7.荷物と食料ところりんと
「思った以上に深いですね」
「ここは……鍾乳洞か?」
あまり期待せずにダメ元精神で来たこの通路だが、意外にも広い場所に出る事に成功した。
鍾乳洞だ。ということは、結構先まであるということになる。
指先からの火である程度先までは見えるが、最奥までは見えない。
「何か、冒険っぽくてワクワクしますね!」
「一応、俺たち冒険者ですからね」
「そこらへんの岩でお弁当を食べましょう!」
ピクルスのような漬け物を取り除き、サンドイッチを食べる。
決して嫌いだからではない。
保存がサンドイッチの具材の中で一番長持ちするからだ。
少しでも後の為に食料を残したい。
サンドイッチを食べ終わると、互いの持っている物を確認する。
乾パンのようなものを俺が、ドライフルーツのようなものをトロープさんが持っていた。
それとカー君用の木の実。
味はしないらしいが、一応人間でも食べられるそうだ。
しかし、本格的な荷物は置いてきてしまったのが少し痛い。
普段ならこれに携帯食料と干し肉ぐらいは常備してるんだが。
だがしかし、この地下は洞窟でもある。
モンスターが出てくれば、その肉を食べられる可能性がある。
ミミズとかなら勘弁してほしいが、ネズミならなんとかなるかもしれない。
確か以前食った事あるし、幸い火はあるし。
「ユーハさん、ちょっとお水いいですか?」
「あぁ、どうぞどうぞ」
手を器のようにし、水を発生させる。
トロープさんがそれに顔を近づけ、直接口をつける。
非常に色っぽいが、これをやっている最中は火をつけられないのでその光景が見られないのが残念だ。
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「ふぅ、そろそろ疲れましたね」
「そうですねー」
何時間歩いただろう。
洞窟はまるでトンネルのように、延々と続いている。
モンスターが現れないのが救いだ。
「いつも客車に乗ってると、こういう時辛いですよ」
「それより、ずっと魔法使ってて大丈夫ですか?」
「あぁ、そうか。節約しないと」
つい無限のように感じてしまうが、魔力も一応有限の資源。
人より多くの魔力があるとはいえ、無計画に使い続けるとこの前の二の舞になってしまう。
魔力切れで一日動けない事に。
それだけは避けなければ。
少し広い場所を見つけ、2人で横になる。
火を消すと、辺りは真っ暗になる。
「ふふ、リアちゃんに嫉妬されちゃいますね」
「俺はカー君に嫉妬されそうだなぁ」
2人くっついて眠る。
暗闇でも互いの位置を見失わないように。
……こういう時に考えるのは不謹慎かもしれないけど、凄い勢いでイチャイチャしてるな、俺。
頼ってくれてるというのを凄い感じる。
ついついにやけてしまう。
だが、明日からはまともな食糧がないというのも忘れてはいけない。
なんとか打開しなくては。
その為にも、今はちゃんと睡眠と取らなくては。
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「ユーハさん、ユーハさん」
「ん? ……あぁ、そうか。地下なんだった」
「そろそろ行きましょう?」
2人で乾パンを1つ口に投げこみ、俺製の水を飲んで足を進める。
水を飲んで気が付いた事だが、この水は硬水だ。
ということは、もしかしたら俺の体からミネラル分が出ているのかもしれない。
水自体が魔力から作成されても、ミネラルが切れては意味がない。
やはり、どこかで栄養源を確保するかしなければ。
「本当に大丈夫ですか? どんなモンスターが来ても食べられますか?」
「が、頑張ります」
「牛、鳥、豚なんかは絶対に出てきませんよ? 大丈夫ですか?」
「ど、努力します」
次出るモンスター、次出るモンスターは絶対に食べる。
そうトロープさんと誓い合う。
今日も起きてから2時間ぐらい歩いてるが、モンスターどころか植物の一本も無い。
せめて草の根ぐらい見つけられればいいんだが。
「……っ! ユーハさんアレ!」
「しっ、様子を見よう」
通路の側面の一角の土が、もぞもぞと動き始めた。
身を隠し、様子を見る。
モンスター次第では栄養源に……。
「……あーアレはなー」
「どうしましょう……」
「流石に、やめとこうか」
芋虫のようなフォルム。
背中に厚い殻。
防御重視の第二形態がある、小さい頃は誰しも遊んだ事があるアイツ。
土から出て来たのはダンゴムシのモンスターだった。
流石に……食いたくねぇなぁ。
全長5メートルはあろう巨大ダンゴムシ。
頑張れば倒せなくはないだろうが、そこから得られる物は無いに等しいだろう。
隠れてやり過ごす事に決定。
「……へ?」
「あれ?」
ダンゴムシは俺たちの前を通り過ぎる……。
かと思いきや、いきなりこちらに向き直った。
「な、何だ?」
「こちらを狙ってますね」
「お、おう、来い! あ、相手になってやる!」
震え声でナイフに手をかける。
しかし、ダンゴムシは俺がまるでいないかのようにスルーをし……。
「きゃ! わ、私!?」
舐め回すような動作をしながらトロープさんに近づいた。
何だ? 敵意は無さそうだけど。
「何か、気になる匂いのものでもあるのかな?」
「匂いですか!?」
「それとも、単に懐いてるだけとか」
巨大ダンゴムシはトロープさんにねちっこい動きで近づいている。
動きが何かエロいな。
トロープさんは困惑しつつ後退していた。
ちょっとこの光景が面白い。
「……あ、もしかして」
「お?」
トロープさんが、急いで荷物をゴソゴソとまさぐる。
そしてある物を1つ取り出した。
カー君用の木の実だった。
トロープさんがカー君用の木の実をポンと地面に投げると、ダンゴムシは嬉しそうにそれを食べ始めた。
「おぉー」
「コレが欲しかったんですね」
「何か、トロープさんが魔物使いっぽいですよ」
「えへへ、そうですか?」
トロープさんは、何かを思いついたと言わんばかりに自分の服の肩に付いている紐を抜き取り始めた。
左肩がちょっと露出してエロい。
そして、その紐に木の実を取り付けた。
最後にそれらを自身の棒に括り付けて完成だ。
釣竿みたいな感じになった。
「ユーハさん、こっちです! こっちです!」
「お?」
「よっと」
「おぉー」
トロープさんは思い切ってダンゴムシの背中に乗った。
そして、今作ったものをダンゴムシの前に垂らした。
アレだ。馬の目の前に人参を置く奴だ。
「ユーハさん! こっちです!」
「ちょっと勇気がいるな……」
「早く! この子そろそろ最初の木の実を食べ終わっちゃいます!」
「分かった分かった。よっと」
ダンゴムシの上は冷たかった。
しかし……思ったより悪くないな。
「じゃあ出発しますよ?」
「おー!」
ダンゴムシがお食事を終えたところで、垂らしている木の実の高さをダンゴムシの目線ぐらいまで落とす。
上手くいくのか? と疑問に思ったが、案外すんなり動いてくれた。
思ったより早い。
流石にブラウン君程ではないが。
「おー」
「何か、こうやってみると可愛いですね」
「そ、そうか?」
まぁ、ダンゴムシのエグい部分はお腹の方だからな。
背中の殻だけ見ている分には気持ち悪くはないか。
「ユーハさん、この子に名前付けましょー」
「すっかり魔物使いっぽいなー」
「実は成功したの初めてでして」
「お、おう……」
しかし名前かー。
どういう名前がいいんだろうなぁ。
「コロコロ転がれるので、ころりんというのはどうでしょう?」
「ころりんかー。確かに響きは可愛いな」
「そうですよね!」
「問題はころりん君か、ころりんちゃんかだな」
「ころりんちゃんです!」
「その心は?」
「ユーハさんのパーティーに入るなら、やっぱり女性じゃないと!」
「……こいつハーレムに入れるのやだなぁ」
そんなこんなで俺達の地下冒険に新しい仲間が出来た。
ダンゴムシのころりんだ。




