私の真剣な想い
王都で最近話題になってる事を、昨日メアリが調べてくれてたんだけど。
ある高位貴族が反逆行為を行って、それに賛同していた者達も一斉に粛清されたらしい。
これって、もしかしてアル達がやってた事だよね?
何か知らないうちに話が大きくなってるような。
元々はアルに娘を嫁がせたい貴族が、邪魔なマリアを抹殺してやる、みたいな話だったよね。
何でいきなり国家反逆罪?
メアリに詳しく訊いてみたら、王太子を暗殺しようと何度も暗殺者を送り込んだり、自分の娘を嫁がせて、アルを王にしようと阿呆な事企んでたとか。
もしそれが本当なら、アルにとっては迷惑な話だよね。
まあ、本当の所は訊かないとわからないけど、メアリと影が調べた事だから概ね間違いはないだろうね。
とりあえず問題がなくなったなら、それで充分だけど。
という事で。一ヶ月振りに庭にやって来ました。
ちょっとドキドキしてます。
でも、私もマリアも想いを伝えるって決めてたけど、二人きりになれなきゃ無理なんですが。
公開告白なんて無理だから。どんな羞恥プレイですか。
庭には、アルとレイエスが既に居たけれど、エイデンの姿が見えない。
「マリアにアンジー。久しぶりだね。元気そうで良かったよ」
アルが爽やかに挨拶して、私達もそれに応える。マリアは不満も零してるが。
「本当に久しぶり。全然元気じゃなかったよ。それより、エイデンはどうしたの?」
マリアが不思議そうに訊けば、アルは愉快気に笑った。
「エイデンは、婚約者と過ごしているよ」
「え? エイデンって婚約者居たの? 知らなかった」
アルの言葉に吃驚して、つい大声が出てしまった。
マリアはどうやら知っていたみたいだけど。乙女ゲームの設定か。
でも、全くそんな素振りはなかったよね。いつも眠そうにここに居たよね。
「一応、二年前に婚約はしてたよ。けど、エイデンが女嫌いだからね。でも最近は打ち解けてきたようで、今日からはもうここには来ないよ」
多分ね、と愉しそうに付け足すアル。
婚約者と上手くいき始めた所なのか。
もしかして、アルとマリアの恋が実るから、他の攻略対象者の恋も進むようになった。って事かな。
そう考えるとちょっと恐いよね。何だか全て決められてるみたいで。
ま、もし本当に決められてるなら、私の家は既に没落しちゃってるから。してないって事は、いくらでも未来は変えられるって事だよね。うん。
レイエスに視線を向ければ、いつもと違って大人しい。
ただ真っ直ぐに私だけを見ている。
久しぶりにレイエスの顔が見れて、嬉しくて心臓が煩い。
「レイエス、どうしたの? 大人しいね。風邪でも引いた?」
喜びを押し隠して問いかける。
レイエスは、まだ一言も声を発していない。
熱でもあるのかと心配すれば、レイエスはいきなり私の手を握って歩き出した。
「え? ちょっと! どうしたの」
慌てる私の言葉も黙殺して、手を引くレイエス。
「アンジー、また後でね」
マリアの暢気な声に後ろを振り返れば、笑顔で手を振っていた。
アルは……噴き出しそうなんだけど。
とりあえず、手を引かれるままレイエスの隣に並ぶ。
横顔を見上げれば、どこか焦ってるような顔で心配になる。
繋がれた温かいレイエスの手を、きゅっと握れば更に強く握り返された。
繋がれた手にドキドキしてると、目的地に着いたのか、部屋に押し込まれた。周りを確認すれば、レイエス専用の個室だった。
レイエスもすぐに入って、後ろ手に鍵を閉める。
無機質な音が無人の部屋に響いた。
「アンジー、ごめん」
どうして謝るんだろうと思った瞬間、私はレイエスの腕の中にいた。
引き締まった胸が頬に当たり、レイエスの長い腕は、私の背中と腰にきつく巻きついている。顔を私の髪に埋めるようにされて、ちょっと擽ったい。
「レイエス? ……大丈夫?」
私の耳に聴こえるのは、レイエスの息遣いと、激しい鼓動。
もしかしたら私の心臓も煩くなってるかもしれない。
「……やっとアンジーに会えた。会いたかった……ごめん、もう少し抱き締めさせて」
ぎゅっと抱き締めながら、掠れた声を出すレイエスに、つい笑ってしまう。私だって会いたかったんだから。
私も腕をレイエスの背中に回して抱き締めれば、意外にも広い背中にドギマギする。
「そうだね、久しぶり。お疲れ様、かな?」
「うん。疲れた……告白した次の日から一ヶ月も会えないとか最悪だよ……アンジー、俺の気持ち忘れてないよね」
耳元で低く囁く言葉に心臓が跳ねた。色気を垂れ流すレイエスは心臓に悪い。いつか、これに慣れるんだろうか。うん、無理かも。
「俺に会えなくて少しは寂しかった? 少しは俺の事、考えてくれた?」
レイエスが話す度、耳に息がかかって顔に熱が上る。
お願いだから耳元で喋らないで。頭が真っ白になったら困る。
レイエスに伝えたい事あるんだから。頑張れ私。
「うん……凄く寂しかったし、レイエスの事、いっぱい考えたよ……私は、レイエスが好きだよ」
私の告白に、レイエスの身体がビクッと震えた。
背中に回していた手を胸に当てて少しだけ離れれば、レイエスの表情がよく見えた。
レイエスは、驚愕に目を見開いて私を凝視している。
「私はレイエスが好き、大好き」
目を合わせて、もう一度はっきりと伝えれば、徐々にレイエスの頬が朱に染まっていく。
レイエスも赤くなったりするんだな、可愛いな、なんて思ってると、レイエスの右手が私の頬に優しく添えられた。
ほんのり頬を朱に染めたまま。それでもレイエスの鋭い視線が、私の瞳を真っ直ぐ射抜く。
「本当に? 嘘じゃないよね」
疑いの言葉に一瞬眉を寄せそうになったが、仕方ないかとすぐに思い直した。
一ヶ月前に告白されてから、一度も会ってないし、レイエスからしてみれば急に感じるだろう。
疑うのは信じてない訳じゃなくて、ただ恐いんだと思う。
その気持ちは私にも分かるから。
だから。
「レイエスに告白された時、凄くドキドキして、真っ直ぐな気持ちを向けられて、凄く嬉しかった……レイエスと会えなくなって寂しかったし、もしレイエスの隣に私以外の女性が居たら、なんて考えただけで凄く腹が立った。ただの想像なのにね」
想いを全て言葉にして伝える。伝えなきゃいけないと思ったから。
よく言葉より行動が大事なんて言う人もいる。
確かに行動も大事だけど、言葉にしなければ伝わらない事も沢山あると思うんだよね。
だから、私は伝える。レイエスに私の想いが届くまで。
「私は、とっくにレイエスに落ちてたの。気付くのが遅くてゴメン……私はレイエスが凄く、凄く好きなの」
言い切った途端、唇が柔らかい物で塞がれた。
レイエスの顔がすぐ傍にあって、口付けられた事に気付く。
数秒で離れた唇はまだ近くにあって、二人の吐息が混じり合っている。
間近にあるレイエスの翡翠色の瞳が、幸せそうに細められた。
「……アンジー、ありがとう。俺を好きになってくれて……凄く幸せだ。愛してるよ、アンジー」
想いの篭ったレイエスの言葉に、私も幸せな気分で微笑んだ。
どちらが動いたかもわからないくらい、自然に二人の唇が深く重なった。
次で完結です。




