12.犯人に目星を
あれから更に2日が経過した。
成長しつつあるエレフトラのお陰で、エルリッドさんの足は大分良くなった。
もちろん良くなったと言っても失った足が戻る訳ではない。
しかし切断面がある程度回復していなければ、旅をするのもままならなくなる。
流石に最初は痛かったらしいが、今は違和感がある程度で済んでいるようだ。
足が無くなったのに違和感が無い方がおかしい。
こればっかりは、本人には悪いが慣れて貰うしかない。
さて、そんな俺らだが明日この町を発つ。
理由はエレフトラの発注した特製の痛み止めが届くからだ。
もちろんこの世界で正確な時間での配達はあんまり期待できない。
あくまで予定だ。一日ぐらい後になるかもしれない。
だがどちらにしろ出発の準備はしている。
ナナのお母さんに挨拶は済ませたし、エルリッドさんも明日にでも町を出る準備はしてあるようだ。
「よしっ」
《大体大丈夫ですね》
俺も荷造りは終わった。
外はもう暗くなっている。
早ければ朝の出発になるからな。
この町にも結構滞在したものだ。
そろそろ横になろうかと思っていると、ドアがコンコンとノックされる。
「……今、大丈夫?」
「ライトベルか。どうぞー」
ガチャリと入って来たライトベル。
若干暗い顔をしている気がするが、そもそもこいつが明るい顔をしてる事自体レアだしな。
「で、どうした?」
「……何か、何かを話したくて」
うーん焦ってるな。
マイペースで行けと言ってるのに。
「まぁ、適当に雑談してたら何か思いつくかもしれないしな」
「……うん」
「とりあえず座れよ。ハチミツ水でいいか?」
「……ありがと」
ハチミツとレモンで水に味付けしたものだ。
すっきりとした飲み口で、この季節にはありがたいものだ。
とはいえ、何を言っていいのか分からない。
今の所、特に心当たりはないのだ。
俺らの分かってる犯人像と言えば以下の通り。
犯人は1人または複数。
性別は男性または女性。
年齢は10代または20代、30代か40代の可能性が高い。
転生者の可能性が高いが、現地の人の可能性も否めない。
……うん、見事に何もわかってない。
「分かってるのは精霊魔法と呪術を使うってことぐらいなんだよなー」
「……もう1つある」
「ん?」
「……異様に移動が早い」
確かに言われてみればそうだ。
俺らはブラウン君を全力で走らせて移動している。
だが、どうやら犯人はそれと同等かそれ以上の移動速度を発揮している。
決して徒歩ではないだろう。
また、客車で移動するなら俺らに気づかれる可能性がある。
という事は……。
「瞬間移動か?」
「……もしくは、ポータルを自由に使える立場か」
「空を飛んでるか」
そう、一般人にはそんなこと出来る訳ない。
この世界に瞬間移動の技術は1つしかない。
それはポータルを使用したものだけだ。
まず1つずつ考えて行こう。
「最初のは、恐らく俺達と同じ立場だろうな」
「……一番怪しい」
いわゆる転生者のチートだ。
ハーレムを作るなんてチートがある位だ。
瞬間移動するチートぐらいあってもおかしくはない。
「二番目はどうなんだ?」
「……基本的には無理なはず」
「基本的には……な」
ポータルの使用は厳しい制約がある。
毎日使用するということが基本的に出来ないのだ。
それは体を心配するとかそういうのがあるかもしれない。
だが実際に使うと分かる。単純に利用者が多いだけだ。
まぁ便利だからな。
しかしそれはあくまで魔術協会とかギルドとかそういうところが決めたものだ。
決めた当の本人達がルールをちょっとちょろまかすぐらいなら行けるかもしれない。
王都は腐敗してるらしいしな。
もしくはもう1つの考え方がある。
「ポータルを開発した人なら可能性はあるんだよな」
「……その特定までには至らなかったけど」
「もう調べたのか」
例えばポータルを開発した人が、魔法としてその転送を使えるとしたら。
そしてその技術を独占して秘匿しているのなら。
十分あり得る事ではある。
ただし、その開発した人そのものが転生者の可能性も十分ある。
「最後は空を飛んでる、か」
「……まぁ全く無いとは言い切れない」
実際問題俺らはカー君に乗って移動する事もある。
ブラウン君のように鳥やドラゴンを服従させる事も可能かもしれない。
その場合、犯人はある程度の実力者という事になる。
「よし、これまでの話をまとめてみるぞ」
「……うん」
「犯人は俺らみたいな存在か、ポータルの開発者か、権力者か、強い奴」
「……つまり?」
「強い奴だな」
《ってそんなん最初から分かっとるわーい!》
耐え切れずポートがツッコミを入れた。
そりゃ大侵攻を煽ってる、俺より遥かに強い精霊魔法の使い手とかがいる相手だ。
弱い訳がない。
そりゃあもうこの大陸で考えても上から数える方が早い程度には強いだろう。
んな事元から知っとるわ。
さっそく暗礁に乗り上げた。
そんな俺らに援軍が来た。
ドアをノックしたのはナナだった。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「せんせー、本貸してくださーい」
「お、良いとこに来た。お前も議論に参加しろ」
「……お願い」
「議論? まぁ、面白そうだから参加するけど」
ナナも参加した。
とりあえずなんとなく今までの流れを説明する。
「なるほどねー」
「で、何か心当たりないか?」
「あるよ?」
「……え!?」
なんという軽いトーク。
思わずライトベルが大声を出す爆弾発言。
こいつ、大事な事は言わない派なのか?
いや待て。そういやこいつ最初会った時、心当たりがあるからって言ってたよな。
その結果をそういえば聞いていなかった。
「もしかして、お前が気になる奴がいるって言ってたアレか?」
「うん。まぁエルフの里の長なんだけどね」
「……あぁ」
《確か、名前はシャルル・ホーリーでしたっけ》
ライトベルがやや落胆した。
俺らも一応調べた相手だ。
結果はシロだった。
ライトベルの調べた結果、犯人とエルフの里の長の魔力が一致しなかった。
「うん、結局あたしも調べたんだけどダメだった。完全にシロ」
「だよなー」
「でも、なんというかシロなんだけどシロ過ぎるんだよね」
「……シロ過ぎる?」
「アリバイが完璧というか、全部待ちかまえられてるというか」
確かに、あの長は俺と同じく気配を消す魔法はある。
アリバイ工作ぐらいは可能か。
考えても見れば、魔力をねつ造する手段とかあるなら全て辻褄は合う。
まぁそんな事を言ったらキリが無いんだけど。
エルフの里に行った時、世話になった人でもあるしな。
「でもね、あたしが怪しいって言ってるのには理由があるの」
「理由?」
「あの長、普段は里にいる癖に大侵攻の時はいなかったのよ」
「いなかった……?」
「そう、しかもその後里に戻った様子もない。だから信用出来なくて」
確かに、一番の使い手があの場に居ればエルフの里の被害も抑えられた気がする。
うーん……。
そう言われれば凄いグレーな気がしてきた。
「ライトベル、何か思う事は無いか?」
「……あっ」
「どうした?」
「……そういえば別れ際に何か言ってたような」
そうだっけ?
ポートなら覚えてるだろうか。
《えーっと、ありました。アルフレッドを知ってるかと聞いてます》
「アルフレッドか」
「……何で聞いたんだろう」
ただ単に俺らが旅の者だから聞いたのかと思ってた。
しかし今思い返せば、彼は俺が転生者だと感づいていたのではないだろうか。
あの時の事は詳しくは思い出せないが。
となると、もしかしたらこのアルフレッドという名前は何か意味があるのか?
アルフレッド……気になるな。
「でも、調べ方は限られるな」
「ロントさんの実家で調べるのは?」
「あー、でも進行方向はトレイサーだしなぁ」
トレイサーとロントの実家のあるトーノは別の方向にある。
出来ればトレイサー方面で調べたいところだが。
トレイサーに行ってからトーノへ向かうのは、かなり遠い。
「アルフレッド、アルフレッドか」
「……むぅ」
しかし、このアルフレッドという名前は何かありそうな雰囲気がある。
もしかしたら、エルフの里の長の居所を突き止めるキーワードかもしれない。
そんな時、再びドアがノックされた。
ノックの位置が低い。
これは間違いなくスランのノックだろう。
「うー!」
「どうした?」
「うー! うー!」
スランはマテリアルを持っていた。
向こうの部屋で一緒にやろうと言っているのだろう。
「なぁスラン」
「う?」
「アルフレッドって言葉に心当たりはないか?」
「うー」
俺は気軽にそう聞いた。
きっと知らないだろうと思いつつ一応。
スランは少し考えた後、手に持った物をグイッと差し出した。
「う!」
「……いた」
「アルフレッドじゃねぇか……」
「……お手柄?」
「うー!」
マテリアルの入っている、木製の箱。
その箱に刻まれていた。
マテリアルの開発者として、アルフレッドという名が。
このお話でこの章は終わりになります
まったりのんびりな章でしたが、色々と伏線を回収したり設置したりとキーになる章でもありました
アルフレッド……一体何者なんだ
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