男になりたかった理系蛮族
どうもみなさまお久しぶりです。
理系蛮族とかけもの屋とか、毎回適当に名乗ってる系乙女のテラです。
卒論とかいろいろ落ち着いたら統一しようかなと考えてます。
今日の調査では、顔なじみのキツネっ子がやたらと付いて回ってきましてね。
どうやら観光客が増えた影響で、餌付けを期待して車にまとわりついてきたようなのです。
……観光客の皆さん、動物に餌はやらないでくださいね。
まず接触が感染病リスク的に危険だし。人間の食べ物は動物が腹壊しますから。
それに餌付けされたのがクマで、その子が人に慣れてしまって街に降りてきてしまったら。
その子を殺す役割は、動物業界の人間に回ってきてしまうんですよ。
やめてくださいね、マジで。
一時の楽しみのためだけに野生の生き物に干渉して、彼らが死ぬ原因を作らないでくださいね。頼みますよ。
……こほん。
さて、理系蛮族は週一で通っている調査地まで片道四時間半かかるので、執筆時間はわりとあるんですよね。
普段は本読んだり寝てたりするんですが、今日はなんとなく理系蛮族しちゃおうと思い至ったワケです。いぇい。
今回のテーマはタイトルの通り。理系蛮族が男になりたがっていた頃の話をしようと思いますよ。
○○○
理系蛮族はXX遺伝子の持ち主。まぁつまりは女なわけなんですが……うちは同級生十人につき女子一人、みたいな割合でしてね。
初期の理系蛮族はキャスケットに長髪を隠したり、ぱっと見では性別不詳になるような服装をして、己を溶け込ませようとしてました。
まぁ理由は単純で、研究の場で女として見られるのは煩わしいし、友達として溶け込ませて欲しかった。
女だからと区別されるのが嫌で、同列に見て欲しかったんですね。男子の友人達と、肩を並べて仕事がしたかったんですよ。
しかし、理系蛮族はどちらかといえば病弱な方でしてね。
中高の期末試験は毎回インフルエンザとかマイコプラズマやらでひっくり返るし。
未熟児で生まれてきたので足回りの筋肉が付きにくく、体に負担をかけすぎると足の付け根の軟骨がすっぽ抜ける。
金欠だった時に昼飯を全抜きしたりしてた影響でその辺の体質に拍車をかけちゃって、もうザコザコのザコボディだったんですよ。
ろくに荷物は背負えない、すぐ足をすっぽ抜いて歩けなくなる。調査地で風邪をひく。むちゃくちゃ足手まといになっちゃうわけです。
だから、 背負子を背負って山道を踏破してもビクともしないような、頑健ムキマッチョボディに憧れました。マジでムキマッチョボディになりたかった。男に憧れてたんですよ、私は。
ただ、まぁ。
女性である私は、男性には腕力で絶対に勝てませんよ。
同じ量の荷物を持ち上げることは不可能だし、同じ速さで歩く為には小走りしなきゃいけない。
男性に押さえつけられたら、全力で暴れたってピクリとも動けません。
それはもう、とてつもなく悔しいけど覆らない事実。
というわけで、ムキマッチョボディを手にすることは断念した理系蛮族。
男子である同級生たちと同等に、『同じレベル』の事をするにはどうすれば良いんだ、とふたたび悩み始めました。
ただ、理系蛮族は助言を受けたりして気付いたんですね。
学会やら何やらで知らない人と話して交流するのは私だけで、同級生はそういう事が苦手らしい。
複数の作業を同時に並行するのは、私の方が得意らしい。
私にとって当たり前だった行動は、同級生たちから見れば真似ができない特殊な技術だったらしいのです。
私は最初、『話すだけなのになんで躊躇するんだわけわからん』と思っていましたが……たぶんコレは、腕力の代わりに私が持ってた得意分野なんですね。
相手の意見を軟化させる理由には、女性という性別そのものも原因になっていると思いますが……まぁ、それだって磨けば立派な武器になります。
「なんだ、皆と同じ事ができない代わりに、皆とは違う事がちゃんとできるようになってるんだ」
そう思った瞬間、ストンと腑に落ちました。
変えられない能力の差を嘆いても仕方がない。
できない事があるのなら、得意分野で補えるようにすればいい。
なんか、それだけの話だったんですよね。男女の区別をしてたのは、私の方だったみたいです。
そこからは、『同じ事をやれる』ようにこだわるのはやめにしました。
力仕事は足を引っ張らない程度までに鍛えればそれで良くて、残りは自分なりの技術でなんとかすれば良いと思えるようになったのです。
慣れによってつく体力は、慣らして付けました。腰回りの筋肉が弱いのは、筋トレでなんとかしました。
で、男性に寄せることにこだわっていた服装も、まぁふつうにスカート履くようにしました。
直後、痴漢クソボケ地獄に堕ちろ野朗には何度か遭遇しましたが、まぁその辺は本気の本気で睨んだら解決しました。それができる性格で良かったと思ってます。
そんな感じで、理系蛮族は女性であることもまぁ悪くはないのかなと思えるようになったわけでした。めでたしめでたし。
余談ですが最近、理系蛮族は調査と荷運びバイトの影響でちゃんと筋肉が付いてきてですね。
しばらく会ってなかった人には『なんかガタイ良くなってない……?』と眉を顰められるようになり、シャツの肩幅は合わなくなってきました。
足が弱かったりするのは生まれつきなので治せないんですが、ここ半年くらいでちゃんと調査に付いて行けるだけの体力はついたし、ガタイも良くなったんですよ
それを望んだのは私で、実際に筋トレや度重なる調査での肉体労働の結果が出てるわけだから喜ぶべきなんでしょうが……
肩幅オバケの影響で、女性らしいラインの服がなかなか着れなくなってきたという事件の同時発生につき、素直に喜べなくて悶々としています。
でも筋肉は最強だから皆筋トレしようね。
筋肉付いたらだいたいの事は解決するって偉い人も言ってますからね。
そんな感じで理系蛮族は頑張っています。卒論やばいです。
(完)