5.Letter
『貴方は、今監視されている。
表立って会えない事をまずは謝罪したい。』
ん? 監視されてる?
いや、可能性はあると思っていたが。
《確かに、軽く監視はついてますね》
(そうなのか?)
《はい。ただし、強い監視ではないです。ちょっと変わった人がいるから、一応チェックしているという程度ですね》
ポートによると、マークされているのは俺らしい。
それは戦争どうこうではなく、単に物凄い魔法の力があったからだ。
確かに王都に入ってきた当初は、俺は8人分のチートが適用されていた。
今は大分力が落ちているが、それはライトベルよりちょっと弱い程度だ。
ライトベルもそもそもがかなり強い魔法を使える呪術師だ。
そのちょっと下という事は、それなりの実力者と言えなくもない。
そんな俺が、戦争未遂の直後にトレイサーからやってきた。
確かに気になるだろう。
王様に書簡持ってったしな。
物凄いマークがついてないのは、ライトベルの身元がハッキリしているからだそうだ。
あいつは魔術協会の人間だからな。
《とりあえず、続きを読みましょう》
(この手紙をこの場で読むのは大丈夫なのか?)
《それは大丈夫です。長い間ずっと相談するとちょっとマズいですって程度ですね》
うーん、ポートの解説無ければ危なかった。
疑心暗鬼で過ごしていたところだ。
とにかく続きを読もう。
『お連れさんが持っていたブレスレットですが、あれは欠品です。
正確に言うと、呪いの品です。劣化宝石を作成する際に稀に発生するものです。
この国では売ってはならない品なので、回収させていただきました。
こちらのブレスレットは、せめてものお詫びです。』
呪いの品?
偶然選んだブレスレットがか?
《あ、偶然じゃないです》
(へ?)
《私がそれを買うように誘導したんですよ》
ファ!?
何でまたそんなことを。
ロントの誕生日の品なのに。
《いやー。エレフトラさんと接近するには、それが近道だったので》
(ちなみに呪いって何がかかるんだ?)
《免疫が弱くなります。風邪とか食中毒にかかりやすくなります》
呪いの品を買うなら買うで、俺に一言あっても良かったんじゃないだろうか。
というか、今回の一連の流れ。もっと俺に情報が来てても良かったよな。
《サプライズですよ! サプライズ!》
(そんなものはいらねぇよ!)
ちなみに、エレフトラの金庫はその呪いを抑える効果があったらしい。
うん、こう考えると凄い良い人だな。
手紙はその後別の話しに変わっていった。
天気の話しとか、何ておしとやかなんだ。
あー、いい人だなー。エレフトラさん!
(……ってなるわけねーだろ!)
《ですよねー》
(素直に言えよ! それは危険なブレスレットですって! 無理矢理盗む事ねーだろ!)
危うく流されかけたが、今の所『窃盗』と『喫煙』と『態度が悪かった事』に対する事は一切触れられてない。
そこが一番大事なところだろ!
《まぁ、うん。アレですよ》
(……何だよ)
《リアさんはヤンデレちっくなところあるじゃないですか》
(おう)
《ロントさんは人を斬るのが好きじゃないですか》
(おうおう)
《ライトベルさんは基本ぐーたらで、浪費癖があるじゃないですか》
(そうだな)
《それと同じように、窃盗癖があって喫煙好きで、基本態度が悪いんですよ!》
(最悪じゃねぇか!)
まぁ、本物のブレスレットうんぬんというのはポートの様子から本当なのだろう。
その点は、その点に関してはまぁ百歩譲って感謝してもいい。
だがなぁ。何かなぁ。
ハーレムに加えるには程遠い。
彼女がどう思ってるかではない。
俺が奴を許す気分が微塵もないのだ。
《あ、最後に何か書いてありますよ》
(読む気が起きないなぁ)
《何言ってるんですか! 大事なハーレム候補ですよ!》
(お前が加えたいだけだろ)
《だって、面白そうじゃないですか! あーいったタイプが入ると、いつ修羅場が起こるか考えるだけでわくわくしますよ!》
(俺はしねぇよ!)
前から思ってたけど、ポートはわざと妙な性格の奴を選んで推薦してないか?
まぁ今はいい。とりあえず続きを読もう。
『つきましては、今晩そちらの宿を訪問致します。
丁重なお出迎えを期待してます』
俺はこの時、心に決めた。
今日は戸締りをしっかりして寝ようと。
何が丁重なお出迎えを期待してますだよ!
それを決めるのはこっちだろうが!
というか、そもそも宿に来るんじゃねぇ!
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
気は進まないが、エレフトラについての詳細をポートに聞いておく事にした。
とりあえず主要なイベントは終わったようで、情報を渋っていたポートからどんどん情報が出て来た。
エレフトラは北の漁村、マーシュの出身だった。
どこにでもいる不良の女の子だったそうだ。
すでに突っ込みどころがある気がするが、放置する。
彼女は何かしらの理由があってシスターになる必要があった。
回復魔法を体得したかったそうだ。
シスターを初めとする聖職者は、回復魔法のエキスパートだ。
彼女はその回復の力を求めていた。
王都は教会が強く、シスターとして修行する場としても優秀だ。
彼女はワープを利用し、遠路はるばる王都までやってきた。
そして、王都で彼女の才能が開花した。
彼女は回復魔法の才能が人一倍あったそうだ。
(回復魔法の才能? すげー回復が早いとか?)
《いえ、違います。単純に治癒の力で言えば、人並み程度です》
(じゃあ何の才能があったんだ?)
《彼女は、普通の聖職者には使えない特別な魔法が使えました》
(特別な魔法?)
《蘇生魔法です》
ちょっと息を飲んだ。
蘇生魔法かー。あいつそんなものが使えるのか。
《この世界は実力主義みたいなところがありますからね。彼女はすぐに教会内で力を付けました》
(入って半年なのに、やけに偉そうだったもんな)
《戦争の時も、蘇生の力を買われて行軍に参加してた訳ですね》
そして、そこで大きな力を目撃した。
シスターとして必要な神の力。
それが爆発するように発生するのを。
彼女は惚れた。その力に。
その力を持った人物に!
……うっそくせー。
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3人と合流した俺は、エレフトラについて伏せておいた。
ただ、こう言った。
「いいか、絶対だ。絶対に夜に誰か来ても開けるなよ」
「はぁ……」
事情があまり呑み込めない様子の3人。
そんなもの良い。
俺は奴が蘇生魔法を使おうが、興味ないものはない。
《えー、いいじゃないですか。蘇生魔法》
(はぁ? いいわけないだろう)
《どうしてですか?》
(何というか、俺が何回死んでも蘇生させられちゃうってことじゃないか)
《あー、確かに完全にフラグですね。死亡ネタというんでしょうか》
蘇生出来る奴が身内にいると、命の軽さが変わってしまう気がする。
死んで転生神と会って、呼び戻されてーとかそういうネタはもう間に合ってるのだ。
宿へ帰る途中で大事な事を思い出した。
そうだ、俺はコレを取りに行ったんだった。
正確には別のものになってしまったが。
「ロント、腕出せ」
「ん? どうした?」
「コレつけてやる」
「それは……どうしたんだ?」
見るからに高級そうなブレスレット。
ロントはそれを見てびっくりしていた。
説明は面倒なのだが、藁を交換したら屋敷になったみたいな感じだ。
リアとライトベルも目を輝かせている。
リアは何て綺麗なブレスレットだろうと。
ライトベルはいくらで売れるかなと。
うん、こいつは放っておこう。
ちなみに、正規の宝石には良い効果がついているらしい。
えっと、このブレスレットは何の効果があるんだろう。
《反射神経の向上ですね。叩いて被ってジャンケンポンするとすぐにわかりますよ》
(いや、やめとく)
ロントは元から反射神経はいいからな。
多分、元からブレスレットなしでも勝てない。
その日の夜、誰かが扉を叩いてきた。
やっぱりあいつが来たか。
と思ったら何やら様子が違った。
「すみませーん! トーシン警察のものですがー」
警察? 俺、何かしたっけなぁ。
いやしたな。不法侵入その他もろもろ。
……どうしよう、開けたくない。
でも開けないといけないか。
鍵を開けて扉を開ける。
そこには2人の制服を着た警官がいた。
見た事のないデザインの服だ。トーシン警察特有のものだろうか。
「どうしました?」
「夜分遅くに失礼します。実は教会で泥棒が出ましてね。ハイ」
ドキッとした。
だが、警官の続く言葉が俺とは違う事件を示していた。
「どうやら、犯人は多額の現金を持ち出したそうです」
「何か心当たりありませんかね? ハイ」
「何でも結構ですが……」
良かった。俺の件ではなさそうだ。
というか、また不法侵入許したのかよあの教会。
「すみません、ちょっと分からないですね」
「そうでしたか。何かありましたら、警察まで連絡をください」
「それと、近くに犯人が潜んでる可能性があります。ハイ。気を付けてくださいね。ハイ」
全く物騒なもんだ。
警察は俺の部屋を回ったあと、他の部屋の宿泊者に話を聞きに回っている。
大変そうだなぁ。
「あの、ユーハさん。何かありましたか?」
「近くで事件が起きたんだってさ。注意しないとな」
「はぁ、それは気を付けないといけませんね」
「戸締りはしっかりしないとな」
「ところでユーハさん」
「どうした?」
「この方は、一体どなたですか?」
俺のベッドの上で、俺の大事にとってあったプリンを食べている不届き者がいた。
そのエレなんたらとかいう不法侵入者は、プリンを最後までかきこむとこう言った。
「ふぅ……あんまり美味しくなかったなぁ」
よし、ロント。許可する。
こいつを切り刻め。




