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会いたい想いと魔物狩り



メアリと王都の屋敷へ寄って、魔動車に乗り込んだ。

これから王都の外に出て、魔物を狩りに行くのだ。


自分の想いを自覚してから、まだレイエスに会えていない。

そのせいか、最近ストレスを感じてるみたいで、発散しないと発狂しそうだし。いや、本当にはしないけどね。


自覚した途端、寂しいと思うなんて。私も大概単純に出来てるよね。


「アンジェリーナ様、どうせなら冒険者ギルドでご登録されては如何ですか」


冒険者ギルドとは、どこの国にも属さない独立した組織で、世界中にギルドの支部がある。

魔物討伐や薬草採取、護衛等の依頼を受けて報酬を得る仕事だ。

その他にも、魔物の素材の買い取りも行っていて、ギルド登録者には金額が高めに設定されてるらしい。



領地に居た時は、魔物の剥ぎ取りは自分でやっていたけど、ギルドへは使用人が行き、纏めて買い取ってもらってたので、私はギルドに登録していなかった。


その時の私の取り分だけでも、結構な金額が貯まってたりする。

それに、兄が何でも私に買い与えるから、全く手付かずで残っている状態だ。


確かに、これからは必要かもしれない。また休みには魔物狩りしたいしね。


「うん。じゃあまずはギルドに行こう」


私の言葉に魔動車が動き出す。


「そういえば、メアリは登録してるの?」


「はい。使用人は全員ギルドに登録していますから」


ふと気になって訊いてみれば、にっこり答えるメアリ。

全員って、さすが兄が選んだ使用人だよね。


冒険者ギルドに到着して降りれば、目の前に一際大きな建物があった。

中に入れば沢山の冒険者達が居るけど、どこか役所のような雰囲気だ。


「こんにちは。本日はどのような御用件でしょうか?」


受付カウンターに足を進めれば、茶髪の綺麗な女性が笑顔で対応してくれる。


「冒険者登録したいのですが。あ、私だけです」


私の隣にメアリがいるので、一応言っておく。


「登録ですね。かしこまりました。それでは、こちらの用紙にご記入をお願いします」


差し出された用紙を見れば、名前、年齢、職業の項目があった。

さっと書いて受付嬢に渡す。


渡した紙を確認してから、プリンタみたいな魔道具に紙が吸い込まれていく。

その後に名刺くらいの大きさのカードが出てきた。


「それでは、こちらのカードに魔力を流して下さい」


金色のカードを渡され、魔力を流してみると、先ほど記入した文字が表れた。


「これで、ギルドカードへの本人登録は完了です。本人以外は使用出来ませんので、ご安心ください。こちらがギルドの規約です。説明は必要でしょうか?」


規約の紙を渡された。これで登録は終わりらしい。非常に簡単で速い。素晴らしいね。

詳しい説明は後でメアリに訊けばいいよね。


「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」


お礼を言ってから、足早にギルドから出る。

何人かの冒険者が私達を見ていたので、絡まれる前にさっさと退散しなきゃね。


魔動車に乗り込み、今度こそ王都の外へ向かう。

それまでメアリが簡単にギルドの説明をしてくれた。


冒険者にはランクがあり、ランクはSからFまで。

新規登録した私はFランクだ。

ランクアップするには、依頼をある程度受けて成功させること。

または、ギルド職員が選んだ冒険者と模擬戦をして、闘う力を証明する事で可能となる。

依頼はランク毎にわかれており、1つ上のランクの依頼まで受ける事が出来る。

依頼期限内に依頼を成功させなかった場合、失敗となり違約金が発生する。

滅多にないがギルドが発行した緊急依頼は、そのランクに該当する冒険者は強制参加しなければならないこと。

冒険者同士のいざこざにギルドは関与しないこと。



うん。まあ、普通だよね。

それに、私はランクを上げたい訳じゃないから。

素材の買い取りをしてくれるだけで充分だし。


今日は空間魔術で作った鞄が六つもあるから、たくさん魔物の素材を詰め込めて安心だね。

あ、この収納鞄もうちの領地で製造して売ってます。

商人が大量買いしてくれるから有り難い。



やっと森に着いて、メアリと一緒に森に入って行く。

王都近くの、この森には魔物が多く生息していて、よく商人や旅人に被害があるらしい。

その為、ここにいる魔物の討伐は常時依頼になっている。


「アンジェリーナ様。素材の剥ぎ取りは時間が掛かりますので、今日はそのままギルドに持ち込みましょう」


ギルドで剥ぎ取りもしてくれるらしい。その分の金額は引かれるみたいだけど。


「うん。わかった」


剣を片手に森の奥に進んで行けば、すぐに魔物が現れた。


赤い目をしたブラックウルフの群れだ。涎を垂らして唸っている。群れは私達を囲むように移動していく。


飛びかかって来たブラックウルフに、剣を一閃すれば綺麗に頭が落ちた。血が勢い良く噴き出し、力なく地面に転がる。

次々襲いかかってきては、正確に首を落としていく。


戦闘時間は五分も掛からなかった。

服も返り血すらなく綺麗なままだ。


転がるブラックウルフの死体は、全部で十二体。メアリと一緒に収納鞄に入れて、また移動を開始する。


移動して、戦闘して、それを三時間ほど繰り返して、冒険者ギルドに戻った。


倒した魔物は、強いものから雑魚まで全部で六十体以上。殆ど私が殺っちゃったんだけどね。やり過ぎたかな。


でも、少しは発散出来たかな。



冒険者ギルドで全て買い取ってもらい、そのお金で買い物をしていく。


ギルドでは女二人が魔物を大量に狩った事で、ちょっとした騒ぎになったが、メアリがAランクだったお蔭で事なきを得た。


「メアリ、お疲れ様。Aランクだったんだね。本当に助かったよ」


「いえ、アンジェリーナ様に面倒が掛からなくて安心しました……それに、アンジェリーナ様が元気になられて私も嬉しいです」


優しい微笑みを浮かべるメアリに、私は苦笑した。


「そんなに落ち込んでるように見えたかな?」


「昔からご一緒に居ますので」


表面上ではいつも通りにしてたつもりだけど、メアリにはバレバレだったらしい。


レイエスと会えなくなって、もう一ヶ月は経っている。

いい加減会えてもいいと思うんだけど。まだ解決しないのかな。


相変わらず学園で遭遇する事もないし。一目だけでも見られれば充分……ではないけど。

全く見られないよりはマシか。


ここまで会えないと、逆に避けられてるのかなって気になるよ。告白してきたんだから、少しくらい無理にでも会いに来てもいいよね。そう思う私は我が儘なのかな。


何か理由があるなら仕方ないけど、会ったら絶対に問い質すから。


「スタークス公爵子息の事ですか」


考えてた人物の名前を出されて、内心慌てた。勿論、顔には出さないよ。まあ、既に私の気持ちも知ってるんだろうけどさ。


「まあ、そんな所かな。そういえば、前に四人で出掛けた事って、お兄様に伝わってるの?」


何となく、レイエスの話をメアリとするのが気恥ずかしくて矛先を変えた。


「はい。影が報告しています」


だよね。わかってた。影の部隊大活躍だね。

王都には影の部隊が散らばっている。情報収集は大事だから。


うん。わかってるよ。でも何でもかんでも報告しなくていいと思うのも仕方ないよね。


「お兄様。怒ってたり泣いてたりしてないよね?」


私の言葉にメアリが可笑しそうに笑った。


「報告をした時のご様子を聞くと、怒っていらしたかと。すぐにスタークス公爵子息の情報収集を始めていたようですから」


「そっか……まあ、いいんだけど」


そのうち自分で兄に報告しなきゃいけない事だし。

どのみち情報収集はするんだから、既にしてても問題ないよね。



目当ての店が見つかって、足早に歩を進める。


この前、レイエスにブレスレットを貰ったから、お返しを購入するつもりだ。

ちょうどお小遣いも入ったしね。結構な金額だったのには驚いたけど。


お揃いの指輪とか。重いかな?

私って、かなり独占欲が強いんだと思う。


この国では婚約の時に誓約の指輪をはめるけど、それはある意味呪いに近い代物で。それに、国からの強制だし。


それとは関係なく、指輪を贈る習慣はないみたいで。

何かそれって悲しくない? と私は思う訳で。前世の記憶のせいだろうけど。


まあ、ただの言い訳だけどさ。私がお揃いの指輪をしたいだけ。


店内にある商品を見てると、一点に目が引き寄せられた。


シルバーの指輪が対になっていて、アメジストと翡翠の宝石がそれぞれに付いている。

私とレイエスの瞳の色をした指輪に、ちょっと感動した。

まるで私達の為の指輪だ。なんて、思考がお花畑になっちゃうくらいには。


もう、これしかないよね。決めた。






学園に到着して部屋へ向かえば、部屋の前にマリアが居た。


どこかソワソワしたマリアを部屋に入れる。

メアリが紅茶を用意してから、使用人部屋に向かうのを、チラチラ確認するマリア。


落ち着きのないマリアを、つい胡乱な目で見てしまう。


「マリア。落ち着きなよ。一体どうしたの」


私が問いかければ、マリアは勢い良く身を乗り出した。


「さっきね、連絡が来たの! 明日からまた一緒にランチ出来るよ。もう嬉しくて嬉しくて! 早くアンジーに伝えなきゃって思ってたのに、部屋に居ないからずっと待ってたんだよ」


マリアの言葉に一瞬固まった。


「……本当?」


自分の声が掠れてるし震えてる。情けない。


「うん。アルの執事のセバスチャンが伝えに来てくれたの」


セバスチャン。本当にそんな名前だったんだ。冗談で思ってただけなのに。なんてどうでもいい事を考えて、何とか気持ちを落ち着ける。


ついでにマリアに訊いてみれば、実はマリアが勝手に『セバスチャン』と呼んでるだけらしい。本名は王家しか知らないとか、セバスチャン何者?


「って、今はセバスチャンはどうでもいいから。明日は昼になったらすぐに行こうね」


マリアの言葉に、隠しきれない喜びが溢れて表情が緩んだ。

全然、落ち着けてないし。落ち着ける訳ないよ。


会える、ただそれだけで心が弾む。さっきまでの落ち込んだ気持ちも綺麗に晴れる。


いつの間にか。もうこんなにもレイエスが心にいる。想いが深くなってる。早く気持ちを伝えないと、溢れてしまいそうだ。


私のだらしなく緩んだ顔を見て、マリアも幸せにそうに笑った。


「やっとだね。まさか一ヶ月も会えないとは思ってなかったから、明日は絶対アルに甘えまくる!」


マリアの可笑しな宣言に、つい噴き出した。

つられるように、マリアも笑ってる。



やっと、レイエスに会える。


多分、今夜は眠れそうにない。





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