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3.過去の大侵攻

 宿に荷物を置き、一度二手に別れる事に。

 ライトベルは魔術協会へ行くという事だが、その際に俺を連れて行きたいらしい。

 俺に魔王について魔術協会の人に供述して欲しいとの事だが、実際は魔術協会で階段登れないからついてきてほしいってのが本音なんじゃないだろうか。


「……違うもん」

「ほう? 魔術協会の階段は登れると?」

「……あそこは階段を上る必要がない。その点は私1人でも大丈夫」

「じゃあこの宿の階段も自分で登れるんだな」

「……いじわる」


 俺とライトベルが魔術協会へ行く間、残りの2人には買い物を済ませておいてもらう。

 肉は現地調達が効くので、必要なのは野菜だ。

 リア曰く、モンスターは筋肉質で癖が強い。

 臭いも強いので、それを打ち消せるように香草が欲しいとの事。

 この辺りは旅を始めなければ分からなかったポイントだな。

 その他料理担当のリアでなければ分からない事もあるだろう。




 日差しが強いので、黒い傘を相合傘にしながら魔術協会へ向かう。

 ライトベルは、何というか距離感がつかめないな。

 まぁ唯一ちゃんとした形でキスをした相手でもあるし、相合傘程度では今更って感じなのだろうが。

 親密度としてはリアが一番だが、関係が一番進展してるのはこいつなんだよな。


「そういえば、リアにかけた痩せる魔法って大丈夫なのか? そのままだとガリガリにならないか?」

「……本当はかけてないから大丈夫?」

「へ?」


 ニヤリと笑うライトベル。

 しかしかけてないだけであって使える事には変わりないらしい。

 せっかくなので痩せる魔法についてレクチャーしてくれた。


 痩せる魔法は、主に太りすぎた富裕層に使う魔法なんだそうだ。

 お腹回りが気になるお金持ちに一から説明し、定期的な資金援助と引き換えに痩せる呪術をお金持ちにかける。

 法でその額はある程度決まってるようだが、呪術師の大事な資金源の1つなんだそうだ。


「……でも私の顧客は余り多くないし、基本的にそこまでお金持ちじゃないから」

「へぇ、派閥とかあるのか」

「……大体そんな感じ。私の師匠は呪術師じゃなかったし」

「借金が膨れ上がったのもそれが関係してるのか?」


 そっと目を背けるライトベル。

 違うんだな……。


 にしても呪術師の中でも派閥とかあるんだな。

 そこらへんの事情もあるんだろうな、今回の旅に駆り出されたってのも。




 魔術協会は、某魔法使い映画に出てくる学校のような古い建物だった。

 実は最近リフォームが入ったらしいが、外見が新しい建物だと魔法使いっぽくない!

 という理由で見た目だけ古いらしい。

 中に入ると綺麗な建物だった。


 そして、驚く事に内部にエレベーターが存在した。

 思ってたよりハイテクだ。

 最近の魔法使いって凄い。


「……これは私が開発した」

「おぉ、すごいな」

「……階段歩きたくなかったから」


 ただし、魔力がある程度ある者でなければ使えないそうだ。

 俺でもギリギリ使えないのだとか。

 魔術師の目標の1つがこのエレベーターを使う事だと言われているとかないとか。

 ライトベルさん、乗せていただきありがとうございます。


 ちなみにライトベルの家にもこの装置があるそうだ。

 だから地下から一階に上がれたのか。

 ……そんなものを家に設置したりしてるから借金が増えて行ったんじゃないか?





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





 魔術協会支部の最上階で、支部長的な人と会う事ができるらしい。

 流石特別なんちゃら顧問。一応コネはしっかりあるんだな。


「……来てやったよ。ファルダーク」

「…………待っていた、ライトベル」

「……彼が例の魔王について知識があるユハ」

「あ、どうも。ユーハと申します」

「…………これはどうも、ファルダークと言う。一応ここの支部長を務める呪術師だ」

「ライトベルさんには色々お世話になりました」

「……ふふん」

「…………眉唾ものだと思っていたが、本当にいたのか」

「……私は嘘はつかない」


《三点リーダ多すぎじゃないですか!》

(俺もツッコミ入れたいと思ってたんだ黙ってろ)

《というか、嘘つかないってリアちゃんにこの前嘘ついたばっかりじゃないですか!》

(それ以前に、お前大丈夫か? このファルダークさんに声聞かれてないか?)

《……あっ、そういえばそうでした。ファルダークさんに聞かれてるんでしょうか、コレ》


 ファルダークさんの顔色を見るも、大丈夫そうだ。

 ライトベルもチラッとアイコンタクトをしてきたが、ファルダークさんは分かってないらしい。

 ライトベルはやはりイレギュラーだったのか。


「…………確かに、この男は妙な星の下にいるな」

「……でしょ?」

「…………ユハ。ユーハ。呪い。なるほどな」


 前言撤回。こいつもこいつでおかしい。

 何だ? 俺の前世はプライバシーないのか?

 何故魔王について知識があるかとか、説明が減るのは助かるんだけどさ。


 ファルダークさんは三点リーダ多めで、ライトベルと似たような質問をチラホラと。

 本当に漫画とかゲームの知識で説明していいんだろうか。

 これを予言とか言われて扱われたら凄い困るんだが。


「と、こんなところですが大丈夫でしょうか。俺の説明は」

「…………ありがとう、助かった」

「それで、こちらからも質問していいですか?」

「…………うむ」

「ここ最近、大きな異変はありましたか? 魔王の登場っぽい何かが」

「……ユハはこの世界の知識に疎い。ちゃんと説明してあげた方が」

「…………分かった。こちらの持ってる情報を渡そう」


 そう言うと、これまた三点リーダ多めで話してくれた。


 ここ最近、例の大侵攻の頻度が非常に高くなっているそうだ。

 10年前までは大陸全体で1~2年に一度のペースだった。

 しかし先日の大侵攻含め、ここ半年でもう既に4度目だと言う。

 しかも4か月前、とうとう1つの町が滅ぼされたという。


「…………その時は運悪く2カ所同時の侵攻でな。片方が守り切れなかった」

「……ここから少し遠いところ。センリーフという半島にある町だった」

「…………そのモンスター達は幸い全て討伐されたが、犠牲も大きかった」


 地図を開きながら説明してくれた。

 ちなみに他の侵攻された町は、ウォードア、トレイサー、ナフィ、フマウンの四つだという。

 ナフィが同時侵攻された町で、こちらは何とか守り切れたのだとか。


《ちなみに、このナフィですね。奴隷の売っている町は》

(なるほど、覚えておこう)


 距離としてはこのホーガンとあまり遠くないが、間に大きな山がある。

 確かに迂回した方が良さそうだ。


「……それで、ファルダーク。これでいい?」

「…………あぁ。お前の借金、旅の間は返済を伸ばしてやろう」


 ライトベルが旅をするって言い出したのはコレが理由かよ!

 というか律儀に働いて返せよ引きこもり!




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 結果、ある程度の資金を融通してくれた。

 この資金は貴重だ。

 大事に使わなければならない。


「いやぁ、いい人だったな。ファルダークさん」

「……人をこき使うからあんまり好きじゃない」

「お前はこき使われるぐらいがちょうどいいんじゃないか?」


 エレベーターを降りながら、そんな事を話していた。

 一階に降り、外へ出るとこちらへ走ってくる足音が聞こえた。

 ふと見るとリアだ。どうしたんだろう。


「はぁ……はぁ……大変です! ロントさんが!」

「へ? ロント? ロントがどうかしたんだ!」

「ロントさんが連れて行かれてしまいました!」


 ロントが連れて行かれた?

 まさか、マフィアの一味か?

 くそ、こんなところにまで手を回してたのかよ!


「連れて行かれたってどこへか分かるか!」

「はい、あそこです!」

「……あそこは」

「あー」


 警察だった。

 思ったより相手が強大だった。

 というか、この町は警察あるんだな。





 リアとロントが買い物をしていると、遠くで悲鳴が聞こえたらしい。

 ひったくりだったようだ。

 その声にパトロール魂が騒いだロントが行動しないわけがない。

 ここまではいい。ここまでは良かった。

 相手がナイフを手に反撃しようとしなければ。


「私は見れなかったんですが、どうやら大変な事になってしまったようで……」

「みなまで言うな、大体分かる」

「……町によって法律は違うから」


 あー。今まではセーフだったけど、ホーガンでは過剰防衛になっちゃったんだな。

 いつかこういう事が起きると思っていた。


(なぁ、ロントが捕まってるのは本当か?)

《はい、今取り調べを受けていますね》

(このまま放っておくとどうなる?)

《保釈金を払えば日数を削れますが、半月ぐらいの勾留になります》

(払った場合は?)

《5日ぐらいで解放されます》


 うーん、さっそく貴重な資金の使い道が出来てしまった。

 まぁ仕方ないんだけども。


「……私が口添えをすれば、すぐにでも出せるかも」

「お、それは助かるな」

「……保釈金は払わないといけないと思うけど」


 それはまぁ仕方ないだろう。

 しかし困ったことをしてくれるもんだなぁ。

 ……うーん。


「よし、一回帰ろう」

「へ? ロントさん助けに行かないんですか?」

「いやぁ、一日ぐらい頭冷やしてくれた方がいいかなって思って」

「……同意」


 今回はすぐ解放できる可能性があるだけいいが、他の町でも同じ事されてもたまらないしなぁ。

 一晩勾留所の中で頭を冷やして貰おう。


(ところでポート)

《ほいさっさー。何でしょう》

(仮に脱獄を計画したとしたら、成功は可能か?)

《あー、無理ですね》

(無理なのか? 俺のあの気配消す魔法を使っても)

《はい。刑務所や警察、銀行やお風呂場等ではあの魔法を邪魔する仕掛けがある場合が結構あります》

(へぇ)

《悪用した人がいたってことですね。美味い話はないですよ》

(なるほど、俺も色々出来ると思ったけどまだまだだな)


 逆に言えば、仮に今後自宅を持つ機会があればその仕掛けは設置したいな。

 公共の風呂場にもあるぐらいなんだから、金持ちの家にもある場合があるだろう。

 ワルは出来ないんだな。


 俺達は宿に戻ると、飯を食って早々に寝る事にした。

 が、宿の3階までまた俺がリアとライトベルを抱っこして運ぶを要求された。

 地味に大変なんだよな、コレ。

 もしかして、これから毎回やるのか?

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