表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第一話(改)

 それから数ヵ月後……

 ガラム国王の紹介により、プリムラはお花屋さんで働いていた。

 国王は紹介のみはしておこうということで、働く先を紹介してくれた。

 プリムラの働いている店の名前はフラワー カルミアである。

 その名の通りお花屋さんである。

 そして、たった今、プリムラは仕事真っ最中である。

「今日も頑張っているわねぇ~」

 後ろから声が聞こえる。

 振り向くと、店長のカルミアが立っていた。

「おはようございます。 店長」

「店長なんてそんな堅く言わなくていいわよ~。 カルミアって呼んで」

「はい。 カルミアさん」

「よろしい」

 これが朝のいつものやり取りである。

 プリムラがいつまでも店長と呼んで、堅苦しい感じがするからと、店長のカルミアが言い出した一言である。

 今では、このやり取りが朝の日課になっている。

「で、お姫様は今日はどんな仕事をするの?」

「お姫様は止めてください。 私は王家を捨てた身なのです」

「もぅ~ちょっとの冗談は通じてよ~」

 カルミアはぷく~っと顔を膨らませてそっぽを向く。

 そのやり取りをしている中で、店の入り口から小さな鐘の音が鳴っている。

「プリムラ、お客さんよ」

「はい!」

 二人は先ほどのほんわかした雰囲気が無くなって、顔つきが変わっていた。

 店の入り口には、お婆さんが一人立っていた。

 そのお婆さんは右手に松葉杖を突いており、足が悪いのかと思うくらいである。

 プリムラが入り口に向かい、お婆さんに会うと、

「はっ! 来てやったぞ!」

 優しそうな顔とは裏腹に、上から目線のきつい一声を浴びせる。

「ようこそ、いらっしゃいました」

 そのきつい一声を受け流すように、プリムラは笑顔で答えた。

「今日も買いに来たぞ」

「ありがとうございます。 どのようなお花をお探しで?」

「そうだねぇ。 この花をもらおうかしら」

 お婆さんが指を指して示したのは、可憐な白い花でした。

「はい。 分かりました」

「待ちな」

 花を取りにいこうとするプリムラを止めて、お婆さんはこう言ってきた。

「あの花の名前は何か分かるかい?」

「はい。 ライラックですね」

「花言葉はどうだい?」

「若さ……ですかね」

 プリムラは少し不安げに答えた。

「はっ! 正解だ! だがな、まだ意味はあるんだよ」

 そう言って、杖を突きながら白い花に近づいていく。

「若き日の思い出という意味が……」

 お婆さんは昔の思い出を思い出すかのような言い方をしていた。

 その言い方は、少し悲しい感じにも聞こえてくる。

「お婆さん」

 プリムラの一言で、我に返ったのか、急いでプリムラに振り向く。

「あぁ。 すまんなぁ。 見とれてたわ」

「そうでしたか」

「じゃあ、買っていくんで、準備して」

「かしこまりました」

 お婆さんの口調に対して、プリムラは丁寧な対応で返した。

 お婆さんは花を買って、店を出て行った。

 入り口の小さな鐘の音が鳴り響いた。

 お婆さんが去ったのを確認してから、

「いいお婆さんね」

 と、カルミアは呟く。

「本当ですね。 きつい言葉遣いの中に優しさも見える感じがして」

「あのお婆さんはいつでもこの店に来てくれるからね。 で、きつい言い方をしながら花を買ってくれる。 何だかんだ言ってるけど、この店を気に入ってくれてるみたいだね」

「あのお婆さんに気に入られるように、私! 頑張ります!」

「おう! その調子で頑張れ! お姫さん!」

 カルミアが気合の入ったプリムラを茶化すように答える。

 そして、そのやり取りの後からしばらくしてから、小さな鐘が鳴り出した。

 この鐘が今後を大きく変える警報のように……。




 「は~い」

 小さな鐘が鳴ったのに反応して、カルミアが声を出しながら入口に向かう。

 プリムラも後を追うように入口に向かう。

 入口に立っていたのは、とても華やかな服装の人物が立っていた。

 顔立ちから見て、男だとすぐに分かる。

 男はプリムラを見て、

「やっとお会いすることが出来ました! プリムラ様!」

 二人が顔を見合わせている。

「知り合いなの?」

「全然知らないです」

「向こうは知っているみたいよ」

「ですね。 何ででしょう?」

「それは、国王様から聞きましたから」

 二人の会話の答えを教えるように男は答えた。

「私は、となりの国の王子でランサスと申します」

 男は自己紹介を終えた後で、軽く頭を下げた。

 そして、頭を上げた後、

「プリムラ様に求婚の申し出に来ました」

 と、さらりと爆弾発言を言われたのである。

 二人は驚き、先ほどまでの笑顔が完全に消えていた。

 カルミアがプリムラの肩を掴み、

「どういうことなの!? どういうこと!?」

 プリムラの体を揺さぶりながら質問する。

「私もさっぱり分からないです~」

 プリムラは揺らされて、頭が揺れている状態で話す。

「あの~」

 王子が女性二人のもめあいを止めるように声をかけた。

 二人はハッとして、王子の方を向いた。

「プリムラ様、どうでしょうか? お互い王国の跡取りですし、悪くない話だと思いますが」

「申し訳ありません。 私、もう王家の名は捨てたのです」

「え!?」

 王子は驚きを隠せない様子であった。

「だから、今の私は、一人の国民なのです。 なので、求婚には応じられません。 ごめんなさい」

 プリムラの話に王子はまだ驚きを隠せない様子だった。

「そそ、そうでしたか……では、また後日、お伺いします」

 王子は体をギクシャクしながら、店を出て行った。

 王子が外に出た後、護衛の兵士が近づいてきた。

「どうでしたか?」

「だめだった」

 兵士の質問に王子は力ない声で答える。

「内容を話すから、少し離れよう」

「分かりました」

 兵士はそう答えてから、町外れの森に案内した。

 森に着いて、二人は地べたに座り込んだ。

「フフフ…アッハハハハ!!」

 王子は突如笑い出した。

「ランサス王子。 予想通りでしたか?」

 兵士の問いに、

「本当にそのまんまだったよ。 笑いが止まらねぇぜ」 

 王子は、笑いをこらえながら答えた。

「では、作戦は?」

「決行するよ~。 俺が二つの国の支配者になるためにな~。 あのお姫様と国王を引きずり出さねぇとなぁ!」

 「ハッ!」

 すると、王子は服の内側から一つのビンを取り出し、

「前祝いだ。 飲もう!」

「いただきます!」

 二人の酒盛りは夜まで続き、笑い声が絶えることはなかった。

一話まで読んでいただきありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ