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今夜重大発表!
新聞のラテ欄の文字に一気に世間も騒がしくなった。
ネットで炎上した噂に各マスコミも追従。
いよいよ事務所から正式発表があると言うわけだ。
重大発表と言ってもあれから一週間、彼らから接触があったわけではない。
ネットでは目撃情報から件の女子校生はT県のN女か共学のM、はたまたS県のYと言われているようだ。
ユリ探しに躍起になっているらしいが、実際は都内の5年前の統廃合で消えた制服。
「手がかりはないのと一緒ね。否定でもするのかも」
梨花に出来る事といえば、同名さんに迷惑が掛からないことを祈るのみ。
「さて行かなくちゃ」
梨花は読んでいた新聞をラックに戻すと、飛行機に乗り込むため立ち上がった。
「違う」
「本当に?」
「ああ。この襟の形ではない。リボンではなくネクタイだった。スカートはプリーツが多かった」
一方円は豊富な資金に物を言わせ、全国の制服問屋からカタログを取り寄せていた。
デザイナーにイラストを起こしてもらい、特別に雇ったチームで特徴が合致する物をピックアップ、じっくり確認したのだが正解がない。
「まさか記憶違いなのか?」
円は自分の記憶に絶対的な自信があったが、ここまで見つからないとなると迷いが出てくる。
駅でも動画をとり続け、老人と女子高生を探していた。
未だにめぼしい成果は出ていない。
すぐに見つかると思っていたユリ探しが難航している。
「なあ、これ見てみろ」
事務所のパソコンでネットを見ていた桐太が、円を手招きする。
「なんだそれ?」
円が覗き込むと、セーラー服で女装した男性がダンスを踊っていた。
「えーっと、セーラーマニアが踊りますだって」
「ふざけてんのか」
「違う違う」
眉間にしわ寄せて立ち去ろうとする円を引き留める。
「よく見ろ。ユリと一致する制服コレクション廃校も含むだと」
「廃校?」
円がもう一度覗き込むと、男性は次々に衣装を替えながら踊っている。
「さすがオタク日本。色んなマニアがいるなぁ。一人でこんなに制服もっているのか。気持ちわりー。合法なのかこの趣味」
笑いながら見ている桐太。二人は小学生まで父親の仕事に付いて世界各国を回っていたため、日本ではアメリカンスクールに通っていた。日本の制服にはあまり縁が無かった。
「くだら……stop!止めろ!」
苦笑いしていた円が弾けた様に叫んだ。
「5年前の制服……だと?」
そこには紛れもなく美里が着ていたセーラー服が映っていた。
動画にはご丁寧にも字幕で制服の説明が付いている。
「じゃあ、あの子は偽物?撮影かなにかだったのか?」
まさかの展開に桐太も驚く。
「この業界にユリがいたなら、俺達が気づかない訳ないんだが……」
「あの駅周辺で撮影がなかったか調べろ!これで見つけられるかもしれないな円!ん?円?」
振り返ると桐太がチームに指示している間、円はパソコンの前で固まっている。
画面はいつのまにか関連動画がランダムに再生されているようだ。
「どうした?そろそろ長谷川さんと打合せの……」
「見つけた……」
「は?」
「ユリ……」
そこにはあの日撮影したコンテスト動画が流れていた。