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16.ツイオク


 自歴 3月19日


 しばらく色々と考えた

 どのようにすれば、1系統魔法で最大限活躍出来るか

 そこで、ある結論に達した


 この世界にはマイナーな魔法がある

 それは精霊魔法と呪術魔法だ

 簡単に言うとバフとデバフだな

 これらはちょっとだけ使う分には恐らくバレない


 それと、回復魔法

 これを少しだけ体得しているという設定にする

 メインはやっぱり雷

 そしてサブに回復、バフとデバフを少し

 これでまぁチートの意味はあるだろう


 という事で、精霊魔法を学びたいと思う

 しかし、問題が起こった

 精霊魔法はエルフという種族しかほとんど使ってないらしい

 つまり書物が無い

 結構不便な事だ

 チートの関係上、本が無いというのは不都合が大きい

 どうしようかなー




 - - - - -




 自歴 4月3日


 精霊魔法について詳しい人に会いたいと思い2週間

 エルフの里にようやく辿りついた

 客車に乗り継いで、ナフィから歩いてようやく、本当にようやくだ

 ヒッチハイクは楽じゃない

 本当に疲れたので、今日はこの辺で

 宿が見つかって本当に良かった





 - - - - -




(エルフの里か……)

《何やら核心に迫ってきてますね》


 そういえば俺もエルフの里に向かったのは精霊魔法の上達の為だったな。

 後から考えると、大して役に立ってなかったような気がしないでもないが。

 ナナと出会えた事は凄い有用だったが。

 相手の魔力を測るというのも、結局上手くは行ってないしな。


 エルフの里に到着してからのアルフレッドは、珍しく短い間隔で日記を書いていた。

 理由は簡単だ。ただ単に愚痴を書きたかっただけらしい。



 - - - - -



 自歴 4月4日


 

 何だここは

 非常につまらない場所だ

 エルフの里と言いながらエルフ感あんまり無いし

 かと言って観光がある訳でもない


 遊びに来た訳ではないからまぁそこはいい

 でもまさか精霊魔法自体、現状でまともに使い手がいなかったとは

 というか、ぶっちゃけ精霊魔法以外でもなんでもいいから教えて欲しいのに

 いや、イノシシの狩り方とかじゃなくて




 - - - - -



 自歴 4月5日



 今日も収穫なし

 この世界のエルフは体が丈夫で、魔法自体ほとんど必要ないのだろうか

 脳筋のエルフとか、夢が壊された気がする

 もう町を一通り回ってしまった

 寝よう




 - - - - -




 自歴 4月7日


 今日もなんもなし

 強いて言えば金髪の赤ちゃんが可愛かった

 金髪と緑の中間の色というのか、ただでさえ可愛い赤ちゃんなのにエルフとなるとあそこまでか

 俺も赤ちゃんを作る日が来るのだろうか




 - - - - -



 

 自歴 4月9日



 泊らせて貰っていた宿が明日までに引き上げなければならなくなった

 宿の主人の親が病に伏してしまったらしい

 俺はまだ治癒系の魔法は使えない

 そもそもこの世界の魔法が、どの程度病気に使えるかも分からないし

 ギルドで稼いでおいた資金も大分減ったし、そろそろ頃合いだろうか

 



 - - - - -




《結局こちらも精霊魔法についてはあまり成果が無かったようですねー》

(むしろ俺んときより悪化してるようにすら感じるな)


 そういえば、途中に出て来た赤ちゃん。

 もしかしたらナナだったりしてな。


《あれ、でもナナさんとは髪の色違いません?》

(さぁ、他に赤ちゃんもいくらでもいるだろうしな。そもそも男か女かすら書いて無いし)

《赤ちゃんだったら、パッと見男女のどっちか分からないのもよくありますしね》


 そういえばあのエルフの長のとこに娘だか妹だかがいたような。

 もしかしたらそっちかもしれない。

 まぁ、真相は分からんか。





 - - - - -




 自歴 4月15日



 ようやくナフィまで戻れた

 最後の最後に思わぬ収穫があった

 1人のエルフが、同行を申し出てくれたのだ

 どこからか聞きつけてきたらしい


 彼は精霊魔法を使えた

 かなりの使い手という程ではなかったが、俺よりは上位の性能を誇っているだろう

 そして何より知識が豊富だった

 同一人物に呪術魔法と精霊魔法を同時にかけると、強い方が勝つ事

 呪術魔法も精霊魔法も、同時に1人にかけると効果が増す事

 いざという時の分は残して、出来るだけ普段から精霊魔法を使い続けた方がいい事


 彼は将来里の長になりたいと言っていた

 せっかくなので、泊まった側からの意見を言わせて貰った

 また、里をどうすれば良くなるかというのも意見をぶつけた

 前世の温泉地みたいに、木刀売ったり饅頭売ったり

 温泉なんかあると便利っぽいし

 将来観光地みたいになってたりしてな


 いずれまたエルフの里に訪れる機会があれば、また彼に会おう

 その時は、彼より圧倒的に上位の精霊魔法使いになって驚かせてやる




 - - - - -




(……あのエルフの里の観光地化は、こいつのせいだったのか)

《しかし、出てきましたね》


 この出会ったエルフの男。

 恐らく、現在のエルフの長なのではないだろうか。

 長になりたいとか言ってるし、当時若かった事を考えると年齢的にちょうどいいだろう。


 しかし、これだけだと俺に「アルフレッドを知ってるか」と言った理由は分からないな。

 後になってその理由が分かるかもしれない。

 後半が破られているのでそこまで書かれてるか分からないけどな。

 それからしばらくは普通の日記が続いた。

 愚痴日記と言った方がいいかもしれない。





 - - - - -




 自歴 4月20日



 ナフィで奴隷を売っていると聞いて、出発を遅らせてまで見に行った

 自分は魔法を1つしか大っぴらには使わない予定だ

 だが、近くに仲間がいたらどうだろう

 そっちが使ったと思うのではないだろうか

 つまり2つ使っても大丈夫!

 

 子供お断りと書いてあったので、まぁ大人だからいいかと中に入った

 裸の女性が売られていた

 鼻血がブッと出た

 恥ずかしくなって出て来た

 辞めだ辞め

 自分には刺激が強すぎた




 - - - - -




 自歴 4月31日



 楽しみにしていた保存食が腐っていた

 もうやだ




 - - - - -




 自歴 5月12日


 トレイサーで花火大会をやっていたらしい

 到着した時には終わっていた

 腹立ったのでヤケ食いしたら魚が当たった

 もうやだ




 - - - - -




 自歴 5月20日



 蚊に刺された

 もうやだ




 - - - - -




 それからしばらくは愚痴が続いたり、魔法の考察が続いたりしていた。

 当時は今よりもモンスターの動きが緩やかなようで、ギルドにもあまり討伐系のクエストが無くて日記で嘆いている。

 いや、今はモンスターを探知する技術が向上してるのかもしれないな。


(……あれ?)

《どうしました?》

(急に飛んだな)


 7月の5日を境に、急に日記の間が空いた。

 この時の日記はフマウンへ向かうという物だ。

 その次は10月の15日

 何かあったんだろうか。


《エタ作家としては普通の間隔ですね》

(なぁポート、この期間に何があったか調べられないか?)

《うーん、自歴とかいう元号はちょっと》

(大体15年ぐらい前に、フマウンで何か起きてないか調べてくれないか?)

《分っかりました! それならお任せください!》





 それからしばらくして、原因が分かった。

 どうやら、その周辺で一度大侵攻が発生していたらしい。

 察するに、何か衝撃的な光景を見たのだろう。

 そりゃあ、大量に死者が出ただろうしなぁ。

 それを境に、魔法の研究についてより一層詳しく考察するようになっている。


 そこで出て来たのが魔法陣だった。

 範囲を広く、威力を強く。

 流石色々な魔法に転用しているだけはある。

 治癒魔法や精霊魔法にも試している様子が書いてある。

 俺も精霊魔法の強化に、魔法陣を勉強してみようかなぁ。


 アルフレッドがこの世界に来てから1年。

 彼は大陸を一周しながら、魔法使い達に色々と教えて貰っていた。

 一周に1年か。

 やはり客車が無いとそれぐらいかかるんだなぁ。

 ……一周した時一周年とか考えて無いからな。


 攻撃魔法、精霊魔法、呪術魔法。

 これらを学んだ彼は、最後にある場所に訪れた。

 王都の教会だった。

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