第三話(改)
この火事は、大々的になって話が広まった。
中でも、ランサス王子は人助けをした張本人として、町の者から感謝されていた。
プリムラやカルミアもその感謝している者の一人であった。
しかし、ある噂もたっていた。
焼けた家の近くから、割れたビンが見つかったということで、誰かが燃やしたのではないかと……。
「……はぁ」
プリムラは箒を持ちながら、ため息をついている。
「掃除、お疲れさん」
プリムラの背後に音もなく、カルミアが近づいてきた。
プリムラは、背後からの声に驚き、箒を落とした。
「おどかさないでください」
プリムラは、背後を見ようともせず、目の前の箒を拾い上げながら、言った。
「およ? 元気がないね。 そんなんじゃお客さんが寄ってこないよ~」
「分かっています」
カルミアの問いから返ってきたのは、元気のない返事だった。
プリムラは暗い表情のまま、掃除をした。
「ハッ! 暗いねぇ~! 暗すぎるね~!!」
聞き慣れた声に、二人はすぐに振り向いた。
そこには、黒いローブで覆われた老人が立っていたのだ。
その老人は頭のフードを取り、二人に顔を見せた。
そう。 いつも花を買ってくれているお婆さんだったのだ。
「おばあさ~ん!」
プリムラは箒を放り投げ、婆さんに向かって走っていった。
そして、婆さんに抱きついた。
「大丈夫だったの!? 本物なの!?」
「ハッ! あたしがそんな簡単にゃあ死にゃねぇよ」
「よがっだ~~」
プリムラは婆さんの返答を聞いて、抱きついた格好のまま泣きじゃくっていた。
「泣いてんのか~。 あたしもまだ捨てたもんじゃないね~」
婆さんは泣いているプリムラを慰めるように言って、頭を撫でた。
「嬢ちゃん。 あたしのことはガーベラと呼びな」
「へ?」
「お婆さん……」
「こりゃ! ガーベラと呼ばんかい」
プリムラがガーベラのことを名前で呼ばないので、ガーベラは軽い喝を入れた。
すると、プリムラは、抱きついていた手を離して、ガーベラと面を向かうように立ち、
「お帰りなさい。 ガーベラさん」
プリムラは、目は涙目になっているが、今出来る精一杯の笑顔を出しながらガーベラの名前を呼んだ。
「ただいま」
ガーベラもプリムラの笑顔に答えるかのように、笑顔で答えた。
静かに涙を流しながら……。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
正直、こんな長く書くとは思っていませんでした。
読んでくださったという方々に本当に感謝しています! 話はまだ続きますので、しばし、お待ち下さい。