10.旅の続き
「ユーハ、リア。今戻ったぞ」
「……ただいま」
「おかえりんしゃい。どうだった?」
「……バッチリ」
ライトベルがいくらかの硬貨が入った袋をドサッと置いた。
……あれ?
「戦争について説明行ったんじゃなかったっけ?」
「……ついでに石碑の情報を売ってきた」
「相当値段吊り上げてたな……」
「何というか、流石だな」
その力を借金の返済に当てられればいいんだけどな。
いや、余計な事を言わないでおこう。勝手に浪費される。
「じゃあ今から買い物でも行くか。リア、起きろ」
「……ふぇ?」
「2人とも帰って来たぞ。今日は花火だからまだ開いてる店も結構あるし、今のうちに買い出し行くぞ」
「あ……はい!」
たまには夜の店で買い歩こう。
女3人はべらせていざ夜の街へ!
「……あ、私は寝る」
「お、おう……」
訂正。両手に花でいざ夜の街へ!
最近学んだ事だが、すぐにダメになりそうな食糧は出発直前に買い込んだ方がいい。
よって食糧の買い込みは明日へ回す。
「ということは何を買うんですか?」
「お前包丁欲しがってただろ。俺もナイフだけだと心細いし」
「じゃあ武器屋に行くか。多分包丁も売ってると思うぞ」
ということでやってきましたミスリル武器店。
名前からしてミスリルソードとかそんなのばっかり売ってるのかと思いきや、看板の横に「売ってるのは9割鉄なのでご安心を!」と書いてある。
珍〇景にでも投稿してやろうか。
戦争間近まで行ったせいか、こんな時間でも結構お客が店内にいた。
とりあえず商品をチェックだ。
「お、結構包丁売ってるな。穴あき包丁とかもあるのか」
「ロントさん、どの包丁がいいでしょうか」
「うーん、これかな」
「これ、良く切れそうですか?」
「あぁ、多分斬りにくい部分でも綺麗に斬れると思う」
……それって人間をって意味じゃないか?
あぁ、ヤンデレ的にはそれでも間違ってはいないか……。
「ユーハ。私はこの小手が欲しいんだが、いいだろうか」
「そうだな、この値段なら今回の報酬で買っていいな」
「分かった」
ロントが買ったのは軽さが特徴の小手だった。
薄い割に斬撃に強い特徴があるらしい。
その反面衝撃には弱いので注意が必要とのこと。
「俺はどうしようかなぁ」
「なぁ、ユーハ」
「どうした?」
「アレに挑戦したらどうだ?」
店先に刺されてる一本の剣。
デザインが凄い良い。
これはアレか? これを抜けたら伝説の勇者とかそんなのか?
《やってみましょうよ! ユーハさんは存在が主人公みたいなもんですし!》
(うーん……)
《大丈夫ですよ、やるだけタダですし! リアちゃんもロントさんも期待してますよ!》
(じゃあ……やってみるか)
剣の前に立って両手でしっかりと持つ。
……ふん!
(……無理だ)
《何言ってるんですか! やり方が悪いだけですよ! 精霊魔法の補佐も使って、上手く力を使いましょう》
(うーん、やってみる)
……ぐおおぉぉっ!
ダメだ。
いや、諦めるのは早い! もう一度!
……ぬぅぅぅん!
「あの、ユーハさん」
「どうしたリア! 今俺は男のプライドを賭けただな!」
「それ、レプリカです」
……へ?
剣を良く見る。
……凄い綺麗な字でレプリカって書いてある。
「……プッ」
《ばっかですねー! やーい信じてやんのー!》
ロントが後ろで噴き出していた。
店の中の客も何人かニヤニヤしながらこちらを見てる。
……くそう。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
翌朝、俺達は総出で食糧を買い込み、風呂に入ってから出発した。
ニャレッドへのあいさつもちゃんとした。
……あいつ、今度はあの姉妹とは別の女連れ込んでたな。
ブラウン君がせっせと走る。
なんだかんだで客車の揺れも慣れて来た。
昨日は余り寝てないので、横になればよく眠れそうだ。
「ふわぁーぅ」
「眠そうですね、ユーハさん。ロントさんも」
「あぁ、昨日の夜は仕返ししてたからな」
「うむ……私が死んだ時の様子を、ものすごい丁寧に説明された……」
「それは……」
ちなみにポートにはその間、脳内でずっとグロいものを見せていた。
ロントが首を斬り落とされた時の断面だ。
もうアレはホラーだ。
《あぁ、骨が……喉が……大動脈が……》
(反省したか?)
《はい……》
俺を騙すなんてふてぇやろうだ。
次は暑さでダメになって虫がたかってた肉の映像でも見せてやろうか。
あ、ちなみにソレは流石に廃棄しました。
客車には冷蔵庫なんてものはないからなぁ。
しばらく走っていると、先日の戦場に到着した。
とりあえずは平和そのものだ。大規模な殺し合いがこの前まで起こりそうだったとは分からない。
ただ、ところどころにまだネズミの死骸がある。
それは申し訳ないな。
「そういえば、ここの生態系は大丈夫なのか?」
「……大丈夫ではない。完全に崩れてるし、ネズミを餌としてたモンスターが活発になってる」
「それはマズイんじゃないのか? 今更だけど」
《考え方を変えましょう》
「考え方?」
《この街道に、モンスターが出るようになる。コレが何を意味してるか分かりますか?》
「うーん、通行が減る?」
《そうですね。簡単に行き来が出来なくなりますし、進軍もしにくくなりますね》
「……あ、そうか」
この道が安全なら、それだけトレイサーも王都も余裕になる。
逆に言えば、ここにモンスターが出没するようになればそれだけ停戦は続く。
モンスターたちには迷惑な話だが、俺たちにとっては都合がいいのか。
外を眺める。
遠くで大きな鳥が羽ばたいている。ワシだろうか。
あの鳥も今まで餌にしていたネズミがいなくなったら人間を襲うのだろうか。
もしくは、他の地域に行くのだろうか。
まぁ、悪い事をした。
でもこっちはこっちで必死なんだよ。
《ユーハさん、今回はお疲れさまでした》
(あぁ、翻訳から何から世話になった)
《いえいえ、それほどでもありますよ》
でへへーと照れるポート。
いい性格してるな、ほんと。
《それにしても、戦争の停戦によく踏み切りましたね》
(そうか?)
《はい。本来私の予定では、もっと渋るんじゃないかと思ってました》
(……渋った場合はどうなってたんだ?)
《この戦争の停戦は転生神様からの使命だ! という手段を使ってました》
……あー、あったな。使命とか。
まぁ使命を受ける以前に流れで目的が出来てしまった訳だが。
「あ、そういえば王都に向かう流れになってるけど、王都で何するんだ?」
「……まず、1つ目がコレ」
「これは?」
「トレイサーの責任者の書簡だ。これを届けるのが今回の私たちのケジメの1つだ」
「ふむふむ」
「……それと、もう1つ気になる事があって」
「気になる事?」
「……今回の戦争の理由」
どうやら、今回の戦争は突然だったらしい。
今までにも王都とトレイサーの間で小競り合い程度はあった。
過去に大きな争いもあった。
しかし今回の戦いは余りにも急だったそうだ。
それも、戦争の原因は彼らには思い当たらないのだという。
「……もしかしたら、王都のどこかにいるのかもしれない」
「何がだ?」
「……あの石碑を、復活させようとしている奴が」
思わず息を飲んだ。しかしありえない話ではない。
王都側に、今回の戦争を引き起こした張本人がいる可能性がある。
もしそいつの目的が石碑に閉じ込められている奴の解放だったら。
……なるほど、王都には何かあるかもしれないな。
「……ユハ、ブラウン君に魔法かけて」
「そうだな、この辺りはモンスターが出る可能性がある」
「分かった。ブラウン! 行くぞ!」
ブラウン君に足が速くなる魔法をかける。
まだ俺は8人分のチートの力が残ってるからなああああぁぁっっ!
「はやい! ユーハはやい!」
「……客車がガタガタ言ってる」
「魔法が強すぎたぁぁっ!」
《いいじゃないですか! この勢いで、王都まで行っちゃいましょう!」
猛スピードで走る一台の客車が、王都への道を走り抜けて行く。
「ユーハさん!」
「ど、どうした!」
「この前、美味しいパイの作り方を覚えました! ……無事に王都に辿りつけたら、ご馳走しますよ!」
「死亡フラグ立てるんじゃねぇ!」
こうして、俺達はトレイサーを後にした。
王都トーシン。そこで俺達は何を体験するのだろうか。




