エルフィスの思し召し
正直言うと女神のように思えるほど美しいエルフィスにしばらく、見蕩れていたが、すぐにハッとし、俺も胡坐から、ベッドに腰掛ける形になって、背筋を伸ばし頭を下げる。
お茶を濁すように、少しだけ演技臭く返事を返す。
見蕩れてしまった間が少し気恥ずかしいのだ。
「いやはや、これはどうもご丁寧に、佐藤裕也と申します。エルフィスって呼ばせてもらうな。」
それを見たエルフィスはその流れに乗るかのように、同じように返す。
「ああ、いえいえ、こちらこそ名乗り遅れてしまって申し訳ありません。では、こちらもユウヤと呼ばせてもらおう。」
序盤の部分だけを見れば完全にサラリーマンのやり取りである。
裕也とエルフィスは、こういう礼節はそちらの世界でもあるのか。と少し顔をお互いに見合わせて笑い出す。
2人とも十分に笑い、しばらく間を開けたあと、裕也は先ほどの質問を再度投げかける。
「そうそう、結局なんで悪人かも知れない俺にそんなにしてくれるんだ?」
ここまで優しくしてもらう義理がないだろっ、と納得いかない、と言う顔でエルフィスを見つめる。
「ユウヤが悪人?そんなことは絶対にない、と言い切れるからな。
私は先ほど妖精さんが群がっていて、ユウヤを見つけれた、と言ったろう?
通常妖精さんは人間にはほとんど寄り付かないと、体の内に流れる魔力の質に惹かれて妖精さん達は集まるのだが、どうも人間の魔力の質は好かないらしくてな。
そもそも人間にはほとんどの場合が寄り付かない。
そこで、本題なんだが、エルフの魔力の質をよく好み、集まる妖精さん達だが、『絶対』に寄り付かない、と言い切れるエルフがいるんだよ。
まあ、それは悪い心を持つエルフ、疚しいことを考える『心』を持っているエルフのことなんだがな。
悲しい事にそういう『心』を持つエルフがいない、とは言えないんだ。
人間にはそもそも例が少ないからわからんが。
その中でユウヤは妖精さん達に好かれる魔力を持っていて、それに加え、君は妖精さん達にこいつは悪い奴じゃない。って太鼓を捺される程の『心』の持ち主、って言うことだしな。」
妖精さんありがとう。
どうやら君達のおかげでエルフの女神様から全信頼を受けれたようです・・・、ありがとう妖精。
そう思った裕也、がしかし、裕也はこの後すぐに、この感謝を覆すことになると言うことを、まだ知らない。
「そういう訳で、ある程度ユウヤを信用しているんだぞ?」
期待を裏切ってくれるなよ?ニヤリ、と冗談めかした一言をこちらへ送るが、こういうのを冗談っぽく言える時点で本当にかなり信用してくれてるのが分かるんだよなぁ。
「って、言われてもなぁ、この世界に来たところで何をすればいいかすら、わからんぞ?なんで来たかすらさっぱりわからんし。」
冗談にはあまり反応せずに、今一番疑問に思ってることを口に出す。
俺は本当になんでこの世界に連れてこられたのか。
「たぶんユウヤが思う通りに行動してれば、ちゃんと、連れてこられた理由が何れではあろうが、分かると思うぞ。
ユウヤはこの世界に愛されているらしいしな。案外この世界に愛されたから、って言うのが理由かもわからんぞ?」
好きすぎて異世界に召還しちゃった(てへぺろ)ってヤンデレかよ。怖いわ。
「まあ適当にやるか。体治してくれたり、色々説明してくれてありがとな、エルフィス。今は無理だけど、いつか恩は返すよ。」
と、言い軽く頭を下げる。
これまでの、お世話になった分をしっかり感謝として示す。
「なに、気にするな、此処までは妖精さん達の思し召しだ。
だけどな、これからは私、エルフィスさんの思し召しだ。
君もステータスに関して知りたいだろう?どれ、ちょっと待っておけ。」
と、言いベッドと向かい合っていたイスから立ち上がりドアから出て行く。
自分のステータスか、ギルドとかそういうのにいかなきゃならんと、アカンちゃうのん?
まあしばらくおとなしく待っとくか。
今日の一文
期待を裏切ってくれるなよ?(本当に食べてしまったのか?)ニヤリ
緑のエレアは殺せ!!