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8.伏線回収のような何か

 フマウンはバタバタとしていた。

 大侵攻が発覚したからか、一攫千金を狙う冒険者と、トーノへと避難する子連れ等が門を慌ただしく通過してゆく。

 おかげで本来あるはずの入国審査のようなものがパスされた。

 いやぁ助かる助かる。


 さて、中に入るとやらなければならない事が満載だ。

 風呂! 飯! 補給!

 この3つをとにかく迅速にだ。

 さて、どこか銭湯か宿を探さないとな。


「……私に任せて」

「ん? 何か案があるのか?」

「……この町の魔術協会に連絡しておいた。お風呂と食事、あと矢を準備するようにと」


 な、何と優秀なんだ。

 まぁとりあえず彼女のプライドも回復したっぽいし、お言葉に甘えるとするか。





 この町は防衛の意識が高い為か、魔術協会もかなりしっかりとした建物だった。

 割と潤沢な資金援助があるのかもしれない。


 ここは魔術協会でもかなり重要な支部のようで、支部長は例の風使いだそうだ。

 今は大侵攻の直前で会う事は出来ないが。

 他にもライトベル級の優秀な魔術師がちらほらいるようで、この町の防衛意識の高さが伺える。


 近くに専用の宿舎があり、食事と風呂はそこで頂く事となった。

 宿泊の可能性も考え、部屋も用意してくれたようだが断った。

 多分そんな暇はない。

 準備が出来次第、マーシュへと向かう必要がある。


 魔術協会で出された料理は、野菜たっぷりのパスタだった。

 旅の道中では肉と野草が主体になってしまう為、ちゃんとした野菜はなかなか食べられないので助かる。

 だが、フマウンで作られたこのパンが一番美味い。


「うー……」

「ダメですよ、反省の色が薄いです」


 ちなみにスランは今バケツを持って立たされている。

 当然下山の時の罰だ。

 今しばらく空腹に耐えて貰う。

 皆ちゃっかりスランの分を残しながら食べているのは内緒だ。




 食事が終わったら風呂に入り、洗濯物を魔術協会の人に預ける。

 マーシュからの帰りに多分フマウンへと寄るので、その時に回収する。

 あれ? 何か凄いえらい人待遇されてね?


《どうやら今回の大侵攻は、私たちの連絡で大幅に発見が早まったようですね》

(あー、だからちょっと優しいのか)

《山中からの大侵攻は、海からのより発見に時間がかかるみたいですし》

(一応一回大侵攻を防いだ功績もあるしな)


 ちなみに2人程先行してマーシュに向かった魔術師がいるらしい。

 ライトベルの助手として、俺達に協力してくれるとかなんとか。

 魔力結石も2つ支給されたし、全く至れり尽くせりだな。

 風呂組、スランの食事待ち組、買い出し組と別れる。

 リアと手分けして、食糧やマーシュまでの着替え等を買う。

 本来はマイの矢を買う予定だったが、用意してくれてるので非常に助かる。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 魔術協会の宿舎に戻ると、急いで風呂に入り出発の準備をする。

 その間に、先にライトベルとエレフトラが客車を出す用意をしてくれているはずだ。

 ゆっくり温まりたいのを我慢して、俺は体だけ洗って上がる。

 頭がしっとりしたまんまだが、夏場だから放っておけば乾くだろう。


 客車では珍しくライトベルが肉体労働をしていた。

 井戸の水を使って、車輪の泥を落としている。

 まぁ1つ目の車輪を洗い終えた所でへばってるのは予想通りだが。

 何だろう。魔術協会にいるから、後輩たちにかっこいいところを見せたかったのだろうか。

 合流して作業を手伝ってやろう。


 問題はエレフトラだ。

 こいつ、さっきの食事中にこっそり酒を飲んでたらしい。完全に酒臭い。


「この忙しい時に何してんだこいつ」

「……まぁマーシュまでは安全みたいだし、故郷が危険だから少しの間忘れたいんだと思う」

「あー……そう言われたら怒れないな」

《色々あったみたいですからねー》


 ライトベルはエレフトラの事を知っているような口調だったのは無視する。

 俺の前世まで見れるんだから、エレフトラの故郷を見通すぐらい簡単なんだろうな。


 車輪をゴシゴシと洗っていると、ライトべルがふと上を見上げた。

 何だろうと思って視線を辿ると、客車の上に一羽のカラスがとまっていた。

 なんだ、カラスか。


《なんだ、カラスか。じゃないですよ! 普通のカラスなんてこんなところにいる訳ないじゃないですか!》

(あ、そうか)


 前世みたいな感覚だったが、大体動物っぽいのはモンスターなんだった。

 ってことはコイツはモンスターなのか?

 危ないし倒した方がいいんだろうか。

 そっと腰のナイフに手を添える。


「すみませーん! その子、私のなんですー!」

「ん?」


 遠くから女性が走ってくる。

 綺麗なブロンドの女性だ。

 ただ、俺としては短い髪よりロングの方が好きだな。エレフトラみたいな。


 それにしてもこのカラス、飼われているモンスターなのか?

 まぁ、スランとブラウン君が仲間にいる俺達よりは普通か。

 ただのカラスだし。


「その子って、このカラスですか?」

「ハァ……ハァ……そうです。どうも、金髪の女性に目がないらしくて」

「金髪の?」


 何という淫獣。

 よく観察すると、じっとエレフトラの事を見ているのが分かる。

 欲望に素直なんだなーこいつは。

 もしくは、単に光ってるものが好きなだけなのかもしれないが。


「いやぁいいんですよ」

「どうもすみません」

「……魔物使いの方ですか?」

「あぁ、ご存じでしたか。まぁ、私にはこの子しか扱えないんですけどね」


 俺らも一応スランというモンスター? を使役してる訳だが、それと何が違うんだろう。

 と思ったら、ポート曰くどうやら魔物使いはモンスターと本格的に会話が出来るらしい。

 へー、すげーなぁ。スランも魔物使いになれそうだ。


「魔物使いってことは、今このカラスの考えてる事も分かるんですか」

「まぁ、大体分かるんですが……」

「かー! かー!」

「もう! カー君ったら!」


 やっぱりエロガラスだったらしい。女性が顔を真っ赤にしてカー君の頭をパシッと叩いている。

 これは言い訳のしようもなく淫獣だ。


「ところで、みなさんはやっぱりフマウンの防衛に?」

「いえ、これからマーシュに行くんですよ」

「マーシュへ?」

「仲間に、彼女がマーシュの出身でしてね。大侵攻でマーシュが壊されるのが怖いから向かってくれって」

「へぇ……」


 女性は何かを考えている。

 いや、じっとカラスを見ている?

 そして、俺達にこう切り出した。


「あの、私たちもご一緒させて貰えないでしょうか?」

「へ? マーシュへ行くんですか?」

「はい。どうもカー君が最近、マーシュを気にかけていたようなので」

「かー!」


 うーん、まぁいいか。

 カー君の意志に従ってマーシュへ行くってのが疑問なところだが。

 強いて言えば知らない人を1人乗せるってのがちょっと気になるが。

 なんせ、前回乗せたのが俺のストーカーだったからな。

 トラウマにもなるさ。


「一応仲間の意志も確認しますが、多分大丈夫だと思いますよ」

「ありがとうございます!」


 こうして、俺達は1人と1羽の同乗者を得た。

 当然の事ながら、仲間たちもほぼ二つ返事だ。

 スランに至っては、「うー!」「かー!」と何か楽しそうにやっていた。

 食糧は全く問題ない。7人も8人と1羽もほとんど変わらないだろう。


 まぁ、ネタバレをしてしまうとこの女性とカラスは後の俺らの仲間になる。

 ハーレム要員としては7人目となる金髪の魔物使い。

 彼女も俺たちの大事な仲間になって行くんだが、そこはまぁ良い。

 それより、俺にとってこのカラスこそキーパーソン。いやキーバードだった。


 ポート流に言うと、そうだなぁ。

 第一話の最初から読み返すと、書いてありますよ! ってところだろうか。

 正直、俺はすっかり忘れていた事だった。

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