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恋話と自覚



王都観光の日から十日経ったが、まだ彼等とのランチは再開されてない。


ここ数日はクラスの友人達と、一緒に食べている。


私達が昼休みに居なくなってる間に、カップルが二組出来上がっていた事に吃驚した。

ナイジェルとユエラ嬢、ドミニクとセシル嬢が仲睦まじくしていてる。全然気付かなかったよ。


とりあえず、私とマリアは邪魔だよね。ごめんなさい。

皆が幸せになんて、博愛の心は全くないけど、友人達が幸せそうで私も嬉しいよ。


身の置き所ないけど気にしないから。うん。




今日の模擬戦は勝ち抜き戦で、最後まで残り、たくさん戦えたので気分はすっきり。

学園に通ってから魔物と闘う事もなく、どこか物足りなかったけど少しはマシになったかな。


いや、やっぱりそのうち王都を出て、メアリと一緒に魔物狩りに行こう。




授業が終わり、また私の部屋でマリアと過ごしている。


あの次の日、いつもの庭に向かえば、王子付きの執事が待っていて、暫く会えない事を伝えられたのだ。

いつまでかは分からない。会えるようになったら連絡が来るらしい。


強盗を雇った貴族を調べたりして忙しいんだろう。

ゲームと同じ展開だったり、同じ黒幕だったらいいけど、そうとは限らないから心配。

私は細かい所は全く覚えてないから、最初から役立たずなんだけどね。


マリアもその事はわかってるけれど、アルに会えないのが辛いのか元気がない。

この世の終わりみたいな顔で、項垂れるマリアが目の前に映る。


「マリア。元気出しなって」


「うーっ。だってアルに会えないなんて寂し過ぎる」


唸るマリアに思わず苦笑する。


「仕方ないでしょ。いくらアル達だって授業は休めないから、昼休みや放課後の空いてる時間を利用してるんだろうし」


「転移してでも会いに行きたいよー」


「敷地内だから無理だし、どこに居るかわからないでしょ」


学園の敷地内では、魔法の使用は授業のみと決められている。放課後や、休日に自主練したい人は、教師に使用許可を貰わなければいけない。

もし許可もなく魔法を使用すれば、教師の裁量によって罰が与えられるのだ。

一週間毎日三十kmランニングとかね。期間と距離は色々だけど。なかなか建設的な罰だよね。


「うん……わかってる。わかってるんだけどね。はあ、辛い……アンジーはレイエスに会えなくても大丈夫なの?」


頭をコテンと傾げるマリア。

私は左手首にあるブレスレットを撫でて考える。


「うーん。確かに今まで毎日のように昼は一緒だったから、会えないのは変な感じはするかな」


最近は学園騎士団の巡回もないし、昼に会えなければ全く顔すら見れない。

約束がなければ、こんなに簡単に離れられるんだな。なんて不思議に思う。


まあ、今はアルとマリアの恋が実るかの大事な時だからね。


「ふーん……で、実際どうなの? レイエスの事は好きなの?」


いきなり恋話ですか。

レイエスに告白された事は話してあるから、やっぱり気になるのだろう。


「どう……かな。レイエスの嘘のない真っ直ぐな気持ちは嬉しいと思うし、ドキドキもするけど。それが恋かと訊かれたら、まだ自信ない」


告白されてからレイエスの事を考えてたけど、まだ答えは出ない。そんな素直な気持ちを吐露すれば、マリアは頷いた。


「なるほど。レイエスの恋が叶うのはすぐだね。良かったよ」


「いや、まだわからないからね」


何だか話が勝手に進みそうで、慌てて待ったをかける。


「うん。アンジーって、自分の気持ちには鈍感なんだね。とりあえずさ、レイエスの隣に他の女性が居るのを想像してみて。その女性にレイエスが優しく微笑んでる所」


マリアに鈍感と言われて軽くショックを受けたげど、今は流しておこう。


一応、マリアに言われた事を素直に想像してみる。


私だけに見せる甘い笑顔が他の女性に向けられて、熱の篭った瞳もその女性しか映らない。

私じゃない誰かに、レイエスの全てを奪われる。


「……あー、うん。凄い腹立つわ」


ムカツクし、気分が悪い。

その女もレイエスも滅茶苦茶にしてやりたくなる。

って、ただの想像なんだけどね。想像でも嫌だ。


どうやら、とっくに落ちてたみたい。レイエスに。何時かなんてわからないけど。


そう気付けば、確かに私は鈍感だったのかもしれない。

レイエスと友人になってから、何度もドキドキしてたのに。それすら否定して気付かない振りしてた。


鈍感というより、臆病だったのかな。

レイエスのその感情は一時のもので、すぐに消えてしまう気持ちかもしれない。なんて勝手に思って、惹かれないように、信じないようにしてた。


真剣に想いを伝えてくれたレイエスに失礼な話だよね。

でも、もう逃げないから。


「アンジーは難しく考え過ぎだからね。自信なんて必要ないよ。本能で感じなきゃ。ま、もう自覚したようだけど」


ニヤニヤ笑うマリアにデコピンしておく。何かイラッとしたから仕方ないよね。ただの照れ隠しだけどさ。


「……いつ解決するかわからないけど。今度会ったら、ちゃんと伝えるよ」


「うん。私も! アルに気持ち伝える!」


私の宣言に、マリアも気合いを入れて宣言する。

マリアの気持ちは本人にも皆にもダダ漏れだけど、直接本人に伝えるのとは違うからね。


まあ、解決した時はアルから婚約の申し出がありそうだけど。

どっちにしてもハッピーエンドか。


それからは、昼休みだけじゃなく、堂々と会えるようになるだろうし。良かったねマリア。

令嬢達の虐めからはアルが守るだろうし、私も守るよ。

徹底的にやって二度と虐めなんてしないようにね。



うん。それじゃあ、お互い頑張りますか。


「早く解決するといいね」


私もレイエスに素直に気持ちを伝えて。

兄にも報告しなきゃね。怒るかな? いや泣くかも。






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