14.真相究明
俺の布団に潜り込んでいた……いや、今まで数々の迷惑行為を行ってきた犯人は、現在エレフトラによって見事に縛られている。
犯人は少女だった。
美少女かはわからない。
なぜなら、顔が鼻血によってぐしょぐしょになっているからだ。
あと、俺が直視出来てないってのもある。
だって、うわごとのように「ぐへへ」とか「ユーハさまぁ」とか聞こえてくるんだぜ……?
「ガタガタガタガタガタガタガタガタ」
《あぁ、そんなタンスの中で震える金髪みたいな感じになってしまって》
「おーよしよし、ユーハさんもう大丈夫ですからねー」
騒ぎを聞きつけたリアが俺にイイコイイコしている。
その時の俺は、完全に怯えきっていた。
いやぁ、だって名状しがたい少女が顔面鼻血でぐしょぐしょで。
その上俺の名前を薄ら笑いで呟いてるんだぜ?
不定の狂気ぐらいにはなるさ……。
そんな俺にエレフトラが近づき、コンコンと頭を叩いた。
「ユーハ、そろそろ戻って来い」
「……ハッ、何かおぞましいものを見た気がしたが……良かった夢だったか」
「いや、それは本当に会った事なんだけどねえ。話が進まないから、顔は拭かせて貰ったよ」
「で、何で目隠しと猿ぐつわなんて状態になってるんだ?」
「だってあのイカれた目を見たり、『ぐへへ』とか『うへへ』って言う言葉聞いてたら、お前さんまたガタガタするんだろ?」
「……否めないな」
しかし恐ろしい奴だな。
かなり訓練されてるタイプの変態だ。
縛られて目隠し猿ぐつわされても、それはそれで興奮している。
「で、どうするんだい? この子」
「どうするったって、どっかに引き渡すのが一番だろう」
「んー! んー!」
犯人が喚き始めた。流石に通報という言葉に焦ったのかな?
いやちげぇ、何か身悶えし始めた。
こいつ通報されてる事にすら興奮してるのか。なんて上級者だ。
「でもいいのかい? 禍々しくてもこいつが神の力ってことは、あんたさんの知り合いの可能性があるんだよ?」
「神の力っつっても、俺心当たりないしなぁ」
「ちょっと待ってください、ユーハさん。この子見覚えないですか?」
「え?」
リアに言われてじっと顔を見る。
うーん……。
「つっても、俺この髪色の知り合いなんてマイぐらいしか……」
「んー! んー!」
「何か反応してるようだねぇ」
「え? マイさんなんですか?」
うーん、猿ぐつわしてるから何言ってるか分からん。
違うかもしれないし、もし違ったらマイに失礼だ。
「えーっと、ミオ」
「んー」
「マリア、ミランダ」
「んーんー」
「……マイ」
「んー! んー!」
「こりゃ確定だねぇ」
マイかー、確かエルフの里の帰りに助けた弓使いだったな。
彼女はエルフの里からナフィへ向かう途中だと思ってたが、真相は違ったのかもしれないなぁ。
いや、マイはマイでも違うマイかもしれない。
というかあのたどたどしい田舎じみたマイが、こうも変貌を遂げるとか想像したくもない。
そうだ、こいつは別のマイだ。
偶然茶髪で、偶然名前がマイなだけなんだ。
《いいですねー、その現実逃避》
(で、実際のところどうなんだよ)
《一致しましたよー、完全にあのマイちゃんです》
うーん、目視したくない現実だ。
何だろう、こんな変態が世にいていいものなのか。
「うわぁ……マイさんがパンツを盗むような変態だったなんて、ショックです」
《リアさん、確かパンツに顔うずめてましたよね》
(しっ、俺も触れなかったんだから黙ってろ)
しかし、こいつをどうしたもんか。
いや、やっぱり警察的な場所に突き出そう
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「……おーい、ユハー」
「あぁ、ライトベルが1階で呼んでる。ちょっと連れてくる」
ライトベルが帰ってきて1階で待機してるので、サッと抱え上げてパパッと持ってきた。
その際、軽く状況は説明しておいた。
「……これはこれは」
「で、こいつをどうするか悩んでるんだよ」
「どうやら神の力を宿してるみたいなんだけど、偶然なのかねぇ」
「……ユハは、この子覚えてないの?」
「え? いや覚えてるぞ? マイだろ? 助けて客車に同乗させた」
「……それじゃない」
それじゃない?
それじゃないってどれなんだ?
「俺、あの後こいつに会ってないぞ?」
「……後じゃない、前。私は気づいてた」
「前? それより前に俺こいつに会ってた?」
「……てっきり気づいてるものかと」
ん? 前?
ダメだ、全然分からない。ライトベルと一緒に誰かに会ったとか……?
《……あっ》
(どうした? 心当たりあるのか?)
《ちょっと待ってくださいね。もしかしたら……》
待て待て、って事は俺が会ってる相手って事なのか?
……いや、ライトベルの話だと、恐らく神の力を宿してるというのは俺が関係してる可能性があるのか……
ってことは俺がキスをした相手?
えーっとヴェルノーンって奴と一度キスしたのは覚えてる。
あとは……そうだ、あの時に。
「ん? んん?」
「どうしたんですか? ユーハさん」
「いや、確かあの五人の中に……茶髪がいたような……」
思い出せない。いや、大事な事のような気がする。
そうだ、俺がキスしたのあと5人いるじゃないか。
トレイサーと王都の戦争で、緊急でキスした5人が。
《いましたー!》
(俺も恐らく似たような結論になったんだが、過去のデータ残ってるか?)
《ちょっと第21部に戻って探してきました。えーっと引用しますね》
■ ■ ■ ■ ■
「なぁ、ポート」
《何でしょう》
「この子たちの名前、教えてくれないか」
《……知らないほうがいいのでは?》
「頼む」
《……分っかりました! えーっと、左から順にエルリッド。マイサイド。カルロッド。メアリー。エマです》
「最初三人は名前が似てるな」
《そうですね、姉妹のそうです》
「……三姉妹丼」
「黙ってろ。ポート」
《はいな》
「分かってると思うが、全員分精霊魔法に頼む」
《了解です》
■ ■ ■ ■ ■
いたぁーーー!
マイ。確か、地元ではマイで呼ばれてるとか言ってたな。
そうか、マイサイドか。
分かんねーよそんなの!
《いやぁ、確かにチートの力がしばらく1人分多いなーって思ってました》
(言ってくれよ……)
《てっきりヴェルノーンさんの分だと思ってたんですよ。そうかー。インスタントキス、失敗してたんですね》
マイサイド。彼女は戦争前に、1人の男を目にしていた。俺だった。
偶然町で見かけて、彼女はふと思ったそうだ。黒髪珍しいなと。
特にそれ以上の事の感想は無かった。
その後、ロントに襲われてインスタントキスの素材になってしまった彼女。
しかし、インスタントキスには『相手が俺の事を全く認識していない』という条件があった。
俺の事を認識してしまっていた彼女は、インスタンスキスでは無く普通にチートの力を受けてしまった。
結果……
《ユーハさんへの好感度がみるみる上がったと……』
(おかしいだろ! 俺への好感度って、他のメンバーほとんど上がってないぞ!)
《まぁ、個人差でしょうねぇ》
まさかメロメロになる力が、こんな効きまくる逸材がいたとは……。
ふと我に返ると、ライトベルがこちらをじーっと見ていた。
「……ユハ」
「何だよ」
「……責任取らないと」
「くっ」
そうだよな、こんな名状しがたき化け物を生み出してしまったのは俺なんだ。
しかし、責任取ると言うのはどうすれば……。
「やはりこいつを一緒に連れてくしかないのか……?」
「嫌そうですねーユーハさん」
「そりゃぁだって、なぁ?」
うーん、正直こいつが加入する未来が見えない。
いや、本能で拒否してる。
これならまだロントに斬って貰った方が……。
「そうだ、ロントに処分して貰えばいいんだ!」
「ユーハさん! 我に返って!」
「大丈夫大丈夫、いざとなればスランの胃で処分して貰えば……フフフ」
「エレフトラさん! ユーハさんが壊れた!」




