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10.交渉をしよう

 ライトベルの部屋で長居をしたつもりはなかったが、窓から3人と1羽の姿が見えた。

 ここの敷地は門から玄関までそれなりに距離があるので、あと2分ちょっとぐらいで玄関まで到着するだろう。

 ライトベルの部屋を出て、リアに話しかける。


「なぁリア、外にマイとトロープさんともう1人いるんだが、トロープさんが転送酔いしちゃったみたいなんだ。お願い出来るか?」

「あ、はい! ちょっとミルク持ってきますね」


 トテトテと走るリアを見送りながら、本題であるユリンちゃんの部屋へと向かう。

 部屋に近づくにつれ、声が聞こえてくる。

 これは呻き声か?

 ドアをノックする。


「入るぞ」

「……ぅぃ」


 何か弱弱しい声が返って来た。

 ドアをガチャリと開ける。




 中には、静かに眠るユリンちゃんがいた。

 そしてその脇には目を真っ赤にしたエレフトラ。

 呻き声じゃなくて、泣いてたのか。

 一瞬事切れたかと思ったが、ユリンちゃんの呼吸はあるようだ。


「容体は?」

「……今は落ち着いてるさ。でも、いつまた発作が起こるか……」

「そうか……」


 ユリンちゃんにキスをするのは簡単だ。

 だが、ライトベルは根本的な解決にはならないという。

 根本的な解決……。


「……くっふぅ……!」

「ユリン!」


 突然ユリンちゃんが苦しみ始めた。

 エレフトラは急いで治療の魔法をかける。

 俺は精霊魔法で彼女の援護をする。

 しかし、ユリンちゃんの苦しみは一向に和らぐ気配がない。


「これは、効いているのか?」

「全く効いてる気がしないんだよねぇ、まるでこの子から拒絶されているように思ってしまうのさ」

「拒絶……」


 拒絶。

 それはつまり、このまま死なせて欲しいという事だ。

 この発作からの解放。

 下手な治療を続けるぐらいなら、死を選んで楽になりたい。

 そう彼女は願っている。

 そういうのを勘ぐってしまう。


 一晩かけて治療を続けても、ことごとくそれを拒絶される。

 その度にエレフトラは、妹から自分が拒絶されている。

 妹が生きる事を拒絶している。

 そういう疑念が絶えず付きまとう。


 ただ俺としては毎回発作を耐えてるユリンちゃんが、生への執着が無い訳がないとも思う。

 やっぱり人間死ぬのは怖いはずだ。

 生きれるのなら、やっぱり生きたいはず。


「ユリン……ユリン……」

「……がっ……ふぅ……」


 呼吸もままならないユリンちゃん。

 その苦しそうな発作は、5分程度で再び落ち着いた。

 必死になって治癒魔法をかけ続けたエレフトラが、崩れ落ちるように椅子に座った。

 半ば倒れ込んだと言ってもいいかもしれない。


「……ダーメだ」


 吐き捨てるようにそれを言葉にするエレフトラ。

 その目からは涙が今にも零れそうになっている。


「あんたの魔法が……あれば……なんとかなるかと思ったんだけどねぇ……」


 俺の精霊魔法の補佐があっても治癒魔法は拒絶された。

 それがエレフトラの心を根底から折ろうとしていた。

 もう、ユリンちゃんにキスしちゃった方が良い気がする。

 しかし、それが分かっていてもライトベルはダメだと言った。


 エレフトラは、魔力を使い果たした魔力結石を投げ捨てこう言った。


「……自分に、もっと魔法の力があれば……」





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





 自分にもっと魔法の力があれば。

 俺は、何かこの言葉に引っ掛かりを感じた。

 魔法の力の強弱、最近それを聞いた覚えがある。


 そうだ、マーシュの大侵攻の時だ。

 あの時、ライトベルの呪術が相手の精霊魔法に上書きされた。

 そしてライトベルの呪術は一切効かなくなった。


 今回もソレを同じじゃないか?

 何者かがユリンちゃんにナニカをかけた。

 それを排除しようとするエレフトラの治癒魔法が、そのナニカと対抗。

 力負けし、まるでエレフトラの魔法が拒絶されているように感じる……。


 話の筋としては通っている。

 いや、そうとしか考えられない。

 となると選択肢は二つだ。

 エレフトラの根本的な魔力を上げるか、ユリンちゃんにかかっている何かをライトベルの呪術で弱める。

 しかし、恐らく後者は無理だろう。


「なぁ、ライトベルが来てユリンちゃんに何かしらの魔法をかけなかったか?」

「あぁ、来たさ。でも私には無理だとか言って戻って行ったよ」


 やはり、ライトベルも同じ結論に至っていたようだ。

 そして彼女には無理だった。

 なら答えは1つだろう。

 エレフトラの魔力を底上げする。




 そもそも、考えてみれば俺が持っていた選択肢なんて最初から3つしかなかった。

 ユリンちゃんにキスをするか、エレフトラにキスするか、精霊魔法で魔力を強化するか。

 最初がなるべく選びたくなくて、最後が意味無かったのなら選択肢はあと1つしかない。

 とうとうその時が来たのだ。


 だがエレフトラとの間のキスには問題がある。

 聖職者はキスをすると、その力を大きく失う。

 とはいえ、考えが無い訳ではない。

 なぜなら、彼女たちの信仰している神を俺は知っている。


 外でいくつかの足音が聞こえて来た。

 恐らく、ナナに屋敷の中を案内でもしてるのだろうか。

 好都合だ。


「よし、キスするか」

「……へ?」

「お前とキスすれば、力が強くなるからなんとかなるんじゃね?」

「でも……」

「分かってる分かってる、ちょっと待ってろ」


 俺はドアをガチャリと開けると、頭だけ廊下に出した。

 予想通りそこにはナナがいた。


「おーいナナー! 緊急だ、急いで来てくれ」

「えー?」

「今度美味いもん食わせてやるからさ」

「はいはーい」


 現金な奴だ。

 扱いやすい子は嫌いじゃないよ。


「えーっと、当然2人初対面だよな」

「あぁ」

「うん」

「でも自己紹介は後に回すとして、ピートと話させてくれないか?」

《ボクですか?》


 また勝手に人のサポートを……と嘆いているナナを放置して聞きたい事を聞く。

 本当はもっと早くからやっても良かった事だ。


「なぁピート、聖職者と性交やキスをしたら、その力が弱まるってのは本当か?」

《えーっと……》

「本当さ、過去大勢の聖職者がブチ当たった壁だよ」

「ピート、どうなんだ?」

《ちょっと待ってくださいね……》


 ペラペラと紙をめくる音がする。

 ピートは引きこもっていたナナのサポートなので、外に関する情報が少ない。

 聖職者に関する情報は俺も一応裏を取っていた。

 だが、今の目的はソレじゃない。


「じゃあピート、本人に聞いてよ」

《へ?》

「お前の上司だよ上司。崇拝されてる当の本人なんだから分かるだろ?」

《と言われましても……っとと連絡だ》


 ピートの音声から何かが聞こえて来た。

 電話か何かか?

 何を話しているのか分からない。

 恐らく、俺らには分からない言語で話しているのだろう。


《っと、分かりました。確かに減衰はするようです》

「なぁピート、今の連絡上司からだよな?」

《はい》

「連絡はまだ切れてないか?」

《……はい》

「じゃあ、こう伝えてよ」


 転生神とコンタクトを取れるチャンスなんてそうそうない。

 だったら、そのチャンスを無理矢理作ればいいだけの事さ。

 そして、あの神は色々と分かっている(・・・・・・)

 お約束だとかそういうものを。

 そんでもって、面白ければ大体オッケーな奴だ。


「今ここにいるエレフトラを、その衰退の対象外の特例にしてってお願いして」

《えっと……》


 恐らくこのキスもしない処女ルールは、単にあいつの趣味だ。

 シスターは処女であるべき。

 その処女性が失われれば、そのシスターとしてのキャラクター性はぐっと落ちる。


 その程度のルールだったら、あの転生神の裁量で変えられるルールのはずだ。

 面白ければな。


《……オッケーが出ました》

「あ、あたしは空気読んで外出るね」

「悪かったな、ナナ」


 計画通り、ちょろいもんだぜ。

 さて、これで障害は取り除かれた。

 ナナが廊下に出て、ドアがバタっと閉じる。


「……あんたさん、今何をしてたんだい?」

「簡単な事だよ、エレフトラ達の崇拝する神様に直接伝えたのさ。力を無くすルールをお前だけ例外にしろって」

「まさか……そんなことが……?」

「出来ちゃったもんは仕方ないな」


 エレフトラとの距離を縮める。

 エレフトラはじりじりと後退するが、やがて壁に阻まれる。

 いいね、このシスターが襲われてるような構図。


「さて、じゃあやることやっちゃうぞ」

「ちょ……ちょっと待ってくれないかい? 心の準備が……」

「準備がって、その間にユリンちゃんの発作が起きたら大変だろ?」

「そ、そうだけどさぁ……」

「グダグダ言ってないで、目を閉じてな」


 俺はエレフトラの顎をそっと持った。

 エレフトラが目をぎゅっと閉じる。


 聖職者は、その身に宿る通称「神の力」が強い程魔力が上がる。

 よって、俺のハーレム要員になったら、彼女の魔力は段違いに上がるだろう。


 俺は左腕をエレフトラの腰に回すと、グッと引き寄せた。

 そして小さな悲鳴をあげるその口に唇を重ね、舌をねじ込んだ。

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