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甘い時間は永遠に。



「ねえ、レイエス……これ凄く恥ずかしいんだけど」


「うん? そうかな。恋人同士なら普通だと思うけど」


普通な訳あるか! と叫びたい。

嫌なんじゃないよ。ただ恥ずかし過ぎて居た堪れないというか。


現在、ソファに座るレイエスの膝の上に横向きで座ってます。


だって、少しも離れたくない、なんて甘えられたら拒否出来ないよね。好きな人限定だけど。

私って甘えられるのに弱いみたい。

しかも、レイエスはそれを把握して行動してるっぽいし。


あれですか。私、手の平の上で転がされてますか。まあ、いいけどね。それも嫌いじゃないから。


「それにしても、どうして解決までにそんなに時間かかったの?」


時間がかかった事は、実はどうでもいいけど。一応訊いてみる。


「本当に訊きたい事はそれ?」


レイエスは私を覗き込むようにして問い返す。何だか心を見透かされてるみたいで腹立つ。


「……どうして、一度も会いに来てくれなかったの」


一ヶ月、全く会えないなんて、普通に考えたらおかしい。

同じ敷地内にいたのに。どんなに忙しくしてても、レイエスなら会いに来そうなのに。


「うん、ごめんね。詳しくは言えないけど、俺もアルも監視されてたから、会いに行けなかったんだ。アンジーを巻き込みたくなかったから」


真剣な表情に嘘はない。


「私を守ろうとしてくれたの?」


「当然だよ。大切な人を危険に晒したい訳ないでしょ」


私は人に守ってもらうような弱い女ではないけれど。好きな人に、レイエスに守りたいと思われるのは嬉しい。


「そっか。ふふ、ありがとう」


顔が勝手に緩んでしまう。何だか自分が恋する乙女みたいで気持ち悪いし、変な感じだけど、たまにはいいよね。




訊きたい事も聞けたので、お弁当を机に広げてランチタイム中。

レイエスは左手を私の腰に回して、右手で食べている。


どう考えても私、邪魔だよね。


「アンジーの玉子焼き、食べさせて」


レイエスの言葉に、ちょっと驚いた。

あーん、しろと? どこのバカップルですか。いや、膝の上に座ってる時点でバカップルか。


玉子焼きを箸で掴んで、レイエスの口に持っていく。


薄めの唇が開いて赤い舌が見えた。

玉子焼きを口に入れて咀嚼するレイエスを見てると、食べ終わったのか、赤い舌で唇をぺろりと舐める。


「甘い」


レイエスの言葉に反応出来ず、ひたすら唇に視線を寄せてしまう。その唇が柔らかいのは、もう知っている。


その感触を思い出して、ゆっくりとレイエスに顔を寄せていけば、薄く微笑んだレイエスは優しく迎えてくれた。

口付けを誘導されたのはわかってるけど、それでもいい。私もしたかったから。レイエスになら転がされたって構わないよ。


啄むような口付けをしながら、箸を取り上げられて机に置く。


「アンジー。アンジェリーナ。愛してるよ」


私の唇を食むようにしながら、合間に熱っぽく囁く。

唇を舌で舐められて自然と開けば、レイエスの舌が口内に侵入してきた。

舌を絡めて、吸い上げて、好きに貪られて息が上がる。


「アンジェリーナ」


唇を離してレイエスが私の名前を呼んだ。

上気した顔のままレイエスと瞳を合わせる。


「アンジーが学園を卒業したら、俺と結婚して欲しい。出来るだけ早く婚約して、俺だけのアンジーになって」


真剣な表情で婚約の申し込みをされて、私は照れながらも迷いなく頷いた。


「はい」


短く、明確な返事にレイエスは、蕩けるような甘い微笑みで私を見つめた。


「良かった。早めにお互いの家に挨拶に行こう。先に手紙で報告しておくよ。一刻も早く婚約したいからね」


「レイエスのご両親は反対しないかな?」


レイエスは公爵家だけど、私は伯爵家だ。これくらいの差なら普通だけど、他に縁を結びたい家があるかもしれない。


「それは大丈夫だから、安心して。俺はアンジーのお兄さんの方が心配だよ。ま、反対されても絶対諦めないけどね」


兄の私に対する溺愛ぶりを知ってるからか、レイエスは困ったように眉尻を下げた。


「ふふ、最初は反対されるかもね。でも、私の幸せを願ってくれてるから。大丈夫。私も手紙出しておくね」


手紙が届いた瞬間、王都までやって来そうだな。なんて思う。

それならそれで、レイエスを紹介出来るからいいんだけどね。


「わかった。アンジー、婚約したら遠慮はしないから」


にっこり笑顔のレイエスに、意味がわからなくて視線で問いかける。


「婚約したらアンジーの全てを貰うから。だから、その時は抵抗しないで、素直に俺のモノになってね」


その言葉の意味を理解した瞬間、全身に熱が集まって燃えるかと思った。殺す気ですか!

それは、あれですよね。そういう意味ですよね。


「……ええと……はい」


どうぞ、お召し上がりください。なんて言える訳ないから。これで精一杯だから勘弁してください。


レイエスは楽しそうに笑って、私の額に頬に鼻先に、口付けを落としていく。最後に唇にチュッと軽く音を立てて離れた。


「明日の昼からは、アンジーのクラスまで迎えに行くよ」


いきなりの話題転換に思考が追いつかない。茹だった頭を無理矢理に働かせる。そして、その内容に首を傾げた。


「えと、どうして?」


「皆にアンジーは俺のモノで、俺もアンジーのモノだって知らしめたいから、かな」


令嬢達の嫉妬に晒されそうだなと思いながらも、それも良いかもしれないと思った。


レイエスは凄くモテるから、私達が一緒に居れば少しは牽制になるかも。

他にも牽制になる物を思い出して、お弁当の袋の中からある物を取り出した。


私は膝の上から降りて、隣に座ってレイエスを見上げる。


「レイエス、左手出して」


いつかとは逆だ。不思議そうにしながらも、レイエスは素直に左手を差し出してくる。

大きな手に長い指。街で買った指輪をレイエスの薬指に通した。サイズも調整して貰ったからぴったりだ。


「指輪?」


レイエスの指に通した指輪は、私の瞳の色をしたアメジストの宝石がついている。


「ブレスレットのお礼だけど、お揃いで買ったの……やっぱり指輪は重いかな」


私用の翡翠の宝石がついた指輪を、手に持ってレイエスに見せる。

やっぱり重いかな、と少し心配になったけど、レイエスは二つの指輪に目を向けて嬉しそうに笑った。


「重くて嬉しい。誓約の指輪なんかより、アンジーに貰った指輪の方が想いが篭ってて凄く嬉しいよ。それにお互いの瞳の色の宝石を身に付けるなんて、これ以上の証はないよね」


私が持ってる翡翠の宝石がついた指輪を、レイエスが私の左手薬指に通した。そして、手の甲に優しく唇を落とす。



国から用意された指輪だけではなく、自ら指輪をつける人は居ない。それだけ指輪の意味は重いという事だ。


なのに嬉しそうに笑うレイエス。


「重いのに嬉しいの? 私、かなり独占欲強いけど、大丈夫?」


今更だけど一応伝えておく。嫌って言っても、もう遅いけど。離す気は更々ない。


「それだけアンジーの想いが強いって事でしょ。それに、俺を独占出来るのは、永遠にアンジーだけだから」


そう言って額に優しく口付けてから、唇にも口付けられる。


「愛してるよ。アンジーは?」


優しい瞳と声に促され、私はレイエスの左手を、きゅっと握り締めた。


「……私も、愛してる」


翡翠色の瞳を見つめて、真剣な想いを告げる。

そして、レイエスは幸せそうに微笑んだ。


愛しい人の、この表情を曇らせないように。

いっぱい愛して、ずっと大切にしていきたい。


そう心から思った。


何か問題があっても全て捩じ伏せるから。

そうする為の力はあるし、頼れる友人も家族もいる。



だから、私達に波乱はない。






完結までお読み頂いて、ありがとうございました!


初めての投稿でしたので、緊張しまくりでしたが。

どうにか完結まで勢いで突っ走りました。


あまり肉食さが足りなかった気もしますが、これがレイエスだと言う事で。


それでは、また。番外編が出来たら投稿したいです。

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