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2.Apple Pie

「ここが今日の宿だ」

「へー、結構大きいとこですね」

「だろ? 共同の調理場があるんだけど、これが結構広いんだよ」

「じゃあ私の出番ですね! 余ってる食材使い切っちゃいましょう!」


 リアが気合を入れている。

 その一方で、ライトベルが若干テンション落ちている。


「……階段ある」

「たかだか六段だろ! 俺は抱っこしないからな!」

「……ケチ」


 俺達の泊まる部屋は、中二階と呼べる位置にあった。

 ここなら俺も抱っこしなくていいし、ライトベルもちょっと運動になるだろう。


《そんなに運動させたいなら、ベッドの上で運動させればいいのに……》

(黙ってろエロエルフ)

《へいへい。でもハムエッグは2人で分けるのは私は出来ると思うんですよ》


 隣をチラッと見るとライトベルがポッと頬を赤らめてる。

 放置してとっとと階段を上がる。

 後ろで「……ひどい」って聞こえるけど知った事ではない。





「すいませーん、ユーハさん来てくださーい」

「はいはーい」


 部屋でまったりしていると、一階の共同調理場からリアが呼ぶ声がした。

 一階に向かうと、大きなアップルパイがあった。

 それ以外にもなかなか豪華な料理が並ぶ。


「すいません、運ぶの手伝ってください」

「おー、凄い豪華な料理だな」

「えへへ、ちょっと奮発しちゃいました」


 とりあえずアップルパイを部屋へ運ぶ。

 けっこうでかいな。4等分してもこれだけで結構満足できそうだ。


 しかし気になる料理がもう1つ。

 恐らく4人分ぐらいのパスタなのだが、カニっぽいのをいっぱい使ってる。

 あれ? いつの間に買ったんだろう。高級っぽいんだけど。


「あ、そのカニは魚売りのおじさんがくれたんですよ」

「魚売り? カニも売ってるのか?」

「どうやら大量だったらしくて。売れ残りがあったそうで、試作のアップルパイと交換してくれました!」


 可愛い女の子の作ったアップルパイと、売れ残りとはいえカニ。

 なるほど、等価交換と言えば等価交換か。

 ちなみにカニは何故かロントよりライトベルの方が喜んでいた。




「よし、飲み物皆持ったな?」

「……大丈夫」

「じゃあ、ロント一言どうぞ!」

「へ? あ、あぁ……えーっと」

「……かんぱーい」

「かんぱーい!」


 何故かライトベルが奪い取ったが、とにかくめでたい!

 とりあえず飯だ飯! カニめっちゃうめぇ!


「あ、ライトベルさん、そのジュース取ってください」

「……これ?」

「そうです。ありがとうございます」

「あ、私もソレ欲しい」

「どうぞどうぞ」


 和気藹々と食を進める3人。

 特にロントは結構がっつり食べる方なので、かなり嬉しそうだ。

 旅の途中ではちょっと節約しないといけない時もあるからな。


 3人の姿を見て、ふと思う事がある。

 喧嘩せず仲良くしててくれて本当に良かった。


 俺は彼女たちに内心申し訳なく思う事があった。

 リアとロントに関してだ。彼女たちは俺のチートによって好感度が上がっている。

 正直、何も知らないで勝手にキスされて、無理矢理好きにさせられてるのだ。


 しかし、彼女たちはそれを聞いても態度を変えなかった。

 それが俺にとって、救いになっていた。


「ユーハさん、食べないんですか?」

「いいや、食べる……ってもうカニほとんどねーじゃねぇか!」

「……ふふふ、食卓は戦場。速さこそが全て……」


 ライトベルの頬をつねりながらアップルパイを食べる。

 まだホカホカで、美味しかった。

 確か結構酸っぱいリンゴだった気がするが、よくこんな上手に調理したもんだ。





 食後、翌日の予定を決める事にした。

 怪しい所をくまなく捜査!

 と言いたいところだが、流石に策もなく政府の機関に殴り込みをかけるわけにはいかない。

 王様に直訴する訳にもいかない。

 教会? まず最初に行くの教会かぁ?


「……私に心当たりがある」

「ほう、言ってみろ」

「……この王都はこの大陸の中心。当然魔術協会も本部がここにある」

「あーなるほど」


 一応異変を調査しろって言い出したのは魔術協会でもある。

 戦争についての情報が得られなくても、何か各地の異変が起きているかという情報ぐらいはあるかもしれない。


 ということで、明日は午前中に本部を訪れる事にした。

 俺も一応付き添いとして向かう。

 その間リアは一斉に洗濯だ。

 ロントにはその間、雑貨屋等で冒険で使えそうな道具を物色してもらうことにした。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




「……よし、帰ろう」

「おいまて、到着したばっかりだろう」

「……じゃあ抱っこ」

「やだよ! 結構公衆の面前じゃねぇか!」


 本部に到着し次第、ライトベルの様子が変わった。

 なぜなら、入口までにずらぁーーーっと階段がそびえ立っていたからだ。


「ほら! 魔法使い見習いの子も一生懸命登ってるじゃねぇか!」

《どうしてそこで諦めるんだ! 俺だってシジミがトゥルルって頑張ってるんだよ!》

「……だって」

「俺が後ろから背中押してやるからさ、ホラ」

「……うー」


 結果、二度の休憩を挟みつつ俺達はその最上部へと到達した。

 そしてそこに到着した俺達の目に映ったもの。

 それは二階への階段だった!

 ちなみに魔術協会の会長の部屋は5階にあるらしい!

 ここの会長になったら毎日足腰鍛えられるな! やったね!


「……私、もうここに住む」

「じゃあ置いてくからな」

「……やだ」


 結果、そこから先は抱っこになった。

 5階に到着した。

 受付っぽいところに秘書っぽい人が立っていた。


「……あのー」

「えっと、どちら様でしょうか?」

「……特別なんちゃら顧問をやってるライトベルです。会長さんは……」

「あ、ライトベルさんですね。生憎会長は今、出張で出かけております」


 ライトベルの心が折れた。

 俺達は、これからこの階段を降りなければならない。


「……俺は抱っこしないからな」

「……ケチ」


 凄い無駄な時間を過ごした気がする。

 まぁアポをとっただけいいとしよう。

 ……ライトベルを連れてまたここに来るのか?

 やだなぁ……。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 結局時間はほとんど経過してないので、宿から出て1時間ぐらいしか経っていなかった。

 いや、階段上がって帰るだけで1時間も経ったのは何というかアレだな。

 まぁいいか。




 部屋でリアとロントを待つ。

 ライトベルは本を読んでいる。俺はナイフの手入れをしている。

 やがてロントが帰ってきた。

 弓を手入れする道具を買ってきた。

 ……あれ、弓使いウチのパーティーにいないんですが。


「セールストークを聞いてつい……」

「分かった分かった。そのうち俺が使うかもしれないし、弓使いが仲間になるかもしれないからな」

「あぁ……」


 よし、これで大体ナイフが研げた。

 仕上げが終わったら、リアの手伝いに行ってやるか。

 そう思っていると、事件が起こった。


「キャーーーーー!」

「な、何だぁ!?」

「で、デビル! デーモン! サタン!」


 部屋の中で凄い高い悲鳴が起きた。

 悪魔三段活用みたいなの言われても分からん。

 と思いつつ周囲を見てみると、アレがいた。

 台所に出る黒い悪魔。Gである。


 咄嗟に俺自身に、遠距離攻撃の命中を上げる魔法をかける。

 同時に、G自体がちょっと遅くなった。

 ライトベルの呪いがかかったんだろう。

 即座にGにナイフを投擲する。

 見事ヒット。流石強化魔法と弱体化魔法は伊達じゃない。


「……今の悲鳴誰だ?」


 リアは今外でまだ洗濯物を干している。

 ライトべルは……普通にGの刺さったナイフを掴んで、外に捨てようとしてる。

 ってことは……。


 振り返るとロントが目を逸らしてた。

 ……お前か。


《うわぁ、可愛いところあるんですね》

(そっとしておいてやれ……)


 あのGという存在。

 あれを恐怖する心は、誰にも止められないだろう。

 それと、虫関係のクエストは受けないようにしてやろう。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 午後の予定を考える。

 何もなければたまにはブラブラするのもいいかなと思っていたが、リアがある提案をした。


「教会行きたいです!」

「あぁ、予定無いなら行ってみるか」


 普通に観光目的としてもいいかもしれないな。

 特に他に予定もないし、行ってみるか。





「おっきいですねぇ!」

「……私は実は3度目」

「そうなのか?」

「……前に師匠と来たことがある」

「私は初めてだな」

「私もです!」


 来た事があるのはライトベルだけか。

 観光案内は任せる事にしよう。




 教会の入口に、何やらゲートっぽいのがある。

 信者の人がゲートでお金を入れて中に入っている。


「ここは、中に入るのは有料なのか?」

「……有料ではない」

「じゃあタダなのか?」

「……中に入るのは、多少なりとも信仰心がある人じゃないとダメ」

「じゃあ俺は入れないのか?」

「……お布施を払えばオーケー」

「お布施? それはどこで払うんだ?」


 ライトベルが指をさす。

 ゲートだ。


「あそこで払ってるのがお布施なのか?」

「……そう」

「それってお布施が入場料ってことなのか?」

「……入場料を取るのは、法律で禁止されている」

「じゃあタダで入れるのか?」

「……それは無理」

「だああああぁぁぁ!」

「ユーハさんが壊れた!」


 まぁ、要するに教会は入場料を徴収することはできない。

 しかし入場料が欲しい。

 ということでお布施という名目で無理矢理徴収しているそうだ。

 法律なんてあってないもんじゃないか。


 ちなみにお布施にも最低金額が設定されてた。

 完全に入場料だこれ。

 仕方ないので全員分払って中に入る。




 中は非常に立派なものだった。

 大きなシャンデリア。

 キリスト教じゃないはずなのになぜかでかでかと置かれている十字架。

 何かよく分からない人の像。

 そして謎の狛犬。

 聖書っぽいものもあった。

 ちなみに有料だった。めっちゃ高かったのでもちろん買わない。


「今は一般開放の時間ですね。自由に見て回れるみたいです」

「見て来ていいぞ。俺はここに座ってる」

「はーい。ロントさん行きましょ!」

「いや、私はここにいる。ちょっとまだ疲れが残っててな」

「そうですか。じゃあライトベルさん!」

「……ちょっと、引っ張らないで……」


 はしゃいでいるリア。

 こういうの好きなのだろうか。




 まったりしていると、一番奥の扉がガチャッと開いた。

 中から1人のシスターが出て来た。

 金髪のシスターだ。

 遠くから見ても綺麗なシスターだと分かる。


 シスターは厳かな雰囲気をまき散らしながら歩いている。

 きれーなひとだなーと眺めていると、彼女が俺の方を見た。

 ……ん? こっちに来る?

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