13.犯人熟睡
翌朝、皆が起きてから一度全員を招集した。
用件はこれからの目的地についてだ。
「……ということで、マーシュへ向かう事にした。問題は?」
「ないです!」
「……私もない」
リアとライトベルは予想通りだな。
エレフトラは言い出した張本人だし、スランは「うー!」しか言わないし。
「ちょっといいか?」
「どうしたロント」
「トーノって町分かるか?」
トーノ……えっとこれから行くのがマーシュで、その二つ隣の町か。
ポータル使ったワープだかテレポート使ったルートだと、そのトーノから歩いて行くことになる。
今回は客車で山越えなのでトーノの町は立ち寄る予定は無かったが。
「その町、私の故郷なんだよ」
「へー、そうだったっけ」
聞いたような聞いてないような。
まぁ、せっかく近くに寄るなら立ち寄ってもいいかもしれないな。
「じゃあトーノに寄ろう。ただし、今回は緊急だから帰りにな」
「分かった、ありがとう」
これでサクっと話が決まった。
いやぁ、スムーズだなぁ。
一応、命が絡むような大事なんだけどな。
「ということで、今日はナフィでやり残した事をやりましょう!」
「やり残した事かぁ……あ、一個大事な事あった。スラン!」
「う?」
「お前のその足の装置、邪魔だろうし外すぞ」
「うー!」
すっかり忘れてたが、スランの足に爆破する装置が付きっぱなしだった。
こんな危ないものはとっとと撤去です。撤去。
ポートの言う事によると、どうやらギルドでその足の装置を外す手続きは出来るそうだ。
審査がいくつかあるらしいが、まずスランはギルドでいくらかクエストをこなしてること。
元から大きな問題は起こしてない事、本人はいたって頭が良い事を考えると、恐らくすんなり通るだろうとポートは言っていた。
ということで、車輪の交換の件はエレフトラに一任した。
値段交渉とかやりたいらしいし。
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客車に乗って『リトール車具店』に到着した。
すげぇ、客車をひくモンスターを預けるスペースがある。
ブラウン君がモッサモッサと何か美味そうなもん食ってる。
俺らが出す食事より……いや、俺らが食う食事より美味いもんな気がしてきた。
「じゃあ、後は任せた」
「おう、任されたよ」
エレフトラに値段交渉とかを任せて客車から降り、スランと共にギルドへ向かう。
エレフトラは張り切って、店員と対峙していた。
彼女曰く、どうやらこの車輪はやっぱり割高らしい。
それは、この車輪の需要の問題だった。
山道を登れる車輪を必要とするのは、ナフィと北部との間の交通を必要とする者。
つまり、一番大口の客は商人だ。
次に俺たちのような客車持ちの冒険者、あとは金持ちが道楽の為に大陸を回るとからしい。
最初から高めに設定されているそうだ。
そこを心得てないと、高い値段で買わされるとかなんとか。
「まぁ、俺達には知った事じゃないけどなー」
「うー!」
俺は何となくスランと手を繋ぎながら、楽しくギルドへ向かった。
何だろう、幼女と一緒だと妙にこういうテンションになるよね。
まだ朝早くだったので、多くの冒険者がギルドの中で仲間やクエストを求めていた。
そして、あの2人もいた。
えーっと、名前何だっけ。
《エリックさんとリーナさんですよ! 一週間ぐらい前会ったばかりの人なんですから忘れないでください!》
(ごめんごめん、もう一か月ぐらい会ってない気がしたんだけどそうだよな)
そうそう、エリックとリーナと会った。
これからクエストでも行くのかな?
「おう、元気か?」
「あぁユーハさん。実は今日にでもこの町を出ようと思って」
「挨拶できて良かったです!」
「ん? そうなんだ」
まぁ、こいつらも結構いろんな場所を転々としてるみたいだしなぁ。
いろんな意味でタイミングが良かった。
「へぇ、俺たちも明日ここを発つ予定なんだ」
「そうなんですか、やっぱり大侵攻を食い止めに?」
「ん? あぁまぁ」
あれ? 情報が早いな。
ギルドとか魔術協会は、もう北部の大侵攻の予兆を把握したのか?
「それにしても、今度はペガサスとは慌ただしいですよねー」
「ペガサス?」
「あれ、ペガサスの大侵攻の話じゃないんですか?」
後に調べたところ、ペガサスというかっこいい名前の場所はこの大陸の西部にあった。
そして、大侵攻の予告が起きていた。
エリックとリーナはその助けに行くのだという。
2人にスランと一緒に手を振りながら、脳内で相談する。
(……なぁ)
《はい》
(これって、結構やばくないか?)
《ですねぇ》
(ほぼ同時に二つの大侵攻が起きるのか?)
《しかも、北部の方はフマウン狙いかマーシュ狙いか分かんないですねぇ》
つまり、それだけ戦力が分散するということだ。
うん、かなりヤバいってことだよな。
《流石に両方に参戦するのは、ちょっと現実的じゃないですねぇ》
(ペガサスの方はお任せするしかないな)
まぁ、考えていても仕方ない。
スランの装置を外す登録をとっととして、宿に戻ろう。
一応仲間にはペガサスの件を伝えておくか。
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スランと手を繋いで宿へ帰る。
彼女はもうノリノリだ。鼻歌とか歌ってる。
道中でパツキンのチャンネーを見つける。エレフトラだった。
ちょうど彼女も宿へ帰る途中だったんだろうか。
「お、エレフトラだ。おーい!」
「うー!」
「お、タイミングが良かったねぇ」
合流して3人で帰る。
スランが更にテンション上がる。
「おやおや、上機嫌だねぇ」
「うー!」
「装置外れたからなー、アレ地味に重くて邪魔っぽいし」
スランの足を見ると、足首に日焼けしていない箇所がある。
これが装置がちょうどハマっていた場所だろう。
「何かお前も上機嫌だな」
「ん? 分かるかい? 予想より大幅に値切れてねぇ」
「そ、そうか」
まぁ、泣くのは店員だろうから気にしないでいいか。
窃盗をしたわけでもない……だろうしな。
宿に戻ると、一階の厨房にリアがいた。
多くの食材を並べて次々に調理をしている。
生のままでは日持ちが悪いので、火を通したり塩漬けにしたりしているようだ。
「ただいまー」
「うー!」
「あ、3人ともお帰りですか!」
リアがチラッとこちらを見ながら見事なみじん切りを披露している。
こいつ、どんどん料理の腕が上がっているな。
料理の味付けもさることながら、安い食材で美味しく満腹になる方法を研究しているフシがある。
「ロントさんとライトベルさんもお出かけになりましたよ」
「確か、兄弟子の所へ行くってのと、魔術協会に顔を出すってのだったはずだねぇ」
「分かった。とりあえず、貰って来た書類を上に置いてくる」
「分かりました。って、スランちゃんどうしたんですか?」
「うー!」
「あら、お手伝いしてくれるんですか。じゃあその食材を切ってください」
「うーうー!」
スランがリアの助けに入るのを温かい目で見守る。
良いなぁ、絵になるなぁ。
まぁいいか。とっとと上に行こう。
エレフトラは先に上へ向かったようだ。
借りていた部屋の前で、エレフトラが固まっていた。
何だろう、少し震えてる?
「どうしたんだ?」
「……神の力を、部屋の中から感じるんだよ」
「ん? ロントかライトベルじゃ……ってあいつら出かけてるんだっけ」
「神の力……のはずなのに、何というか凄い邪悪な気配がするんだよ」
「邪悪な気配?」
……もしかして泥棒か?
神の力を持つ泥棒? 何て厄介な。
とにかく中を調べよう。
「エレフトラ、気を付けろよ。誰か中にいるかもしれない」
「あぁ……」
俺は、注意して扉を開けた。
中は荒らされていた。主に俺の荷物が。
中身はグチャグチャ。この部屋に何かが忍び込んだのは明白だった。
だが、それどころじゃない。
「なぁ、俺のベッドがもっこりしてるんだが……」
「……寝息が聞こえるねぇ」
俺のベッドがもっこりしていた。
間違いない。中に誰かいる。寝ている。
え? 泥棒が俺達の部屋入って、そのまま寝たの?
アホというか、精神を疑うレべルなんだが。
エレフトラと顔を見合わせる。
恐らくだが、このもっこりサイズはロントでもなければライトベルでもない。
俺は、ナイフが腰に備えてあるのを確認してから、一気に俺の布団をめくりあげた。
そこには、茶髪の少女がいた。
恐らく、恐らくそれなりに可愛い子なのかもしれない。
だが、だがなぁ。
俺の枕が、ベッチョベッチョのぬっちょぬちょになっていた。
少女は、俺の枕に顔を押し当てていた。
だが、何故かその枕は色々なものが混じりあっていた何かに汚染されていた。
多分だが、鼻血と涎と涙と汗と鼻水だと思う。
そんな枕に顔を押し当てている少女の顔は、これまたベチョベチョになっていた。
そして……その少女のスカートは、派手にめくれ上がっていた。
少女のはいていたパンツ。
それは、以前に盗まれた俺のパンツだった。
俺は、思わず叫んでしまった。
「へ、変態だああぁぁぁ!」




