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1.状況を確認しよう

 積もる話は沢山あるが、まずはこの子供たちをどうにかしなければならない。

 街の者が全滅したのなら、この街の未来を作るのはこの子達ということになる。

 理想はナフィ等へ避難させる事だが……。

 さきほどから俺の質問に答えてくれている男の子に話しかける。


「なぁ、ポータルはどの辺にあるな?」

「そこ……」


 男の子は広場の中央を指差した。

 見事にストーンゴーレムの瓦礫の下だ。

 あれはもう修理しない限り稼働しないだろう。


 となると、ポータルで子供たちを運ぶ作戦は中止だ。

 客車でここに来た状態だったら数人ずつ運んで行きつつ助けを求める事も出来たが、生憎俺らは遭難帰りだ。


「じゃあ、危険な時はここに避難しなさい! って言われてた場所あるか?」

「……うん」


 男の子は立ち上がって外に出る。

 他の子供達もそれについてくるように立ち上がる。

 しかし、街の惨状を見てつい足が止まってしまう。

 そんな子供に、トロープさんが声をかける。


「立ち止まっちゃダメ、目の前の現実を見なさい。この現実から立ち直れるのは、貴方たちだけなの」


 子供には意味が分からないかもしれないが、いつかこの言葉が子供の支えになるだろう。

 この子たちがこの街を建て直し、死んだ人たちの分まで生きなければならない。




 子供の指示する場所には、小さな洞窟があった。

 トロープがつい小さな声で呟く。


「また洞窟かー……」

「まぁまぁ」


 今回は俺たち2人ではないとはいえ、本当にうんざりしてしまう。

 まぁこの避難所にも、この場所を作った人にも罪はないんだが。


 避難所の中には、幸いにも十数人のエルフが避難していた。

 全滅ではないだけマシだ。

 考えてみれば、他の街にでかけていた人もいただろう。


 感動の再会の場面……!

 と思ったが、ナナが子供達を確認したら外に出てしまった。

 追うように外に出ると、トロープさんも続くように出て来た。


「どうしたんだ?」

「……母親を探したい」

「外は危険じゃないのか?」

「あたしは最後の一体と相討ちして死んだから、多分大丈夫」


 まぁ、俺とトロープさんが一緒なら大丈夫だろう。






 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





 ナナはかつて自分の母親が経営していた土産屋の前で立ち尽くしていた。

 品物はグチャグチャ。

 従業員らしき人が潰されている。

 店の柱の一本が折れ、店全体が傾いて今にも崩れそうだ。

 幸運と言ってもいいのか分からないが、客がそもそもいなかったようなのでその被害だけは無いようだ。


「なぁ、この崩れてるの食っていいか?」

「……いいよ」


 包装が壊れて商品にならないような饅頭を拾い上げ、トロープさんと食べる。

 うめぇ……うめぇ……砂糖の味がする……。

 こっちのお煎餅も味見しよう。

 お米がこの辺りでは食べられないはずだが、何を原料にしてる煎餅なんだろうなぁ。

 かなり再現度が高いようだが。

 おお……この塩味がまた懐かしい……

 肉を焼いて味付けもせずに食べるものと格が違う……。


「幸せです……」

「生きてるって感じがするなぁ……」

「ユーちゃ……ユーハさん」

「どうした?」

「お水飲みたい」

「おぉ、飲みねぇ飲みねぇ」


 俺達がそんなアホな事をやっている間に、ナナは崩れかけの店の中まで確認していた。

 母親の姿が無いのを見て、半分心配して半分安堵しているようだ。


「食べ終わったらこれ運ぶの手伝ってくれる?」

「え? どこに?」

「避難所。こんなところに放置しておくより、あそこで皆で食べた方がマシだろうし」


 あぁ、なるほどそれはそうだな。

 ナナはあそこの経営者ではないはずだが、俺が経営者でもそう指示するかもしれない。

 どうせ買い物客なんて来ないんだし。

 そのまま腐るかモンスターの餌になるのを待つよりは、今生きる人の糧にした方が良い。


 手に持っているのもを急いで口に放り込んで水で流し、食べられそうなものを持てるだけ持って避難所に向かう。

 あいつ、もう気持ちを入れ替えたのか。

 まぁ自分の故郷であってないようなもんだしなぁ。




「そうだ、ピートはどうした?」

「ピート? そうだ、そういえば反応がない……」

「やけに静かだと思ったら……」


 ポートに続いてピートもかよ!? と思ったら、次の声に安堵した。

 流石に悪い事はコレ以上は続かないらしい。


《あーあーテステス》

「ピート?」

《おぉ、聞こえますか! 良かった、ようやく接続できた》


 ショタっぽい声が聞こえた。これはピートの声だ。

 良かった、これで状況が把握できる。


「ピート、俺だ。ユーハだ。聞こえるか?」

《お? ユーハさん? お久しぶりですが何故ここに?》

「偶然通りかかって、たまたま彼女をチートで蘇生したんだよ」

《おぉ、そうでしたか。一度死んだ訳でしたか。そりゃあ接続も切れるハズですね》


 なるほど、一度死ぬと接続が切れるのか。

 インターネット回線みたいに、抜けたコードをもう一度ぶっ刺せばいいとかそういう訳にはいかないもんな。


「それより、まず現状の説明してくれないか? 俺もここ来たばっかりでよく分かんねーんだ」

《了解いたしました!》

「……あたしよりサポート使いこなしてる」

「まぁ、そりゃあな」





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





 ピートが来た事によって、状況が一変した。

 土産屋から持ってきたお菓子や食べ物を運んだり配ったりしながら聞いた話をまとめると、こんなもんだ。


 俺たちが来るほんの一時間程前、ストーンゴーレムの襲撃があった。

 最初は精霊魔法を駆使して街の人が応戦。

 優勢だったが、呪術で上書きされ押しつぶされた形になったという。


「その呪術ってのはそんなに強かったのか?」

《はい、感じた事の無いレベルのものだったはずです》

「ちなみに俺の精霊魔法と対抗させるとどっちが勝つ?」

《ノータイムで呪術と言えるぐらいです》


 俺の精霊魔法よりもよっぽど強力な強さだと?

 それはライトベル以上って事になる。

 今のライトベルは出会った時よりも強くなっているはず。

 ということは、もうこの大陸で数えるぐらいしか候補がいないんじゃないのか?


《ところで、そちらのお嬢様はどちらですか?》

「あぁ、トロープさんだ。転生について知識のある貴重な人だ」

「ん? 私ですか? トロープです、よろしくお願いします」

「転生に知識がある?」

「そうだな、もしかしたらこれから会うかもしれないしそん時教えるよ」


 カー君については、恐らく口で説明するより実物と会う方が早いだろう。

 それより、とりあえず聞きたい事があった。


「なぁピート、ポートがどうしてるか分からないか?」

《ポートですか? 連絡つかないんですか?》

「あぁ、ちょっと訳アリで地下に落ちて5日程彷徨ってたんだ。実は早く風呂に入りたい」

《ちょっと調べて来ますね》

「そんなに入ってないの? 汚っ!」

「へっへっへ、5日ほとんど磨いてない歯でキスしてやったぜー」

「ペッ! ペッ!」


 出来ればこの街で色々整えたかったが、崩壊してるんじゃ仕方ない。

 トロープさんが私ならその汚さも受け入れますよとか言ってるし。

 貴女も同じ位歯を磨いてないでしょうに。


《判明いたしました》

「どうだった? ポートに何か事件が起きてたらどうしようとか思ってたんだけど」

《えー、ポートはですねー》

「あぁ」

《1週間有給貰って、ハワイに行ってます》


 ……は?


「ごめん、何言ってるか分かんない」

《ですから、1週間有給を貰って……》

「いや、何を言ってるのか分かるけど分からないというか。てか、お前らハワイとか行けるの!?」

《結構人気ですよ? ハワイ。行った事ないんですか?》

「あたしあるー!」

「ねー……」


 いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。

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