魔力測定
しばらく待つこと、数十分。
再びドアを軽くノックする音が聞こえ、すぐに入ってくるエルフィス。
ステータスがどうこうとか思し召しがどうこう、とか言っていたが、何をしていたのかは全く分からず。
ただ、その両手には色々な、いや、怪しげな道具がいくつも揃えられている。
怪しげな水晶、ボロボロな白紙の紙(ボロボロな、と言っているがこの世界では当たり前に使われている羊皮紙。)、鞘に収められた短剣、後は小さい計算機っぽい物。
なんか凄く・・・怪しいです。
「待たせたな、この紙がなかなか見つからなくてな。さて、この世界、リストシアのお気に入り、君のステータスはどんなものかな。」
全ての道具を一度テーブルに置き、何かを楽しみそうな笑みをその美しい顔に浮かべ、裕也に説明を始める。
「まずはこの紙だな、この紙にその者の血を流すことによって、その者の強さ諸々を調べることができる。
まあ、我々《この世界》はステータス、と呼んでいるが。
それと、この水晶は使える魔法の属性を映し出してくれる。抽象的にだが。
後は、計測器だな。ユウヤの持っている魔力の量を調べてくれる。
こちらに必要なのは、唾液、血、汗などの、その人の分泌する体液だな。大抵は血で、ステータスの方と一緒に済ましてしまうが。」
普通は他人に見せるものではないのだが。と付け加えて、私にも魔力の量くらいは見せてくれ?楽しみで仕方がないんだ。
と一言も二言も付け加えて、純粋に楽しみそうな、顔をこちらに向けている。
これもしかして短剣ってアニメとか映画とかで指を切って血を垂らすような、アレか?
痛そうだとか思ってたがまさか自分でやる羽目になるとは。
やっぱり最初はステータスか?でも初っ端から指切り(物理)か・・・。
まあ俺も気になるしやってみるか・・・。
「じゃあこれ、借りるな。」
そういい、テーブルの上の短剣を拝借し、刃を鞘から抜く。
やっぱり刃物は怖いな、包丁持つのとは訳が違うぞ。
短剣を右手で持ち、鋭い刃を左手の親指にそっと向け上から下に向け、力を入れ、スッと刃を這わせる。
あ、この短剣鋭いから実はぱっと切れて痛くないかも、とか思ったら普通に指切った、って感じで痛いわ。しかも血が思ったよりだらだら出てくる。
それを見たエルフが顔色を変え叱責する。
「バカッ、切り過ぎだ。こんな血を出して測定する物じゃないぞ!
まさか、短剣の扱いにすら慣れてないとは、驚いたぞ。後で治してやるから、とりあえず紙と計測器に血を流し込んでしまえ。」
「お、おう、そんな力入れたつもりはないんだけどな。」
と慌てて、それでも余り血が落ちないように、紙に一滴、計測機の裏側に一滴、と少量を流し込み、ふぅ、と一息付く。
そんな俺を見兼ねたのか、エルフが再び俺に物申す。
「全く君と言う奴は・・・、腕まで血が流れてるじゃないか、こんな斬ってしまうとはな・・・、直ぐに治してやるから腕を出せ。放置してると化膿してしまうかも知れんからな。」
と、眉を潜め、若干怒ったような、だが、直ぐに子供を見ているかのような優しい笑顔に変わり、こちらを見て、ほら早く手を見せろ、と右手を上げ、催促する。
俺はそれに素直に従い、自分の手を預けた後に、もう一度疑問に思う。本当に力を入れたつもりはなかったのだ。
相当切れ味がよさそうに見えたし、ほんのちょっとだけ力を入れればいいと、思い、ほんの少しの力を入れたのだ、とそんな風な疑問を口に出してみると。
「あの短剣は本当に切れ味がよくてな、本当は力を入れなくても少し切れるくらいなんだぞ?
それに君は短剣の扱いすら必要のない世界から来たのだろう?
それに加え、この世界では身体能力が上がっているといったろう?多分そのせいで力を入れすぎたのだろう。」
との事だった。かなり納得できた。
ん、話ながら治療を続けたおかげか、もう手に痛みがなくなってる。あのくらいの傷なら数秒で大丈夫だったらしい。
と、俺の手がエルフィスの手から開放され、よほど楽しみにしていたのか、エルフィスが計測器のほうに目を向ける、と同時にエルフィスは、唖然、とも驚愕、とも付くような顔をする。
「魔力量18万!?計測機が壊れたのか!?」
と、言い一度、驚いた後に、ステータスのほうも知りたい!と顔が動いて、直ぐにそこで自尊心にぶち当たったのか直ぐに顔を明後日の方向に顔を逸らす。そんな繰り返しが延々と続いて。
見目麗しい、金髪がフラフラし、長めの耳がピクピクし、顔は少し赤みがかっている。
そうか、さっきエルフィスは子供を見るような顔になっていたが、今俺にもその気持ちがわかった。
こりゃすっごい可愛いわ。