表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/188

14.新たな客車に乗ろう

 翌朝、とりあえず朝食の準備をしているリアに相談する事にした。

 マイの件についてだ。

 何もしないのもアレなので、パスタをゆでる為の水を魔法で調達する。

 ちなみに今日のパスタは長いパスタではない。

 1口サイズに千切ったようなパスタだ。


《コンキッリェというパスタに似てますね。まぁこちらは千切っただけなんですけど》

(へー)


 だそうだ。


 料理をしながらリアに相談した結果、とりあえず本人のいない所で皆で話し合ってみたらどうだとの事だった。

 まぁ確かにそうだ。




 という事で、マイとリアとスランの3人に買い物をお願いすることにした。

 1人で買い物は危ないからな。

 スランのあのでかいハルバードを見れば、襲って来る奴はいないと思うが。


 残ったメンバーを食堂に集めて会議をする。

 とりあえず現状を説明してから、意見を募る。


「……という訳で、ペガサスへ行こうと思うんだけどうだろう」

「異議はないねぇ」

「あたしもなーし」

「かー!」


 うむ、概ね反論はないな。

 と思っていたら、ロントの手が上がった。


「エレフトラが付いて来るのは分かったんだが、そうするとユリン1人を残しておくのは危険じゃないか?」

「あー、俺もそこは気になってたな」


 確かに、狙われていたユリンが1人になるのはちょっと怖いな。

 とすると……。


「ユリンちゃんを一緒に旅に連れて行った方がいいのかもな」

「それには及ばないさ。ゴルヌ卿とは話を付けてある」

「ゴルヌ卿に?」


 ゴルヌ卿は、この家に借金を貸し付けた張本人である。

 俺にとっては色々ありすぎて あーそんな人いたなー って感じだが、エレフトラ達にとっては昔からの知り合いだ。


「定期的に手紙を出して、何か発作が起きたら使いを出させるように言っておいたさ」

「根回し早いな」

「それって、例の連中に本格的に狙われたらどうしようもないんじゃないの?」

「そこまでされたら、1人残ったところで意味はないさ。それより皆でこの街を離れた方が、気を逸らせるんじゃないかねぇ」

「そう言われたら、そうかもしれない」

「それに、あの子はまだ病気が完治はしていない。旅は負担になると思うのさ」


 確かに、中途半端な対策を打つぐらいなら街から離れた方が安全か。

 ならば、全員でペガサスへ向かうのが最善だろうか。

 だが、それならそれでまた別の問題がある。


「全員で移動するとなると、いい加減客車狭いんだよなぁ」

「あれ? ユーハ気づいてなかったのか?」

「ん?」

「そこの窓から、右斜め前の方を見てみな」

「ここか?」


 窓を開き、ロントの言われた方向を向く。

 ……知らない何かがある。

 あのでかいの、まさか……。

 ライトベルの方を向く。


「……新型客車」

「おいちょっと待て、元の客車どうした」

「……いらなくなるから売った」

「アレって確か俺が所有してるものだったよな?」

「……大丈夫、とりあえず性能を確認して」


 ロントがそっと紙を渡してきた。





 枠組みに特殊な金属を使い、全体の強度を大幅に向上!

 車輪は前のが優秀なので、そのまま流用!

 最大14人までの積載を実現!

 しかし本体の重量はなんと40パーセントカーット!

 クッションや外を覆う布は快適な旅を約束する最高級の物を贅沢に使用!

 まさに貴方たちの為だけのオーダーメイドな客車!

 



 うーん、確かに良い客車だ。

 黒を基調とした、非常に快適な旅が出来るような設計のものだ。

 これなら大勢を乗せても、ブラウン君1人でなんとかなるかもしれない。


 だが、だがな。

 俺に渡された2枚目の紙が、請求書ってどういう事なんだ。




「……ゆひゃ、いひゃい」

「うるせぇ、どうせ犯人はお前だろ」

「……はんひんっへ、まはそうらけろ」

「で、金はどうしたんだ?」

「……かりは」

「借りた?」

「……あふらけから」

「あふらけ?」

「あぁ、アシュラ家かねぇ。あそこは暴利を貪るので有名な金貸しだよ」

「おい」


 ライトベルの頬っぺたをムニューっと引っ張る。

 いや、うん。

 どうすんだよコレ。

 借用書とか見せられても金なんてねーぞ。


 えーっと頬っぺたを引っ張ってたせいで話が分からないかもしれないから一応要約しておく。

 ライトベルが勝手に客車を売ったよ!

 そして新しい客車を買ったよ!

 請求は俺宛てだよ!

 そして手付金は借金だよ!

 それも当然の如く俺の名前が書いてあったよ!

 借金をした相手は、暴利で有名なアシュラ家だよ!


 とにかく額がとんでもない。

 客車は元から高いのに、高級素材使ったオーダーメイドってアホか。

 それにしてもよくこんな物が短時間で作れたなおい。


「まぁまぁ、金利ぐらいは交渉してやるさ」

「あぁ、それは助かる」


 エレフトラはこういう時頼りになる。

 にしてもどうするんだよ……。

 ギルドでのクエストの収入も見込めないってのに……。





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





 結局、出発はさらに1日後の事になった。

 それは食糧の調達や、エレフトラの各種交渉の時間も含まれる。

 だが、一番大事なのはブラウン君が上手く客車を牽引出来るかのチェックだった。

 マーシュ産という事で大いに不安だったが、問題は無さそうだった。

 ポートに聞いたら大丈夫だと言っていた。

 大丈夫かなぁ、まだ不安が残る。

 せっかくなので一緒に試し乗りしたナナのサポート、ピートにも聞いてみた。

 大丈夫だと言っていた。

 なら大丈夫だろう。


 試し乗りで分かった事だが、どうやらこの客車はかなり丈夫に出来ているようだ。

 これは何を意味しているかというと、今までかけられなかった精霊魔法がかけられるということだ。

 ブラウン君の足が速くなるというアレだ。

 流石に全力はかけられないが、普段の倍程度の速さで移動する事は出来るかもしれない。

 徐々に客車への負担を増やして様子を見たい。


 これによって何が良いかというと、積むべき食糧を減らす事が出来るのだ。

 水に関しては、俺の魔法がある為必要ないと言えばない。

 ただし、俺に何かあった時の事を考えて一応予備の水筒の用意はしてある。


 また、ブラウン君や俺らへの負担も大きく減る。

 負担と言えば、夜の見張りのローテーションも楽になるな。

 今までは俺かライトベルが絶対に起きてないといけなかった。

 だが、今はナナもいるし、カー君もいる。

 どちらかが起きていれば、ポートかピートの声が聞こえるはずだ。


 この2人は元日本人だ。

 つまり夜更かしはお手の物だ。

 非常に心強い。

 まぁライトベルも夜更かしは強いんだけどね。


 燻製作成君2号は、やっぱり場所を取ると言うことでエレフトラの家の庭の一角に置かせて貰う事にした。

 ユリンちゃんはゴルヌ卿の人が時々訪問する事になっているらしい。

 まぁ、俺らがマーシュへ来る前からやってる事らしいので心配ないだろう。

 ユリンちゃんとの別れを済ませ、名残惜しそうなエレフトラを引っ張って客車に乗せる。

 なんだかんだでフルメンバーが揃ったのが、なんだか久しぶりに感じる。

 また長い旅になるんだろうか。


 マーシュを出た辺りで、マイがバッと立ち上がった。

 急に立つと危ないぞ。


「あ、あの! 皆さん、本当にありがとうございました!」


 そう言ってガバッと頭を下げるマイ。

 恐らく、次の目的地がペガサスだという事を意識してるのだろう。


「まぁまぁそんな気負うなって、俺達も一応ペガサスの大侵攻を調べたかった訳だしさ」

「ですけど……」

「情報が無いからねぇ。その目的地がたまたまペガサスだったってだけのことさ」


 あくまで俺らの好意みたいなところがあるからな。

 マイは特に責任とか感じる必要はない。


「……ところでユハ」

「何だよ」

「……例の光るアレ、いつかけてくれるの?」

「お前、人に借金被せておいてよくそんな事を言えるな……」


 ライトベル、お前は特に責任を感じた方がいい。

 絶対この客車のムダな装飾や高級素材が、値段を底上げさせているからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ