第二話(改)
二人が飲んでいる間に周りは暗闇になっていた。
そして、行動を開始する。
事前に情報を集めていたことを整理する。
「まず、あの花屋についてだ。 どうだ? いい情報があったか?」
王子はあぐらをかいて、兵士に聞く。
兵士は思い出すように、集めた情報を答えていった。
「あの花屋には常連客がいるそうです」
「それで?」
「その婆さんを助ける振りをすれば、あのお姫さんもほれ込むに違いない!」
「それはいい! で、アイディアは!」
その返答に、兵士は困ったような顔をした。
「え…と、その…まだ思いついてないです」
「ダメじゃねえか!!」
王子は、兵士に向かって罵声を浴びせた後に、ビンに入った酒を飲み干すように飲んだ。
そのとき、王子は飲んだビンを見て、こう言い放った。
「あるじゃねぇか」
「え?」
「あるよ。 いい方法がな」
兵士の疑問を、不気味な笑いで答えた。
笑った王子の顔はまるで悪魔のようであった。
そして、王子は兵士に耳打ちする。
すると、兵士はニヤリと笑い、頷いた。
二人は、空になった酒瓶を持って、立ち上がった。
そして、二人は作戦を決行する。
二人はまず、常連客と言われる婆さんの家に向かった。
「見えました」
兵士が合図のように言うと、二人はその場で止まった。
「あれがか……」
「えぇ、間違いないです」
王子は呆れたかのような顔を見せて、婆さんの家を見た。
婆さんの家は、木造の家である。
ここまでは普通である。
「はは、よくやるよ」
王子は驚きを隠せなかった。
なんせ、周りは花畑で囲まれていたのだから。
その花畑は木造の家を導くように、一本の道を作ってあった。
しかし、二人はその道を無視し、花畑の方を歩いた。
夜空で照らされていた花が次々と踏まれていく。
二人は、家の付近まで行くと、二手に分かれた。
王子は、家の裏に回り、兵士は入口付近に立った。
そして、兵士は先ほどまで飲んでいた酒のビンを出し、婆さんのドアに投げつけた。
婆さんが驚くように、ドアを開け、兵士を見て、
「何しとんじゃ~!」
と、憤怒して、兵士に向かって走り出した。
兵士は、驚きつつも、回れ右して、逃げていく。
二人の追っかけっこを見送るように、王子は隠れて覗いていた。
そして、婆さんと兵士が見えなくなってから行動を開始した。
王子は懐から、マッチ棒を取り出し、火をつける。
その火のついたマッチ棒を、王子は花畑に放り投げた。
火はみるみるうちに大きくなっていく。
大きくなったのを確認してから、王子は少し離れた場所で、物陰に隠れて息を潜めた。
その間にも、火はどんどん大きくなり、家にも燃え移っていた。
まるで、業火のように、家と花畑を燃やしていた……。
婆さんは兵士との追っかけっこをしていたが、体力的にきつくなり、諦めて家に帰ろうとした。
しかし、家の近くまで行くと、どんどん明るくなっている。
まさかと思い、婆さんは急いで家に帰る。
家に着くと、それはあられもない物に変わっていた。
色取り取りの花、木造の家、これらが業火に包まれているかのように、燃え上がっていた。
婆さんは、言葉でない言葉を発し、膝をついた。
その絶望の中から、
「お婆さん!」
聞きなれない声が聞こえてくる。
「ここにいては危ないです! 早く離れて!」
婆さんは、その青年の言葉を聞こうともしない。
青年の姿を見ようともしない。
ただ、呆然と燃えている家と花畑を見ていた。
「おい!!」
青年、いや王子は威嚇をするかのように声を張った。
しかし、返ってくるのは炎の轟音だけ……。
まったく反応を示さない。
王子は苛立ちを感じながら、婆さんに近づいた。
婆さんの目の前まで近づいて、存在感を示した。
すると、婆さんは膝をついた状態から立ち上がった。
王子は、無言で手を差し伸べる。
しかし、婆さんはその手には目もくれず、炎の中へ行こうとしていた。
その前を立ちはだかるようにして立つ王子。
「花を助けなきゃ……」
「行ってはだめです!」
「だって! 花が! 私の花が!!」
「助けを求めましょう! 今から呼んだらまだ間に合います!」
王子の言葉で、婆さんは動きを止めた。
王子は説得が通じたと思ってたが、そうではなかった。
婆さんはその場で倒れたのだ。
王子は、驚きを隠せなかった。
たかが花でそこまでなるか? と。
王子は、倒れた婆さんを担いで、近くにある花を一輪むしり取った。
「こんなもんのために命かけてんのか。 ばかばかしい! まぁ、いい口実にはできそうだな」
王子は、婆さんと花を持って、町に向かった。
王子の計画を遂行するために。