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「カット!」
「お疲れ様でした!」
「ありがとうございました!」
「はーい チーフお疲れ様でーす。超バッチリでしたよ」
美里が梨花に駆け寄って来た。
「ありがとう。はー思った以上に大変だった」
ベンチに腰掛けながら一息付く。
「似合っていますよ。おばあちゃん♡」
「似合ってたまるかー!」
「お二人ともありがとうございます。お疲れ様です。今日は急なお願い助かりました」
騒ぐ二人の元に、美里の高校時代の後輩がやってきた。
今日は彼女にお願いされて、CMコンテスト出演の為にショッピングセンターに来ていた。
後輩は美容と映像の専門学校なだけに、それぞれのグループが特技を活かしての演出だ。しかしモデルの子にインフルエンザが蔓延して、急遽代打となったのだ。
「大丈夫だよ。今無職で暇なんだから。でも本当にこの特殊メイクってすごいね。どっからどう見てもおばあちゃんだもん」
「お役に立てたならよかったです。本当に素晴らしい技術ですね。それに老人体験セット。腕上がらないし、転びそうだし腰伸びないし大変。お年寄りには労らなくちゃって、改めて身にしみました」
後輩からお茶を受取ながら答える。
「そんなお年寄り達が一斉にキビキビ踊っちゃうってのが、インパクトあるよね」
「先週美里先輩に披露宴の余興で踊った恋ダンスのビデオ、見せてもらっていたんですよね。ショッピングセンターは今日しか許可取れなかったから、思い出して泣きついてしまいました。すみません」
「モデルにメイクは出来ても、完璧踊れる人一日で見つけられないものね。もっと褒めて」
申し訳なさそうな後輩に対して美里が得意げに胸を張る。
「踊ったのは私。あんたの制服は犯罪」
苦笑いしながら梨花が突っ込んだ。
「だってー、私披露宴の時音響係だったから踊れないです。これ高校生の時のなんですよ。祖母をいたわる美少女。まだいける!」
「イメクラ嬢にしか見えないって。それにしても電車の移動も大変だったよ。更衣室ないからって教室からこの格好で。このメガネ白内障シミュレートしていて見えないし、耳鳴り体験の音で周りの音聞こえないし」
「降りる駅も間違えそうになりましたもんね。慌てちゃった」
「そこは間違えないで欲しかった。焦ったんだから。買い物は元々反対側のショッピングセンターしか行かないからね。ここは広すぎて歩き疲れる」
「チーフ、普段からばばあですね」
美里が残念そうな目で梨花を見る。
「ばばあ言うな。もうあんたのお願い聞いてあげないからね」
「いやん こんな可愛い後輩のお願い、いつでも優しく聞いてくれるチーフが好き♡」
慌てておべっかを使う美里。
「自分でもお人好しが嫌になる」
「確かに。倒れるまで働く程、頼まれたら断れない性格ですもんね」
頼まれたら断れないか……前世でも言われたなと思い出した。性格って死んでも直らないらしい。
「ちょろいとか思っているな」
「そんな滅相もない大尊敬してお慕いしておりますわん」
「夕飯奢りね」
「えー殺生な」
美里をいじる事で、こみ上げてくる懐かしさに蓋をした。
前話の意味はこれでわかりましたか?
いつも唐突ですみません(^0^;)
ちなみに前話の長谷川さんはマネージャーさんです。
説明自然に入れられず断念。