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「ち……ちんちくりん?」
動画を覗き込んでいた桐太が、思わず口にしてしまい慌てて口を塞ぐ。
クスッと円が苦笑した。
「あ、いや、えーっと俺達があまり変わらなかったから……ユリが変わるとは想像してなくてだな……」
「無理するな」
「ばーさんならしょうが無いよな年代的に。うん。まるっこくて愛らしい?」
焦る桐太を尻目に、円は無償の愛を与えてくれた面影を思い出す。
夢を叶えたんだな……ユリ。
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深夜、気になる気持ちを抑えられなくて、テレビを付ける
♪♪るーるるるるるるーるる♪♪
「今日のゲストはニレディアンの円さんと桐太さんのお二人です」
「よろしくお願いします」
「ほんと、男前なお二人でいらっしゃる。早速ですが、お二人が現在手がけているドラマ以外にご出演は実に1年ぶりですとか」
「はい。この番組は深夜の生番組ですので、夢を壊したくない子供達は見ていないですし、明日が最終回ですのでお邪魔しました」
「まあまあ、ありがたいですわね。お二人がデビュー時ご出演された時は、グループ名の由来が、希望とか神の国など仰ってましたが、何語なんだろうと不思議でした。番組を見て漸く理解できました」
「ご覧頂けましたか。ありがとうございます」
「勿論。お名前も不思議だったんですの。桐太さんは一般にも聞くお名前ですけど、円は男性で下の名前って珍しいですもの。でもどうやって赤ん坊の頃親に伝えたのかは未だに謎ですね」
「母が妊娠中から考えていた名前らしいのです。エコーで骨盤とへその緒に隠れていて、最後までシンボルが見えなかったので、女の子と思われて居たらしです。いざ男の子と解っても、ずっと呼びかけていたので思いつかなかったらしいですね」
「まあまあ、シンボル。おほほほほ。深夜ですからいいんですよ。おほほ。それでも円と偶然に思いついたのかしら?」
「神のお導きですかね。異世界の神は地球だったと、調べれば調べるほど確信しています」
「まあ、生まれ変わったから?」
「そうですね。ニレディアンを見限ったはずが、やはり気になっていたのでは無いかと。地球の血も引いていましたし」
「ドラマではお二人は同じ歳となっていますが」
「はい。今2歳差があるのは僕らでは理由は解りません。」
「ネタバレになりますが、没年齢が違うので、少し差異がでたのではないかと」
「あらー。では御姫様も違うのかしら?」
「その可能性はあります。また僕は魔力を使い果たして死んだので、魂が輪廻の輪に入るのが遅れたのでは無いかと思っています」
「ご母堂が執筆されていますけれども、愛の言葉など素面で伝えていらっしゃるの?」
「いえいえ。そこはアドリブで。流石にちょっと言えませんね。前世の記憶はあっても、親はやはり親なので」
「そういえば円さんはお痩せになりましたわね」
「ええ、最終話に向けて精神的に辛い物があったので。伝える為とはいえユリを失う場面はお芝居と解っていても……やはり……」
「まあ明日はハンカチ必須ですの?」
「それは見てから個人の感想にお任せします。ユリも、もしかしたら見るのが辛く見ないかもしれないので、見て欲しい事を伝えたくて今日はお邪魔しました」
二人が司会者から視線を外し、カメラを正面に見た。
「必ず見て下さい。貴女の知らない真実や、僕らの気持ちを解ってほしい」
……知らない事……知りたくない事ならあるけれど……
「終わったらどうされますの?」
気がつけば番組も終了間際になっていた。
「ユリに繋がる手がかりが得られたので、デビュー時の約束通り、引退します」
円の突然の引退発表だった。
「えええ!世の中のお嬢様方が、テレビの前で悲鳴をあげていますわよ」
ほんとだよ!謎の女子高生だけで引退するなよ!悲鳴どころか突っ込みの嵐だよ!
梨花はその日、眠る事が出来なかった。
前世が長かったので一休みの短い幕間
トーク番組は架空の物です!w
インタビューは誰が答えてもいいので一々二人の内のどっちとか書かなかった。
めんどくさかったわけでは……ないと……てへ