇行動としてフグのように膨らむ猪の魔物だ。

 主な攻撃方法は突進。

 悟は槍を前に構え、正面からその衝撃を耐え抜けばいいだけだ。

 そうすれば勝手に串刺しになって死ぬ。

 しかし、これは慎太郎や祐司には出来ない戦法だ。

 適材適所、慎太郎は次々と指示を出して行く。


「美空!上空のアイアンクロウ5匹!頼む!」

「本当に嫌な名前ですね……」


 アイアンクロウ、鋼鉄の嘴と爪を持つ体長80cm、翼長2mのカラスの魔物。

 日本にいた頃、毎日のように真琴のアイアンクローで締め上げられていた美空は、その名前に深い嫌悪感を示す。


「とは言うものの、初めての鳥肉!逃しませんよ!」


 美空の狙撃がアイアンクロウの翼の根元を撃ち抜く。


「祐司達は右、英一達は左、俺達は正面だ!後衛は全体を見て各自動いてくれ、行くぞ!!」

『おう!!!』


 慎太郎達はハイオークを中心とした中隊規模の群に立ち向かう。


 慎太郎達が接敵する前に、葵の放った矢がオークと豚野郎の眉間を射抜く。


「はあぁぁぁッ!」


 接敵と同時に慎太郎はホブゴブリン二匹の首を斬り飛ばす。


「サァッ!」


 食らい付こうと飛び掛かって来たビッグスケイルリザードの弱点であるその口に、歌鈴の短槍が突き刺さる。

 その貫かれたビッグスケイルリザードを、頼雅が左手で尻尾をつかみ引っこ抜く。


「うらぁっ!!」


 そのビッグスケイルリザードを振り回し、手近なゴブリンを殴り飛ばす。

 スキル:悪逆非道(ヒールファイト) ()()()()()()()()()()()()()()()()

 手に持てれば魔物の骸でも良いのだ。

 右手に日本刀、左手にトカゲの骸の二刀流。

 こんな戦い方が出来るのは頼雅だけである。


「ちょっと頼雅、あんまり殴ったらお肉痛むじゃない!!」


 歌鈴が戦闘中にも関わらず、食欲全開な文句を言う。


「振り回してれば血も抜けるし、殴ってりゃ肉も柔らかくなんだろ!!」

「あ、それもそうだね。」


 オークの攻撃を受け止めながら、納得する歌鈴。


 身長150cm、体重40kg、小柄な歌鈴だが彼女は陰で【ちびっこブラックホール】と呼ばれている。

 先日の豚野郎も15kgは歌鈴が食べているのだ。

 実の所、美空よりも食い意地は張っている。

 日本に居るときも、休み時間は常に何かを食べていた。

 しかし全く太らない。

 単純に見た目が良いエイミよりも、多くの女子の羨望を集めていた。


「トカゲって美味しいらしいから楽しみだよね~~。」


 爬虫類や両生類は女子が嫌がりそうだが、既に彼女達には抵抗が無かった。

 戦闘中だというのにどこか気の抜けた一同、それもこれも真琴という指導者が居たからである。

 この世界の冒険者にランクは無いが、仮にランクを当て嵌めると、彼らのレベルで言えばDランクである。

 しかし、実力で言えば既にBランクなのだ。

 戦闘のプロである真琴の指導を受けた彼らは、実力以上の力を発揮するエリート集団なのである。

 しかし、その事に彼らは気付いていない。


「慎太郎!五秒前!」

「全員後退!!」


 和人の言葉で全員が後衛に並ぶ。

 詠唱を終え前に出た理亜が、空に向かって魔術付与を施した粉末を振り撒く。

 撒かれた物は肥料。

 それを和人が風魔法で敵全体に撒き散らす。


「ソーンバインド」


 理亜の声と共に草や根が一斉に伸び、魔物達を拘束した。


「さてと美空、選別頼んだぞ。」

「はいは~~い♪」


 動けなくなった魔物達を美空が鑑定して回る。


「ハイオークは魔石持ちですね、あと生意気にもそこの豚野郎もです。豚野郎のお肉は足りてますから、今回はトカゲと鳥を血抜きしてゆきましょう。」


 美空は次々と魔物の選別をしてゆく。

 もはや狩りですら無い、仕入れだ。


「では精肉する物は意識を飛ばし、他はなるべく苦しまないように………」

「うごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?」


 みんなが振り替えると、涙を撒き散らしながら身悶えするハイオークと、その傍らに立つ理亜の姿。


「………理亜、何をしてるんですか?」

「ん~別に?ハイオークを初めて見たから観察してただけよ?」


 振り返った理亜は頬を赤らめ、湿っぽい瞳で微笑んでいた。

 地味な顔立ちの理亜だが、この状態の理亜は異常に艶っぽい。

 悟と頼雅は青ざめているが、祐司や英一は見蕩れてしまっている。


「ふふ…ふふふふふふ……」


 理亜は静かに笑いながら、ハイオークの顎を撫でる。


「うごッ!?うごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 泣き喚くハイオークの耳元で、理亜は何かぼそぼそと呟いた。


「ふご…ふご………」


 その瞬間、ハイオークは瞳孔を開いて痙攣しだした。

 悟と頼雅が震え出す。


「やべぇ……あいつレベル上がってやがる!!!」

「何てこった!?この短期間で…スキルかアビリティにサディストが在るのか!?」

「怖えぇよ!?あいつ魔物なんかよりよっぽど危ねぇよ!!!」

「ああ、魔王よりもあいつを倒すのがよっぽど人類の為かも知れん!!」


 青い顔で話し合う二人に、理亜は肩越しに振り向いて微笑んだ。


「なぁに?どうしたの?」


 とてつも無い圧力が二人を襲う。


「ぬ…ぐあ……」

「耐えろ悟!この圧力に負けたら人として色々何かを失うぞ!!」


 圧力に押され、膝を折りそうになる悟を、頼雅は必死に励ます。


「よーし、作業にはいるぞー。」


 慎太郎の声と共に理亜の放っていた圧力が消え去った。

 圧力から解放された二人の全身から、一気に汗が噴き出す。


「あいつ……本当に仲間でいいのか?」

「はっきり敵じゃ無いって解ってるだけマシだ……」


 戦闘を終えた時よりも疲れた顔で、二人は作業に加わっていった。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「とっりにくぅ~♪とっりにくぅ~~♪今日のごはんはこっじきっどり~~♪」


 初めての鳥型魔物肉を手にいれ、ご機嫌の美空が妙な歌を歌う。


「頼む美空、そんな平気で5・6時間かかる料理はもっと暇な時にしよう。唐揚げぐらいにしてくれ。」


 たまたま乞食鳥を知っていた慎太郎が、美空にメニューの変更を願っている。


「私は唐揚げは醤油派です!自分が食べたくない物を……」

「多数決!みんな!夕飯は乞食鳥と唐揚げ、どっちがいい!?」


 美空の主張を切り捨て、慎太郎は強引に多数決を取る。


「乞食鳥ってどんな料理?」


 歌鈴がよだれを垂らしながら首を傾げる。


「丸鳥に米とか色々詰め込んで地面に埋めて、その上で焚き火を焚いて、少なくとも5時間以上焼く料理だ。」


 歌鈴が目を輝かせ勢い良く手をシュバッと挙げて宣言する。


「乞食鳥!!!」

『唐揚げ。』


 2対13


「なんで!?絶対に美味しいよ!?」


 涙目で抗議する歌鈴に対し、葵が代表してみんなの総意を伝える。


「待ち時間長いよ。」


 相変わらず簡潔。


「「そんなぁ~~……」」


 絶望の表情で涙する美空と歌鈴。


「歌鈴ちゃん、遠征終わったら二人で食べましょうね……」

「うん…一人一羽ずつね……」

「待って。」


 泣きながら慰め合う二人に、葵が再び声をかける。


「誰一人、食べたくないとは言ってないでしょう?」


 そう言って葵は二人に歩み寄り、肩に手を置き優しく微笑んだ。


「そういう特別な料理は特別な時に食べましょう?楽しみは後に取っといて、遠征が終わった時みんなで食べた方が美味しいと思わない?」


 その言葉は美空と歌鈴の心を貫いた。


「そうですね!旅の片手間で作る料理ではありませんでしたね!」

「そうだね!早く遠征終わらせて、みんなで一人一羽ずつ食べよう!!」


 二人は涙を浮かべ考えを正した。


「うん…でも一人一羽食べるのはあなた達だけでいいわ。私達は一羽を4・5人でシェアするから大丈夫よ?」


 あくまで葵は優しげな笑顔で言った。


「そんな!?遠慮なんてしないでいいんですよ!?」

「そうだよ!!もも肉取り合いになっちゃうよ!?」


 そんな二人に、葵は優しげな笑顔を崩さぬまま言った。


「大丈夫、多分ほとんどの人は、詰め物のごはんでお腹一杯になるわ。とりあえず、今日は唐揚げにしましょう?だって美空の作る唐揚げなら、絶対に美味しいから。」


 その言葉に、美空は涙を溢れさせながら胸を叩いた。


「はい!!絶対に満足させてみせますよ!!」


 慎太郎はそんな葵を見て感動していた。


「あぁ…常識的だ……野口、お前がこのパーティーに居てくれて、本当に良かったよ……」

幾島慎太郎

5月18日生まれのA型 178㎝65㎏

バスケ部レギュラー 趣味はルアーに限らず釣りとロードバイクでオタク性は一切無い。

面倒身がよくナチュラルにリーダーになるタイプ。

誕生日は作者が慎太郎のイメージとしている仮面ラ○ダーキバの俳優、瀬○康史のもの。



渡辺美空

12月21日生まれのAB型 163㎝50㎏

立てば爆薬 座れば毒物 何もしなけりゃ百合の花のTHE自由人。ですます口調だが育ちが言い訳では無く、皮肉は丁寧に言った方が相手に与えるダメージが高いためと、いざというとき口調を崩す事で言葉を強くするため。かなりの腹黒。

誕生日はラス○ボーイ○カウトの日本公開日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ