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6.暴走のような何か

「リア! そろそろ交代だ!」

「あ、はい! 分かりました!」


 リアたちが外を歩いている間、モンスターは一切出なかった。

 というか、ポート曰く周辺に全然モンスターの姿が無いのだという。

 正直悪い事ではない。

 悪い事ではないんだが、ちょっと困る事でもある。

 何せ今日の晩飯が無いのだ。

 流石に一匹ぐらいは出るだろうと踏んでいたが、何故かさっぱり出ない。


《本来はもっといっぱいいるはずなんですけどねー》

(仕方ない、最終手段を取るぞ)

《はい。右斜め前の方角にずーっと行った場所にいます》

(えっと、こっちか?)

《そーですね、その方角です》


 最終手段、相手が来ないならこちらから行くまでだ。

 遠くにいるモンスターを狩る。ロントの誕生日に俺がやった方法だ。

 今回は俺が負傷している為、ロントにお願いする。


「……と、言う訳で頼めるか?」

「構わないけど、こっちの方角でいいのか?」

「あぁ、えっと大体……」

《30秒ぐらいですね》

「30数えるぐらいで、モンスターと接触するはずだ」

「分かった」


 本来は俺が行きたい所だったが、そんなことをしたら皆に怒られるとポートに言われた。

 大人しくしてよう。




 数分後、ロントがモンスターという名の晩飯を持ってきた。

 流石本来の前衛に全力強化しただけはある。

 ターゲットが人間だったら、ミンチになってたんだろうか。

 モンスターの肉の辛うじて食えそうな部分だけを剥ぎ取り、例によって残りはブラウン君にプレゼントだ。

 いっぱい食って、元気に走って欲しい。


(正直、美味そうではないな)

《近いのが他にいなかったんですよ》

(でもネズミってなー)

《正直美味しくはないと思いますが、仕方ないですね。ハハッ》


 そう、ロントが持ってきたのは何たらマウスとか言うネズミだった。

 この世界の人としては嫌悪感は一切ないようだが、ちょっと俺としては引いてしまうものがある。

 ポート曰く美味しくないらしいし。


 


 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 暇だ。

 周囲には何もない。景色が非常に良いが、ただの山道が続くだけな気もする。

 俺、登山とかあんまり好きじゃなかったなー。


 そうだ、ここって自然に囲まれてるじゃん。

 ということは、俺の精霊魔法が有利に働くということだ。

 ならば、もしかしたら良い機会かもしれない。

 相手の魔力や強さを感じる修行をするチャンスだ。

 場所もあるし時間もある。何より、熟練の呪術使いと聖職者がいるからな。


「という訳で、先生方よろしくお願いします」

「力になれるか分からないけどねぇ」

「……息抜きになる」


 アレやコレや指導を受ける事に。

 なぁに、時間はいっぱいあるさ。


「まず聞きたいんだけど、相手の魔力とかってどんな風に感じるんだ?」

「相手がボヤーっと」

「……なんとなくもやーっと」

「なるほど、分からん」


 まぁ、魔力ってどうやって感じるの? なんて聞いたらそう返ってくるか。

 分かりやすかったら苦労はしない。

 早くも頓挫したかと思われたが、そこは先生方。何か思いつかれたようだ。


「あ、そうだ」

「ん?」

「以前後輩の子に聞かれた事があったんだよねぇ。神の力を私も見たいと」

「ほー」

「その時、後輩の子は『自分に宿る神の力』を意識するようにしたら上手く行ったと言ってたさ」

「……ユハの場合、自分の魔力を意識するといいかもしれないと」

「なるほど……」


 確かに、自分の魔力も曖昧なのに人の魔力を感じる事なんて出来ない。

 もしかしたら、自分と相手の魔力の違いが分からないのかもしれないな。

 だからこそ相手の力量を上手く把握できない……。

 なるほど、その線はあるかもしれない。


「……でも、ちょっと問題があるかも」

「問題?」

「……ユハの魔力は、ちょっと普通じゃない。何というか、混じった感じがする」

「混じった感じ……」


 ……もしかして、チートのせいか?

 俺本来の魔力に加えて、チートでの魔力増加があるからな。

 だとすると、俺が実力の割に相手の力量が分からないのも理解できる。


「……ユハは複雑な自分の魔力を感じ切れれば、可能性があるかも」

「なるほど、やってみる」

「ま、せいぜい頑張りな」


 とりあえず希望が見えたのかどうなのか。

 やるだけやってみようか。





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 俺はしばらく自分の足を見つめていた。

 右足の先っぽにだけ精霊魔法を集中。

 そこから何か見えたり感じたり出来ないかを試す。


「ユーハさん、頑張ってください」

「おぉ、助かる」


 リアが魔力結石を俺に向けてくれている。

 ブラウン君への精霊魔法も含めると結構な消費を続けているので、これは助かる。


 とにかく色々やってみる。

 魔力を練ってみたり、足を振ってみたり、一度魔力を込めるのをやめてみたり。

 雲を掴むような感じだ。

 何かを感じたと思えば、それが霧のように散ってしまう。


 それでも時間はある。

 繰り返し繰り返し、自分の感覚とすり合わせてみる。

 次第に雑念のようなものを感じるようになる。

 ……これは俺の魔力じゃないものなのか?


《何か強化系とか具現化系とか調べる感じですね》

(具現化……?)

《いえ、こちらの話です》


 んー、もうちょっとやり方を変えてみるか?

 対象を足首より下だったのを、指一本に変えてみるか。

 ……ダメだ、悪化した。

 なら、今度は膝から下まで拡大してみるのはどうだろう。

 ちょっと試してみるか。






「ユーハさんユーハさん」

「……ん? どうしたリア」

「峠越えたみたいですよ」

「お、そうか」


 いつの間にか数時間経過してたのかな?

 気づけば周囲の景色も変わっている。

 ここいらで飯にするか。


「ユーハ! その先にあるのが例の小屋だ!」

「分かった! よし、リア準備しとけ」

「はい!」


 峠には1つの小屋がある。

 この小屋は、かつて王都~ナフィ間にあった宿と同じように宿屋として運営されていた。

 しかし、余りに過酷な状況に耐えかねて放棄したそうだ。

 現在は休憩ポイントとして使われている。

 よくモンスターに壊されないな。


「宿泊するには危険らしいから、ここで調理場を借りて料理する事になってる。俺達は一応周囲の警戒に当たろう」

「はい!」

「うー!」


 俺、前衛2人、マイの実戦組で周囲の警戒をしつつ、料理の完成を待つ。

 まぁポート曰く全然いないらしいが。


 その後、食事だけを済ませて客車に乗り込む。

 え? ネズミの味?

 硬過ぎず、柔らか過ぎず、美味過ぎずだったぜ!




 峠を越えたので、これからは下り坂だ。

 精霊魔法も控えていいし、夜もノンストップで進める。

 ただし、あまりスピードを出さないようにしないとな。

 自動車も自転車も、下り坂がブレーキが効かずに一番危ない。

 そこをちゃんと管理してやらないとな。

 さて、指示を出す機械を……。


「あれ? ブラウン君に指示だすやつどこ行った?」

「へ? さっきまでユーハさん持ってたじゃないですか」

「いや、飯食う時に客車の中に置いたんだけど」

「それより、スランちゃんがまだ乗り込んでないんですよね」

「スランが?」


 うーん、まぁすぐに解決するだろう。

 その時はそう考えていた。

 外で「うー!」という声がするまでは。


「スラン? なんでそこにいるんだ?」

「危ないですよー、客車の中に入りましょう!」

「う?」


 スランはブラウン君の上に乗っていた。

 そして何故か指示を出す機械を持っていた。

 あれ、何だろう。すげー嫌な予感がする。


「うー!」

「あれ? スランちゃんあのまま出るんですか?」

「皆、どこかに掴まった方がいいかもしれないぞ」

「へ? ……きゃあっ!」

「うーーっ!」


 スランはブラウン君に指示を出した。

 全力で走るようにと。

 あとから考えると、きっと登山でハイな気分になってたのだろう。


「誰か、誰かスランを止めろ!」

「スランちゃん、ストップ、ストップ!」

「うー!」


 猛スピードの客車が、峠を攻め始めた。

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