12.美女のお部屋に誘われよう
「かんぱーい!」
「うー!」
食堂の大きな机の上に、リアの腕を振るった豪華な料理が並ぶ。
ポータルを使えるようになったお陰で、肉料理だけでなく焼き魚などもある。
病み上がりであるユリンちゃんの前にはパスタを細かく切った、消化に良い物が出ている。
カー君は相変わらず、お気に入りの木の実を突いている。
ユリンちゃんの呪いは、覚醒エレフトラによってすぐに浄化された。
まぁ本当は全然覚醒でもなんでもないんだが、覚醒って付けた方がかっこいいし分かりやすい。
ポート発案のメガエレフトラは却下された。
ユリンちゃんは、その後は本当に元気になった。
むしろ今までの病気すら完治する勢いで、消化の良い物を完食した上に肉料理にもがっついている。
消化の良い食べ物とは一体何だったのか。
後遺症も特に無く、今までにない程元気だ。
体力がちょっと落ちているので、色々と体を動かす必要がありそうだが。
むしろ、俺の方が後遺症に悩まされた。
エレフトラの強化……面倒だから覚醒としよう。
その覚醒状態が終わった後でも、俺の力はすぐに戻らなかった。
ということでこの食事会は、覚醒エレフトラから一日半経過している。
ユリンちゃんの回復祝いと、俺らの帰還祝いの食事会だ。
本当はナナの歓迎会も兼ねているのだが、ナナが加入した理由がエルフの里の崩壊なので、派手に祝うのもどうかということになった。
暗黙の了解で、皆そこに触れない事になっている。
俺の新しく作った能力は、流石のポートでも強化2つ分としては見合わないと判断された。
そこで、いくつかの制約を決めた。
発動前に相談してた奴だ。
まず、使える対象はハーレム要員のみ。
これはまぁ制約としては当然だろう。
例えばその場に凄い強い魔法使いがいたとする。
俺がその人に覚醒を使ってしまっては、もう何でも出来てしまう。
せっかくハーレムのチートなんだ。ハーレムが関わらないと。
ただ、これによってカー君とかブラウン君を対象に出来ないのはちょっと痛いが。
また、当然俺を対象にする事は出来ない。
次に使用制限だ。
一日一回しか使えない。
これはちょっと議論した。
一週間に一回はちょっと長すぎるということで三日に一回案が出た。
しかし、俺の旅が基本的に進行が早いということで一日一回でまとまった。
そして時間制限。
覚醒はきっかり30分とした。
それ以上長いのも短いのもダメ。
その間俺は弱ったままだ。
一度に貸し出す事が出来る力も調整出来ない事になった。
全部貸すの一択。半分だけ力を分けるとかそういうのはナシ。
あくまで「面白い」からと特例で許された能力だ。
ある程度ロマンがないとダメということになった。
力の回復というのも制限がかかった。
回復には半日以上かかる。
また発動までに魔力を使っていた場合、マイナスになって俺が急激に弱るというのも設定した事だ。
本当は使ってしまった魔力をチャラとしてしまう事も出来た。
所詮創造した能力だからな。
だが、ある程度制約が強くないと許可されなかった。
仕方ないね。
それとおまけとして、覚醒のエフェクトは個別で考える事にした。
エレフトラが光の翼を得たのは、ポートの趣味だ。
ポートがV2ガ〇ダムを好きかどうかというのは俺の知った事ではない。
食事会は、非常に華やかな雰囲気で進行した。
流石男1人に女9人。あとカラス1羽。
思わず(俺、ここにいていいのかな……)と錯覚するような光景だ。
少し離れたところでは、ナナへの質問責めが行われていた。
白い髪色で珍しいし、妙に俺に親しいので興味があるのだろう。
死んでた所をキスで蘇生と聞かされたロントが、妙に親近感を沸かせてたのが傍から見てて面白かった。
「ユーハさん、この燻製どうですか?」
「うーん、味付け変えた?」
「分かりますか?」
「うん、これはこれで美味しいよ」
「そうですか、良かったです!」
今俺が食っている燻製は、新しく作った燻製作成機を使ったものだ。
俺とリアが2人で今朝作った力作だ。
先代は峠越えの際に破棄されたからな。
今回のこいつは、しばらくエレフトラ邸に置いて貰う事になるだろう。
外に置くスペースなんて山ほどあるしな。
また、今机の上に並んでる料理も革命が起こった。
なんと水が使えるのだ。
当然この短期間でマーシュの水が飲めるようになった訳ではない。
俺の魔法で出した水を飲み水として使えるのだ。
一応ポートに確認してあるので、飲み水としてはバッチリ使えるハズだ。
歯磨きの水としても一応常備する方向だが、流石に風呂に使うだけの水は出せない。
「楽しんでるかい?」
「おう……ってお前結構酔ってるな」
「そうかい? へへへ……」
エレフトラが珍しく皆の前で酒を飲んでいた。
付き合いでトロープも飲んでいた。流石雰囲気は大人の女性。
「後でちょっと話があるから、部屋に来てくれないかい?」
「あぁ、分かった」
わーい、綺麗な金髪の女性からのお誘いだー!
しかも自室で2人っきりのお誘いだー!
わーいわーい!
……あ、この卵焼きうめぇ。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「入るぞー」
「どうぞー」
コンコンとノックしてエレフトラの部屋に入る。
……いつの間にか凄い家具が充実している。
棚とかどこかの家から貰ってきたのだろうか。
聖書とかそういう聖職者らしいものや、薬の資料なんかが着実に増えている。
エレフトラ自体は寝巻を着ていた。
恐らく酔いを醒ます為に、体を洗ってきたのだろう。
……前言撤回、ベッドに座りながら手にワイン持ってる。
金属製のグラスに入っている。
「で、何だよ話って」
「……あれから色々考えたのさ。なんであの子が狙われたのかってねぇ」
「あー」
確かにそこが問題なんだよな。
ただ、考えられるのは1つだ。
「俺達を妨害しようとしてるんだろうな……」
「その為にユリンが利用されたってねー」
あっけらかんとした口調で言うエレフトラ。
彼女は手に持ったワインをグイっと飲み干すと……。
ガンッ!
「ぅおぉう……」
そのグラスを壁に投げつけた。
正直ビビった。
「絶対に許さない……可愛い妹をあんなにまでされて」
「あぁ、そうだな」
「もう一度、連れて行ってくれないかい? 今度は同じ志を持つ仲間としてさ」
「もちろん、お前はもう仲間だろ」
まぁ正直ほとんどエレフトラがメンバーを抜けていた実感は無かったが。
トーノへ行って帰って来るまで留守番してたという感覚だ。
エレフトラはベッドから立ち上がると、俺の腹をグーで軽く殴った。
力は入っていない。
「……ありがとう」
そして、俺の首の後ろへ腕をグルっと回して唇を合わせた。
酒の味がした。
「ふ、ふふふ……」
「おいおい、急にどうしたんだよ」
「ふふ、ふふふ……」
天地がひっくり返る。
見事な大外刈りだ。
俺はベッドに寝転がる体勢になる。
エレフトラは俺の上に覆いかぶさるように再びキスをした。
唾液を飲ませるような、濃厚な奴だ。
息が荒い。
エレフトラの豊満な胸が、俺の胸に押し付けられる。
流石に雰囲気がおかしい。
完全に襲われている。
エレフトラの肩をがっしりと掴んで無理矢理引き剥がす。
「どうしたんだよいきなり」
「あんた、いい男だよねぇ」
「え……?」
「ふふふ……」
やばい、目が完全に正気じゃない。
どうにかしないと……。
なんとかしようと手を動かすと、何か硬い物を手が触れた。
これは、ワインが入っていた瓶か?
まぁガラス製じゃないんだが。
……って5本!?
容量は普通にワイン瓶ぐらいある奴だろこれ……。
「お前、ちょっと飲み過ぎじゃないか!?」
「ふふふ、ふふふ……」
「ダメだ、完全に酔っぱらって……んむっ」
「んちゅー」
ここまで来て初めて知った1つの事実。
エレフトラは酔ったらキス魔になるらしい。
聖職者としてキスをしたら弱くなるという負い目で、今まで自制してきた物が外れてしまったとか。
俺はエレフトラの意識が飛ぶまでの間、延々と口や顔を舐め回されていた。