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1.はじめてのキス

 俺の前世の名前は湯羽 熱居と言う。

 前世では神から預かった力で、多くの人に影響を与えた。

 一応2030年ぐらいの日本で細々と生きていた。

 まぁ、今はそんな事はどうでもいい。


 前世というのも、俺はどうやら死んでしまったらしい。

 俺は前世ではある能力を持っていた。

 その能力を暴発させてしまったからというのが理由らしい。

 そして、今俺の前には1人の男がいる。

 彼には面識があった。


「久しぶりだな、えっと今は湯羽だっけな?」

「あぁ、その節はお世話になりました。神さま」


 彼は転生を司る神。

 前回俺がある能力を得たというのも彼のお陰だ。

 面白い人生がまた歩めるのだろうか。

 ちょっと期待してしまうな。


「で、次の人生も何か特別な力をいただけるんですかい?」

「あぁ、君は優秀だったからな。お礼も兼ねてとびっきりのを用意したよ」

「ほう……」


 何だろう、更に期待してしまう。

 ふと上から何か板のようなものが下りてきた。

 いや、違う。プロジェクターか。

 一応ここ野外のはずなんだけど、どうやって吊ってるんだろう……?

 雲から垂れてきてるみたいだけど、ジュゲ○かな?


「まぁ、まずはこれを見てくれ」

「これは……どこかの都市ですか?」

「私の管轄の世界の一つなんだが、まぁ簡単に言うとコッテコテのファンタジー色の強い異世界って奴だよ」

「ほう」

「勇者候補が本当はいたんだけど、その子が空飛びたいって言うから、仕方なくカラスに転生させてやったんだよ」


 普通に空飛ぶ能力がある勇者とかでも良かったんじゃないか? と思うのは野暮だろう。

 彼がそちらに行ってくれたお蔭で俺も良いポジションを得られたと考えれば、余計な事は口にしない方がいいだろう。


「あ、ちなみに今回も一応転生なんだけど、16歳スタートになるからよろしく。こっちの都合になっちゃうんだけど」

「はぁ、まぁ構いませんよ」


 前世では最初は赤ちゃんは楽しかったが、途中からぶっちゃけ暇だったからな。

 移動範囲が狭まってイライラする事も多かった。

 今回はその点楽でいいか。

 ドラ○エとか好きだし。


「ということであまり長くするとスポンサーの機嫌を損ねちゃうから、さっさとあっちの世界に飛ばしちゃうよ」

「分かりました」

「君に与えたチートや使命は向こうでボチボチ説明が入るから」

「はぁ」


 使命とかあるのか。ちょっと面倒だな。

 気楽に過ごせるのならそれに越した事はない。


 幽霊のような俺の姿が、より一層薄くなり始めた。

 これは転生の前兆だ。

 いい人生を歩めるといいな……。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





「いってて……」


 俺が意識を取り戻すと同時に、脳に強烈な痛みが走る。

 頭痛か、前世でも中々ないレベルのものだったな。


 気を取り直して周囲を見渡す。

 ここは……森か?

 何で俺こんなところにいるんだろう。


《あ、お目覚めになられましたか?》

「うわぁ! びっくりした。何だ?」

《驚かせてしまって申し訳ありません。ワタクシ、ポートと申します》

「はぁ、それはどうも」


 急に頭の中に声が響き渡ってきた。

 非常に幼く明るい少女の声だった。

 いや、あざといと言った方がいいかもしれない。

 しかしこいつ何なんだろう。


《あの、頭の中の声聞こえてますよ?》

(まじで?)

《まじで》

(映像とかも見れるの?)

《えぇ、ちゃんとしたイメージを貴方がなされば、ワタクシにもイメージが伝わります》


 ほうほう、試してみよう。

 ポートとやらを適当に美少女に変換して、アレやコレやいかがわしいイメージを想像してみる。

 ほーれ、どうだ?恥ずかしいやろ?


《もしかして、この男性は前世の貴方ですか?》

(そうだけど、何か?)

《……小さい、ですね。アレ》


 なっ、うっせえばーかばーか!

 ……ちょっと泣いてくる。




(で、何で俺は森の中にいるんだ?)

《そりゃあもう、ファンタジー異世界のスタートと言えば、森でしょう!》


 俺の前世の前世では確か森スタートはエター的なフラグだった気がしたが……。

 神が考える事は分からないな。


(じゃあ、特に意味は無いの?)

《はい、とっとと行きましょう! あっちの方角に町があるので、歩きながら色々説明します!》

(了解ですっと。……最初からその町に飛ばしてくれれば良かったのに)

《様式美って奴ですよ!》

(はいはい。で、説明って奴を初めてくれないか?)

《かしこまりました!》


 ポートと名乗るその声は、オホンと咳払いをするとガサガサと何かを取り出した。

 おい、カンペだろ。お前本当はどこかに本体がいるんだろ。


《さてさて、貴方に課せられたチートはズバリ、ハーレムです!》

(ハーレム? ハーレムってあの?)

《はい! ではこれから詳しい説明をしていきますね!》

(あ、お願いします)


 またオホンと咳払い。

 声だけはあざとくて可愛いんだよなぁ。

 うっかり萌えそうで困る。


《まず、貴方には大きく分けて3つのチートがあります!》

(ほうほう)

《まず、女の子を必ずメロメロにする方法があります! それはズバリキス!》


 キスをする間柄という時点で既に仲いいじゃねぇか!

 何だろう、既に嫌な予感がする。


《キスをされた女の子は『ハーレム要員』となります。貴方につくしてくれますよ!》

(うーん、無理矢理キスでもなんとかなると思えば……いや、あまり取らない方がいい手段だろうな)

《次に、貴方の強さです! ハーレム要員が多いほど、貴方はパワーアップ出来ます!》

(なるほど、それは魅力的だな)

《ちなみに今の貴方は人間相応です! 成人男性よりちょっと弱いぐらいなのでお気を付け下さい!》


 おおっと、何かモンスターとかいたら喧嘩を売る気マンマンだった。

 危ない危ない。


《最後に、ワタクシがサポートとして常についています! この世界の事でも、能力の事でも、何でもお尋ね下さい!》

(おー頼もしいな)

《ワタクシは優秀ですからね!》


 きっと今彼女はドヤ顔をしているだろう。

 声からそう感じる。顔は見えないからドヤ声か?

 まぁ、困った事があったら頼らせて貰おう。

 現状わからない事だらけだしな。


(あ、そうだ。言語とかはどうなってるんだ?)

《その点は大丈夫です! 貴方が今脳内で話している言語は日本語に聞こえますが、実際にはこの世界の物です!》

(何と言うご都合主義。でも助かるな)

《その他注意点やチートの使い方等は、その時々に説明いたします!》

(分かった、ありがとう)

《はいです!》


 なるほど、これは愉快な旅になりそうだ。

 俺は、そう考えていた。

 まぁ仕方あるまい。当時の俺は知らなかったのだ。

 そう、何も……。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~



《もう間もなく町に到着します! そろそろ見えてくると思います!》

(えっと、あれかな?)


 まるで中世ヨーロッパのような町がそこにはあった。

 いや、違うな。これはむしろRPGの町に近い?


《転生神様直轄の世界ですからね。貴方が元いた世界のゲームのデザインを元にしているんですよ》

(へー)

《こういうデザインがいいと、直々に仕込んでおられました。この世界にはそれほどの思い入れがあるんですよ》


 ハーレムのチートとか考えてる時点で、そういうこだわりがありそうな神だとは思ってたが。

 まさしくはじまりの町って感じだ。

 というか、アイツもしかして暇なんじゃねーの?


《聞こえてますよ》

(あ、ハイ。すいません)




 町中に入ると、武器屋とか防具屋とか道具屋とか、ファンタジーというかゲームのような場所特有の施設があった。

 てか、そういえばお金持ってないな。

 宿とかどうしよう。武器もないからモンスター狩れないし。

 王様とかいないのかな。銅の剣と50ゴールドとかくれないかな。


《そんな時こそ、チート能力の出番ですよ!》

(へ?)

《武器屋の裏通りの、奥から三番目の家を訪ねてください! そこに一人暮らしの女の子が、病気で寝込んでいるのです!》

(……で、どうするんだ?)

《唇を奪っちゃいましょう! 寝込んでる相手なら楽勝でしょう!》


 ……えーっと確か前々世で見たので一番きつかったのはっと。


《ちょっ、蓮コラなんて見せないでくださいよ!》

(うるせえ、悪は退治だ)

《訳があるんです! 聞いてください! 貴方のキスには、特別な力があるんです!》

(ほう?)

《キスをされたものはメロメロになりますが、その際体の中から色々なものが一新します! 例えば病気の女の子でも、たちまち治ってしまうんですよ!》

(じゃあ俺は彼女をメロメロにし、彼女は病気を治せると)

《ついでに一緒に住ませてもらいましょう!》

(そんな手軽にやっちゃっていいのかなぁ……)

《いーんです! せっかくの能力なんで、ささ! 使いましょ!》


 さっき強引なキスはしないようにしようって思ったばかりなんだけどなぁ。

 まぁ、とにかく家の前までは行ってみよう。

 どうやらポート曰く美少女らしいし、見に行くだけならタダだろう。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




《ここがあの女のハウスです》

(一人暮らしにしては結構大きいな)

《この世界では標準的なサイズですよ。元々家族三人で住んでいた家ですしね》

(あれ、ご両親は?)

《父はモンスターとの戦闘で生まれる前に。母もある病に倒れ、彼女自身も今その病に侵されています》

(それは大変そうだな)


 母子家庭だったのか。

 しかも今両親とも亡くなっていると。

 その大変さは現代社会以上のものだと想像できる。


(で、どうやって中に入るんだ? 入れてもらうにしても女の子は寝てるんだろ?)

《そこの植木鉢の下に、鍵が隠してあります》

(こいつ……)

《正直今女の子は重体です! もたもたしてると手遅れになりますよ!さぁ!》

(ええい、ままよ!)


 植木鉢を持ち上げると、汚れたリボンのついた小さな鍵が出てきた。

 入り口に立ち、こっそり鍵を開けた。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~



 中は広い一つの部屋になっていた。

 奥に二つのベッド。

 生活感に溢れていると言えば聞こえはいいが、体が弱り洗い物もロクに出来ていないような状態だった。

 すげぇドキドキするな。


 ふと、入り口に鏡があるのが見える。

 東洋風の、しかし見覚えのない顔がそこにあった。

 黒髪、そこそこの美形寄りな。

 何というか、主人公っぽい感じというか。

 これが、俺か。


《どうです? あなたの顔。急に大きく変わると動揺してしまうかなと思いまして、東洋風になってます》

(まぁ、悪くは無いな)

《えー、前世よりは断然かっこいいですよ? その前と比べると……涙が止まりません》

(ええい、俺の顔なんて今はどうでもいい。女の子だ、重病なんだろ?)

《はいはい、すぐそこのベッドで横たわっている彼女がそうです》


 ポートの指示で、音を立てないように寝室への扉を開ける。

 そこにはベッドで横たわっている少女がいた。

 年は今の俺より少し下か。

 やや緑に近い水色の髪は乱れ、顔が紅潮し、触らなくても高い熱なのが分かる。

 医者じゃないから何とも言えないが、この様子では一晩も持たないかもしれない。


(大丈夫か? 本当にキスして)

《どうぞ、ぐいーっと》

(女の子怒らないよな? 病気うつされないよな?)

《だいじょーぶです。ささ、どうぞどうぞ》

(分かった、覚悟を決める。でもその前に一つだけ聞いていいか?)

《何でしょう》

(彼女の名前は?)

《えーっと、リアちゃんです》

(分かった)


 苦しむリアという少女の顔に、自分の顔を近づける。

 俺のチートで楽にしてやるからな。リア。

 そして俺は、意識が朦朧とする少女に、無理矢理口づけをした。

他の短編のネタが出てきますが、未読でも問題ありません。

もし興味が出ましたら他の短編や、完結作品もよろしくお願いします。

ちなみに作中で出てくる前世とは「小説家になろう最強主人公ランキング一位を本気で目指す神と男の物語」の事です。

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