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2.好奇心の膝枕

 ロントが目を覚まし食事を済ませたあと、俺が客車を見ている間に女子たちは水浴びに行くことにした。

 ポート曰く安全に水を浴びるところが近くにある。また、ちかくにモンスターもいないようだというのを聞いた。

 まぁロントとライトベルがいるんだから、多分1人でいる俺の方が危険だろう。


 食糧のチェックを行っていると、今から水浴びに行こうと袖をくいっと引っ張られた。

 ふと見るとライトベルだ。どうしたんだろう。


「……裸見たい? 一緒に来る?」

「ブハッ……何言うんだよ」

「……半分じょーだん」


 そう言い残すとライトベルは三人で水浴びに向かった。

 何だよ、ドキっとさせる事言うなよ。

 どうしても三人が水浴びするところ想像しちゃうじゃないか。


《いいじゃないですか、覗きに行きましょうよ》

(何言ってるんだ)

《大丈夫ですよ。せっかくその手の魔法があるんですし》


 そういえば、俺は気配消す魔法あったな。

 覗きをしようと思えばできるか……。

 ってちょっとまてよ。


(まさか、俺が覗きに行ったらバレて何か修羅場が起きるとか無いだろうな?)

《い、いやぁ。あ、あるわけないですよ》

(やっぱりあるんじゃねぇか! 行くかそんなもん!)


 コメディ的展開で済めばいいけど、俺は知っている。

 あちらには人を斬るのが好きな帯刀者がいると。




 三人が帰ってくるとちょっと互いの仲が良くなっていた。

 裸の付き合いという奴だろうか。


「どうだった?」

「……すごかった」

「凄かったです」

「凄かったって何がだよ」

「……そりゃあ、ねぇ」


 ライトベルとリアがそっとロントを見る。

 正確にはその胸を。

 思わず目が追ってしまう。


「そんな、凄かったのか……?」

「……着やせするタイプ」

「しかも感度が良いんですよ? ロントさん」

《感度ォ!?》


 |ポート(めんどうな奴)が食いついた。

 アカン、このネタは興味深いけど掘り下げちゃあかんやつや。

 とりあえずこの話題は打ち切ろう。


「ロントがそこでヘコんでるからそのへんにしといてやれ」

「……えー」

「俺も水浴びしてくる。適当に時間潰しててくれ」

「分かりました」


 いつもの水浴び道具を持って、水を浴びれるという場所へ向かう。






 森の中を歩いていると、声が聞こえてくる。

 また精霊だろうか。


(あいつら麻雀やってるんだろ?)

《いや、場所が変わりましたからね。真面目な妖精かもしれませんよ?》

(そうか? 一応聞き耳立てておくか)


 息をひそめて耳に集中する。

 すると、妖精の声が聞こえてくる。


『生きていたのか!』

『……クックック』

『!? お前は誰だ!』

『お前の親友はなぁ、俺の作り出した分身だったんだよ!』

『そんな馬鹿な!』

『楽しかったぜぇ! お前との友達ごっこ!』

『くっそおおぉ!』


(……何やってるんだ? こいつら)

《多分お遊戯か何かですよ。良かれと思ってやってるんじゃないですかね》


 よく分からないが、まぁ放っておこう。

 俺の知らない世界もあるんだろう。





 川の勢いは思ったより強かった。

 そうか、上流に行く程普通は川の勢い増すんだっけか。


《そこの脇になります。川の勢いがちょうど減殺されて、深さもちょうどいいですよ》

(おぉ、ここか)

《水は澄んでますが、若干危ないので体を洗うだけにしてください》

(分かった)


 ここの水は今まで水浴びとして使ってた川より冷たかった。

 この川のもっと上流にまだ雪が若干残ってるからだそうだ。

 最近は少しずつ暑さが増している。 

 客車は日陰で風通しも良いが、やはりこういう涼しさは良い。


 流れないようにしつつ全身を水で清め、腰まで水に浸かる。

 涼しい。まるで水風呂だ。まぁ大体似たようなもんだが。

 川の流れをぼーっとみながら、これからの事を漠然と考えていた。


 俺達の大きな目標は、魔王について調べる事だ。

 あわよくば倒せればいいけど、魔王側がどう動くかにもよる。


 魔王を倒す可能性がある。

 つまり、出来るだけこちらが強くなる必要がある。

 当面はその方法を探す旅になるだろう。


 まず真っ先に思いつくのがハーレムの増加。

 俺が強くなる。それは大事だ。

 だが、一般人にホイホイと口づけしても仕方ない。

 出来ればパーティーになるメンバーを対象にしたい。

 それにはある程度強くて、可愛い。

 何より問題の無い奴がいい!


《今の所、ヤンデレ、殺人癖、借金持ちですからね》

(そうやって書くとインパクト半端ないな)

《まぁ失敗の無い仲間を増やしたいなら、心当たりがないわけではないです》

(ほう)


 凄い嫌な予感しかしないが、一応聞いておこう。

 ポートがコホンと咳払いをする。


《ここから南にある町では、奴隷の販売が有名です》

(奴隷?)

《ファンタジーものの定番ですね! ただし問題があります》

(ただでさえ金がないってのに買う余裕がないってことか?)

《いえ、それはおいおい解決していくと信じています。単純に遠いんですよ》

(遠い?)

《間に高い山がありまして、大きく迂回しないといけないんですよ》

(なるほど、そのうちその町に向かえればいいって感じだな)

《そうですね、通過点の1つだと思ってください》


 奴隷を買う。

 これなら確かにちゃんと選んでからにすることができる。

 今は前衛っぽいのはロントだけだ。バランスが悪いのでもう1人欲しい。


《それと、一応もう1つ当面の目的はありますね》

(ほう)

《ロントさんの兄弟子ですよ。各地に散っているようなので頼るのはいいと思います。ホーガンにはいないですけどね》

(あー、そういえばそうだったな。いつか師匠とやらにも会いたいな)

《師匠といえば、ライトベルさんの師匠にも会ってみたいですね》


 どちらかが美女だったら仲間に引き入れたいな。

 ぐへへ。




 十分体が冷えたので川から上がり体を布で拭く。

 何か目的が出来たようで出来ないようでよく分からんが、とりあえずホーガンに向かってから考えてもいいだろう。

 服を着て客車へ戻る。





《また妖精の声が聞こえますね》

(えー、聞いたところで大した事やってねぇってこいつら)

《まぁまぁ、聞いてみましょうよ》


 仕方ない。

 声を潜めて妖精の声を聞く。


『デッキの枚数は1枚、ライフは25。手札もゼロまで追い込まれた気持ちはどうだ?』

『だが、俺はそれでも希望を信じる!』

『残念だったな! お前の最後のカードは分かってるんだよ!』

『それはどうかな』

『なにぃ!』

『俺は、カードを再構成する!』

『ちょっとジャッジ呼んで来ますね』

『馬鹿! やめろ!』


 ……やっぱりよく分からないな。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 旅は順風満帆だった。

 強いて言えばモンスターも出なかったので食糧がちょっと心配だったが。

 まぁ2日で尽きる程の備蓄ではないので大丈夫か。


 俺たちが心がけたのが、とにかく順番で休む事だった。

 出来れば規則正しい生活が一番だが、夜通し移動する以上警戒はし続けたい。

 ちなみに俺とライトベルが同時に寝る事を最も避けた。

 ポートの声が聞こえるのがどちらか残ってた方がいいと考えたからだ。

 ブラウン君の操縦は全員が出来る方がいいと思ったので、ロントに預けて眠りに入った。

 明日の朝には到着するだろう。






「……ん」

「あ、ユーハさん。起きましたか」

「おはよう……あれ?」

「えへへ、勝手にやっちゃいました」


 リアに膝枕されていた。

 ロントもライトベルも気づかないふりをしているが、気を使ってくれてるのがバレバレだ。

 何だろう、凄い恥ずかしい。


「……ユハ、次は私が寝る」

「おう、おやすみ」

「……おやすみ」


 ライトベルは何だかんだで肉体労働以外の事は色々とちゃんとする。

 モンスターの探知の腕も一流だ。

 だからこそ、常に気を張ってるところがあるが。


「ユーハ、さっきしてもらってたのは何だ?」

「へ? あぁ、膝枕だよ」

「膝枕?」

「まぁ、見ての通りだ」

「スキンシップの一貫ですよ」

「そうか……」


 ロントが何かソワソワしてる。

 やってみたいんだろうか。それともやられてみたいんだろうか。

 リアに気を使ってるんだろうなぁ。


「やってみたいのか? 膝枕」

「いや、しかしリアが……」

「大丈夫ですよ、私ばっかりユーハさんを独占する訳にはいかないですし」

「そ、そうか。ユーハ、ちょっとソレをやってみていいか?」

「あぁ、俺が寝ればいいんだな?」

「うん」


 ロントが凄いぎこちなく足を組む。

 緊張がバレバレだ。男と密着したことないのかな。

 ちょっと最後のうんが可愛かった。


 頭をそっとロントの太ももに乗っける。

 客車なので少しガタガタするが、リアとは違う感触がこれまたいい。

 リラックスができる。


「………………斬りたいなぁ」

「うわぁ!」

「ハッハッハ、冗談だよ」


 お前の場合冗談かどうか分からないんだよ。

 たまに俺の事を獲物みたいな目で見てくるときあるしさ。


 暗くなっていく外を見ながら、時が流れていく。

 モンスター全然出ないなぁ。

 まぁ、ここは人通りが多い方だしな。仕方ないか。


「なぁ、ロント。逆もやってみないか?」

「逆?」

「俺の膝にお前が寝る」

「……ふぇ!?」

「いや、嫌ならいいんだが」

「……女は度胸だ。やってみよう」


 逆に俺が座り、ロントが頭を俺の太ももに置く。

 これはこれで気恥ずかしいな。

 リアがいいなぁみたいな目で見てくる。あとでやってやるから。


「何だよ、ソワソワしてるじゃないか。」

「……恥ずかしい」

「見てるこっちも恥ずかしいです」

「そう言うなよ、やってるこっちも恥ずかしいじゃないか」


 こうして、ホーガンへの道のりは順調に進んでいった。





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





「……ユーハ、アレを見て」

「どうした?」

「……あの建物が見えるのがホーガン」

「おぉアレか。リアを起こすか?」

「……うん」


 俺の膝で寝入ってしまっているリアを起こす。

 まさかすぐに眠りに入るとは思わなかった。

 でも俺の太ももを枕にすると気持ちいいと言われているようで、悪い気はしないな。




 ホーガンは魔法に秀でた町だ。

 魔術協会の大きな支部もあり、後でライトベルはそこに向かう予定だ。

 だがまずやる事がある。宿の確保だ。


 ブラウン君がいい加減に疲れている。休ませてやらないと潰れてしまうだろう。

 幸い安めの宿が早々に見つかった。

 流石リアはそういうのに目ざとい。

 宿の3階らしいので、さもいい景色だろう。

 よし、早くその部屋に行こう。


「……ユーハ」

「何だよ」

「……階段、無理」

「……わぁったよ! ホレ!」


 自分に力を強化する魔法をかけてお姫様抱っこをする。

 階段は広かったが、傾斜がちょっと急で大変だった。

 まぁいい、とっとと3階まで持ってくぞ。


「ユーハさん」

「何だよ」

「あの、凄い言いにくいんですが」

「……お前も運べばいいんだろ!」


 リアもお姫様抱っこされたかったらしい。

 仕方ないのでライトベルをさっさと3階まで運ぶ。

 リアを抱っこする。

 よし、3階まで運ぶぞ。


「……ユーハ、私もやってほしい」

「お前もかよ! 分かったよ!」


 ロントも意外と甘えたがる性格だったのか。

 いやぁ、嬉しいんだけど流石に俺も疲れる。

 ええい、やりきってやらぁ!

 宿のおっちゃんがニヤニヤと見守る中、俺は無事3人とも3階まで運び切った。

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