表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第四話(改)

 二人の感動の再会に水を差す様に、後ろから拍手が聞こえてきた。

 二人は後ろに振り返り、その人物を見た。

 そこにいたのはランサス王子である。

「感動の再会だね。 おめでとう」

 ランサスは綺麗な笑顔を見せながら言った。

 しかし、笑顔には何か不気味な雰囲気があった。

「さて、それでは話を始めましょうか」

 ランサスは自分の手を叩いて、話を始めた。

「もう一度、結婚を申し込みに来ました。 あれから考えたのですが、あなたのことがどうしても忘れられないのです」

 ランサスはプリムラに思いを伝えた。

 そして、プリムラの出した答えは、

「ごめんなさい」

 頭を下げ、ただ一言だけ答えた。

 その答えにランサスは、

「どうして! どうして、駄目なんだい!? 僕は王子なんだよ! 何が気にいらないの!?」

 先ほどの冷静な態度はまったくなく、怒りをぶつけるようにプリムラに言い放った。

 プリムラはそれに対し、ただ黙っているだけだった。

「何か言えよ!」

 ランサスは答えを待つかのように、言い放つ。

 その言葉にプリムラは重い口を開いた。

「その……あなたは危険な感じがするの。 なんだか分からないけど。 一緒にいたら危険だと」

 プリムラは言葉を選ぶように、考えながら話した。

「そんな……そんな理由でかぁ~~!!」

 ランサスは叫んだ。 町中に響き渡る位の声で叫んだ。

「俺が今までやってきた苦労は何だったんだ! あの婆さんを使ってまでしたのに! 何でだよ! 何でだよ!!」

 ランサスはひたすら叫んでいた。

 一つの爆弾を発言して……。

「待ちな」

 後ろで見守っていたカルミアがプリムラ達に近づき、発言した。

「婆さんを使ったっていうのはどういうこと?」

 一言の言葉をカルミアは聞き逃さなかった。

「あなた、まさか自分を英雄にするために、あの火事を起こしたのではないでしょうね?」

 カルミアはさらに質問をぶつける。

「ハハッ! 何を言ってるんですか? 僕は火事を起こしていませんよ。 それなら証拠を持ってきて下さいよ」

 カルミアの発言に、ランサスは言い逃れをするかのように発言した。

「証拠はないわ。 けれど、証人はいるの」

 カルミアはそう言った後、後ろを向いた。

 そして、

「出てきて下さい!」

 と、大声で呼んだ。

 その声に反応するように、重苦しい足音を立て、複数の兵士がやってきた。

 兵士の一人が誰かを押さえつけている。

「ランサス王子~。助けて下さい~」

 押さえつけられた男は、泣き疲れたのか、顔がクシャクシャになっている。

「この人が証人よ」

 カルミアは男に指を指した。

 その男は、ランサスと一緒に来た兵士であった。

 ランサスは兵士を見て、誰にも気付かれないように、舌打ちした。

 「その男が私と関係がある? 分からないですよ。 その男が嘘をついている可能性もあるんだよ」

 ランサスは言い訳でするかのように、反論した。

 「いや、ランサス君、君の兵士だということは分かっているよ」

 ランサスの後ろから声がする。

 ランサスが後ろを振り向くと、そこに立っていたのは、この国の王であるガラムであった。

 ガラムは立派な着こなしをしており、左肩には鳩が乗っていた。

「この鳩が教えてくれたんだよ。 この手紙でね」

 ガラムは右手に持っている手紙を突き出すように見せた。

 手紙の内容は、隣の国の王様からの手紙で、この兵士がランサスの部下であるということを示す手紙だった。

 ランサスは驚きの表情を見せた。

「さぁ、城にお帰り」

 ガラムはそう言って、鳩を撫でた。

 鳩は嬉しそうにして、王様の言った事を理解したかのように、城に向かって飛び立っていった。

「さて、話をしよう。 ランサス君。 君はあの人の家を燃やしたかね?」

 ガラムは威圧的な目で、ランサスを睨むように見た。

「私はしてま――」

「その人がやったんです! その人が計画を企てたんです! 本当なんです! 信じて下さい!」

 ランサスの声を掻き消して、兵士は大声を上げて叫んだ。

「そうか……。 では、行こうか」

 ガラムがそう言うと、兵士達はランサスに近づき、剣を突き立てた。

 ランサスの顔は青白くなり、降参といわんばかりに手を上げて、手を上げながら兵士達とともに城へ向かっていった。

「よし。 行ったか」

 ガラムはそう言うと、プリムラの方を向き、

「頑張ってるか?」

「頑張っていますよ。 王様」

 他人行儀な振る舞いで、プリムラは返した。

「わしのことをパパって呼んでいいんだぞ」

 ガラムは右手の人差し指を自分の顔に向け、期待するように待っている。

「呼びません」

 即座に却下が出た。

「そんな! 王族離れたからと言っても、親子なんだぞ! ほら! ここにお礼のキッスを!!」

 ガラムは、自分の頬に指差し、またもや期待するかのように待っていた。

 プリムラはその対応に、怒りを込めたビンタを与えた。

 そのビンタの衝撃音は、カルミアとガーベラを驚かせるほどであった。

 ビンタをされて、ガラムの放った一言は、

 「痛い!」

 「馬鹿か! このくそ親父!! いい加減にしろ!!」

 「くそ親父とは何だ! 仮にもお前の親だぞ!」

 「あんな対応する親がどこにいるか!」

 「ここにいる!!」

 その言葉に答えを示すように、怒りのビンタを放った。

「ふざけんな!!」

 プリムラの怒号が飛ぶ。

カルミアとガーベラは微笑ましく、喧噪する二人を見ていた。

「すごい親子だな」

 ガーベラがそう言うと、

「そうですね」

 と、カルミアが答える。

「ちょっといいかい?」

 カルミアがガーベラの問いに頷くと、ガーベラは喧噪する二人に聞こえないように耳打ちした。

 「分かりました」

 カルミアは殺した声で答えて、二人に気付かれないように店に入った。

 二人の喧嘩が続いてる中、

 「ほれ」

 ガーベラが割って入り、二人に花束を渡した。

 その花は二種類あり、一つは紫色に咲いている花で、もう一つは白い小さな花が無数に咲いている。

 「じゃ、あたしは帰るよ。 また来るよ。 お花のお姫様」

 ガーベラはプリムラにあだ名をつけて、笑いながら去っていった。

 ガーベラが去るのを、二人は見届けた。

 見届けた後で、

 「話がある」

 ガラムは真面目な顔つきになって、プリムラに言った。

 プリムラは、その雰囲気を一瞬で読み取ったのか、先程の表情とは打って変わって、静かな表情になった。

 「何でしょう?」

 「お前に王族継承を命ずる」

 「……え!?」

 プリムラはガラムの言葉に驚きを隠せなかった。

 「王族の血を流れてるのだ。 当たり前であろう」

 「けど! 私は王族から退いた身では!?」

 プリムラは食ってかかるように反論した。

 その問いに、ガラムはたった一言で返した。

 「試しただけだ」

 ガラムはニヤリと笑って答えた。

 「では、よろしく頼むぞ。 お花のお姫様」

 皮肉を込めた言葉で、ガラムが言った。

 「分かり……ました」

 ガラムに一杯食わされたプリムラは悔しさを込めた表情を浮かべながら答えた。

 「あの~。 話は終わりましたか?」

 カルミアは少し遠くの方から様子を伺うように尋ねる。

「大丈夫です~!」

 プリムラはそれに答えると、カルミアは二人の近くまで歩いてきた。

「ふぅ~。 ガーベラさんから花はもらったかい?」

 二人はカルミアの問いに首を縦に振った。

 そうすると、カルミアは二人に向かって、拳を向け、人差し指を天に向けるように指を差した。

 「さて、問題です! その花の花言葉は何でしょう?」

 「何でしょうって? この花はライラックとカスミソウでしょ? 意味は……あっ!?」

 プリムラは、その意味を知った。

 「何だ? 教えてくれよ。 俺にはさっぱり分からん」

 ガラムはせがむように答えを求めた。

 「この答えは……」

 プリムラは、少し間を置くように答えを言った。


 大切な友よ、ありがとう


 プリムラは涙を流してはいたが、満面の笑みで答えた。

 その涙は、悲しみの涙ではなく、大切な友が出来たと言う喜びの涙であった……。


 ガーベラさん。

 こちらこそ、ありがとう。

これにてお花のお姫様は完結です。

ここまで読んで頂きありがとうございます。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ